矢崎広、生駒里奈W主演でパワーアップし“帰還”!舞台『モマの火星探検記』ゲネプロレポート
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少年社中・東映プロデュース 舞台『モマの火星探検記』が2020年1月7日(火)、東京・池袋のサンシャイン劇場にて開幕した。宇宙飛行士の毛利衛による同名の児童文学を劇団「少年社中」の主宰である毛利亘宏が脚色・演出を手掛けた壮大なSFファンタジー。初日直前に行われたゲネプロと会見の模様をレポートする。
2012年に初演、2017年8月に再演が行われ、少年社中を代表する作品の一つとして知られる本作。人類初の火星探検に挑戦する宇宙飛行士・モマ(矢崎広)の物語と、同劇団が過去に上演した『ハイレゾ』で描かれたロケット作りをする少女・ユーリ(生駒里奈)のストーリーが融合した内容となっている。
宇宙を連想させる深いブルーの照明に包まれ、空には星の光が瞬く。イギリスにある遺跡・ストーンヘンジを模した巨石のセットが鎮座。ある時は宇宙、ある時は地球の舞台と変化しながら登場人物たちを見守っている神秘的な存在だ。
2人の主人公が織りなす物語を行き来しながらストーリーは進行。モマが乗る宇宙船にはホルスト(鎌苅健太)、ミヨー(松村龍之介)、ヴェラ(内山智絵)、バルトーク(堀池直毅)、ガーシュウィン(山崎大輝)、タケミツ(小須田康人)、アンドロイドコンビのマイクロスコープ(田邉幸太郎)とテレスコープ(鈴木勝吾)といった個性豊かなクルーが乗船している。
旅の最中、それぞれの家族や故郷へ思いを馳せる面々。どんどん遠ざかっていく地球との距離を痛感する姿は、真っ暗で重力も酸素もない宇宙空間での苦しみに似ているのかもしれない。「人間はどこからきたのか、なんのために生きているのか」と考え続けるモマの語り掛けがまっすぐに観客の心へと届けられる。
一方、ある北の国に住むユーリは仲間たちと小型ロケットの開発に熱中する日々を送っていた。何度も失敗を重ねながらチキン(諸星翔希)、オカルト(加藤良子)、ハカセ(赤澤燈)、ホイップ(竹内尚文)たちと絆を深め合う様はまさに青春そのもの。
一度も会ったことのない父が宇宙飛行士だったと知ったユーリの前に、おじさん(井俣太良)なる不思議な人物が現れる。彼に出題された「宇宙の境界線はどこにあると思う?」との問いには、観客もユーリと一緒になって頭を悩ませることになるだろう。
父との約束を果たすため火星を目指すモマと、火星で帰らぬ人となった父を思いロケットづくりに励むユーリ。二人の主人公からは夢に向き合う信念と、周囲に希望をもたらす純粋さが共通して滲み出ていた。前回より続けて主演を務めた矢崎と生駒が牽引し、同作の最高出力がまた一つ更新されたステージとなった。
左から 毛利亘宏、矢崎広、生駒里奈、毛利衛
ゲネプロ終了後には囲み会見が行われ、矢崎、生駒、原作者である毛利衛と脚色・演出を手掛けた毛利亘宏が登壇した。客席から物語を見届けた毛利衛からは「原作に超えたメッセージが期待以上に伝わっていてとても感激した。舞台にしてくれてありがとうございます」と目を輝かせた。
モマ役の矢崎は「毛利衛さんを前にして恐縮ですが……」と前置きしつつ、「宇宙飛行士は計り知れない役であり、さらに演劇で宇宙を目指すという作品。ゲネプロを経て僕たちの宇宙がドーンと広がった手ごたえがあり、ここにお客様のパワーが加わることが楽しみ」と期待を込めた。
ユーリ役の生駒は「再演ということで、今回は作品を知った上で挑むことの難しさや、先輩方のすごさを実感しながらやってきた」と稽古の日々を回想。自身も作品から多くの勇気をもらったとし「夢を追いかけるのは本当に素晴らしいことなんだよ、ということを私たちを見て感じてもらえたら」と話した。
毛利亘宏も「(再再演までの)2年半という月日の間、それぞれに変化があった。新たに加わった仲間も集まって新しい『モマの火星探検記』を作り上げた自負がある。前回ご覧になった方も全く違う印象を受けるのではないかと自信を持ってお送りできる作品」と自信を滲ませた。
コメントの全文は以下のとおり。舞台『モマの火星探検記』は、2020年1月20日(月)まで東京・サンシャイン劇場にて、その後、岡崎・大阪・福岡にて公演を行う。
囲み会見 コメント
【原作者 毛利衛】
