[Alexandros]川上洋平、ジョニー・デップ主演『グッバイ、リチャード!』について語る【映画連載:ポップコーン、バター多めで PART2】

2020.8.22
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撮影=河本悠貴 ヘア&メイク=坂手マキ(vicca)

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大の映画好きとして知られるロックバンド[Alexandros]のボーカル&ギター川上洋平の映画連載「ポップコーン、バター多めで PART2」。今回取り上げる映画は『グッバイ、リチャード!』。主人公は、突然のがん宣告によって、余命180日の生活に突入してしまう真面目で裕福な大学教授・リチャード。演じているのはジョニー・デップです。

『グッバイ、リチャード!』

アメリカでは2018年に公開された作品で、アメリカに住んでる映画好きの友達からは、「あまり評価は高くなかったんだよね」って情報を聞いてたんですけど、僕はすごく好きでした。
確かに、余命いくばくもない主人公が残りの人生をどう過ごすかっていうテーマはありがちではあるんだけど、それをジョニー・デップが演じるのが良い。ジョニー・デップって、『パイレーツ・オブ・カリビアン』とか『チャーリーとチョコレート工場』とか『ファンタスティック・ビースト』とか、どちらかというとコミカルでアイコニックな主人公を演じるイメージが強くなってる。そのジョニー・デップがこういう役をやるのがすごく新鮮だったし、身近に感じられました。
だから、僕がこの映画を好きなのは、ジョニー・デップが決め手でしたね。もし他の役者さんが演じてたら、こんなにすっと入ってこなかったのかなって思います。本人に程良く近いキャラクターにも思えて、無理のない演技っていうか、僕にとってはここ最近だと一番好きなジョニー・デップでした。

『グッバイ、リチャード!』より

■死が重いものなんだってちゃんと描かれてるし、同時に、生きるってことも重いものなんだって描かれてる

余命宣告されたリチャードが自暴自棄になって、「FUCK」って連発しながら池に入っていく冒頭のシーンがすごく好きでしたね(笑)。“悲劇は喜劇”みたいな感じが表れてる感じもして、すごく良いシーンだと思いました。リチャードは突然の余命宣告に打ちひしがれてるように見えて、死というものがとても重いものなんだなっていうことがちゃんと描かれてるし、同時に、生きるっていうこともとても重いものなんだっていうことも大事に描かれてる。そこがしっかりと冒頭で伝えられていて。あそこで『ハングオーバー!』シリーズみたいにリチャードがめちゃくちゃに暴れてたら軽く見えるのかもしれないけど(笑)、そうじゃないのがリアルで良いなって。
そのあとリチャードは一気に吹っ切れて、マリファナを吸ったり、生徒の前でナンパをしたり、タガがはずれたような行動をするわけなんですけど。この映画を観て僕も、「今までしてこなかったことってなんだろう?」って考えて、そういえばナンパってしたことないなって(笑)。そう考えると、まだまだやり恐れたことがあるなって思いました。

『グッバイ、リチャード!』より

■こういう映画は年を重ねるごとに観たくなくなってきてる

コロナ禍において、生きるとは何なのかとか、死って何なのかっていうことと向き合った人も多いと思うんです。だからこそ、すごく響く作品だとも思いましたね。やっぱり自分の生きてる瞬間みたいなものをより強く意識するようになった。
僕は生にすごく執着してて、行けるところまで行きたいとずっと思ってるので、こういう映画は歳を重ねるごとにちょっと観たくなくなってきてるんです。しかも、うちの家系は割とがんの家系なんですよね。父親が2回がんを患っていて、2回とも初期段階で見つかって治っていて。あまりこういうことは言いたくないんですけど、多分自分はがんになるんじゃないかと思ってるので、こういうテーマにはすごく敏感なんです。だから、この映画のことすごく気になってはいたんですけど、観るのをずっとためらってたんですよ。でもYouTubeを観てると、なぜか予告編がおすすめに入ってきたりして、「なんで俺にこれ薦めてくるんだろう」とか思ってすごく嫌だったんです(笑)。でももう逆に観るしかないって気持ちになって。
観始めた時はちょっと恐怖がありましたけど、今観ておいて良かったと思いました。誰もが死ぬんだから、その準備をしておくっていうことを改めて考えたし。もし死が近づいてきたことを感じたら、どうやって死をリスペクトして迎えるんだろう?って。
著名人の方にも、コロナに罹ったり、亡くなってしまった人がいる。それもあって、死が迫る主人公をジョニー・デップが演じている様が本当にリアルに感じた。あのジョニー・デップでさえも、病気になって死が間近に迫ることもあり得るわけで。
僕はなるべく健康診断に行くようにしてるんですけど、今年はまだ行けてなくて。観終わったあとに、「ああ、ちゃんとしよう」って思いましたね。

『グッバイ、リチャード!』より

■ジョニー・デップだからこそ、余計まっすぐなセリフが響いた

あと、リチャードのセリフがいちいち良かったですね。生徒たちに向けて言った、「君たちの才能を無駄にしないで、全力で生きろ」みたいなセリフがすごく好きで。やっぱりそういう意識を持って生きてるかどうかの違いって絶対にある。
コロナ禍においても、ミュージシャンは別に何もしないで大人しくしてても良いわけなんですよ。でもそこで何か知らないけど、自分の表現と向き合って、何かしらのアクションを起こすわけですよね。そういうことともこのセリフがリンクしましたね。
これがもしジョニー・デップじゃなくて、ロビン・ウィリアムズが主演だったら、ただただ感動的な映画になってたんでしょうけど(笑)。『いまを生きる』みたいに、教室で生徒に熱く説いて、みんな机の上に立って、みたいな。それが『グッバイ、リチャード!』だと、マリファナ吸って、生徒の前でナンパしてっていう、逆ロビン・ウィリアムズみたいな(笑)。だから余計、まっすぐなセリフが響いたっていうのはありますね。

