映像でも活躍する韓国ミュージカル俳優たち。オンラインで観られる出演ドラマ作品3選&番外編/ホーム・シアトリカル・ホーム~自宅カンゲキ1-2-3 [vol.46] <韓国ミュージカル編>
ホーム・シアトリカル・ホーム~自宅カンゲキ1-2-3 [vol.46] <韓国ミュージカル編>
映像でも活躍する韓国ミュージカル俳優たち。オンラインで観られる出演ドラマ作品3選&番外編 by yuma
【2】『賢い医師生活』チェ・ソンファ役/ チョン・ミド
【3】『秘密の森』ファン・シモク役/ チョ・スンウ
【番外編】『ウラチャチャ My Love』テヒョン役/ ハン・チサン
韓国ドラマは1ジャンルとしてすっかり定着しているが、昨年は『愛の不時着』『梨泰院クラス』の大ヒットもあり、さらに視聴者層を拡大した印象だ。そんな韓国ドラマをミュージカルという視点から見てみると、ミュージカル俳優が数多く出演している。
ここではオンラインで視聴できるドラマ作品で、ミュージカル俳優が出演している作品をピックアップしたい。多くのミュージカル俳優がドラマに出演しているため、筆者が実際に舞台で観たことのある俳優に絞ってご紹介する。
【1】『愛の不時着』チョ・チョルガン役/ オ・マンソク
『愛の不時着』予告編 - Netflix
2020年のユーキャン新語・流行語大賞のトップ10に入るなど、日本でも大ヒットした『愛の不時着』。
韓国の財閥令嬢で有能な経営者でもあるユン・セリが、ある日不慮の事故で非武装地帯に不時着してしまい、北朝鮮の軍人リ・ジョンヒョクと出会うことから始まるラブストーリー。
韓国ドラマの王道とも言える胸がキュンとする展開と、これまでニュースでしかイメージしたことのなかった北朝鮮について、そこに生きる人々の描写や生活の風景も興味深い。分断された二つを繋ぐものは、政治的な何かよりも結局のところ人間の感情なのかもしれない。
二人を執拗に追い詰める北朝鮮の軍人チョ・チョルガン役のオ・マンソクは、演劇出身の俳優。確かな演技力でチョ・チョルガンの悪役ぶりを際立たせ、観ているこちらをハラハラさせた。ミュージカル『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』の韓国初演キャストの1人であり、ヘドウィグ役で2005年第11回韓国ミュージカル大賞主演男優賞を受賞している。オ・マンソク3度目の出演となった2017年の『ヘドウィグ~』を観る機会があったが、確かな歌唱力と彼にしか出せない不思議な魅力が印象的だった。
多くのドラマやバラエティー番組に出演しながらも継続して舞台活動を行っており、『キム・ジョンウク探し』『キンキー・ブーツ』『レベッカ』『オケピ』『ラ・マンチャの男』など数々のミュージカルや演劇作品に出演するほか、さらに演出も手がけるなど精力的に活動している。
『ヘドウィグ』ヘドウィグ役オ・マンソク(2017年/撮影=yuma)
【2】『賢い医師生活』チェ・ソンファ役/ チョン・ミド
賢い医師生活 シーズン1 | 予告編 | Netflix
2020年韓国で大ヒットした『賢い医師生活』。
主人公は’99年医学部入学の同期生5人。医師になって10年目となる40歳の5人を軸に、病院で働く人たちと患者やその家族などの日常を描く、病院を舞台にした大人の青春群像劇。
日常の人間ドラマに焦点を当て、丁寧な心情描写で医療ドラマ“だけ”にならない展開が新鮮。主人公5人が学生時代に組んでいたバンドを再結成し、1話ごとに物語のカギとなる楽曲の歌唱・演奏シーンが挿入されるなど、要素とドラマの組み合わせが効いている。主役のひとりでミュージカル出身の俳優チョ・ジョンソクが歌った「Aloha」は音源チャート1位を獲得した。制作陣はアメリカの『フレンズ』のような息の長いドラマにしたいと語っており、韓国での人気はまだまだ続きそうだ。2021年にはシーズン2が放送予定。
主人公5人の紅一点チェ・ソンファ役を務めたチョン・ミドは、オーディションを経て抜擢された。このドラマに出演するまでは映画・ドラマに1作品ずつしか出演しておらず、映像作品ではほとんど知られていなかったが、舞台では有名な存在。演劇やミュージカル『ドクトル・ジバゴ』『ラ・マンチャの男』『メイビー、ハッピーエンディング』など多くの作品に出演している。
『スウィーニー・トッド』のミセス・ラヴェット役は、パワフルな歌と血みどろの復讐劇のなかでもどこかチャーミングな姿が印象的だった。ドラマをきっかけに数多くの広告モデルに抜擢されるなど、今後の活躍がますます期待される俳優だ。
『スウィニー・トッド』ミセス・ラベット役チョン・ミド(2016年/撮影=yuma)
【3】『秘密の森』ファン・シモク役/ チョ・スンウ
『秘密の森』予告編 - Netflix [HD]
