熱海五郎一座が世界を救う?! 紅ゆずる&横山由依ゲスト出演の舞台『Jazzyなさくらは裏切りのハーモニー~日米爆笑保障条約~』製作発表会レポート
(後列左から)深沢邦之、春風亭昇太、ラサール石井、小倉久寛、東貴博(前列左から)渡辺正行、横山由依、紅ゆずる、三宅裕司
2020年6月2日(火)から30日(火)にかけて新橋演舞場で、熱海五郎一座の舞台『Jazzyなさくらは裏切りのハーモニー~日米爆笑保障条約~』が上演される。
一座を率いるのは、構成・演出・出演の三宅裕司。キャストには、渡辺正行、ラサール石井、小倉久寛、春風亭昇太、東貴博、深沢邦之、そして宝塚歌劇団の元星組トップスター紅ゆずると、AKB48の横山由依がゲスト出演する。3月17日、都内で制作発表記者会見が行われ、出演者たちが意気込みを語った。
熱海五郎一座とは、伊東四朗一座をベースに発足し、現在は三宅裕司が座長を引き受け、熱海五郎一座(名前の由来は、「伊東」駅の次が熱海、「四朗」の次が五郎で、熱海五郎)の名前で上演を重ねている。新橋演舞場での公演は7弾目となる。
太平洋戦争も終盤のサンフランシスコ。魅惑の女性DJ“ニューヨークの桜”と共に対日謀略放送に加担している日系アメリカ人ジャズバンド「ツインズ」のメンバーは、アメリカ敗戦!?の大統領声明を聞く。同じ頃、空港に降り立った日独同盟軍西米国支部作戦本部長である女性海軍中佐は、アメリカ日本化計画を発令する!その結果、バンドは、嫌いな演歌や歌謡曲を演奏しなければならなくなる。強面な割には、キュートさも垣間見られる海軍中佐には、さらに別の顔もあったー。
小学生からお年寄りまで一緒に笑える芝居を
万全のウイルス対策のもとで開催される会見とあり、開始前は多少の緊張感があった。しかし熱海五郎一座のテーマソングとともにお馴染みのメンバー、そして華やかなゲスト2名が登壇すると、会場の空気は一気に賑やかに。
座長の三宅裕司は、次のように挨拶をした。
「爆笑の連続でイヤなことを全部忘れ、『よしまた明日から頑張るぞ』と思える楽しい笑い。お年寄りと小学生が一緒に笑える分かりやすいギャグを、最初から最後まで羅列して、最後は感動にもっていく。そんなお芝居を目指しています。笑いは免疫力をあげます。熱海五郎一座をご覧いただき、皆さんに免疫力をあげていただくと、非常に良い状況になっていくと思います。熱海五郎一座が日本を救うという形で!」
三宅裕司
さらに三宅は、紅と横山についてもコメントした。
「宝塚の方の出演は過去にもありましたが、トップスターの方の、退団後初舞台というのは、紅さんが初めてでです。AKB48の方も初めてです。ふたりとも舞台では、ストーリー、感動、ギャグのすべてを背負います。豪華なセットにせこいギャグという我々のポリシーの中で、『宝塚 対 AKB』という化学反応が起きるのを楽しみにしています!」
熱海五郎一座、お馴染みのメンバー総出演!
