イエティ『杉沢村のアポカリプティックサウンド』初日レポート
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実は結構野心的?! 恐怖と笑いがミルフィーユになったホラーコメディ。
チラシを怖く作り過ぎたためか、本当に怖い舞台と誤解されてしまい、関係各位が「怖くないですよー」とアピールしているという噂の、イエティの新作『杉沢村のアポカリプティックサウンド』。都市伝説や怪談のサイトを見るのは大好きだけど、ホラー映画とお化け屋敷は絶対に受け付けないという、ホラーが好きなのが苦手なのか自分でもわからん私が、なかば人身御供の気分で初日の舞台を観てきました。
舞台上には、いかにも訳ありな雰囲気の一軒の廃屋。その場所で「入ったら命の保証はない」と言われる「杉沢村」に迷い込んだのではないか…とおびえる男女4人と、世界が終わる時に鳴ると言われる謎の音「アポカリプティックサウンド」の調査に来たオカルト雑誌関係者たちのエピソードが平行して描かれる。それぞれの人々に連続して不可解な出来事が起こり、やがて自分たちが都市伝説の世界のただ中にいると自覚させられる…。
イエティ『杉沢村のアポカリプティックサウンド
と、あらすじだけ説明したら「やっぱりホラーじゃん!」って思われそうだけど、私個人の感触では笑いと恐怖は9:1という感じ。確かにホラーの常套手段である大きな音でビビらせるとか、得体のしれないモノがチラ見えしてヒヤッとするシーンなどがあるにはあるけど、それに対する人物たちの反応が何かズレていたり、「今そんな話どうでもいいよ!」な内輪もめが起こったりして、恐怖でこわばった身体が瞬時に笑いでほぐされる。恐怖と笑いは親和性が高いとよく言われるけど、まさにそれを実感できる世界だ。
作・演出の大歳倫弘は、ホラー演劇の傑作中の傑作『ウーマン・イン・ブラック』を今回の参考のために観たものの、「あそこまで怖いのはイヤだ」と思い、できるだけ笑い混じりになるよう考えて作ったそう。しかも『こどもの一生』や『人間風車』などの「ホラーコメディ」と言われる舞台の名作が、笑いのパートとホラーのパートが割とキレイに二層に分かれた感じなのに対して、『杉沢村の…』はその2つのパートをミルフィーユのように何層にも積み上げているという印象だった。
イエティ『杉沢村のアポカリプティックサウンド
この構造だと、笑わせることだけに集中したらホラーの醍醐味は薄れるし、ホラーに力を入れ過ぎたら単なる怖い話になってしまう恐れがある。実はなかなか難しいことに挑戦をしている舞台で、実際どう演じればパーフェクトな按配になるのかは、まだちょっと手探りな所があるそう。しかしイエティの魅力である“くだらない”テイストはしっかりとキープされているので、そこは安心してよさそうだ。また「杉沢村」と「アポカリプティックサウンド」については、劇中で結構丁寧に解説されるので、都市伝説に詳しくない方はそこもご安心を。
2つの伝説に翻弄され、どんどんにっちもさっちもいかなくなる人々。そんな彼らに、どんな世界(舞台)の終末が訪れるのか? 年末年始であわただしい時期の合間を縫って、ぜひこの“伝説”の行末を見届けよう。