こういう風に、抑圧された中で感情を爆発させてしまうアメリカ映画って結構多くて。『アメリカン・ビューティー』も、ケビン・スペイシーが演じる主人公がとあることがきっかけで、いろんなことが吹っ切れる話で。ちょっとまた違うタッチではあるんですけど、マイケル・ダグラス主演の『フォーリング・ダウン』も、大渋滞に巻き込まれたサラリーマンがキレてしまって大暴走が始まる。アメリカ人もやっぱりいろんなことからの抑圧があって、それに加えて、「ストレスなんて感じてませんよ」って演じることも強いられているのかなって思いましたね。
『アメリカン・ビューティー』も『フォーリング・ダウン』も『グッバイ、リチャード!』も、主人公に共通してるのは結婚がうまくいってないってことなんですよね。僕は結婚してないのでそのへんよくわからないんですけど、いろいろあるんだろうなって(笑)。

『グッバイ、リチャード!』より

■やっぱり映画は観るタイミングや公開するタイミングも大事

やっぱり映画って、観るタイミングとか、公開するタイミングもすごく大事ですよね。僕の場合、[Alexandros]の2日間のライブが終わって、家でひとり猫に囲まれながら『グッバイ、リチャード!』を観たんですけど、ストーリー的にもシチュエーション的にも、人前で演奏してるライブとの急な落差が激しくて、やたら響くものがありました(笑)。僕としては、すごく良いシチュエーションで、ぴったりのタイミングでこの映画が観れたんじゃないかと思っています。今の世界の状況を鑑みると、これから観る人にとっても、この映画は沁みるんじゃないかなと思いますね。

 

取材・文=小松香里
 

上映情報

『グッバイ、リチャード!』
出演:ジョニー・デップ、ローズマリー・デウィット、ダニー・ヒューストン、ゾーイ・ドゥイッチ他/監督・脚本:ウェイン・ロバーツ
あらすじ:大学教授・リチャードに告げられた突然の余命宣告。博学でエレガント、真面目な夫として美しい妻と素直な娘との何不自由ない暮らしを送っていたはずのリチャードの人生は⼀変。追い討ちを掛けるかのように妻に上司との不倫を告白された彼の日々は予期せぬ展開を迎える。死を前に怖いものなしになったリチャードは残りの人生を自分のために謳歌しようと決心。あけすけにものを言い、授業中に酒やマリファナを楽しむ。ルールや立場に縛られない新しい生き方はリチャードにこれまでにない喜びを与え、人の目を気にも留めない彼の破天荒な言動は次第に周囲にも影響を与えてゆく。しかし、リチャードの“終わりの日”は着実に近づいていて…。
ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開中
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アーティストプロフィール

川上洋平(Yoohei Kawakami)
ロックバンド[Alexandros]のボーカル・ギター担当。ほぼすべての楽曲の作詞・作曲を手がける。毎年映画を約130本以上鑑賞している。「My Blueberry Morning」や「Sleepless in Brooklyn」と、曲タイトル等に映画愛がちりばめられているのはファンの間では有名な話。

リリース情報

[Alexandros]『Bedroom Joule』
2020年8月26日(水) リリース

[Alexandros]『Bedroom Joule』

収録曲
01. ar
02. Starrrrrrr (Bedroom ver.)
03. Run Away (Bedroom ver.)
04. Leaving Grapefruits (Bedroom ver.)
05. Thunder (Bedroom ver.)
06. 月色ホライズン (Bedroom ver.)
07. Adventure (Bedroom ver.)
08. city (feat.Pecori)
09. pr
10. rooftop
11. 真夜中(Bedroom ver.)
※M-01,09,11はデジタルバンドル未収録。CDにて初収録。
 
初回限定盤収録特典映像
~Secret Live ~
01.Starrrrrrr (Bedroom ver.)
02.Run Away (Bedroom ver.)
03.Leaving Grapefruits (Bedroom ver.)
04.Thunder (Bedroom ver.)
05.月色ホライズン (Bedroom ver.)
06.Adventure (Bedroom ver.)
07.rooftop
 
【通常盤】(CDのみ) UPCH-2211 ¥2,400円+税
【初回限定盤】(CD+DVD) UPCH-7566 ¥3,600+税
【初回限定盤】(CD+Blu-ray) UPCH-7567 ¥4,600+税
 

初回限定盤収録特典映像Teaser

ライブ情報

THIS SUMMER FESTIVAL 2020
8月23日(日)23:59までアーカイブ配信中
 

ライブ情報

UKFC in the Air
8月28日(金) 
*無観客有料生配信ライブ
OPEN 14:00/START 14:30/END 22:00頃
 
出演者
【FRONTIER STAGE】
 [Alexandros] /POLYSICS/the telephones/TOTALFAT 
【FUTURE STAGE】
 EASTOKLAB/postman/SPiCYSOL/the shes gone/ウソツキ 
and more...
 
早割:¥3,000 (~8月26日(水) 23:59)
視聴券:¥3,500 (8月27日(木) 0:00~)
 
 

ライブ情報

RUSH BALL 2020
8月29日(土)泉大津フェニックス
OPEN 9:30 / START 11:00
 
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