【THE MUSICAL LOVERS】Season3『ミス・サイゴン』 ~序章:ミュージカル界の定説に物申す?編~

コラム
舞台
2020.3.6

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【THE MUSICAL LOVERS】Season3『ミス・サイゴン』 
~序章:ミュージカル界の定説に物申す?編~


お久しぶりです。【THE MUSICAL LOVERS】には2017年の『レ・ミゼラブル』以来の登板となります、『レミゼ』オタクの町田です。『レミゼ』オタクのくせしてなぜまたのこのこ出てきたのかといいますと、ひとつにはもちろん、だって『ミス・サイゴン』も大好きだから。でももうひとつ理由があって、それは『レミゼ』に比べて『サイゴン』、観客のリピート率低くね?と思うからだったりします。観劇回数もオタク度も『レミゼ』に比べたら全然なワタクシですが、『サイゴン』こそリピートすべき作品ですよ!と言いたくて、言われなくてもお分かりの向きも多いこととは思いつつ、図々しくもまた出てきてしまいました。4年ぶりとなる日本公演が幕を開ける5月まで、しばしお付き合いいただければ幸いです。

上演機会とリピート率のニワタマ関係

上演機会が少ないからリピート率が低いのか、リピート率が低いから上演機会が少ないのか。ニワタマ問題に答えはないが、筆者が『レミゼ』ほどの観劇回数を『サイゴン』で重ねられていないのは、間違いなく上演機会の少なさが原因だ。いや、少ないと言っても『レミゼ』に比べたらの話で、『サイゴン』とて泣く子も黙る世界的メガヒットミュージカルではあるのだが、例えば両作の誕生の地ロンドンでは、『レミゼ』が1985年から今までロングランしているのに対し、『サイゴン』は初演が1989~99年で、リバイバルが2014~16年。

またブロードウェイでは、『レミゼ』が1987~2003年、2006~08年、2014~16年と折に触れて上演されているのに対し、『サイゴン』は1991~2001年の初演と2017~18年のリバイバルのみ。日本にいたっては、1987年から2~3年おきに再演されている『レミゼ』に対し、『サイゴン』は1992~93年の伝説的初演から最初の再演まで、じつに11年ものブランクがあった。2004年からは頻繁に上演されるようになったが、それでも今回のように4年空くことも珍しくない。1992年の日本版で初めて出会ってから今まで、機会さえあればどこにでも飛んで行って観るようにしている筆者だが、それでも限界があるというわけだ。

『レミゼ』に比べて品薄ですが…とりあえず左から:ロンドン初演版チラシ、ロンドン・リバイバル版パンフ、2010年韓国版パンフ

『レミゼ』に比べて品薄ですが…とりあえず左から:ロンドン初演版チラシ、ロンドン・リバイバル版パンフ、2010年韓国版パンフ

さて、ここでニワタマ問題に戻る。やはり同じ作詞作曲家コンビ(アラン・ブーブリル&クロード=ミッシェル・シェーンベルク)とプロデューサー(キャメロン・マッキントッシュ)が手がけているだけあって、『サイゴン』のミュージカルとしての完成度は『レミゼ』に勝るとも劣らないし、観たあとの衝撃や感動、泣き過ぎて動けない度は時に、むしろ『サイゴン』が上回る。にもかかわらず上演機会が少ないのは、ストーリーがあまりに重く、すぐにもう一度観る気にはなれないから――。世界のミュージカル界にはびこ(っているように筆者には見え)る、そんな“定説”に物申すべく、まずはストーリーが本当に重いのかを検証してみよう。ネタバレ有のため、結末を知りたくない方は次の画像まですっ飛ばしていただきたい。

本当に重いストーリー紹介

【第一幕】
ベトナム戦争末期のサイゴン。戦災孤児となった17歳のキムは、故郷の村から出てきたところを、ナイトクラブを営むエンジニアに拾われる。戸惑いながらも店に出たキムが出会ったのは、虚しさを抱えながら生きる米兵のクリス。一夜を共にした二人は恋に落ち、結婚の約束をする。3年後――。戦争が終わり、ホーチミンと名を変えたサイゴンで、キムはクリスとの子タムを育てながら彼の帰りを待っていた。そんなキムのもとに、今は人民委員長となっているかつての許婚、トゥイが現れて結婚を迫る。タムを守るため、極限状態の中でトゥイを殺してしまうキム。追われる身となった母子は、エンジニアと共に国境を越える。

【第二幕】
アメリカでエレンと結婚していたクリスは、キムが自分の息子ともどもバンコクにいると戦友ジョンから聞かされ、会いに行くことを決める。共にバンコクに向かった3人だが、ひと足先にキムと再会したジョンは、彼女にエレンの存在を告げることができない。クリスが迎えに来たと思い込み、クリスと引き裂かれた3年前のことを思い出すキム。はやる気持ちを抑えきれなくなり、クリスの宿泊先に向かった彼女は、無情にも先にエレンと会ってしまう。キムが去ったホテルで話し合い、母子への援助が最善策と考えた夫妻はキムのもとへ。だがキムは、タムを夫妻に託すため、彼らの到着を待たずに自ら死を選ぶのだった。


