シンセ番長・齋藤久師が送る愛と狂気の大人気コラム・第五十八沼 『音楽ビジネス沼!』
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「welcome to THE沼!」
沼。
皆さんはこの言葉にどのようなイメージをお持ちだろうか?
私の中の沼といえば、足を取られたら、底なしの泥の深みへゆっくりとゆっくりと引きずり込まれ、抵抗すればするほど強く深くなすすべもなく、息をしたまま意識を抹消されるという恐怖のイメージだ。
一方、ある物事に心奪われ、取り憑かれたようにはまり込み、その世界にどっぷりと溺れることを
「沼」
という言葉で比喩される。
底なしの「収集」が愛と快感というある種の麻痺を伴い増幅する。
これは病か苦行か、あるいは究極の癒しなのか。
毒のスパイスをたっぷり含んだあらゆる世界の「沼」をご紹介しよう。
第五十八沼(だいごじゅうはちしょう) 『音楽ビジネス沼!』
結果はわかりきっていた。
しかしやってみなくては気が済まなかった。
私は先日、Twitterのアンケート機能を使って、ある調査をしてみた。
現在、「ミュージックビジネス」と呼ばれる現場で音楽活動をしている音楽家がどれだけメシを食えているのか、
とても気になった。
というのも、CDが売れなくなったという現代で、音楽家の経済状態がいったいどうなっているのか。
そして、私を含む彼ら音楽家がこの状況をどう感じているのか知りたいと思った。
そこで私は以下のような三択のアンケートを音楽家に向けて行った。
- 1.糞ダサい音楽で金持ち
- 2.糞カッコ良い音楽で貧乏
- 3.タピオカ業に転身
という究極の3択を選んでもらった。
もちろん「糞カッコ良い音楽で金持ち」などという選択肢は無いw
1.糞ダサい音楽で金持ち
この糞ダサい音楽で金持ちというのは、言わずもがな、あの人やアレや、彼女達や、あのプロデューサー達の事だ。
政治を使い、ただ金を産むためだけに作られた大量の消費音楽をつくる人たちの事だ。
そのほとんどがパクりと言っても良いほどの合理的に稼げるシステムを構築しており、印税は作家とプロデューサー、
そしてレコード会社、またそれに群がる機関に支払われる。
その金額は莫大だ。
しかし、音楽そのものは常に欧米の2〜3年後(あるいはそれ以上)を追いかけたサウンドも含めたまがい作品が多い。
果たして、お金のためにこの恥に耐えきれるかが最大のポイントだ。
そのためには金のためなら何でもやるという強靭な精神力が必要になる。
あるいは、面の皮を厚くするか、
心臓に毛を生やす必要があるのだ。
いや、最初は恥ずかしいのだろう。
しかし、そのうちその金に群がる多くの人間達に「先生、先生」と呼ばれるようになったらもう怖いものは無い。
裸の王様だ。
2.糞カッコ良い音楽で貧乏
糞カッコ良い音楽で貧乏。
これは「ミュージックビジネス=数字=金」という方程式が成功とするならば、究極の自慰行為なのかもしれない。
しかしだ、良い言い方をすれば「アンダーグラウンド」であり、決まり切った枠を超越した秀作が度々生まれる。
「糞ダサい音楽で金持ち」派の音楽に洗脳されている人たちには「?」と思うほど革新的なサウンド、そして知的刺激欲を満たしてくれる作品が多い。
そのサウンドは一般的に先を行きすぎる(当然だが、新しい事にチャレンジしているのだから)ため、一般の保守派リスナーには抵抗感を示す人が多いのも事実。
しかし、「糞ダサい音楽で金持ち」派の音楽と違って、その寿命は長い。
1番の問題は、作家自体が経済的にじゅうぶんに満たされていないという事実だ。
しかし、作品としての寿命は長いので、家族が食べていけるギリギリの線をキープしながら、また支援団体やコアなファン、そして最近ではクラウドファンドなどを利用し活動を続ける音楽家もいる。
そして彼らは音楽家として、同業者からも賞賛される事が多い。
「金より作品の質」を選んだ勇気ある活動に名誉が与えられるのだ。
そのため、音楽業界よりも総合芸術の分野から支持される事が多い。
中には音楽作品よりも「タオル」などの物販で財を成す人もいる。
3.タピオカ業に転身
これはタピオカでなくても、現在最も旬なビジネスを渡り歩くという意味で選択の一つにした。
あるいは、もっとも手堅い商売をする。
つまり音楽ビジネスと関わらないという事なのだ。
音楽家は星の数ほどいる。
そして、現代はその音楽はコンサート以外、全ての音源はコピーが可能であるため、実質いくら時間と労力とお金をかけて作った作品もコピーされてしまえばタダだ。
若い世代は「音楽は落とすもの」と考える者が多く、作家の産みの苦しみなど知る由もなく、悪気もなく違法行為をしているのが現実だ。
そう考えると、音楽を仕事にするという事はデメリットがいかに多いかおわかりだろう。
結果発表!
