民主主義が揺らぐ香港と沖縄を語る ドキュメンタリー映画『香港2019』×『生きろ 島田叡』先行上映&トークイベントをレポート
左から、日下部正樹監督、佐古忠彦監督
3月15日(月)、東京LOFT9 Shibuyaにて『TBSドキュメンタリー映画祭』の先行特別上映会&トークイベント『[香港、沖縄、今と未来へ]『香港2019』×『生きろ 島田叡』』が開催された。
上映とイベントは、3月21日(日)までユーロライブにて開催される『TBSドキュメンタリー映画祭』に先駆けたもの。この日は、民主主義が揺らぐ香港と沖縄をテーマに、前半は日下部正樹監督の『香港2019—あの時、何があったのか―』、後半は佐古忠彦監督の最新作『生きろ 島田叡―戦中最後の沖縄県知事』を特集。会場では映画祭で上映される『香港2019—あの時、何があったのか―』特別版(10分)が上映され、トークゲストに日下部監督のほか、ゲストスピーカーとして香港問題に詳しい立教大学の倉田徹教授、フリーライターの伯川星矢氏が登壇した。
日下部監督は真っ赤なジャンパーで登場し、「これはジミー・ライさんが、アップルデイリー(蘋果日報)を創刊した時に頂いたものです。ジミーさんが収監された今、こうしてこのジャンパーを着る機会があるとは思いませんでした」と振り返る。倉田教授は「香港研究を20年以上続けているが、この2年で予想もしないような抗議活動が起こった。そしてコロナ禍、国家安全維持法の施行と、若い人達の命がけの姿を日下部さんが描いていた」とコメント。香港出身で雨傘運動の取材や、周庭氏の通訳をつとめていた伯川氏は、「特別編をみて、『もう2年経つのか』と思った。いま香港の日常はまったく違う姿になってしまっており、映像の中には懐かしい香港があった」と感想を述べた。
また、倉田教授は「特別編にもあった民主派が圧勝した2019年11月の区議会選挙は、一種のデモでもあった。まさに民主主義を求め、人々が立ち上がった選挙だった。これが民主化運動だというものを見せつけられた」と語った。一方、伯川氏は「区議会選挙では若い人たちが多く当選し、警察に封鎖された香港理工大学に、新人議員たちが入ろうとしたが、折り合いがつかず入れなかった。しかし自分たちが香港の民意にこたえよう、香港全体の議題について考え動いたのは、新しい動きだった」と述懐。
さらに、倉田教授は香港の状況について、「国家安全維持法の施行により、政権に歯向かうこと、海外との連帯が禁止され、先日の全国人民代表者会議では、香港の選挙制度を変える決定がされた」と言及すると、日下部監督は「香港の高度な自治が変わってしまったことで、香港にあった自由の質が変わり、価値観が変わっていくのを感じている」と明かした。また、倉田教授は「国案法、選挙制度の変更と中国という巨大な権力が、今後どうなっていくのか。それを知るためにも香港を注視する必要がある」と話すと、伯川氏は「“今日の香港は、明日の台湾”といわれているが、香港人は香港の姿を世界に知ってもらうことで、自分たちの意思を示そうとしている。海外にいる香港人も、各々の活動を通して、ちがう風景をもたらすこともあるかと期待している」と語った。
そして、日下部監督は「タイ、ミャンマーのデモ活動をみていると、2019年の香港の若者の影響を強く感じる。『香港2019』では、香港の若者の姿を描いた。2019年からの抗議活動はまだ終わっておらず、まだ名前がついていない。いまはまだ光が見えないが、これからも香港を見ていきたいと思っている。『香港2019』に続く作品を作る時は、またちがう世代を主役に、描きたいと思っている」と次回作への意欲も見せると、会場からは大きな拍手がおこった。
続いて、3月6日(土)から沖縄・桜坂劇場での先行公開が始まった『生きろ 島田叡―戦中最後の沖縄県知事』の予告編を上映。メガホンをとった佐古監督と、前半に続いて日下部監督が登壇し、後半のトークイベントがスタートした。
佐古監督は「住民側から戦争を描いた作品は多くあるが、『生きろ』は権力側の人間から見た戦争を描いている。権力側にいた人間も個であり、そこには人間の姿があるはず。そして現代にも通じる“リーダー論“というテーマもあり、是非多くの方にご覧頂きたいと思っている」と見どころを語る。一方、日下部監督は「体制側の人間と決めつけてしまうと見えなくなってしまうものもある。歴史をみるには様々な視点から見ることが大切と示してくれるような作品」とコメント。
主人公の島田叡については、写真がわずかに残るのみで、本作で使用されている映像資料は全てアメリカが撮影した資料だという。佐古監督が「数点の写真しか残されていない中で、どう島田叡という人物を描き出すか。それが自分の挑戦だと思った。迷い、苦しみなんのために生きるのか。命と向きあった人たちの物語となっている。現代にも通じる命の大切さを伝えたい」と思いを語ると、会場は大きな拍手に包まれた。
『TBS ドキュメンタリー映画祭』は3月18日(水)から21日(日)の4日間、ユーロライブにて開催。イープラスStreaming+にて上映・トークを配信。
『生きろ 島田叡(あきら)―戦中最後の沖縄県知事』は2021年3月20日(土・祝)よりユーロスペースほか全国順次ロードショー。
作品情報
上映情報
プログラム:TV放映版から新たに編集をした作品に加え、劇場公開作を含む全 22 作品を上映
各上映には監督、その他ゲストによるトークイベントを開催予定。
共催:ユーロスペース
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当日券:一般 1,500円 / 大学・専門学生・ユーロスペース会員・シニア 1,200円 / 高校生 800円 / 中学生 500円 / 障碍者割引 1,000円(付添いお一人様まで有効)
上映日の3日前よりユーロスペース HPまたはユーロスペース劇場窓口にて販売いたします。
前売券は劇場窓口にて座席指定券とお引き換えください。HPでの購入にはご利用できません。
新型コロナウイルス感染予防のため、ご来場の際はマスクの着用をお願いいたします。
検温で 37.5 度以上のお客様にはご来場をご遠慮いただきますので、何卒ご了承ください。
やむを得ない事情により作品、上映素材、及び上映時間が変更になる場合がございます。
ゲスト・イベント内容は予告なく変更となる場合がございます。
映画祭、先行特別上映会の配信上映もございます。
配信:イープラス
発売中
配信プラットフォーム:イープラス「Streaming+」
※アーカイブ配信あり/上映開始後1週間まで購入可能です。
映画上映+アフタートークあり。
詳細は【こちら】から