SPICEアニメ・ゲーム班オススメ!今だからこそ観たい!家で楽しめるアニメ三選 Vol.4
SPICEライター特選!オススメアニメ作品
4月7日に発令された「緊急事態宣言」に伴い外出の自粛、自宅待機が続いていますが、そんな時こそお家で楽しめるアニメ作品を見るチャンスに変えていこう!ということで、SPICEアニメ・ゲームジャンルのライター・編集陣が総力を決して「今お家で楽しめるアニメ三選」をお届けします!(配信状況は執筆時のものです)
Vol.4選者:斉藤直樹(石黒直樹)
SPICEでは主にアニメ・ゲーム系のイベント&ライブの取材レポートを担当。『スーパーロボット大戦』シリーズのコミカライズの企画・編集や、モノ系雑誌ではクルマ・バイク・IT・建築などの特集記事を手がけたり、興味のあるジャンルには何でも飛び込む雑色系ライター。最近は副業でUBER Eats配達員や出張カメラマンもしたりと生き残りに必死な日々です。
オススメ作品①
『終末のイゼッタ』
(dアニメストア、バンダイチャンネル、U-NEXT、hulu、FOD)
「終末のイゼッタ」PV第五弾
舞台は1940年のヨーロッパ大陸。国の名前こそ違うけど、帝国主義国家・ゲルマニア帝国の突然の隣国侵攻を皮切りに欧州全土を巻き込む大戦が勃発するという、自分達もよく知っている第二次世界大戦の歴史と同じ道を辿っている世界から物語は始まる。
侵略の手を伸ばすゲルマニアに狙われたアルプスの小国・エイルシュタット公国では、国を守るべく公女フィーネが外交交渉に奔走していたが、その最中にゲルマニアに身柄を拘束されてしまう。そんな彼女を救ったのは同じくゲルマニアに囚われていた魔女の末裔の少女イゼッタだった。
「ひめさまが約束してくれるなら、わたしはひめさまのために戦います。最後の魔女として」
幼い頃にフィーネに救われたことのあるイゼッタは、フィーネと共に「みんなが明日を選べる国」を作るため、エイルシュタットを侵略から守るべく魔女の力で戦う事を決意する……。
純朴でちょっとイモっぽいけどグラマラスなイゼッタや、早見沙織演じる凛々しく聡明な姫君フィーネをはじめ、魅力的な女性キャラも多数登場するだけに、一見すると「美少女ミリタリー」系アニメと思われそうな今作だけど、作品のキモとなっているのは「近代兵器VS魔女」という仮想戦記としてのダイナミズムなのだ。
ホウキの代わりに対戦車ライフルにまたがって空を駆けるたった一人の魔女が、数で優る戦車や戦闘機の部隊、さらには軍艦相手にどう戦うのか? 例えば空戦では中世の剣やランスに魔力を与えて編隊を組み、この頃には存在しないホーミングミサイルのように操って敵機を撃墜して数の不利を補うなど、「魔法VS兵器」というシチュエーションが痛快かつリアリティあふれるアニメアクションで繰り広げられるのだ。
「もしも魔法が存在したら?」というifのリアリティへのこだわりは物語にも活かされていて、イゼッタの存在を秘密にせず、あえて「エイルシュタットの白き魔女」と喧伝することで国民に希望を与え、さらに戦時下の外交カードとして利用して小国ならではの生き残りの道を模索。さらに軍事面でも敵が魔法という未知の要素に惑わされているのを戦略に組み込んだりと、戦史/戦記物としても見応えのあるものとなっているのも大きな魅力だ。
国の命運がかかったシビアな大戦下で、同じ夢に向かって恋にも似た友情を育んでいく姫君と魔女はいったいどんな「終末」を迎えるのか? 可愛らしくもほろ苦い戦記ファンタジーをぜひ堪能してほしい。
オススメ作品②
『戦国乙女~桃色パラドックス~』
(dアニメストア、バンダイチャンネル)
ソーシャルゲームなどでおなじみの「歴史的人物の美少女化」や、今流行りの「異世界転生」。そんなトレンド両方を2011年に先取りにしていたテレビアニメが『戦国乙女~桃色パラドックス~』! タイトルを見ての通り、パチンコ&パチスロで10年以上のロングランヒットを続ける『CR戦国乙女』シリーズが原作ではあるけれど、内容はまったくのアニメ版オリジナルストーリーとなっているのだ。