「リーダー」こと渡辺正行は、陸軍元帥役で出演する。
例年、記者発表の時点では台本ができておらず、「ストーリーがわからない状態でしたが、今年は1週間ほど前に台本が届きました。三宅さんに怒られるといけないのでしっかり読んでまいりました」と胸を張る。そんな渡辺に対して、三宅は眉をひそめ「読むのはいいけれど、リーダーは犯人を先に言っちゃうことがあるからね。やめてよ?」とネタバレを危惧し、笑いを誘う。
稽古場で三宅にいつも怒られていること、愛娘が成人したこと、とある剣道の東京大会シニアの部で優勝したことなどを語るも、途中でタイムアップ。一座のブーイングと記者たちの笑いの中、「私からは以上です」と挨拶を終了した。
渡辺正行
ラサール石井は、バンドメンバーの役。新型コロナウイルスの影響を受けているエンタメ界について「小劇団の人たちも結構泣いています」と言及。そんな中、こまつ座の舞台『きらめく星座』(作・井上ひさし)を観劇したことを語る。
「戦時中に、厳しい統制の中でレコード屋さんを営む家族が毎日ジャズを歌い明るく暮らしているというお話でした。歌が生きる力をつけてくれるというテーマ。今回の熱海五郎一座とも、リンクするところのあるお話です。演劇の火を消すな、と井上先生から背中を押されてるような気持ちになりました。はやい収束を願いつつ、万全の体制でできるだけ演劇をつづけていければと思います」。
ラサール石井
小倉久寛は、ジャズバンドのリーダー役。
「バンマスの役です。人をひっぱっていく立場の役は珍しいです。私生活でも、人に命令したり、断定するような話し方はしません。仕事ではマネージャーの、家では妻のいうことを、ハイハイ、ハイハイ、と聞いて過ごしています。バンマスとして言い切る台詞をちゃんと言えるかどうか。そこが難しいところだと思います。ネガティブになってしまいましたが、これをもって挨拶とかえさせていただきます」。
小倉のネガティブ発言に、東は「全然挨拶になってない!」とツッコミをいれ、昇太は終始爆笑していた。
小倉久寛
司会者より「公益社団法人落語芸術協会理事長」と紹介され、満面の笑みで立ち上がったのは春風亭昇太。
「ただいまご紹介にあずかりました、公益社団法人 落語芸術協会理事長の春風亭昇太です。ここに来る前も公益社団法人 落語芸術協会理事長として理事会に…」「公益社団法人 落語芸術協会理事長として…」と肩書きをくり返し、一座からのブーイングを浴びていた。
「落語は一人でやる芸なので、皆とできるのが楽しくてしょうがないです。公演期間中はラサールさんと、ちょっとした手料理を用意し、簡単な楽屋飲みをします。紅さんと横山さんも、ぜひ飲みにきてください!」
昇太の挨拶に、三宅から「舞台のことを話してよ!」と指導が入っていた。劇中ではバンドメンバー役をつとめる。
春風亭昇太
毎年この製作発表では、幸せ自慢を披露してきた東貴博。
千葉県木更津に別荘を建てるも、直後に台風で外壁を飛ばされたことを報告。さらに妻の安めぐみと「いい夫婦 パートナー・オブ・ザ・イヤー2019」を受賞するも、翌日に著名人が薬物で逮捕され、受賞のニュースが飛んでしまったことを報告し、「色々なことが吹き飛びまして…」と笑いを誘った。
劇中では、ラジオ局のオーナーという役どころ。
「役名がカケノというのですが、この名前、実は大変凝っていて…。おもしろいんですよ! 紅さんの役名も面白いんですよね?(紅、激しくうなづく)めちゃくちゃ笑いました。見どころもたくさんあります。後半は台詞も多く、プレッシャーもありますが一生懸命やります!」
東 貴博
「剣道のことで頭がいっぱい」と紹介されたのは、深沢邦之。東と交互出演でラジオ局オーナーのカケノを演じる。ふたりは同じ役どころながら、メインビジュアルでは異なる雰囲気。
「舞台では、緊張と緩和を大事にします。お金をかけた見事なセットでこんなギャグを?というところを面白くみせるためにも、やはり緊張の部分を一生懸命やっていきます」「バンドが登場する舞台ですが、私は本番に楽器を演奏することはありません。ですので稽古につけ舞台上につけ、口三味線でがんばりたいと思います。今年もよろしくお願いします!」
