日常に潜む“説明できない怖さ”を可視化『恐怖心展 大阪』が開幕、尖端・集合体・ごみの山など約50点を展示

2026.4.13
レポート
イベント/レジャー

『恐怖心展 大阪』の巨大ポスター 撮影=黒田奈保子

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恐怖心展 大阪 2026.3.27(FRI)〜5.10(SUN) グランフロント大阪 北館 イベントラボ

『恐怖心展 大阪』が3月27日(金)に大阪・グランフロント大阪 北館 イベントラボにて開幕した。

同展は怪談作家・梨、ホラーコンテンツ制作などを手掛ける「闇」、テレビ東京のプロデューサー・大森時生が企画。昨年まで東名阪などで約18万人を動員した展覧会『行方不明展』に続く企画で、今回の大阪展は全国2会場目となる。

同展では「存在」「社会」「空間」「概念」の4つのエリアで構成され、それぞれのテーマに対する恐怖心を表現した約50点の作品を展示。包丁やペン先といった「先端」から、群体やパターンが集まる「集合体」、歯科治療への恐怖を表現した「歯科」、モノを捨てられない心理を映した「廃棄」など、日常生活に潜むさまざまな「恐怖」の形が並ぶ。

作品の背景に見えるものに恐怖心を抱いたり、言葉にできなかった自分自身の恐怖心に気づいたりする場面もあるだろう。「恐怖心」という言葉の奥に潜む、思わず背中がぞくっとする展示の数々。今回、ホラーが大好きな筆者が3月25日(水)に開かれた先行体験会に潜入し、気になった作品の一部を紹介する。

■そこにあるもの、見えないもの……心に潜む「恐怖心」とは?

そもそも「恐怖心」とは、危険や痛みを予期し、「恐ろしい」「怖い」と感じる心理的な状態を指す。その多くは、一度経験したことに対して抱く感情だろう。同展の公式サイトでは「恐怖心」という言葉に対して「あるもの・ことに対して、その人が生理的に感じる恐れや不安。単なる命の危険や苦痛を伴うものだけでなく、一見して恐怖の対象とは思えないものにも生じることがあります。これらの恐怖は、時に説明のつかない不合理さを伴います」と説明されている。

“恐怖の対象とは思えないもの”は他人からすれば何でもないことでも、本人にとってはその場から逃げたくなる、目を背けたくなるほど切実なもの。誰がどんな恐怖心を持っているかなんて、日常生活では知るすべがない。同展ではそれを作品として剥き出しにしている。

会場の入り口には、巨大な公式ポスターが掲示されている。そこには男性と思われる人物の顔の部分が黒い丸で切り抜かれた状態で写されており、その黒色はまるで元からそこには存在しなかった「無」のようであり、吸い込まれそうな漆黒の闇のようでもある。そこに自分自身の顔が当てはめることもでき、ホラー的な要素も強い。入り口からすでに「恐怖心」を感じてしまう人もいるだろう。

■人の数だけ名付けられた、たくさんの“恐怖心”たち……

入場すると、目の前にずらりと並ぶポスターにまた背中がぞくりとする。入り口に掲示されていたものと同じく、顔が黒い丸で切り抜かれたモノクロの人物たち。老若男女の表情は一切見えず、そこに記されているのは「○○に対する恐怖心」という言葉だけ。「臭気」「死体」「汚れ」など、この先にどんな展示が待っているのか、想像するだけでゾクゾクしてくる。

通路の両脇にポスターが並ぶ中を歩き抜けると、「存在に対する恐怖心」の展示からスタート。ここでは「そこにあるもの」、実体を伴う「モノ」への恐れに焦点を当てる。

「先端に対する恐怖心」ではボールペン、包丁、バターナイフにコンパスなどの尖った「モノ」をずらりと展示。限局性恐怖症の一種である「先端恐怖症」という言葉を耳にしたことがある人も多いだろう。防衛本能で思わず身構えるかどうか、その感じ方はさまざまだ。

続く「微生物に対する恐怖心」。汚れや雑菌への不安から、過剰なほど清潔を保とうとする人を見かけたことはないだろうか? 「コロナ禍を機に誰もが過敏になっていた時期もあったな……」なんて、筆者は軽い気持ちで見ていたが、あなたは身近な不安として共感するかもしれない。

フロア中央に鎮座する大きな球体は「風船に対する恐怖心」を表現。「バラエティ番組でよく見るやつだ!」とテンションが上がったが、作品に掲示された“恐怖心を抱く理由”を読むと納得。どこに「恐怖心」を抱くかは人によって違うのだ。