天真爛漫な女子中学生・ヒデヨシこと日出佳乃は、ある日立ち寄った神社で不思議な光に巻き込まれ、女性しかいないパラレルワールドの戦国時代へと飛ばされてしまう。途方に暮れるヒデヨシを救ったのは、尾張の武将・織田ノブナガ。不思議な出で立ちと自分に対しても物怖じしないヒデヨシを気に入ったノブナガは彼女を家臣に迎え入れ、全てを揃えれば天下統一も可能と言われる「伝説の真紅の甲冑」を手伝わせることに。ノブナガに心酔する明智ミツヒデに疎ましく思われながらも「アニメやラノベならがんばれば元の世界に戻れるってパターンだから」と帰る方法を探すためにがんばる決心をするヒデヨシの存在が、摩訶不思議な女だらけの戦国乱世を大きく動かしていく……。
女性化した戦国武将が超人的な技や体術をふるって激突! とだけ書くとイロモノかと思うだろうけど、そのイメージに反して細かな時代描写などがかなりリアル寄りなのがこの作品の面白い所。戦国時代に飛ばされた事を理解できないヒデヨシが家に帰ろうとするが、外に広がるのは月明かりだけが唯一の光の暗闇。板の間のくみ取り式トイレや質素な食事、甘味も少なく旅の携帯食は干し飯などと、現代っ子のヒデヨシから見たらハードモードすぎる戦国暮らしが話の端々で描かれる。そんな細かな描写が奇想天外な物語に地に足の付いたリアリティを与えているのだ。
そして物語の一番の魅力が何といってもヒデヨシの明るく真っ直ぐなキャラクターだ。異世界転生物の主人公といえば、すごい特殊能力を手に入れてたり現代知識で無双したりというのが王道。でもヒデヨシは学校の成績は今ひとつだし、体力も普通の女子中学生並みで劇中では疲労と病気で本気で死にかけたこともあるほど。そんな彼女の武器となるのが、相手に対してまっすぐに感情をぶつけられる素直さだ。
戦国ならではの身分差やしがらみとは無縁のヒデヨシは、ノブナガを初めとする武将達にも気後れせずにぶつかっていく。第二話では夜盗に襲われ焼け出された領民に対して、視察にきて声を掛けるだけで済まそうとしたノブナガに「そういうのは違うと思う」と臆する事なく真剣に諫めるヒデヨシ。そして「お前ならどうする」とノブナガに問われ、携帯電話に入ってた音楽を流して気分を明るくさせ、自分から泥だらけになって片付けを手伝って、瞬く間に落ち込んでいた人達の心を掴み、ノブナガの支配者としてのスタンスにも大きな影響を与えることになる。そんなヒデヨシの言動が、やがて覇権を争い対立する他の戦国武将達の心も掴んでいくなど、史実では人心を掴む事に長けていたと伝えられる豊臣秀吉の人物像とのリンクもかいま見せながら、普通の女子中学生が素直な人柄をだけで戦国乱世を渡り歩いて成長していく様は、極上のジュブナイルのような面白さなのだ。
最後にどうしても触れておきたいのは、信長物では避けて通れない「本能寺の変」。この『戦国乙女』でも終盤の山場として登場するのだが、数多ある信長物の中でもトップランクのドラマチックな見せ場となっているのだ。ノブナガに対して恋愛感情に近い忠誠心を抱くミツヒデと、そんな気持ちを理解した上で口には出さずとも全幅の信頼を寄せているノブナガ。だが、突然現れたヒデヨシを重用するノブナガの態度が、ミツヒデの気持ちに嫉妬という暗い影を落としていく。そんなミツヒデの心を利用したある者の陰謀が、彼女を「愛するが故の謀反」へと駆り立ててしまう……「戦国武将の女性化」という設定を活かし、「愛するが故のすれ違い」という要素を加えた『戦国乙女』版「本能寺の変」がどんな結末を迎えるかは、ぜひ実際に見て確かめてみてほしい。
オススメ作品③
『下ネタという概念の存在しない退屈な世界』
(Netflix、dアニメストア、バンダイチャンネル、U-NEXT)
「下ネタという概念が存在しない退屈な世界」PV第一弾
事ある毎に「青少年健全育成のために」と規制の話が出たり、最近ではポスターに萌え絵を使っただけで炎上させてくる輩もいるなど、センシティブな話題になりがちなエロ周りの表現規制。それがもし完璧な形で実現されてしまったら? それをエロとコメディを交えながらも真っ正面から描いた問題作が『下ネタという概念の存在しない退屈な世界』だ。
「公序良俗健全育成法」によって、あらゆるメディアから性的・不健全な表現や情報が抹殺されて世界一健全な社会を実現した日本。国民には超小型情報端末「PM」の装着が義務づけられ、ネットや電子書籍など様々なサービスを受けられる反面、その言動や手の動きまでもが監視され、エロい言葉を口にしたりエロい絵を描くだけでも警察に補導・逮捕される監視社会も実現してしまう。
