2020年9月開幕の​ミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』、4人のビリー役にインタビュー

インタビュー
舞台
2020.7.26
(左から)川口 調 利田太一 中村海琉 渡部出日寿   (撮影:山本れお)

(左から)川口 調 利田太一 中村海琉 渡部出日寿  (撮影:山本れお)

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SPICEでは、ミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』で主役を演じる川口調くん、利田太一くん、中村海琉くん、渡部出日寿くんのインタビューを、政府の緊急事態宣言発令に先立つ2020年3月におこなっていた。しかし、取材後ほどなくして上演の見通しが不明となったために、インタビュー記事の公開も見合わせることに。やがて緊急事態宣言の解除を経て、2020年7月~8月の東京公演は中止となったが、9月11日から幕を開けることが決定されたことを受け、このほどSPICEでも、当該記事を公開する。前述の理由により、この中で語られている内容が3月時点のものであることを留意のうえ、読み進めていただきたい。(SPICE編集部)



ミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』が2020年、新たなキャストを迎えて東京・大阪で再演される。

本作品は『リトル・ダンサー』の邦題で上映された映画(原題『Billy Elliot』)をミュージカル化した舞台。2005年5月にロンドンで開幕し、翌年ローレンス・オリヴィエ賞で4部門を受賞。08年にはブロードウェイに進出し、翌年のトニー賞で最優秀ミュージカル脚本賞・最優秀ミュージカル演出賞など10部門を制覇。日本では2017年夏に初演がおこなわれ、東京と大阪で17万人を動員し、読売演劇賞審査員特別賞、菊田一夫演劇大賞を受賞した。今回は3年ぶりの再演となる。

物語の舞台は、1980年代のイギリス北部の炭鉱町。サッチャー政権下で進められた炭鉱閉鎖計画に対して史上空前の大規模ストライキが起こる中、主人公の少年・ビリーがバレエに魅せられ、英国ロイヤルバレエ団のダンサーになる夢に向かっていく様子を描いている。

タイトルロールのビリー役には、バレエ、タップ、アクロバット、歌、演技などさまざまな表現が求められる。2020年の再演にあたり、応募総数1511名の中から、約1年間にわたる厳しいオーディションを通じて、新たなビリー役に見事選ばれたのは、川口調(かわぐち しらべ)くん、利田太一(としだ たいち)くん、中村海琉(なかむら かいる)くん、渡部出日寿(わたなべ でにす)くんの4人だった。

SPICEは4人がビリーに選ばれた直後にも各々にインタビューを実施しているが、今回(2020年3月取材)はレッスンの様子やレッスンを通じて見えてきた強化したいポイントなどについて、座談会形式で語ってもらった。


■バレエ・タップ・歌、演技……「すべて」が求められるビリーたち

ーー いまは、どんな稽古をしているのですか。その中で楽しいことは?

川口調 今やっていることは、バレエやタップ、体操のレッスンなどです。『ビリー・エリオット』の作品に関係する運動や基礎レッスンを一つ一つやっています。

利田太一 他のみんなも調くんと同じように、バレエ、タップ、体操、そして歌のレッスンも最近始まって。それぞれ一レッスンあたり1時間くらいかけてやっています。いま一番僕が楽しいのは……。

中村海琉 全部?(笑)

利田 まあ全部なんですけど(笑)、特に好きなのは歌です。

中村 僕が楽しいのは2つあって、一つはダンス。ジャズダンスのレッスンは、毎回違う振りを踊るので、どんな振付になるか分からないけれど、それが楽しみなんです。あとは体操が好き。僕は公園で練習をしてきているので、以前よりはずっとできるようになって、楽しくなりました。

渡部出日寿 僕はなんといってもバレエが一番楽しいです。

ーー 稽古は4人で一緒にやっているのですか?

川口 ついこのあいだまでは、僕だけ大阪で一人でやっていたのですが、最近になって僕が東京に来たので、ようやく4人一緒に合同でやれるようになりました。

川口 調  (撮影:山本れお)

川口 調  (撮影:山本れお)

ーー マイケル役の4人とも一緒ですか?

