OOPARTS「HAUNTED HOUSE」鈴井貴之にインタビュー
-
ポスト -
シェア - 送る
鈴井貴之
帰りの電車の中で、思い出し笑いしてもらえる、そんな舞台を作りたい
「水曜どうでしょう」の“ミスター”であり、大人気演劇ユニット「TEAM NACS」が所属するCREATIVE OFFICE CUEのタレントであり放送作家であり、役者でもある鈴井貴之のソロプロジェクト「OOPARTS」の第3弾の上演が決定した。その名も「HAUNTED HOUSE(ホーンテッド ハウス)」。
“お化け屋敷”と銘打った今回の作品ははたしてどのようにして生まれたのか、その謎を直接鈴井に伺ってきた。
――今回3作目ですが、なぜお化け屋敷という設定なのですか?
鈴井:舞台の上映期間に、次の舞台のアイデアが出てきちゃうんですよ。これから芝居やるのに、楽屋で次の舞台の話をしていることがあります。そんな中で一つ考えていたものがあったんですが、実はそれが僕の知ってる人が似たような設定で芝居をやろうとしていたそうで。しかも上演も僕より早いらしく。話を詳しく聞いたら、ちょっと似てるなぁと思ったので、パクったと思われたら嫌だなと思って1回辞めたわけです。
次に違う設定のお芝居を考えて、プロットも作ってスタッフと検討しているものを「じゃあこれでいこう」と台本を書き始めたんですが、10ページくらい書いたら自分で「面白くないなぁ、駄目だ」って…それも辞めることになり。既にその時点では劇場も取っていて、「おいおいおい」という状況になったんですね。面白くないと思った理由が、恋愛をモチーフにした話だったんです。男が出てきて女が出てきて登場人物がいても、観客のみなさんはどういう人物かわからないじゃないですか。初めからインパクトがあってドーンと芝居が始まったって感じのものじゃなく、会話の中でどんどん理解して、じんわりと盛り上がっていく構造になっていたんですが、それがなんかしっくり来なかったんですよね。
つかみはオッケー、みたいな芝居がしたいなって思いが今回非常に強かったんです。だからこういうものじゃないな、じゃあ何がやりたいかな、と考えていたんですね。
僕はテレビでよく扮装しますが、そこで見たことのない変な奴がいきなり出てきたら、「なんだ!?」って思うと思いますが、ただその場合でもそれを説明するのに手間がかかると、結局同じことに陥っちゃう。
何かないかなぁ、扮装とかメイクが面白くて…というのを考えていたところ、お化け屋敷の営業が終わった直後の、バックヤードで、まだメイクも落とさず着替えもしてない人たちが、いきなりそこで口論してたら面白いだろうって。ドラキュラやフランケンシュタイン、ろくろっ首がみんなで真剣に言い合いをしている。それは真剣になればなるほどバカバカしく目に映るだろう。お化け屋敷ですから、ある人間がいてドラキュラを仕事としてやってるわけです。見た目としての最初に目に飛び込んでくる、ドラキュラってどういうものか?とか、フランケンシュタインってどういうものか?ってのはみんな知ってるわけじゃないですか。
そういうのが口論している光景ってのは、まずバカバカしいだろうなっていう風に思いまして。「これだ!」…それでお化け屋敷という設定になったんです。
――つかみはオッケー!みたいな作品を作りたいと思ったとき、心境の変化みたいなものがあったんですか?
鈴井:コントみたいにしたいなって思いました。あんまり深く考えるような芝居とかじゃなくて、みんなでゲラゲラ笑ってバカバカしいな、みたいなものができないだろうかと。
この物語全体をそう作ろうと思ってるんです。日常で会社帰りや学校帰りで劇場に来て観てくださる。プライベートでも、大変なことをいっぱい抱えている現代人が多いじゃないですか。疲れていると思うんですよね。テレビでニュース見ても、どれが本当でどれが嘘かわかんない世の中で、芝居を観に来てまで、何か問題提起されて考えるのは酷じゃないの?って。
もちろん、自分もそういう芝居を作るんですけど(笑)、今回に限っては2時間、わぁー!観に行ってよかった!帰りの電車の中でも思い出し笑いしてもらえるような、そういうものを作ろうと。舞台を観に行ってリフレッシュできたね、ぐらいの役割になれるようなお芝居が作りたいって、強く思ったんです。
お化け屋敷はみなさん怖がったりするし「イヤー!」ってびっくりするものだと思いますけど。今回の「HAUNTED HOUSE(ホーンテッドハウス)」は、“笑えるお化け屋敷”というものを作ります。2時間笑いに来てください。そういう気持ちでこれからお芝居の具体的な稽古をしていきたいなと思っています。
鈴井貴之
――今回の「HAUNTED HOUSE(ホーンテッドハウス)」は、濃い出演者の方の方が多いなという印象なのですが、中でも森崎博之さんがいるのが気になるところです。以前、劇団「OOPARTS」の時に一瞬いらっしゃったんですよね?当時の舞台には出演されなかったそうですが。
鈴井:違うんですよ。違う劇団と掛け持ちしていたんで、そっちの方に行って。僕は、実は彼から他の劇団ともやるっていうことを聞いてました。彼は大学の演劇もあったんで、3つ掛け持ちっていうのは難しいだろうと。
「どっちに先に話をしたのか?」というと、「違う劇団さんの方から先に話をした」って言うので「じゃあ順番として、うちの方には出られないね」…というのが僕が聞いてる話なんです。
でも森崎に言わせると、森崎自身は他の劇団さんから、その劇団の主役とOOPARTSの脇役のどっちがいいんだ?って言われて。主役の方を取ったそうです(笑)。人参をぶら下げられて、そこにパクって食いついた(笑)。だけどそれがあったから森崎は安田顕をうちに出演させることにして、それで安田がOOPARTSでずっとやっていたという経緯があります。
――そんなこんなの経緯を経て、ようやく森崎さんが出演ということになったんですね。今回の出演は鈴井さんから声をかけたんですか?