それから16年……政府に対して「下ネタの自由」を主張した下ネタテロリストを父に持ち、この世代には珍しく多くの性知識を持ちながらも健全に生きようとする高校生・奥間狸吉は、学園の生徒会副会長を務める一方で覆面パンツに裸マント姿の下ネタテロリスト「雪原の青」として世間を騒がせる華城綾女に目を付けられ、下ネタテロ組織「SOX」として共に活動するハメになってしまう。生徒会長を務める憧れの女性、アンナ・錦ノ宮に対する罪悪感を抱きながらも下ネタテロ活動に励む狸吉だが、ある事件を切っ掛けに彼女との関係にとんでもない変化が。さらに下ネタテロが国家との対立にまでエスカレートしていくことに……。
とにかくインパクト満点なのが全話全編に渡って繰り広げられる下ネタテロの数々! 校内集会で蠅の交尾ビデオを流して淫語全開の生アフレコをかましたり、視力検査の表をすり替えて女生徒に「オ●●コ」と言わせようとしたり、さらには料理番組のノリで家庭にある材料でできるオ●ホールの作り方を紹介するなど、バカバカしくもパワフルな下ネタが気合いの入った作画と声優陣の熱演でこれでもかと繰り広げられるのだ。特に口を開けば男子小学生のような下ネタが溢れ出す華城綾女役:石上静香や、独特の声のトーンで個性派美少女キャラに命を吹き込んだ新井里美が、当局の目を逃れるために口に筆を加えてエロ絵を描く天才少女・早乙女乙女を怪演するなど、ハイテンションな演技の数々にも注目だ。
そしてこの作品の魅力は下ネタだけでは終わらない。笑いのオブラートに包み込みながら描かれているのは、不健全な表現を許さない規制社会が生み出す歪みだ。劇中の日本では、法規制によって性教育も行われなったため、まったく性知識を持たないまま成長した若者が社会にあふれてしまっている。そのあおりで痴漢冤罪に遭っても「痴漢」という行為自体がわからず泣き寝入りしそうになったり、校内にばらまかれたエロ本のコピーを「ただのかわいい絵」と思って意味も分からず飾ってしまうといったシークエンスが描かれ、ギャグ混じりながらも「子どもを性から遠ざけるのは本当に正しいのか?」というシビアなテーマも突きつけてくるのだ。そんな歪みの象徴として存在感を示すもう一人のヒロインが、生徒会長のアンナ・錦ノ宮だ。
「公序良俗健全育成法」を推進する両親の下で清く正しく純粋培養で育てられた彼女が、性知識を持たないまま性欲だけに目覚めてしまい、そのきっかけとなった狸吉と力ずくで結ばれようと暴走。しかもそういった行為を「自分はこれまで正しく生きてきたから、この衝動も正しいはず」と正当化してしまうなど、ギャグとエロスを突き抜けてホラーの領域にまで達してしまった前代未聞のヒロインキャラなのだ。演じるのは難病で2015年秋に惜しまれながらもこの世を去った人気声優の松来未祐。彼女だからこそ演じられた可愛らしくも恐ろしいヒロインの熱演も、下ネタギャグや物語と共に楽しんでほしい。
テレビアニメも本数増加でよほどのアニメ好きじゃないと全部チェックできなかったり、ほとんどが三ヶ月(1クール)で放送が終わってしまうのであっという間に話題にならなくなったりと、一見盛り上がっているように見えるアニメ界隈も見方を変えれば冬の時代なのかも。
それだけにNetflixやAmazonプライムといったサブスク系配信サービスが普及して、新旧問わず様々なテレビアニメが時間・場所を選ばず見られるようになったのは、テレビアニメにとっては一大革命なのだ。
メジャーマイナー問わず様々なテレビアニメシリーズが見放題配信されている中、今回は物語の切り口や視点が面白い通好みな作品をセレクトしてみました。本文中では深く触れなかったけど、どの作品もヒロインが可愛らしく魅力的なので、そっち目当てでも楽しめること間違い無しです!
文:斉藤直樹
作品情報
公式HP:http://izetta.jp/
作品情報
公式HP:https://www.tv-tokyo.co.jp/anime/sengoku_otome/
作品情報
公式HP:http://www.shimoseka.com/