さて、いよいよ気になる結果を発表したいと思う。
24時間集計して総数156人の人々がアンケートに答えてくれた。
その中には作家の他にDJや歌手なども含まれているだろう。もしかしたら一般のリスナーもいるかもしれない。
予想していた通り、結果は以下のようになった。
1位.タピオカ業に転身が52%と圧勝!w
それはそうだよ。
お金が無ければご飯も食べれない。生活もできない。音楽なんて作っている余裕もないかもしれないよ。
しかし、これは「音楽ビジネス」という視点から見てという事だ。
楽器も買えない国の子供達をみると良くわかる。
そのへんに落ちている缶カラを叩いて心から音楽を楽しんでいるではないか。
しかも、素晴らしいサウンドを出している。
その覚悟が無ければ安定した職業に就く事を強くおすすめする。
タピオカじゃなくてもいいから、とにかく大儲けして、才能のある貧乏人音楽家へ投資して欲しい。
2位.糞カッコ良い音楽で貧乏
これは正直嬉しかった。まだ良質な音楽を作ろうとしている音楽家たちがいる事に対して私も励みになった。
これは綺麗事ではないのだ。貧乏なのに良い音を作ろうとする。
つまり、耳の肥えた少数のリスナーへ、そしてひいては自分の自尊心を守るために金に身を売らない姿勢が素晴らしい。
だからといって、全ては良い音を作っているとは限らない。
ちょっと間違えたら「糞ダサい音楽で貧乏」というパターンだって考えられるのである。
「糞カッコ良い」「糞ダサい」という基準。
これは私の独断と偏見によるものだ。許せw
ともかく、この枠に票をいれてくれた諸君!私は永遠に応援し続ける!一緒に頑張ろうでは無いか!
3位.糞ダサい音楽で金持ち
これが最下位にきてくれて、逆説的にまだ心ある、そして耳の良い人が残っていると感じる。
反面、アンケートには用意しなかったが、本心を言えば「糞カッコ良い音楽で金持ち」になれるような社会が来る事を心から祈っている。
まとめ
総合的に俯瞰視すると、「音楽ビジネスに関わらない方が良い」が正解なのかもしれない。
音楽は趣味にとどめておいた方がいい。それが1番健全である。
なにしろ、この数十年間がまさに幻だったのだ、音楽は専門業者がレコード版としてレコード屋さんに物流させ、それを再生させるオーディオ製品がどこの家庭にもある状況が音楽をビジネスに変えた。
そしてそのバブルは音楽のデータ化によるコピー可とインターネットにより崩壊した。
もともと音楽はパトロンがいて、その人のためだけに作られていたものだ。
それも選ばれた一部の人間が誰かのためだけに作っていたのだ。
それを考えると、ここ数十年あまり続いたミュージックビジネスそのものが奇跡だったのかもしれない。
音楽を作る事は自由だ。だから、商売にしてはいけないのかもしれない。
お金と音楽を結びつけたら、、、自由を奪われかねないからだ。