鈴井:違います、(森崎が)出たいって言ったの。「次の芝居が、お化け屋敷なんだよね」みたいな話をお寿司屋さんで食事をしながら話していました。彼が出演する、というのは頭に一切なく「フランケンシュタインってのがお化け屋敷の社長で」と話していたら森崎が、「フランケンシュタイン?それ僕でしょ。僕、見るからにフランケンシュタインでしょう!?」と自ら言いまして。「はぁ?何?出るの?」「出たいです」「え?マジな話?」みたいなところから、本当に出ることになっちゃった。森崎くんとか藤村(忠義)さんとかは、オファーしてませんからね!
――藤村さんは前回公演同様「当然出るんでしょう?」ぐらいな勢いで?
鈴井:そうそう。今回はプロデューサーが「藤村さんはOOPARTSのレギュラーのつもりでいますよ」って聴いて。僕は今回は考えてないって言ってたんです。でも飲みの席で(藤村の声マネで)「出させろよ。俺、出るよ、出せよ。」と本人から言われて。しょうがないなあって(笑)
――森崎さんが出演されることに対して特別な思いはありますか?
鈴井:考えていなかったですね。今回でOOPARTS第三弾になるんですが、安田自身は出たいって言っていたんです。安田は元「OOPARTS」ですから「僕もいずれ出ます。1作目、2作目はまだ僕早いんで3作目ぐらいからだったら、僕いきます」って言ってたけど…森崎になりました(笑)
――TEAM NACSで内紛が起こるかもしれない(笑)
鈴井:安田さん曰く「今はロケットを飛ばすのに忙しいんです」って(笑)(TBS系列「下町ロケット」山崎役で出演)
――森崎さん、藤村さんだけでなく、他のキャストも楽しみですね。
鈴井:(渡辺)いっけいさんにしても、森崎くんや藤村くん、僕とかいい歳こいた親父が、そんなメイクしてバカやってるわけですよ。その辺のところに触発されて、若い俳優さん、女優さんたちがガーッとテンション高くついてきてくれています。
そもそも上地(春奈)さんは破壊力を持ってますから、ここは言わずもがななので。テンション高くいっている世界感を見たいなと思うし、そういう稽古をしたいなと思います。
――舞台の上演が始まってからも変わっていくんですか?
鈴井:と思いますよ。僕は変化すべきだと思っている。初日と千秋楽ぜんぜん違うじゃんってなってもいいと思ってる人間なんです。何か改善できることがあったら、1日1箇所でも変える。20回あれば20箇所変わりますからね。
「それは初日に来たお客さんに失礼でしょ」って言う人も中にはいますけども、そうではないと思うんです。
開店したレストランでももっと美味しくできるのに、開店した時の味のままでいかないとなんて店はないわけじゃないですか。そういうのもキャストの方からいろんな良いものが、日々出てきてくれたら嬉しいですけどね。こんなこと言ってて、現に一番僕が同じことをやらないですね。本番中にいたずらをいっぱいしますからね。次の出番の人間を舞台袖で羽交い絞めにしています(笑)「出れない。あぁー!」ってキャストの方がもがいて、それで間合いが変わるみたいな。「おかしいわ、あの人演出家なのに、自分の芝居を潰そうとしてる」って(笑)
――「SHIP IN THE BOTTLE」の時もそうだったんですけど、今回どんな舞台装置にされるのかも気になります。お化け屋敷の舞台裏ということで、何か計画していることはありますか?
鈴井:ありますが、今まさに検討中です。スタッフが頭抱えてますね。この人の言ってることを、どう具現化させようか!?っていう。この場では残念ながらまだお伝えできないんですけど。
普通のフラットな空間でお芝居をやるつもりはそもそもありません。舞台が安全な場所というのは嫌なので、演じる俳優さんたちも常に緊張感のある中で、バカなことやっているのが好きです。「そこがやっぱりプロですごいよねー」というのが理想としてるものです。お芝居の大仁田厚だと思っていただければ(笑)。そういう感じの仕掛けはしていきますよ!
鈴井貴之
****
鈴井貴之(すずい・たかゆき)
北海道赤平市出身。
’90年に劇団「OOPARTS」を結成。解散後は、タレント、構成作家、映画監督として数々の番組の企画・出演に携わる。’10年に「OOPARTS」プロジェクトを始動させた。’15年は、ドラマ「不便な便利屋」(テレビ東京系)の脚本・監督を務めるなど活動は多岐に渡る。
ヘアメイク:白石義人(ima.)
スタイリスト:鍛冶古 翔三(Yolken)
■日時:会場
東京公演 2016年2月12日(金)~2月21日(日) サンシャイン劇場
大阪公演 2016年2月26日(金)~2月28日(日) シアターBRAVA!
札幌公演 2016年3月18日(金)~3月20日(日) 道新ホール
■作・演出:鈴井貴之
■出演:渡辺いっけい、森崎博之(TEAM NACS)、上地春奈、多田直人(キャラメルボックス)、清水由紀、田島ゆみか、藤村忠寿(北海道テレビ)、鈴井貴之