「殺陣・アクション&考察が話題」の作品をセレクション/ホーム・シアトリカル・ホーム~自宅カンゲキ1-2-3[Vol.17] <2.5次元舞台編>
イラスト:春原弥生
ホーム・シアトリカル・ホーム~自宅カンゲキ1-2-3 [Vol.17] <2.5次元舞台編>
「殺陣・アクション&考察が話題」の作品をセレクション
by 松本裕美
【2】『舞台 PSYCHO-PASS サイコパス Virtue and Vice』
【3】『MESSIAH PROJECT:メサイア・プロジェクト』
おうち時間が増えている、そんな今だからこそ2.5次元舞台を楽しんでみませんか。
そもそも2.5次元舞台とは、マンガ・アニメ・ゲームを原作とするお芝居のこと。ミュージカル『テニスの王子様』(2003年~)、やミュージカル『美少女戦士セーラームーン』(1993年~)、そして2018年の第69回紅白歌合戦にも出場したミュージカル『刀剣乱舞』は耳にしたこともあるかと思います。また、マンガアニメなどのメディアミックスの一環として、舞台化・ミュージカル化と言われても驚かないくらい当たり前にもなってきて、今や2.5次元バブルとも形容される時代です。たくさんの公演があり、どれを見たらいいかわからない。そんな声も聞こえてきそうですね。
今回は、筆者が個人的に好きな「殺陣・アクション」、「考察」のおもしろさの点から3作品を紹介したいと思います。
舞台『刀剣乱舞』
【公演PV】舞台『刀剣乱舞』2020年夏新作公演
DMMゲームズとニトロプラスによるPCブラウザゲーム・スマートフォンアプリゲームを原作とする、『刀剣乱舞』は「ミュージカル(刀ミュ)」と「舞台(刀ステ)」の2種類が存在します。同じ作品を原作としているので、同じキャラクター(刀剣男士)が登場することもありますが、ストーリー、役者、制作会社、スタッフなど全くの別物と考えて良いでしょう。紅白歌合戦に出演した刀剣男士は「ミュージカル」の方。第二部のライブパートではかっこいい衣裳で歌って踊る、華やかな姿を見ることができます。
今回は殺陣・アクションと考察に注目したいので、「舞台」の方の話をします。こちらはお芝居がメインとなっていて、歴史改変を目論む歴史修正主義者(敵)と刀剣男士との戦いや本丸(彼らの本拠地のこと)でのできごとが描かれています。
人と同じ体と思考する頭を持ち、苦悩しながらも戦いに身を置く刀剣男士たち。彼らの殺陣が、芸術の領域ではと思うくらい見ごたえがあって、かっこよくてシビレます。打刀、太刀、短刀、大太刀、槍など長さや用途の異なる日本刀が多く登場しますが、それぞれの戦い方や体の使い方が違っていたり、流れるような刀さばきと、殴りや蹴りのアクションが常人にはできない速さだったり……。動きに無駄がなく、かつかっこよく魅せるためのオシャレな(二次元的な)刀の扱い方をしていたり。とにかく戦闘シーンがかっこいい! また例えば山姥切国広(役/荒牧慶彦さん)のマントや三日月宗近(役/鈴木拡樹さん)の袴など、実はとても戦いにくそうな衣裳の刀剣男士もいるので、彼らの布さばきにも注目してほしいです。あくまでも「舞台」なので俳優さんがキャラクターを演じていること、何度も稽古をして身につけたことは頭では理解していても、それ以上の美しさかなと思います。現代では美術品としての価値がある、まさに「刀剣」そのもの……「刀ステは芸術品」ということも言えるのではないでしょうか。
また、考察がとても盛り上がるのも「刀ステ」のおもしろい特徴のひとつ。一つひとつのお話は単独で見られる内容ですが、全ての作品を通して俯瞰的な視点で見ると繋がっている箇所があったり、特定のキャラを思わせるセリフや行動があったり。公演が終わった後にSNSで繰り広げられるファンの考察は自分では気付けなかった、ハッとさせられる話ばかり。舞台を見た人たちで盛り上がれるこのようなファン活動の活発さも、観劇って楽しいなと実感する瞬間です。
・虚伝 燃ゆる本能寺
・虚伝 燃ゆる本能寺~再演~
・義伝 暁の独眼竜
・外伝 此の夜らの小田原
・ジョ伝 三つら星刀語り
・悲伝 結いの目の不如帰
・慈伝 日日の葉よ散るらむ
・維伝 朧の志士たち
初演とは微妙に違っている箇所のある「再演」もオススメ。上記以外に『映画刀剣乱舞』も存在します。こちらは映像作品なので舞台とは少し違いますが、に非常~に美しい映像で、非常~顔も美しい刀剣男士たちを存分に堪能できることでしょう!(力説)
『舞台 PSYCHO-PASS サイコパス Virtue and Vice』
『舞台 PSYCHO-PASS サイコパス Virtue and Vice』 (C)サイコパス製作委員会 (C)舞台「サイコパス」製作委員会
アニメシリーズ『PSYCHO-PASS サイコパス』を原作としたスピンオフ舞台作品です。人間のあらゆる心理状態や性格を数値化する機能「シビュラシステム」における「犯罪係数」の高い人間を取り締まり、罪を犯していない人間でも規定値を超えると潜在犯として裁かれるという近未来で、「正義」とは何かを問われます。アニメ本編放送の後にSNSで活発に話される考察や議論を楽しみに見ていたわけですが、この舞台も同じでした。
舞台『サイコパス』も2種類あります。アニメ脚本も担当した深見真氏による舞台脚本のオリジナルストーリーである『舞台 PSYCHO-PASS サイコパス Virtue and Vice』と、アニメの舞台版『PSYCHO-PASS サイコパス Chapter1―犯罪係数―』で、今回は前者を紹介します。警察組織「公安局」に所属する監視官の九泉晴人(くせんはると)と嘉納火炉(かのうひろ)、そして執行官たちを中心に描いた物語です。
上で上げた舞台『刀剣乱舞』とは異なり、戦闘に派手さは少なめですがやはり「ドミネーター」が出てくるシーンは興奮してしまいますし、絵に描いたような美しい格闘術を見せられるとその役者に惚れてしまうこともあります。先ほど挙げた舞台『刀剣乱舞』に出演していた俳優(九泉晴人役:鈴木拡樹さん・嘉納火炉役:和田琢磨さん)もこちらに出演しているので、気になった方はぜひ。白状しますと出演俳優につられてを取りにいった者のひとりです。鈴木拡樹さんの演技は見れば見るほど好きになりますね。……同志はいますか?(舞台『どろろ』もすごく良かった!)
