シンセ番長・齋藤久師が送る愛と狂気の大人気コラム・第五十七沼 『50UP!沼』
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先日、50歳にして初めて50cmUPのデカバスを釣り上げた。
夢じゃ無いかと、思わずほっぺをつねった。
40歳の時に始めた釣り。ちょうど10年目で一つの大きな目標を達成した。
長かった。
月齢に左右されるタイダルリバー(干満)は川幅が広いところが多く、効率的にポイントが絞れないので、それが苦手な私は真夜中いつものように人知れず隠れるように存在する感じの田んぼぎわの用水路を探していた。
前に一度バラした事があったその用水路は、幅2メートルも無い狭いもので、深さもせいぜい3〜40cm程度の小さく浅い水路。
川の両サイドには植物が生い茂っていて、藪漕ぎした形跡もないほど鬱蒼と茂っており、良い流れ込みのある生命感漂う釣れそうな条件が揃った場所だった。
藪漕ぎの跡が無いと言うことは、つまり人間がそこに進入していない事を意味し、すなわち警戒心の強いブラックバスへのプレッシャーが少ないと言うわけだ。
そこに絡む流れ込みが何故良いのか。それは流れ込んだ新鮮な水が溶存酸素を濃くし、微生物が集まる。
すると微生物を食べる稚魚が集まり、さらに稚魚を食べる魚が現れる。そして最終的にはその魚は私が狙うブラックバスにたどり着く。
しかし、その激しい藪を歩いて入って行く勇気のない私は、ダメ元で橋の上から巨大なルアーを静かに水に浮かせる事にした。
万が一釣れた時、魚をどうランディングするかなど全く考えず。
(魚をすくう網など持たないのが齋藤流)
そしてリールのクラッチを外し、親指でサミングしながら慎重にラインを垂らしていった。
そしてルアーが水面に着水した瞬間「ガバッ!」と魚が出た!
しかし、フッキングしなかった。でも、なんとなくその音や用水路の様子から、ナマズか雷魚だと思っていた。
それでも何故か諦めがつかず、仕方なく、激しい藪漕ぎをして水路ぎわに近づいて行った。
HUNTERのレインブーツが役に立つ。
目の前に迫る巨大な蜘蛛(自分的には絶対に毒蜘蛛だと思い込んでいる)にビビリながら私は橋の下の影にかくれ一服つけて、しばらく場を休ませた。
気分は完全に天井裏に隠れている弥七だ。
そして、もう一度さっきバイトがあったちょっと先にルアーをキャスティングし、波紋が消え、30秒くらい放っておいてからゆっくりとリールを巻き始めた。
ルアーはgenuine recordのリベラ。2オンスもある羽の付いたノイジールアーだ。
羽に水が絡むギリギリ波紋を出すくらいのゆっくりとしたスピードで引いてきた。
すると、さっきバイトした所とまったく同じ場所で再びバイト!「ガボッ!」
しかし、残念ながらまたしてもフッキングしない、、、。
こんなに攻めて、2回も食ってくるって事は完全にナマズだと思ったが、せっかく恐怖の蜘蛛地獄の藪漕ぎをしてたどり着いた橋の下。(ぜったいに蛇も居るだろうと自分では思い込んで恐怖のどん底だ)
私はもう一度チャレンジするために一服つけ、橋の影からポイントを覗き見ていた。
すでに弥七というより、「家政婦は見た」の市原悦子の気分だ。
バカらしいと思いつつ、もう一度さっきと同じ場所にルアーを投げ、全く同じようにリーリングしてみた。
すると、信じられないことに、絵に描いたように全く同じ場所で3回目のバイト!!!!!!!
しかもフッキングに成功!
私は強力な力で思い切り引っ張られ、思わず水路に落ちそうになるのを踏ん張ってこらえながら10回くらい合わせたw
「ああ、やっぱナマズか」と思った瞬間、その魚は思い切り高くジャンプした!
「バスっだ!ブラックバスだ!しかも異常にデカイ!!!!!!!!!ヒャッホーウィ!!!万歳!万歳!@atn(g@gptdl/tw!#@bdmvja!!!」
と誰もいない闇夜の中、1人で大騒ぎしながら(警察がいたら職質必至だろう)死んでもバラしてはいけないという思いで、エラ洗いでフックを外そうとするデカバスを変えたばかりの新品50lbのPEライン(人間の子供くらい引っ張れる超強い糸)とgenuine recordとABUのハードタックルで力強くなかば強引に引きづり出した。
釣り上げたブラックバスは、見た事もない体高でズッシリと重く、計測してみると52cmあった。
実は9月に入ってから、りんご音楽祭に出演した一日以外は、毎日欠かさず釣りに出かけていた。
そして釣りに出かける度に、そこそこ釣っていた。
しかし、やはりコレだけのランカーサイズは比較にならない程の衝撃を心身共に受ける。
帰宅してからも震えた手が止まらないのだ。
もちろん嬉しいのだが、何故か抜け殻のように無感情になってしまうのだ。
だいたい45cm以上のバスを釣った時はいつもこうなる。
そもそも私の釣りのスタイルは少し変わっている。
現在、多くのアングラーは「実釣主義」のために、釣りの道具は日に日に進化を繰り返し、テクノロジカルの極みまで来てしまった。
しかし、私の釣りは、彼らのようなハイテクな道具は使わない。
でっかくて、疑似餌と言うには程遠い、生き物に見えない奇怪なルアーを使う。しかも、そのルアーは水中に沈まず、水面に浮かんでいるのだ。
このスタイルをトップウォーターフィッシング、あるいはサーフェースゲームと言う。
その一番の醍醐味は、ブラックバスがルアーにバイトする瞬間が目で見えるので、心臓が飛び出すほど興奮する。
実は最近、かなりの釣果を上げている私だが、釣りを始めて7年間、一匹も釣っていなかったのだ。
信じられるかい?
信じられないだろ?
それでも辞めないでずっと釣りに出かけていた。
何故だろう。自分でもよくわからない。
しかし、そんな釣り下手な私が何故いきなり爆釣男になったのか。
それにはいくつかの要因があるのだ。
ここにその秘伝をご紹介しよう。
その一
まず釣りに行ったら、とにかく投げて投げて投げまくれ。
宝くじが買わないと当たらないように、釣りも投げないと釣れないのだ。
その二
気配を消せ。
出来るだけ自然に紛れる服装で、足音や物音を立てずに水辺に近づくのだ。
その三
ルアーは静かに着水させて、波紋が消えるまで我慢して待て。
2ozもある巨大なルアーはまるで石を投げているのと同じだ。
魚をあまり脅かしてはいけない。
その四
ボートは辞めて陸っぱりにせよ。
私は車を買い替える際に、間違えてボートを積載できないタイプにしてしまった。そしてボートから陸っぱりに変えた瞬間から爆釣男に変身した。
その五
日陰を探せ。なければ夜に行け。
ブラックバスは光が嫌いだ。いつもブッシュの影に隠れている。
その六
家族サービスはマメにする事!
コレは一番重要な事だ。
サービスを怠ると釣りに行く事さえ出来なくなる。
まあそんな感じで52cmのデカバスとは「また会おう!」と言って優しくリリースした。
今度は60UPを狙おう。
60UPが獲れたら、その時に引退する。