CrazyBoyが放つ異なる2枚のシングル「OH」「アムネジア」の背景にある想いとは
CrazyBoy
LDHきってのセクシーHIP HOP番長、CrazyBoyが、異なる2枚のコンセプト・シングル「OH」と「アムネジア」を2月24日に同時リリースした。映画『ある用務員』の主題歌でもある美しくダークな「アムネジア」と、最高にクールで官能的な「OH feat.清水翔太,OZworld」。その2枚に収録された全5曲すべての楽曲のMVを制作し、5日間連続で毎日MVを1曲づつYouTube上で発表。また、ソロ初となるオンライン生ライブ『CrazyBoy 1st ONLINE Live 「NEOTOKYO Festival」』にも挑むなど、1年3ヶ月ぶりとなるソロ活動は、スタートと同時にすさまじい勢いで世界を目指し始めている。三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBEのパフォーマーであり、グループのコリオグラフィーやビジュアル、MVのコンセプトなども手がけるELLY。多彩な彼の一人の男としてのリアルな生き様と、アルバムに向かって動き出したCrazyBoyの新たな未来についてインタビュー。
CrazyBoy
●止まってしまうこと自体がよくない気がするから
だったら、こういう状況で何が自分にできるのか●
ーー今回、「アムネジア」と「OH feat.清水翔太,OZworld」の2枚のシングルを同時リリースすることになったキッカケというと?
CrazyBoyはつねにデモ曲がたくさんストックしてあるんですけど、その中にあった「アムネジア」を映画のタイアップにしたいという提案を頂いたんです。 僕の作る曲って、なんとなく白と黒のイメージがあるんですよ。ちょうどその時に制作してた「OH」も、「アムネジア」とは両極端な曲だなと思ったので、どうせなら2枚をそれぞれ作品にして、ちゃんと色分けしてみんなに届けようと思って。 で、その2つを歌ってる人が同じ人であることを分かってもらえるように、ジャケットでも表現していて。 「アムネジア」のジャケットで黒いスーツを着ているのが僕自身で、「OH feat.清水翔太,OZworld」のジャケットの白いスーツの僕は鏡に写っている姿なんです。
ーー誰もが内面に併せ持つ、陰と陽のようなものでしょうか?
そうですね。
ーー去年は三代目としての大事な節目だったにも関わらず、ライブの機会を奪われた一年でもあって。とくに「アムネジア」はそういう状況への葛藤、苦しさを歌った楽曲にも聴こえるというか。
そういうやるせない感覚は、僕自身もそうですけど、みんなが経験した感情だと思うんですよね。だからそういう感情も込められていると思いますし、今の時代にはすごく感情移入しやすい曲なのかなと思っています。ただこの曲の、<失うことでさえ/臆病になりかけていた>という歌詞のように、止まってしまうこと自体がよくないことのような気がしていて。だったら、こういう状況の中で何が自分にできるのかなと考えたとき、YouTubeで映像を作ることに時間をかけたり、今回は全曲にミュージックビデオをつけてみようと思ったんです。こういう時期だからこそ出来た試みだなと思います。
ーー実際、「アムネジア」のビデオ、めちゃくちゃカッコ良いですもんね。
やっぱり僕はダンスが好きなので、こういうダークな曲でもダンスで表現するのが僕らしいかなと思って作ってみました。今回は歌声も、低いところはしっかり低く表現するのが僕の持ち味でもあるので、そういうところの声も使って作っていて。今回は、今まで作ってきた引き出しを全部開けた5曲になってます。
ーーそんな「アムネジア」からの流れで聞くと、さらに深い夜へと誘われていくのが「ステラ feat. JAY’ED」。
JAY’EDさんはCrazyBoyの制作面でずっとお世話になっていたのですが、僕が19歳の時にJAY’EDさんのバックダンサーをやらせて頂いていたこともあるんです。もっと前に出てきて欲しい声の持ち主でもあるので、今回やっとフィーチャリングが実現できました。「ステラ」は、一日だけでもいいから会いたい、恋愛関係にはなれないけれど本当に会いたい、みたいな。男がたまにめっちゃ思うようなリアルな感情を歌にした恋愛の曲なんです。あるんですよね、そういう、頭から離れない女性、結ばれない恋愛って。きっと男女問わず誰にもそういう感情はあると思うんです。
ーーだからこそ、去年末のおめでたいニュースが脳裏をよぎって思わず、大丈夫?と思ってしまいました(笑)。