ストーリーは予想できたことですが、やっぱりとにかく「つらい」。
アニメ同様に世界観やキャラクターへの思考が好きな人には刺さる作品だと思います。オリジナルストーリーなので直接ではないですが、作中の事件とアニメのリンクもみられます。九泉の過去と、嘉納の心境、そして「哲学的ゾンビ」とは。真相を知ってから再度見ると、何気ない場面でも涙が止まらなくなります。また、この物語を通じて描きたかったこととは? と作り手側の事情をも考えてしまうのが、この舞台作品特有のおもしろさかなとも思っています。
『MESSIAH PROJECT:メサイア・プロジェクト』
舞台『メサイア-黎明乃刻-』 (C)MESSIAH PROJECT (C)2019 舞台メサイア黎明乃刻製作委員会
バディもの好き・アクション好きには個人的には超オススメしたいこのシリーズ。高殿円氏の小説「MESSIAH‐警備局特別公安五係」(講談社文庫)を原作とし、映画化・舞台化されています。現実とは異なる世界の日本が舞台で、殺人を許された特殊な組織に所属するエージェントたちが主人公。戸籍を抹消された訓練されたスパイであっても彼らには感情があり、葛藤があり、友情があり……。過酷な環境の中でどんな信念を持って生きるかを問われる物語です。
現在配信で見られるものが映画しかないので、名前だけでもあげておきたい(泣)。実はゲネプロ取材で観させていただいて、大泣きしながらレポを書いた作品です……。
驚いたのは銃で撃たれた人間の倒れ方、拳の受け方などアクションの迫力はもちろん、緊迫したシーンでのピリピリ感も舞台以上の厳しい世界を体現していて思わず息を殺してしまうほど。2.5次元ならではでもある「見せる」ためのアニメ的な演出もあり、特にスタイリッシュなオープニングには目を奪われます。
個人的には杉江大志さん(加々美いつき役)が強く印象に残ってます。それまで『スタミュ』などでキラキラ笑顔な演技を見ていたので、彼に新たな一面を見た気がしました。それと一嶋さん(一嶋晴海役/内田裕也さん)の戦う姿には心を奪われました。渋い! かっこいい! 好き!(語彙力のなくなるオタク)
映画版
『Messiah メサイア』
『Messiah メサイア -漆黒ノ章-』
『Messiah メサイア -深紅ノ章-』
『MESSIAH メサイア外伝 -極夜 Polar night-』
『MESSIAH メサイア −幻夜乃刻−』
舞台版
『Messiah メサイア -銅ノ章-』
『Messiah メサイア -白銀ノ章-』
『Messiah メサイア -紫微ノ章-』
『Messiah メサイア -翡翠ノ章-』
『Messiah メサイア -鋼ノ章-』
『MESSIAH メサイア -暁乃刻-』
『MESSIAH メサイア -悠久乃刻-』
『MESSIAH メサイア -月詠乃刻-』
『MESSIAH TWILIGHT メサイア トワイライト -黄昏の荒野-』
『MESSIAH メサイア -黎明乃刻-』
テレビドラマ版
『Messiah メサイア -影青ノ章-』
たまにニコニコ動画で一挙配信があったりするので……この機会に配信されませんかね?(期待)
文=松本裕美
作品情報
原案:「刀剣乱舞-ONLINE-」(DMMゲームズ/Nitroplus)
演出・脚本:末満健一
販売元:東宝
(C)舞台『刀剣乱舞』製作委員会
(C)2015-2019 DMM GAMES/Nitroplus
脚本:深見真
ストーリー監修:Production I.G
キャスト:鈴木拡樹・和田琢磨 ほか
販売元:東宝
(C)舞台「サイコパス」製作委員会
上演:2014年より舞台化
(C) 2019舞台メサイア黎明乃刻製作委員会