『秘密の森』は、子供の頃に受けた脳の手術をきっかけに感情が希薄になった検事が、ある殺人事件に遭遇することから始まる犯罪スリラードラマ。犯人を追ううちに深まる謎、複雑に絡みあう事件。一体真犯人は誰なのかーー。
緻密なストーリー展開、非常によくできた脚本で、1シーンも目が離せない。ほぼ表情が動かない検事ファン・シモクと情に厚く感情豊かな刑事ハン・ヨジン、正反対の2人がタッグを組み共に事件を追っていく。この2人の関係性と、登場人物それぞれのキャラクターが滲む人間ドラマも見どころのひとつ。
刑事ハン・ヨジン役に韓国のみならず日本やハリウッド作品にも出演し国際的に活躍するペ・ドゥナ、『梨泰院クラス』の長家会長チャン・デヒ役で強烈な印象を残したユ・ジェミョンも出演している。第54回百想芸術大賞テレビ部門で大賞・脚本賞・男性最優秀演技賞を受賞。視聴者からも続編を望む声が多く、2020年にはシーズン2が放送された。
主演のファン・シモクを演じるチョ・スンウはミュージカル界のトップスターであり、『ジキル&ハイド』『ラ・マンチャの男』『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』『スウィーニー・トッド』など多くのミュージカルに出演するほか、映画・ドラマでも活躍する韓国を代表する演技派俳優のひとり。
筆者が初めて見たチョ・スンウの舞台は彼の代表作ともいえる『ジキル&ハイド』だった。舞台上での役を生きる感情表現とそれを伝達する歌、広い舞台で観客に見るポイントを提示する動きの巧みさ、物語全体を牽引する演技力は何度見ても惚れ惚れしてしまう。作品ごとに違う顔を見せる演技は、見ているうちに本当にその人がいるのではと思ってしまうほど。“チョ・スンウそのものがジャンル”と言われるなど、その演技力は高く評価されており、ミュージカル・映画・ドラマの各分野で多くの賞を受賞している。
『ジキル&ハイド』ジキル/ハイド役 チョ・スンウ(2014年/撮影=yuma)
【番外編】『ウラチャチャ My Love』テヒョン役/ ハン・チサン
【公式】韓国ドラマ「ウラチャチャ My Love」DVD予告編
最後に番外編として、こちらを紹介したい。
『ウラチャチャ My Love』は、映画監督・俳優・脚本家を夢に持つ3人が経営する崖っぷちゲストハウスを舞台に繰り広げられるドタバタコメディ。常にテンションの高いおバカな笑いと、個性を持った愛すべきキャラクターの登場人物たち。世間から見れば“ダメ”な人たちが、むしろそこを個性として胸を張っている。
以前の韓国では、登場人物や場面設定を固定した1話完結で連続放映されるシットコム(シチュエーションコメディ)ジャンルが若手俳優の登竜門となっていた。しかし視聴率の低迷や制作環境の変化などの要因で2013年ごろからはあまり作られなくなったという。『ウラチャチャ My Love』はシットコム形式を取ったドラマと言われており、振り切った笑いを追求する作品性はシットコムを多く放送してきた韓国ならでは。ミュージカル俳優のソン・スンウォンや『愛の不時着』で詐欺師ク・スンジュン役を好演したキム・ジョンヒョンも主役のひとりを演じている。
このドラマにほんの少しだけだが、ひどい“クセ”を持つ先輩役でミュージカル俳優のハン・チサンが出演している。
演劇でデビューし、『ジーザス・クライスト・スーパースター』ユダ役、『デスノート』夜神月役、『フランケンシュタイン』アンリ役などを演じてきた。高音の迫力とロックまで幅広く歌える歌唱力の高さ、感情の流れに気を配った繊細な演技が印象的で、特に韓国版『デスノート』での心情を丁寧に追った役作りは、夜神月のキャラクターをより際立たせ、魅力的にしていた。ドラマでのコミカルなクセの強いキャラクターは、ミュージカルでの彼のイメージからはまた違った発見があり、演技の幅の広さを再認識させた。
『デスノート』夜神月役ハン・チサン(2017年/撮影=yuma)
今回紹介したドラマだけ見ても、挙げた俳優以外にも複数のミュージカル俳優が出演しており、ドラマに出演している舞台出身の俳優は非常に多い。今は韓国までミュージカルを観に行くことは出来ないが、気軽に見られるドラマ作品で韓国ミュージカルの片鱗に触れてみて欲しい。
文=yuma
作品情報
出 演 :ヒョンビン、ソン・イェジン、ソ・ジヘ
原作・制作:イ・ジョンヒョ、パク・ジウン
出 演 :チョ・スンウ、ペ・ドゥナ、チョン・ヘジン
原作・制作:イ・スヨン、パク・ヒョンソク、アン・ギルホ
出 演 :チョ・ジョンソク、ユ・ヨンソク、チョン・ギョンホ
原作・制作:シン・ウォンホ、イ・ウジョン
出 演 :キム・ジョンヒョン、イ・イギョン、ソン・スンウォン
原作・制作:イ・チャンミン、キム・ギホ