ハハハ!(笑)。 全然大丈夫です、アーティストですから(笑)。そういう綺麗事抜きのリアルなことが今回いっぱい詰まってますね。「OH」も男女の夜の話なんですけど、みんながオブラートに包んであえて言わない、みたいなところを歌詞にしてますね。
ーーだから「OH」はMVもかなりセクシー。
大人な感じではありますよね。アーティストとしては、ああいう内容をかっこよく表現できたのはよかったなと思いますね。 海外だと、例えばアリアナ・グランデの「34+35」とかも、 みんな普通に聞いてると思うんです、メロディーもいいし。でも内容を聞いたら……曲のタイトルも69ですからね(笑)。 でもそういうのも世の中の人はメロディーがいいから普通に聴いてるわけだし、かっこよく聞こえるわけだから。そういう部分とかも、 曲にかっこよく落とし込めたら間違いなくいいことだなと思うんです。ファンの方からセクシー番長と呼んでもらっているので、そういうとこ出してきたな、みたいな感じで楽しんでもらえたら(笑)。
ーー「OH」にはフィーチャリングで清水翔太さんと OZworldさんが参加されてますが、この曲はラップのフロウからもすごく歌心を感じるというか。
ラップにメロディーがちゃんと乗っかってて、それが多分、今の音楽の最先端の感覚でもあると思うんです。海外で言うと、ドレイクとかもそうですけど、そういうものがヒップホップ系でも主流になっているというか。僕らもそういう感覚でやるのがいいのかなという感じで作ってみましたし、セクシーさを出すために、サビの<Oh/狂わせてる/Dirty mind>という部分では、ビートを半分に落として声もファルセットを使って色っぽいイメージを残しながら、またAメロになるとかっこいい感じに戻る、みたいなことを意識してトラックを作りました。
●意識の先にあるのは海外●
ーーやはり海外の音は意識します?
CrazyBoyソロはそうですね。シングルとしてはまだ2枚目なので、まだまだ音源をいっぱい出していく必要があるんですけど、今年中には世界に出ていきたい計画もあるので、かなり意識してますね。
ーー三代目も同じく視点の先には海外があると思うのですが。
三代目のスタイルというのは、あくまでも日本でやる音楽であって、歌詞も日本語がベースにあるし、英語バージョンとかも作ってないんです。でも僕の音楽は英語をめちゃめちゃ使うので、何なら全曲の歌詞を英語にして、向こうでド直球で勝負することもできる。そういうところで、言語と言う点では三代目よりも海外に挑戦しやすいところはあるかもしれないですね。
ーー振り付けも海外を意識しますか?
基本的にはそうですね。海外の僕が好きなアーティスト……アッシャーもそうですし、クリス・ブラウンとかも常に最先端のダンスを表現しているので、三代目で振り付けをする時も海外のダンスはやっぱり意識してます。アッシャーやクリス・ブラウンの振付師は知り合いなんですけど、彼独特の振り付けがあって、そういうところはやっぱり勉強になるというか。「(他と)違う」と言うことがいちばんの強みになる時代なので、そういうオリジナリティは三代目でもソロでも意識してますね。
ーー他と違う……たとえば和の要素を意識することも?
日本で生まれ育ったってところで、すでに和の要素が備わっているので、そこまで意識してないんですけど、「OH」のMVに出てくる女性は全員着物を着ていたり、 ビジュアルだったりセットだったり、そういうところは「和」を意識しています。ダンスに関しては、やっぱりグルーヴが重要なんですよね。すごく早く見えるとか、そういうところではなく、空気が伝わってくるようなダンスというのがあって。そういうダンスはすごく意識してますね。指先だけの動きで空気が伝わるような表現のダンスって、とくにアメリカのアーティストがすごくうまいんです。そこは僕もアメリカに行った時に勉強しましたし、その辺はすごく意識しています。
●やっぱり恋愛は面白い●
ーーところで、今、ELLYさんが着用中の耳付きの黒ニット帽子、めちゃくちゃ可愛いですね。
実は「DoCoDeMoDooR」のMVでもこの帽子をかぶってます。「DoCoDeMoDooR」はちょっと可愛らしさもある楽曲で、僕が考えるCrazyBoyというか、NEOTOKYOの未来的な感じも込められていて。今は状況的に友達とかにもなかな会えないじゃないですか。だから、そんなドアがあればすぐに会いに行きたいよという恋愛の曲にしたくて、声もファルセットを使って、ちょっと切ない雰囲気の曲にしました。
ーーCrazyBoyの音楽に恋愛は必須アイテム?
