ポルノ、いきもの、ももクロら総勢40名を超すアーティストたちが祝福した『本間祭』
『本間祭』2015年11月27日(金)渋谷・NHKホール
11月27日(金)、渋谷・NHKホールで音楽プロデューサー・本間昭光の生誕50周年記念イベント『本間祭2015〜これがホンマに本間の音楽祭』が開催され、彼と縁の深いアーティストが総勢27名もお祝いに駆けつけ、『本間祭』ならではの豪華セッションが実現した。
『本間祭』2015年11月27日(金)渋谷・NHKホール
オープニングアクトの一番手は、本間プロデュースによる最新シングル「大丈夫」がヒットしたばかりの5人組ポップバンドのwacci。開場直後という難しい時間帯ではあったが、「勇気を持って全力で挨拶させていただきます。こんばんわっち!」(橋口洋平/Vo&G)と呼びかけ、優しい歌声と演奏で会場を温かい空気で包み込んだ。続いて、本間が審査員を務めているオーディション番組『Sing! Sing! Sing!』の優勝者や現在、予選を勝ち残っているシンガー4名が初々しくも伸びやかな歌声を響かせ、また、グループ全盛のアイドルシーンでソロとして奮闘する武藤彩未は本間作曲のバラード「永遠と瞬間」をピアノと歌のみのアコースティックアレンジで切々と歌い上げた。
本編のトップバッターを務めたのは、この日の主役である本間昭光とお祭りバンド。「北海道の雄大な風景を見て描いた」というドラマ『ミエルヒ』のテーマで観衆の心をゆったりと和ませた後、「大阪から東京に出てきて30年近く。家族や友人、素晴らしいスタッフ、才能あるアーティストと出会い、出会いに恵まれてここまできました。生誕50歳周記念祭というよりは、これまでお世話に成ったオーディエンス、アーティストの方々への感謝祭の気持ちがあります。自分たちもリラックして演奏しますので、皆さんもくつろいで最後までゆったりと楽しんでいってください」と挨拶。ここで前述のドラマを手がけた『水曜どうでしょう』のディレクターとカメラマンからのお祝いコメントが流れ、大泉洋がプロデュースと脚本を手がけたTEAM NACKSの舞台『下新井兄弟のスプリング、ハズ、カム。』のテーマを朗らからに陽気に演奏。「本間さんは無茶振りにも応えてくれる。仕事が早いのが魅力じゃない?」と語った大泉洋を始め、TEAM NACKSからのお祝いコメントには会場から笑い声が起きていた。
『本間祭』2015年11月27日(金)渋谷・NHKホール
ドラマ、舞台の劇伴に続いて、「来年はミュージカルに挑戦することになりました」と、さらに活動のフィールドを広げていくことを報告し、来年1月に公開されるミュージカル『花より男子』のヒロイン、つくし役の加藤梨里香を呼び込み、花沢類への憧れを断ち切るバラッドを切なく歌い、道明寺役の松下優也などのキャストも加わり、恋するワクワク感が詰まったラブソングをパフォーマンス。舞台を一気に華やかなミュージカルのステージへと変貌させた。
『本間祭』2015年11月27日(金)渋谷・NHKホール
「90年代初頭の彼との出会いは僕の人生を一変させるものでした」という紹介でスクリーンに登場したのは、デビュー時からの7年間のツアーを共にまわってきた槇原敬之。続いて、「2曲目が1曲目のアンサーソングになっている、対になる2曲」だという「ANSWER」と「EACH OTHER」では、大阪府八尾市生まれの本間と同郷のシンガーである広沢タダシを迎えた。彼の美しく澄んだ歌声によって、聴き手はやるせなくも温かい歌詞の世界観へと引き込まれていった。さらに、数え切れないくらい一緒に楽曲を制作してきたという広瀬香美から「すごいですね。大スターですね。嬉しい限りです」というVTRコメントが届き、「彼女の歌は彼女しか歌えない」(本間)ということで、20年前に内田有紀に楽曲提供したヒット曲「幸せになりたい」を武藤彩未のヴォーカルでパフィーマンス。堂々たる歌いっぷりで、彼女の歌のうまさに圧倒された人も多かったのではないかと思う。
『本間祭』2015年11月27日(金)渋谷・NHKホール
ここで、ももいろクローバーZからのお祝いコメントが到着と思いきや、VTRの途中で、高城れにと佐々木彩夏がサプライズゲストとしてステージに登場。さらに、2013年の冬に開催された『ももクリ』の音楽監督とバンマスを務めていた本間の師匠である武部聡志も加わった。次の曲も武藤が歌うと知らされていた本間はぽかんとしていたが、会場は割れんばかりの大きな拍手が巻き起こった。前日に『紅白歌合戦』の出場歌手が発表されたばかりということもあり、高城は「NHKホールでももクロが見れるのは貴重ですよ〜」とジョークを飛ばし、観客の笑いを誘った。「れにちゃーん」「あーりん」の声が飛び交う中、広瀬香美が作詞作曲、本間が編曲を手がけた「泣いちゃいそう冬」をアグレッシブに全力で披露し、ももクロの二人はおなじみのポーズを決めて、颯爽とステージを後にした。
