『GOEMON抄(SHOW)』が大阪松竹座で開幕、片岡愛之助、今井翼らが化粧なし、衣裳なしの「素」で演じるプレミアムな舞台
『GOEMON抄(SHOW)』 撮影=田浦ボン
10月15日(木)より大阪松竹座で幕を開けた『GOEMON抄(SHOW)』。10月に開催する予定だった十月花形歌舞伎『GOEMON 石川五右衛門』が新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から全公演中止になったものの、楽しみにしていた観客のためにと、18日(日)までの4日間にわたって『GOEMON抄(SHOW)』が行われることとなった。
なおかつ、『GOEMON抄(SHOW)』は当初、トークだけの予定だったが、前半は『GOEMON 石川五右衛門』の見せ場をダイジェストにまとめた、フラメンコあり、立廻りありのショーを、後半は主要キャストが舞台に揃ってのトークショーがおこなわれた。
●化粧なし、衣裳なしの「素」で演じるプレミアムな舞台
『GOEMON抄(SHOW)』
前半の見どころは、なんといっても俳優が素の状態で演じる点だ。『GOEMON 石川五右衛門』では主演の石川五右衛門を演じる愛之助を筆頭に、奇抜な化粧やかつら、衣裳をまとう俳優たちだが、今回は皆、はかま姿で化粧もしていない。極めてシンプルながらも、いざ彼らが舞台に立つと、指先からつま先まで動きの一つ一つがクリアに見え、表情も分かりやすい。俳優たちの一挙手一投足に集中することができ、十分に楽しめた。
『GOEMON抄(SHOW)』
『GOEMON抄(SHOW)』
本公演で女方の出雲の阿国を演じる中村壱太郎も素の姿で登場。にもかかわらず、妖艶な雰囲気をまとっており、自然と「阿国がいる」と思わせる魅力を放っていた。
『GOEMON抄(SHOW)』
2014年版のカルデロン神父役より参加している今井翼も、圧巻のフラメンコを披露。時に情熱的に、時に切ない表情を浮かべながら、渾身のダンスで魅了した。愛之助、壱太郎、今井の三者によるフラメンコの迫力も圧倒的で、久々の歌舞伎再開という嬉しさも相まってか、観客の中には涙をぬぐう姿もあった。
『GOEMON抄(SHOW)』
●片岡愛之助、満面の笑みで「やっと戻ってまいりました!」
『GOEMON抄(SHOW)』
片岡愛之助
後半のトークショーでは愛之助、今井、壱太郎に加え、このたび口上を務め、加藤虎之介を演じた中村種之助、名古屋山三役の上村吉弥、豊臣秀吉役の中村鴈治郎の主要キャストが登壇、全員が一言ずつ挨拶をした。「やっと戻ってまいりました!」と開口一番に喜びを爆発させる愛之助。今井も「『GOEMON抄(SHOW)』に参加できて嬉しい。4日間、しっかりやっていきたい」と意気込んだ。
今井翼
中村壱太郎
壱太郎も「感無量です。8月に東京の歌舞伎座で歌舞伎公演が再開されましたが、大阪松竹座では初めての公演です。形は違いますが、幕が開いた嬉しさで胸がいっぱいです」と挨拶し、種之助も「大阪松竹座に戻って来れて嬉しい」と笑顔を見せた。
中村種之助
上村吉弥
「4日間上演することができてありがたく思います」と話す吉弥に続き、鴈治郎は客席を見回しながら「今回は定員の約半分ということですが、舞台から見ると満員です。我々はお客様の前でやるのが本分。戻ってくることができて嬉しい」と目を細めた。
中村鴈治郎
そして、大阪や大阪松竹座、『GOEMON 石川五右衛門』にまつわるエピソードや、歌舞伎の世界に一人で飛び込んできた今井の印象について、ツイッターで募集したファンからの質問など、多岐に渡った内容で展開。
『GOEMON抄(SHOW)』
思い出を尋ねたトークでは、2013年版の公演期間中に二十歳の誕生日を迎えたことを覚えていると種之助。今井は「出雲屋」という屋号を作ってもらえたことが嬉しかったと振り返った。素の状態で舞台に立つことについては「恥ずかしい」と吉弥。名古屋山三役は8カ月ぶりの立ち役で、「最初に登場するシーンから足が震えていました」と心境を明かした。
●待望の『GOEMON抄(SHOW)』生配信もイープラスのStreaming+にて決定!
この『GOEMON抄(SHOW)』は10月17日(土)18時開演の回がイープラスのStreaming+にて生配信されることも決定した。今後、劇場や配信で観劇する方のためにおすすめのシーンを尋ねると「種之助くんが愛之助さん扮する五右衛門を羽交い絞めにしている場面です。種之助くんがちょっと背伸びしているところに注目して」と壱太郎。今井は「普段、女形の多いだけに、立ち役はなかなか見られません」と吉弥を推した。2014年版で吉弥と夫婦役を演じた事にも触れ、「今回は夫婦役ができなくて寂しい」とこぼす一幕もあった。
『GOEMON抄(SHOW)』
トークショーの最後には愛之助が挨拶し、「みんなで一丸となって頑張っています。明るい気持ちでぜひ、遊びに来てください。全力で進歩・進化していきたい」と意欲を見せた。
●万全な感染症予防対策でお出迎え
緊急事態宣言発令解除後、大阪松竹座は10月10日におこなわれた「紅ゆずる トークショー in 大阪松竹座」で公演を再開した。歌舞伎に関する公演は『GOEMON抄(SHOW)』が解除後初となり、訪れた観客がみな笑顔で劇場に足を踏み入れる姿が印象的だった。マスク着用、検温、手指の消毒、大阪府コロナ追跡システムの登録など入場時のチェック体制はもちろん、舞台では花道を使わず、客席も舞台前の席は販売せず、基本的に前後左右を空けた‟市松模様“の配席に。歌舞伎には欠かせない大向うもお休みと、徹底した感染予防対策を施して観客を迎える。
取材・文=Iwamoto.K 撮影=田浦ボン