そうですね。やっぱり恋愛は面白いとめっちゃ思うんですよ。人それぞれ、思い出も何もかも違うじゃないですか。例えば恋愛中のカップルが聴いて、男性には共感してもらえたらなと思うし、女性がこの曲を聴いたら、好きな人に会いたいと思ってもらえたりとか。そういう感じになるラブソングを作りたいなって思いますね。
ーーELLYさんは以前取材で、「僕は女の子のわがままもオッケーです」とおっしゃっていて。女性の気持ちに寄り添いたいという思いは、リリックにも反映されてますか?
うちの母親を見ていても、女性はやっぱり強いなと思いますね。僕たち男からすると、わからないことがたくさんあるんですけど、 そういうところを尊重する方が、女性も自分らしくいられるのかなと思いますし、俺だったらこういう時はこういうワードを言いたいなと思うことを、リリックにしたり曲にしてますね。
ーー「Sunday Cofee」のやわらかい音とリズムとともに歌われる、<コップに淹れてるコーヒー/夜ぐらいまでまったり> <休息も絶対に必要>というフレーズとか、普段がんばってる人……とくに女心にはかなり刺さるかも。
休みも悪いことじゃないですからね。これはAmazing Coffeとのコラボ曲なんですけど、休みといえばコーヒーというイメージがなんとなく僕の中にあって。そういう遊び心をイメージした曲がみんなの心に刺さるのであれば、僕は嬉しいです(笑)。
ーーちなみに、今回のAmazing Coffeとのコラボメニューの中でELLYさんのおすすめは?
今回4種類のコーヒーとコラボ(「Sunday Coffee BLEND」、「HAPPY アフォガート ~Sunday Coffeeを添えて~」、「CRAZY アメリカーノ」、「ホットピンクモ~モ~」)したんですけど、前回「PINK DIAMOND」という曲とコラボしたアイスドリンクがめちゃくちゃ美味しくて、今回はそのホット・バージョン(「ホットピンクモ~モ~」)がオススメです。あと、「CRAZY アメリカーノ」はラムをちょっと混ぜて少し甘くなってるアメリカンコーヒーもすごく美味しいのでオススメです。
●僕のすべてはCrazyBoyに繋がり、三代目にも繋がっていく●
ーー今回、フィーチャリングでいろんなアーティストを迎えたり、各MVを5日間毎日YouTubeで1曲づつ公開したり(2月24日~2月28日までの5日間毎日YouTubeで1曲づつ公開された)、CrazyBoyにはプロデューサー的な視点もかなりありますよね。
なんでもプロデュースするのが好きなんですよね。三代目のダンスだったり、PVのイメージとかビジュアルを作ったりするのもそうですけど、そういうことが自分の得意なところだったりするので、音楽も、ただ作るというよりは、最終的にはライブを目標にしてやってるんです。そこは三代目もCrazyBoyも一緒かな。
ーー逆にELLYさんの中で、CrazyBoyと三代目を分けている基準は何なんでしょう?
「表現の幅」じゃないですかね。三代目はメンバーが7人いるので、自分を出せる割合はソロと比べると少ないと思うんです。あと、自分の位置付けとかキャラとかっていうのも三代目としては必要なものであって。でもソロだと自分が届けられるものが100%になってくるので、必然的に表現の種類も増えますし、かっこいいところ、セクシーなとこ、切ないところというのが、自分の素直なところで届けられるんで、そういうところが違うのかなと思いますね。
ーーさっき「最終的にはライブを目標にしてやってる」とおっしゃってましたが、今までは、音楽を作ることとライブはひとつの線になってたと思うんです。でも今はその線が少し複雑になっているというか。今、2つのバランスをどうとってますか?
音楽を作ってる人はみんなそうだと思うんですけど、僕らは特にライブを重視してるアーティストなので、そこができないのは辛いところではありますけど、逆にそれを準備期間だと捉えると、ものすごいことができるという、先を見据えて準備しているところだと思います。実際、今回も5曲全部にMVをつけるなんて、通常だとできないことですからね。それが実現できた、この時間を有効活用するということができたというところで、ポジティブに考えてます。
ーーおかげでELLYさんのYouTubeチャンネルもかなり充実してますもんね。
そうですね(笑)。アーティストとしてのイメージって、ちょっと手の届かない芸能人みたいなところがあると思うんですけど、僕という人間を知ってもらった方が、音楽をもっと身近に感じてもらえるのかなと思うんです。僕が普段考えていることや発想だったりというのはCrazyBoyに繋がりますし、CrazyBoyで考えていることは三代目のビジュアルだったりMVや振り付けにも繋がっていく。そういう意味でも、CrazyBoyは僕にとってはコアな場所、なんです。
取材・文=早川加奈子