利田 少し前まではタップで一緒だったんですけど、今は別々にやっています。

ーー ビリー役の4人が集まると、どんな話をするのですか?

渡部 ……4人でまとまって話をするのってあまりなくない?(笑)

中村 ……たまに、会った人同士で話をして爆笑する、みたいな?

ーー 爆笑?

利田・中村・渡部 調が……(笑)。

川口 僕が関西の人間なので、ノリが東京と違い、自分でボケて自分でツッコむんです。でも(東京にいる)周りの人たちとの空気感が違うようで、一瞬周りがシーンとなってから、どっと笑いが起こることが多い(笑)。

渡部 調は盛り上げ役だよね。

中村 さすが最年長!(笑)

川口 最年長というより、関西出身だからだよ(笑)。

ーー 調くんは普段、関西弁なのですか?

川口 僕は出身が兵庫ですが、関西弁も標準語も話します。最近は他の方言のようなものも話します。果たしてそれがあっているのかどうかは分かりませんが、学校では「~なっとるけん」「~してん」みたいにミックスして話している。なので、西の方面ならどこに行っても話は分かります(笑)。


■レッスンで経験を重ねて、課題を見つけて

ーー レッスンで面白かったことや印象深かったことはありますか?

川口 大阪でのバレエのレッスンで、アラセゴンターン(回転の基本的テクニックのひとつ)をやった時に、ずっとうまく行っていたのに、最後のポーズのところで足をするっと滑らせて尻もちをついてしまいました。そしたらすかさず先生が「めっちゃ残念やなぁ~!」とコテコテの大阪弁で突っ込んでくれたのが、すごく面白くて笑いました。東京に来てからは、以前よりも内容を詰め込んだレッスンになってきているので、基本的には先生のいうことをしっかり聞いてレッスンに集中しています。

利田 僕、以前はバレエばかりやっていて……というか、バレエしかやってこなかったのですが、『ビリー・エリオット』を通じて、タップやその他のダンスも経験できて、とても新鮮で楽しいのですが、先生から「エネルギーをもっと出して」ということをよく言われるんです。そこがバレエとは違うところで、その違いがとても面白いなと。

利田太一  (撮影:山本れお)

利田太一  (撮影:山本れお)

ーー 歌のほうはどうですか?

利田 歌も大好きです。気分が乗らない時でも、歌を聴けばハッピーになれる。

中村 先生が面白いよね!

利田 うん、先生が面白い! 

ーー 歌の先生はどんな風に面白いのですか?

中村 教え方がめちゃくちゃ面白い。一つ一つに芸を挟んで笑わせてくれます。

ーー 海琉くんが稽古で面白かったことは?

中村 タップダンスで、シャッフルという技があって、レッスンではそれを一人ずつやるんですけど、出日寿くんだけ途中でよく靴が脱げるんです。それが可笑しくて(笑)。

利田 いつも、ありえないところで脱げるから(笑)。

中村 ピューンて靴が遠くまで飛んでっちゃう(笑)。窓ガラスが割れそうになったこともある(笑)。

川口 僕はまだ目撃してないから、それ、早く見てみたい(笑)。

渡部 え~でも、海琉だって脱げてたやん!(笑)

中村 いや、僕は一度だけだよ(笑)。

中村海琉  (撮影:山本れお)

中村海琉  (撮影:山本れお)

ーー 出日寿くんが稽古で面白かったことは?

渡部 僕も太一くんと近くて、体操をちょっとやっていた以外は、ほとんどバレエばかりをやってきたので、やはり『ビリー・エリオット』のオーディションや稽古を通じて、バレエ以外のいろいろなことにも取り組めるのは面白いですね。

ーー みなさんの話を聞いている感じでは、いまのレッスンは基礎練習を中心にやっているということですね。

全員 はい!