「集合体に対する恐怖心」には、筆者も大いに共感。“背中がゾワゾワする”タイプの展示だ。その後もたくさんの「モノ」への恐怖心が展示されていて、「これはイケる」「これはキツイ」と“あり・なし”を考えながら、次の展示へ進む。

■コミュニケーションで生まれる「恐怖心」

続く「社会に対する恐怖心」では、人間関係や行動に伴う不安を取り上げる。ここでは「それをすることが怖い」という、人と人とのコミュニケーションなどを経て生まれる恐怖心を紹介。「老化に対する恐怖心」では、「老い」への不安から手を伸ばした大量の薬剤やサプリメントが展示されている。「わかる~!!」と思う一方で、「やり過ぎでしょ……」とも感じさせる絶妙なバランス。その境界線も恐怖心の度合いによって異なる。「いつか自分もこんな風になるかも……」と思った瞬間、すでにそこに恐怖心が芽生えているかもしれない。

いくつかの展示は実際に体験もできる。「笑い声に対する恐怖心」では、見知らぬ誰かに笑われているかもしれないという想像に苛まれた人の恐怖心を体験できる。ヘッドフォンの奥から聞こえるクスクスとした笑い声。その恐怖心の片鱗、その有無を実感してみよう。ヘッドフォンの数は限られているが、QRコードを読み取れば、同じ音声を端末でも再生可能なので、混雑時にはこちらを活用したい。

ほかにも、今の時代ならではの展示も。写真加工アプリの過度な“修正”が恐怖心に繋がることもあれば、いたるところで動画が撮られる昨今、思わぬキッカケで恐怖心を抱くこともあるかもしれない。

展示作品は撮影可能で、映像機器やガラスケースに入っているものを除けば、実際に手に取ることもできる。映像は昔懐かしいブラウン管テレビで上映され、“VHS”時代を思わせる荒い画質も味わい深い。細部まで緻密に作り込まれた作品は“ジャパニーズ・ホラー”や“ワンショット映画”の雰囲気もあり、「恐怖心」をじっくりと感じとれる。

■より一層深い闇へと入り込む恐怖心

「空間に対する恐怖心」のエリアでは、体験型展示が続く。「汚れに対する恐怖心」では、黒く古びた畳が何畳も広がる。いったい何の汚れなのか――。その想像だけで湧き上がる恐怖心は人によって異なる。実際に土足で踏み入れていい展示だが、足を踏み出せない人もいるかもしれない。

「鏡に対する恐怖心」ではいくつもの割れた鏡が散乱。ガラスケースの上に乗るもよし、そこに映る自分自身を写真に収めるもよし。見る角度によって、そこに記されたエピソード以上の「恐怖心」を感じ取れるかもしれない。

展示作品は通路に沿って大小さまざまに配置されているが、足下にさりげなく置かれた作品もある。それがどんな恐怖心を示しているのか……。ぜひ見逃さずにチェックしてほしい。

■「恐怖心」のその先に見える世界とは?

最後のエリアは「概念に対する恐怖心」だ。実体を持たず、「幸せ」「ノスタルジー」「死」などの感情を扱う。これまで恐怖心を感じたことがなくても、誰かがそこに恐怖心を感じていることを知ると、なぜだかこちらにもその感覚が乗り移ってくるような気配があり、まるで“憑く”ような感覚を味わえる。

展示されている作品は全てフィクションだが、生々しく、人間らしさが随所に散りばめられている。ホラー好きとしては存分に楽しめ、最後の展示を終える頃には、自分でも気づかなかった恐怖心を持っていたことに気づかされる。

同展の出口では、公式パンフレットやTシャツなどのオリジナルグッズも販売。レジの最後には展示作品がゲットできるガチャガチャもあるので、ぜひ挑戦してみてほしい。筆者が最後に感じた恐怖心は――、「これ、どうやって持って帰ればいいの……」だった。

取材・文・撮影=黒田奈保子

イベント情報

『恐怖心展 大阪』
開催日:2026年3月27日(金)〜5月10日(日) ※延長の可能性あり
開催時間:11時〜19時30分 ※最終入場は閉館30分前
会場:グランフロント大阪 北館地下1階 イベントラボ
大阪府大阪市北区大深町3-1 グランフロント大阪 北館内
※「JR大阪」駅 徒歩5分
ホームページ:https://kyoufushin.com/
X:@kyoufushinten
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