キャスト一同が「彼ら夢見た明日がくるよ。明日は~!」と盛大に希望を歌い上げて幕を下ろす『レミゼ』と違って、虫の息のキムがクリスの腕の中で「ひと夜で遠くなる…」という一言を残して死ぬ『サイゴン』のラストは、それはもう悲しくて重くてやりきれない。クリスとエレン、そしてタムがこの後どうなるのか、考え始めたら眠れない。サイゴンでもバンコクでもずっとアメリカ行きを夢見ていたエンジニアが、結局アメリカには行けないのかもしれないと思うと何の希望もない。すべては戦争のせいで、その戦争は今もある――。

ブロードウェイ初演版のパンフ及び3回分(変わり映えしないが一応1992年、93年、98年)のプレイビル、ブロードウェイ・リバイバル版のプレイビル

ブロードウェイ初演版のパンフ及び3回分(変わり映えしないが一応1992年、93年、98年)のプレイビル、ブロードウェイ・リバイバル版のプレイビル

というわけで、検証結果:本当に重い! だがそれでも、観る価値もリピートする価値も絶対的にあるのが『サイゴン』だ。この連載は、言ってみればその価値をあの手この手で、例によって独断と偏見によって熱弁しようというもの。重いのはちょっと…と思っている『サイゴン』未経験のハッピーミュージカル好きにも、1回観たけど2回目はいいや…と思っている『サイゴン』経験者にもアピールするよう語る、というのがSeason3の目標である。

(つづく)

公演情報

ミュージカル『ミス・サイゴン』
 

<東京公演>
■日程:2020年5月19日(火)プレビュー初日~6月28日(日)千穐楽
■場所:帝国劇場
■料金:S席14,000円/A席9,500円/B席5,000円
プレビュー公演 S席12,000円/A席8,500円/B席4,000円
■プレイガイド一般発売:※発売日は公演月によって異なります
<5月分>2020年3月7日(土)~
<6月分>2020年3月21日(土)~
※イープラス貸切公演 https://eplus.jp/sf/detail/0219520006 =完売
5月28日(木)18:15、5月30日(土)17:00、6月3日(水)18:15、6月14日(日)12:00、6月18日(木)18:15

 
■オリジナル・プロダクション製作:キャメロン・マッキントッシュ
■作:アラン・ブーブリル、クロード=ミッシェル・シェーンベルク
■出演:
エンジニア:市村正親、駒田一、伊礼彼方、東山義久
キム:高畑充希、昆夏美、大原櫻子、屋比久知奈
クリス:小野田龍之介、海宝直人、チョ・サンウン
ジョン:上原理生、上野哲也
エレン:知念里奈、仙名彩世、松原凜子
トゥイ:神田恭兵、西川大貴
ジジ:青山郁代、則松亜海
ほか
※いずれも交互出演

■公式サイト:https://www.tohostage.com/miss_saigon/

◎全国公演

<北海道公演>
■日程:2020年7月3日(金)~6日(月)
■会場:札幌文化芸術劇場 hitaru
■問い合わせ:道新プレイガイド(10:00~18:00 日曜定休) 0570-00-3871
■一般発売:2020年3月7日(土)~

 
<長野公演>
■日程:2020年7月10日(金)~12日(日)
■会場:まつもと市民芸術館
■問い合わせ:NBS長野放送事業部(平日10:00~17:00)026-227-3000
■一般発売:2020年3月7日(土)~

 
<大阪公演>
■日程:2020年7月16日(木)~19日(日)
■会場:梅田芸術劇場メインホール
■問い合わせ:梅田芸術劇場(10:00~18:00)06-6377-3800
■一般発売:2020年4月4日(土)10:00~
※e+プレイガイド最速2次先行 2020/2/28(金)12:00~2020/3/8(日)23:59

 
<静岡公演>
■日程:2020年7月25日(土)~27日(月)
■会場:アクトシティ浜松 大ホール
■問い合わせ:テレビ静岡事業部(平日9:30~17:30)054-261-7011
■一般発売:2020年3月28日(土)10:00~

 
<富山公演>
■日程:2020年7月31日(金)~8月2日(日)
■会場:オーバード・ホール
■問い合わせ:北日本新聞社 企画事業部(平日9:00~17:00)076-445-3367
■一般発売:2020年3月14日(土)~

 
<愛知公演>
■日程:2020年8月13日(木)~16日(日)
■会場:愛知県芸術劇場 大ホール
■問い合わせ:キョードー東海 052-972-7466
■一般発売:2020年4月4日(土)~

 
<福岡公演>
■日程:2020年8月20日(木)~30日(日)
■会場:博多座
■問い合わせ:博多座電話予約センター 092-263-5555
■一般発売:2020年6月20日(土)~

 
<埼玉公演>
■日程:2020年9月4日(金)~6日(日)
■会場:ウェスタ川越 大ホール
■問い合わせ:ウェスタ川越 049-249-3777(9:00~19:00 点検日等の休館日を除く)
■一般発売:2020年6月9日(火)~
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