俳優の万里紗と詩人の野宮有姫が、演劇プロジェクト「万里紗とノミヤのプロジェクト 詩劇響きと怒り」を始動
俳優の万里紗と、詩人の野宮有姫が、演劇創作過程をインクルーシヴなものとして社会に開き、その様子をオンラインで伝えるプロジェクト「万里紗とノミヤのプロジェクト 詩劇 響きと怒り」を立ち上げた。
万里紗
野宮有姫
本プロジェクトでは、劇場に至るまでの演劇作品の制作過程にフォーカスを当て、創作の プロセスを記録映像および、一般の希望参加者を含めたワークショップを通して公開し、演劇と社会の橋渡しを試みる。
また、演劇創作において要となる他者の人生を想像するということに注目。人との距離が遠くなりつつあるコロナ禍の今こそ、改めて密によって得られる人生の豊さを見つめ、社会に警鐘を鳴らす。
本プロジェクトは、ウィリアム・フォークナー著の『響きと怒り』を題材に詩劇としてアレンジ。演劇の本質である「他者との密な関わりの重要さ」をオンラインで参加者とともに追求、公開する。他者と語らい、他者の話に耳を傾け自分を移入してみたり、自分の人生を語ってみたりすること。その輪の中で働く参加者たちの「想像力」や自分自身を「発見」する時間は、ある意味演劇そのものとも言える。演劇が劇場空間に閉じこもっていたことのリスクが明るみに出た今こそ、演劇というものを社会全体に向かって開き、その意義を問い、人と人のつながりや思いやり、寛容の大切さを問いかける。
プロセスプロジェクトには、オンライン上で自分や他者、または人生などについて語り合う「語らい」と、『響きと怒り』の主人公のベンジーになぞらえ、「知的障害」を持つ参加希望者と共に限定的な人数で行う演劇・音楽・美術 「ワークショップ」、そして以上 2 つのプロセスを経た上で演劇作品そのものを稽古し本番に至る、という三段階から構成される。
プロジェクトの軸となる『詩劇 響きと怒り』の公演は、2021年を予定。感染症の状況を鑑みながら、劇場及び地方の野外劇場での巡演を行い、プロセスプロジェクトに参加したメンバーや視聴者と、演劇との深い繋がりを作ることを狙いとしている。
題材となる1920年代に誕生したウィリアム・フォークナーによる小説『響きと怒り』は、性や人種などによる差別や、「知的障害者」に対する優生手術など様々な社会的弱者に関わる問題が登場する作品。コロナ禍の今、こうした日本にも継続して受け継がれてしまっている問題は、更に色濃く浮き彫りになっているのが現状だ。この現代日本を生きる人々にとって、本プロジェクトが力強い問いを投げかけられればと考えている。
プロジェクト詳細
杉山直子「アメリカ文学と女性の表象及び現代日本と女性について」