別役実の名作「メリーさんの羊」が新キャストで始動 山の羊舎第9回公演 『「メリーさんの羊」Begins again.』の上演が決定
2021年2月2日(火)〜7日(日)下北沢 小劇場楽園において、山の羊舎第9回公演『「メリーさんの羊」Begins again.』の上演が決定した。
初演の中村伸郎から引き継いで三谷昇が2000 年から12年間、10 回にわたる連続上演を繰り返してきた「メリーさんの羊」。三谷の引退を契機に休眠していたが、9 年目に満を持して新キャストで蘇る。
本作は、別役実が中村の依頼で書き下ろし、1984 年1月から1989年まで渋谷の「ジァンジァン10時劇場」で男1:中村伸郎/男2:三谷昇/女1:井出みな子の出演で繰り返し上演された。
中村亡き後、2000 年のジァンジァン閉館公演から男1を三谷が引き継ぎ、男2:山口眞司で2012 年まで10 回の連続公演を行ってきたが、三谷の引退を契機に「メリーさんの羊」は休眠状態に入り、主催の「メリーさんの羊を上演する会」は、「山の羊舎」と名称を改め、別役作品を中心に活動してきた。
テーブル上の小道具類(機関車は2台目)写真や小さなパンくず一つにしても全て36年前の初演から引き継いでいる小さな出演者たちが醸し出すメリーさんとトム坊やの物語。今回は、男1を山口、3代目:男2に俳優座の中堅、加藤頼、女1に劇団民藝のベテラン女優白石珠江が加わり、山下悟の演出で、初回は「別役実メモリアル」として新たにスタートする。
演出・山下悟コメント
37年前、中村伸郎先生が「リア王」を基に 男優二人でできる芝居を書いてほしいと別役実さんに直接お願いして生まれたのが この「メリーさんの羊」です。老人を「リア」、机の上を走り廻る模型機関車を「道化」に見立てたこの芝居のタイトルが何故「メリーさんの羊」なのか.... その話は残念ながら別役さんにも訊き忘れてしまいました。
2000 年三谷昇さんで再演することになったのを機に演出を引き継いで以来、この芝居の魅力のひとつは、演劇に人間の五感の一つである嗅覚をとても重要なファクターの一つとして持ち込んでいることだと思ってきました。一人の男のその後の人生を決めることになった“匂い”という忘れがたい記憶。その“匂い”を一瞬、舞台の上に漂わすことができたら…。これができたら演出家冥利に尽きると思うのですが…。
山口眞司コメント
俳優を志し円の研究所を経て会員になり40年目を迎える2021年。よくもここまで続いたものだと思う一方で、時の流れの早さを実感。たくさんの出会いがありました。若き日に観た別役実作品に魅せられて、それを自分でも凌駕したいと思いはや30年余。「メリ-さんの羊」初演男1の中村伸郎先生が追い求めた”リアリティ”、二代目の男1三谷昇さんが目指した”たたずまい”。いつか自分も男1をやってみたいと・・・
中村先生が三谷さんに男1を譲り渡す時に男2の配役は三谷さんに一任。 幸運にも私が男2のお誘いを受け、12年間で10回の公演を重ね、このたび男1をやることに。そして男2を私から加藤頼さんへ。別役ワ-ルドの住人になることのむずかしさを実感しつつ、舞台の上で”そこにいる”ことを求めて「メリ-さんの羊」男1に挑戦します。
加藤頼コメント
俳優座に入団して16 年になりますが、別役実作品を演じるのは初めてです。別役作品といえば不条理、難解が常套句ですが、「メリーさんの羊」を初めて読んで(かなり緊張して読んだのですが)良い意味で裏切られた!と思いました。そこには一人の人間の心が抱えているわだかまりやこだわり、はかなさ、虚しさの感覚が溢れていて、考えている通りにはいかない人生のおかしさ、悲しさがとてもストレートに胸に響いてきました。男2は、三谷昇さんから山口眞司さん、そして私へと引き継がれた役でやり甲斐と責任を感じています。ほとんどが山口さんとの二人芝居なので、繊細に、深く気持ちのやりとりをしながら新しい「メリーさんの羊」を創り上げていきたいと思います。因みに父(加藤剛)と母は早稲田大学の劇団自由舞台で出逢いました。別役実さんも同年代なので多分接点があったのではと想像しますが、泉下の人となった3人に確かめる術はありません。今は唯、この巡り合わせを信じて、別役さんの世界を生きるのみです。
白石珠江コメント
「メリーさんの羊を上演する会」と銘打って「メリーさんの羊」だけを10回も連続上演してきた現在の山の羊舎。しかも新たなスタートとなる今回の舞台に参加できる! 役者として、こんなに嬉しいことはありません。芝居に真摯に向かい合う、大好きな山の羊舎の面々と初めましての加藤頼さんとの稽古が今から楽しみでなりません。日常と非日常が入り乱れ、観る人の想像力を掻き立てる大人の童話のような別役作品の世界で、活き活き生きられる様、楽しんでがんばりたいと思います。知らないお家の一部屋を覗き見している様なドキドキ感を味わいに、是非、いらしてください。