ーー ではレッスンを通じて、いまの自分にとって課題だと思うことは何ですか?ビリーに決まった直後の時とはまた感じることも違うと思うのですが……。

川口 僕は基本の動作をたくさん練習してきて、最近は安定してできるようになってきました。でも、その先のテクニック、つまりバレエだったらピルエットやアラセゴンターンなど、本番に出てくる難しいテクニックの練習がまだしっかりできていなくて、失敗することが多い。なので、これからは、基礎は引き続きしっかりやりつつ、ちょっとずつテクニックがうまくいくように、ミスのないようにしていきたいです。

ーー 以前インタビューした時は「体づくり」が課題と言っていました。

川口 最初の頃は、レッスン中に息がハァハァしていたんですけど、少し減ったかな。家でも気をつけるようにしているので、最近やっと体力がもつようになりました。最終オーディションの時よりは体力がついたと思います。

ーー 太一くんはどうですか。

利田 僕はタップの基礎をもっとやりたい。それから、タップをやるうちに、疲れが出てきて、タップがうまく踏めなくなってしまうことがあるので、体力のことも考えつつ、基礎もちゃんとやりたいと思います。

ーー 太一くんは長年バレエをやってきていますが、やはりタップは別物ですか。

利田 はい、まったく別物です。
 
ーー 海琉くんはどうですか。

中村 ビリーはずっと舞台に出ずっぱりですが、それに必要な体力が僕にはまだ備わっていないから、これからつけていかないと。

ーー 出日寿くんはどうですか。

渡部 僕はタップですね。振付に出てくる手の動きまでちゃんとできるようにしたいですね。あとは、ダンスの先生やタップの先生にも言われたことなんですけど、(振付のタイミングのカウントを)早どりする癖があるので、ちゃんと音に合わせてできるように頑張ります。

渡部出日寿  (撮影:山本れお)

渡部出日寿  (撮影:山本れお)


■本番に向けて、それぞれのビリーを目指す日々

ーー これから稽古が本格化していく中で、共演者の方々に聞いてみたいことや楽しみにしていることがあれば教えてください。

川口 ウィルキンソン先生の役の柚希礼音さんや安蘭けいさんは宝塚歌劇団出身です。僕は地元が兵庫なので、お二人が宝塚歌劇団や宝塚音楽学校にいた時、どんなことをやっていたのか、どんなレッスンをしているのか、また、どういうことを意識して生活をしていたか。そういうことを聞いてみたいです!

利田 『ビリー・エリオット』でいいなと思うシーンが「Solidarity」なんです。炭鉱夫や警官の声の迫力がすごくて、ゾクゾクします。なので、どうやったらそんなに逞しい声が出せるのか、聞いてみたいです!

中村 僕も「Solidarity」のシーンで、大人キャストはもちろん、バレエガールズの子たちとも一緒に踊りを合わせてやるのが楽しみです。実際やってみたらどうなるのか……とにかく早くやってみたいです!

渡部 僕はどのシーンも楽しみで、とにかく全部きちんとできるように頑張りたいです。

ーー 本番ではどんなビリーを演じたいか、読者の皆さんに一言ずつメッセージをお願いします。

川口 僕たち4人は同じビリー役として出ますが、それぞれの個性があらわれると思います。自分の考えるビリーは、強くて、格好いいビリー。そうなれるように、これからも一生懸命レッスンを頑張って、いい本番を届られるように努めてまいります。

利田 ダンスでエネルギーを届けたいと思います。お客さんには、ぜひそこを見てほしいです。

中村 僕もダンスでもっと迫力を出せるようにしたいと思ってます。本番では、一人一人のお客さんが、みんないい気持ちで家に帰れるように、全部を出し切って臨みます。

渡部 僕は、観に来てくれたお客さんが「この日のビリーを見ることができて本当に良かった」と思ってくれるようなビリーになります。
 
ーー 健闘をお祈りしています。本番、楽しみにしています!