深沢邦之
現実忘れ、笑っていただける作品に
凛とした佇まいでスッと立ち上がり、落ち着いたトーンで挨拶をはじめたのは紅ゆずる。
「宝塚を退団し約4カ月がたちました。初めて公の場で、スカートをはいております。大変スースーしており、全然慣れないのですが」と、ロングドレスの裾周りを気にし、壇上の一同も記者たちも大爆笑。
紅は宝塚時代からコメディ芝居が好きで、「熱海五郎一座さんの出演のお話をいただいた時は、こんな夢のような話があっていいのかと。恐縮しております」とコメントした。
「コメディは、笑いの間、台詞の言い方ひとつで変わってしまう繊細なものだと思っております。そして、最後に残るのは悲劇ではなく喜劇だと思っております。このような時期ではありますが、皆さまに少しでも現実を忘れ笑っていただけるような作品になるよう、笑いのプロフェッショナルの方々とともに、笑いに対してどん欲にがんばります」
紅ゆずる
もう1人のゲスト出演は、2015年12月から約3年間、AKB48グループ総監督をつとめた横山由依。
「お稽古も本番もとても楽しみです。三宅座長をはじめ、子どもの頃からテレビで見ていた大先輩方とご一緒させていただけるので、夢のようなことだと思いうれしかったです。劇中ではドラムをやらせていただきます。小学2年生から6年生頃まで音楽教室でドラムを習っていました。それが12年越しにお披露目できるということで、夢のようです」
ビジュアル撮影は個別で撮影したということもあり、「今日、みなさんと初めてお会いできてうれしいです」と笑顔を見せた。
すると隣の席の渡辺が「撮影の時、ちょっとすれ違ってご挨拶しましたよ。だから、はじめましてじゃない」と割って入る。石井が「まるで親戚のおじさんだな」と渋い顔をみせ、東は「リーダー、なんで急にヒゲはやしてるんですか?」と指摘。渡辺は「ダンディかなと思って…」と口ごもり、一同を笑わせた。
横山由依(AKB48)
Jazzyなさくら?裏切りのハーモニー?
本作は、太平洋戦争後、アメリカが敗戦し日本が勝ったという架空の設定の物語。一部のキャストは日系アメリカ人ジャズバンドが演じる上で、楽器の生演奏をする。三宅はウッドベース、石井はジャズギター、小倉はテナーサックス、昇太はトロンボーン、そして横山はドラムの予定。
ゲスト出演の2名は、本作における挑戦を聞かれ、紅は「女性役を演じること」と回答。
「女性を演じたことがありません。軍服を着ているのをみて、男役を期待される方がいるかもしれませんが女性です。見かけは男役っぽいですが、中身は女性。それだけに自分の中で女性をきちんと作っておかないと、『いままでと変わらないじゃん』と言われてしまうので。今回は!完全に女性です!」
横山は少し考えたのち、「シリアスやヤンキーの役はやらせていただきましたが、笑いが要所要所にある役はほぼ初めてです。笑わずに演じられるか心配なところもありますが、たくさん稽古をして、新しい自分をお見せできればとおもいます。お芝居だけでなく楽器も。そういう毎日をお見せできるのは初めてです」と答えていた。
最後は三宅が「爆笑の連続で最後はちょっと感動できるお芝居です。前知識いりません。劇場に来ていただければ、笑ってすっきりして帰れるものを目指してます。宝塚対AKB、今から稽古が楽しみです!」と意気込みを語り、紅と横山が「ないない」と首を横にふり笑い、和気あいあいとした空気の中、会見は締めくくられた。
熱海五郎一座による舞台『Jazzyなさくらは裏切りのハーモニー~日米爆笑保障条約~』は、2020年6月2日(火)から30日(火)にかけての上演。喜劇の大ベテランたちに囲まれ、紅、横山がどんな活躍をみせてくれるのか。新橋演舞場での開幕に期待が高まる。
東京喜劇『Jazzyなさくらは裏切りのハーモニー~日米爆笑保障条約~』メインビジュアル
取材・文・撮影=塚田史香
公演情報
東京喜劇『Jazzyなさくらは裏切りのハーモニー~日米爆笑保障条約~』
■日程::2020年6月2日(火)~ 30日(火)
■会場:新橋演舞場
■出演・構成・演出:三宅裕司