私が原作に込めた想いやメッセージが、この舞台で期待以上に伝わっていると感じました。私自身も観て感激しました。舞台にしてくれてありがとうございます! 演じてくださったおふたりも凄いなと感じました。本当に感謝です。
この作品を通じて、あらためて伝えたいメッセージとしては、地球を大切にする心でしょうか。私たち自分や家族、そして社会、大きく言うと人類は、最終的には「地球」というところでしか生きられません。「SDGs(Sustainable Development Goals:エスディージーズ)」という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、これは「持続可能な社会」を目指して、それを世界レベルで実現するために国連で合意された世界共通の目標のことです。ぜひ世界を挙げてそこへ向かっていって欲しい。この作品を世界中の人に見てもらえたらいいなと感じています。
【モマ役 矢崎広】
再演のお話をいただいてから、発表、稽古期間を経て、ついにこの日を迎えることができたのだなという心境です。この作品は、本当にチームでひとつになってお客様に向かっていかないと、このメッセージは届かないのではないかというくらい壮大な物語だと思っています。劇場へ来てからもまた一つ一つ作品がパワーアップしているのを実感しているので、最後までチーム全力でもがいて頑張っていきたいと思います。ここにお客様のパワーが加わる初日が楽しみでワクワクしています!
僕が演じるモマは宇宙に憧れ、火星を目指す宇宙飛行士の役です。毛利衛さんを前にして恐縮ですが、本当に計り知れない宇宙飛行士という役で、さらに演劇で宇宙を目指すということをやっている作品なのですが、ゲネプロで僕たちの宇宙がどーんと広がったという手応えがありました。僕がプロポーズに失敗するシーンは、前回の時から不安を覚えつつも、当時のゲネプロで笑いが起こったことが自信になっていました。先ほどのゲネプロでも笑い声が聞こえたので安心しています(笑)。
本当にたくさんのメッセージが詰まった作品ですので、ぜひいろんな方に見ていただきたいです。今回は4都市回るので、最後まで全力で頑張っていきたいと思います。
【ユーリ役 生駒里奈】
ついに初日を迎えます。ゲネプロ中には、顔合わせの日のことや、再演ということで作品を知っているからこそ難しかった稽古を思い出しました。ただ、すごく楽しい日々でした! 前回の時はあまり色々なことを知っていなかったので、今回知った上で挑むことの難しさや、先輩方のすごさを実感しながらやってきました。……でも、ロケットを飛ばせたので! お客様にもそういったことを毎公演しっかり見せていきたいと思います。
私が演じるユーリは、秘密基地で見つけたロケットの本を見て、友達と一緒にロケット作りを始めるという、憧れに突き動かされる女の子です。前回は21歳の時に演じていて、24歳になった今とそんなに変わらないと思っていたのですが、演じていてめちゃくちゃ難しくて! 21歳の私は本当に赤ちゃんだったのだなと思いました。……今もそうかもしれないですけど(笑)。どうやって演じるのかという悩みは、やっと通ったかなーと個人的には思っています。
宇宙飛行士たちが火星に行くところだったり、子どもたちが憧れで動いているところも見ていただきたいです。夢を追いかけるのは本当に素晴らしいことなんだよ、ということを私たちを見て感じてもらえたらと思っています。
【脚色・演出 毛利亘宏】
約2年半前にW主演のおふたりと、この形でやらせていただきました。2年半という月日の間に、それぞれにとっていろいろな変化がありましたので、切磋琢磨してきた仲間たちと新たに加わった仲間が集まって新しい「モマの火星探検記」を作り上げた、という自負がございます。前作をご覧になった方も全く違う印象を受けるのではないかと思いますし、自信を持ってお送りできる作品になっておりますので、ぜひともご期待ください。
宇宙を描いた作品なのですが、壮大なものを描こうとすると、どんどん小さな愛に行き着きます。「愛」というと気恥ずかしい言葉ですが、愛がいっぱい詰まった作品になっていると思います。今回の再再演では特に、家族や身近な人を大事にしたくなるようなメッセージが強く伝わるのではないかと思っています。宇宙から個人的な愛、マクロからミクロ、みたいなつながりがあるのではないかと思います。
取材・文・撮影=潮田茗