(左から)川口 調、利田太一、中村海琉、渡部出日寿

(左から)川口 調、利田太一、中村海琉、渡部出日寿

取材・文=五月女菜穂

公演情報

Daiwa House presents
ミュージカル『ビリー・エリオット〜リトル・ダンサー〜』
 
■出演:
川口 調 利田太一 中村海琉 渡部出日寿/益岡 徹 橋本さとし/柚希礼音 安蘭けい
根岸季衣 阿知波悟美/中河内雅貴 中井智彦/星 智也/大貫勇輔 永野亮比己

 
森山大輔 家塚敦子 板垣辰治 大竹 尚 大塚たかし 加賀谷真聡 齋藤桐人 佐々木誠 高橋卓士 辰巳智秋 茶谷健太 照井裕隆 丸山泰右 倉澤雅美 小島亜莉沙 竹内晶美 藤咲みどり 井坂泉月 井上花菜 出口稚子
 
河井慈杏 菊田歩夢 佐野航太郎 日暮誠志朗 小林 桜 森田瑞姫 森田 恵
北村 栞 下司ゆな 咲名美佑 佐藤凛奈 髙畠美野 並木月渚 新里藍那 古矢茉那 増田心春 柳きよら
石井瑠音 高橋琉晟 大熊大貴 豊本燦汰 西山遥都
 
<ロンドンオリジナルスタッフ>
■脚本・歌詞:リー・ホール
■演出:スティーヴン・ダルドリー
■音楽:エルトン・ジョン
■振付:ピーター・ダーリング
■美術:イアン・マックニール
■演出助手:ジュリアン・ウェバー
■衣裳:ニッキー・ジリブランド
■照明:リック・フィッシャー
■音響:ポール・アルディッティ
■オーケストレーション:マーティン・コック

■公演期間・会場:
【オープニング公演】2020年9月11日(金)~14日(月)TBS赤坂ACTシアター
【東京公演】9月16日(水)~10月17日(土)TBS赤坂ACTシアター
※イープラス貸切公演=10月3日(土)17:00、10月8日(木)12:00
【大阪公演】10月30日(金)~11月14日(土)梅田芸術劇場 メインホール
※イープラス貸切公演=11月3日(火祝)17:30

 
■一般発売:
〇オープニング公演、東京公演:8月8日(土)
〇大阪公演
:9月12日(土)

■先行受付スケジュール(オープニング公演、東京公演):
〇7月25日(土)~ ホリプロプレミアム(有料会員)先着先行開始。
〇7月27日(月)~ ホリプロ無料会員の先着先行開始。
〇先着先行:7月27日(月)18:00~8月7日(金)18:00 イープラス会員先着先行。
 
■イープラス特設サイト:https://eplus.jp/billyjapan
■公式サイト:https://www.billyjapan.com/

 
【あらすじ】
1984年、炭鉱労働者たちのストライキに揺れるイングランド北部の炭鉱町イージントン。主人公ビリーは、炭鉱労働者の父と兄、祖母の4人暮らし。幼い頃に母親は他界してしまい、父と兄はより良い労働条件を勝ち得ようとストライキに参加しているため、収入がなく生活は厳しい。父はビリーに逞しく育って欲しいと、乏しい家計からお金を工面し、ビリーにボクシングを習わせるが、ある日、バレエ教室のレッスンを偶然目にし、戸惑いながらも、少女達と共にレッスンに参加するようになる。ボクシングの月謝で家族に内緒でバレエ教室に通っていたが、その事を父親が知り大激怒。バレエを辞めさせられてしまう。しかし、踊っているときだけは辛いことも忘れて夢中になれるビリーは、バレエをあきらめることができない。そんなビリーの才能を見出したウィルキンソン夫人は、無料でバレエの特訓をし、イギリスの名門「ロイヤル・バレエスクール」の受験を一緒に目指す。一方、男手一つで息子を育ててきた父は、男は逞しく育つべきだとバレエに強く反対していたが、ある晩ビリーが一人踊っている姿を見る。それは今まで見たことの無い息子の姿だった。ビリーの溢れる情熱と才能、そして“バレエダンサーになる”という強い思いを知り、父として何とか夢を叶えてやりたい、自分とは違う世界を見せてやりたい、と決心する。11歳の少年が夢に向かって突き進む姿、家族との軋轢、亡き母親への想い、祖母の温かい応援。度重なる苦難を乗り越えながら、ビリーの夢は家族全員の夢となり、やがて街全体の夢となっていく……。
 
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