「ハイカロリーな瞬間でしたね。場の空気が壊れたな」と苦笑した本間が次に呼び込んだのは、「筒井康隆×松本隆の楽曲をアレンジさせてもらった、自分の人生で記念すべき日を作ってくれた」という、藤井隆。VTRに続いてステージに登場した藤井は、マイナー調の歌謡ラテンナンバー「絶望グッドバイ」で見事な決めポーズと軽やかなステップを見せ、大歓声を浴びた。
『本間祭』2015年11月27日(金)渋谷・NHKホール
さらにこの日、一番と言っていいほどの黄色い歓声を浴びたのは、ポルノグラフィティの新藤晴一といきものがかりの水野良樹。本間が「この曲には1ミリも関わってないんですが(笑)、晴一くんの提案がありまして」と語った「ナンダカンダ」では、ダブルギタリストのセッションが実現。異なるバンドのギタリストの並びは豪華の一言。藤井のダンスも含め、観客はこの日、初めて総立ちになって盛り上がった。さらに、六道りんねの声を担当する石川界人のお祝いコメントに続いて、アニメ『境界のRINNE』のバトルテーマでは、文字通りのギターバトルを展開。歌詞のない声を武藤が担当したこともあり、水野〜武藤〜新藤という並びに対し、水野が「立ち位置的に〇〇がかり?」と笑わせるひと幕もあった。
『本間祭』2015年11月27日(金)渋谷・NHKホール
祭りもいよいよ終盤戦へと突入。いきものがかりの「ありがとう」では、同じくいきものがかりのプロデュースも務める島田昌典がシークレットゲストとして登場し、オルガンを弾きまくり、吉岡、水野、山下の歌声が重なる瞬間に鳥肌が立つ。「YELL」では、大師匠で、本間が音楽の道に進むきっかけを作った音楽学校の校長でもある松任谷正隆をピアノに迎え、「この方がいなかったら、今の僕はいませんでした」と感謝の気持ちを伝えた。
『本間祭』2015年11月27日(金)渋谷・NHKホール
この日のトリを務めたのは、’99年のメジャーデビューから約10年間、ほとんどすべての楽曲の編曲を務め、ライブにもサポートキーボーディストとして参加していたポルノグラフィティ。本間が「ライブであまりやらない曲をやろうと思います」と語ると会場からは喜びの声があがった。アコーディオンをフィーチャーしたオリエンタルな「シスター」、ファクショナブルなストーリーが語られる「カルマの坂」を経て、最後のシークレットゲストである亀田誠治がベースを持って登壇。岡野が「オリジナルのレコーディングメンバーである亀田さんと、ドラムの村石さんと一緒にやるのは初めて」だという「ハネウマライダー」ではNHKホールがタオル回しの嵐となるほどの大きな盛り上がりを見せた。
『本間祭』2015年11月27日(金)渋谷・NHKホール
最後に、本間が28年前に通っていた学校の跡地を訪ねる映像が流れ、松任谷は「出世したやつと同じステージに立つのは幸せですよ」とコメント。本間は「50歳になって、改めて、音楽って楽しいんだなと感じています」と語り、自身の原点であり、多大な影響を受けたという松任谷由実の「夕涼み」を松任谷、武部を加えた4キーボディストに、広沢&藤井のダブルヴォーカルでしっとりと、艶やかに演奏。オールキャストによる「リフレインが叫んでる」ではドラマチックなパフォーマンスを見せ、約4時間30分に渡る長いようであっという間の祭りの幕は閉じた。その瞬間、ステージ上には、総勢40名以上のアーティストが並んでいたが、その中に、松任谷正隆、武部聡志、本間昭光という直系に加え、aikoや秦基博への楽曲提供やアレンジで知られる島田昌典、椎名林檎や平井堅、大原櫻子を手掛ける亀田誠治、さらにお祭りバンドのベーシストとして、CoccoやAnlyを手掛ける根岸孝旨もいた。アーティストの豪華さはもちろんのこと、時代に流されることのない、エバーグリーンなポップソングを生み出してきた名プロデューサーが揃っていた光景は壮観であったし、なおかつ、プレイヤーとしても現役だという熱いプレイを見せてくたことが最も刺激的でもあったことを付け加えておきたい。
文=永堀アツオ
『本間祭』2015年11月27日(金)渋谷・NHKホール