勅使川原三郎が新作『銀河鉄道の夜』をシアターΧにて上演　宮沢賢治の世界に息づく至上のダンスに注目

勅使川原三郎 シアターX公演『銀河鉄道の夜』が2020年9月19日（土）～22日（ 火・祝）に開催される。宮沢賢治の童話を原作とし、勅使川原が構成・振付・演出・照明・美術を手がけ、勅使川原と佐東利穂子が出演する。

勅使川原は今までにも宮沢賢治の文学を基に創作してきた。詩集「春と修羅」収載の「原体剣舞連（はらたいけんばいれん）」 から想を得た『DAH-DAH-SKO-DAH-DAH』（1991年）は、ニューヨークのネクスト・ウェーブ・フェスティバル、ロンドンのUKジャパン・フェスティバルなどで上演され、モントリオール・ヌーベルダンス・フェスティバルでは観客賞（Prix du Public）を受賞した名作だ。2012年の改訂後もヨーロッパ・ツアーを行った。2016 年には、カラス・アパラタスでのアップデイトダンスNo.34 『春と修羅』を上演している。

勅使川原は近年、シアターXにおいて「言葉と音楽とダンス」をテーマとしたダンス作品を発表し、アルチュール・ランボーの詩の世界に迫る『イリュミナシオン－ランボーの瞬き－』や笙の宮田まゆみと共演した『調べ－笙とダンスによる－』を発表。勅使川原は文学作品を扱う場合、物語の筋を追ったり文脈を読み解くのとは違い、ダンスそのものによってその世界に近づいたり、溶け合ったりして、新たな世界へと昇華する。久々に宮沢賢治の詩情豊かな文学と共に生む独自の宇宙を楽しみにしたい。

なお、8月21日（金）～29日（土）には、アップデイトダンス No.74『妖精族の娘』を上演。「幻想小説家ロード ダンセイニの同名の短編を基にした佐東利穂子の身体詩」と銘打たれている。

勅使川原三郎　コメント

銀河鉄道の夜

星祭りの夜
ジョバンニとカンパネラ
いつの間にか列車の中
ずっと二人は一緒だね
何度も確認するジョバンニ
支えるカンパネラ
水から来て 空を巡り
水に帰る
生と死の終わりなき循環
水ー生命ー鉱物ー植物ー水
循環連結列車
天の川　澄みきった宇宙
銀河鉄道は時を超えて
微かに色のついた期待と
静かに寂しさの間を進む
いつまでも一緒だよ

勅使川原三郎

文＝高橋森彦