ReoNaが新作「ないない」に込めた「絶望の深度を深く、浅く、すくい上げる楽曲たち」
ReoNa 撮影:大塚正明
“絶望系アニソンシンガー”ReoNaが5枚目となるシングル「ないない」をリリースした。TVアニメ『シャドーハウス』エンディングテーマである表題曲に、毛蟹制作の「まっさら」、傘村トータが作り上げた「生きてるだけでえらいよ」、更に「あしたはハレルヤ」の4曲はどれも違う輝きを放つ楽曲たちだ。一つ一つの作品を作り上げるたびに、しなやかに強くなっていくReoNaに今作について話を聞いた。
■「ないない」では、言葉の持つ“音”をすごく大切にした
――今回は、TVアニメ『シャドーハウス』エンディングテーマ「ないない」のリリースに関してお話を聞ければと思います。まずこの「ないない」という楽曲の第一印象はいかがでしたか?
これをReoNaが歌ったらどうなるんだろうな? と思いました。元々オタクだった自分としては、クラシカルな楽曲っていうのも身近にいっぱいあって。ボカロ曲もそうですし、ゴシックやシンフォニックなサウンドがある中で、自分がそれを歌う未来は、あんまり想像してきてなくて。
――今までの楽曲と比べてもかなりタイアップとなる作品の世界観をハッキリ表しているような印象があったんですが、楽曲に対しての取り組み方もお聞きできれば?
レコーディングの前に、当時発売されていた原作6巻までは何度も何度も読んでレコーディングに臨みました。今回は今までにないくらい影を感じさせるところがすごくある楽曲になったなと思っています。今までずっと、言葉をお届けすることを大事にしてきたんです。言葉の意味だったりとか、言葉の持つ力みたいなものだったりとかっていうところを、大切に歌ってきて。
――そうですね、ReoNaの楽曲にとって言葉というものは比重が高いと思います。
今回「ないない」では、言葉の持つ“音”をすごく大切にした歌い方をしていて。実は主旋律を違う声で歌ったりもしてるんです。Aメロの低い声のReoNaがいて、その中でささやくような声のReoNaがいて、みたいな。そういう何本も重なる、同じ音を歌っている声がいくつもあるというのは今までそんなに無かったので、歌という部分でも作品に寄り添って、世界観に近づいているかなと思います。
――ちょっとクラシカルで、ダークな雰囲気もある楽曲ですが、サビ部分のメロディとか聴くときっちりポップスの曲だという印象を持ちました。
はい、そうだと思います。
――しっかりポップスを歌うReoNaさんというのが印象的だったんです。
ストリングスやウッドベースの音色という、作品の世界観に寄り添うような音色もあるんですけど、それプラスデジタルな打ち込みサウンドがベースにあるというところが、また一つポップスさを際立たせてくれたのかなと思ってます。
――確かにただ弦とかピアノだけでと言うよりは、良く聴くといろんな音が重なっているのが面白いですね。
そうなんです。もちろんイントロが声で始まるのもそうですけど、それだけじゃなく、ガラスが割れるような音や聴いたことがないデジタルな音が入っていたり。クラシカルなイメージのはずなのに、なぜか新しい感じがするっていう融合を、音でも作ってもらっていると思います。
――デビュー曲「SWEET HURT」をきっちり歌い続けてきた今のReoNaが歌う「ないない」は凄くシンガーとしての進化を感じました。「SWEET HURT」って比較的シンプルな楽曲だと思っているんですけど。でも「ないない」はシンプルとはいえない楽曲で、それをきっちり歌いこなしてるのは凄いと思ったんです。
ありがとうございます。
――いわゆるReoNa的って言うと言い方悪いかもしれませんが、「いない」っていう言葉が入っていながら、何かポップネスを感じるところは、デビューのときに感じたものと同じようなものを感じていて。
今回の「ないない」は、今まで踏みしめてきた先でたどり着けた楽曲だと私も感じます。今まで真っすぐに「SWEET HURT」を歌ってきたからこそ、今回韻を踏む部分や声色にも挑戦できたのは、今までReoNaの声というものに、チーム一丸となって向き合ってきたからだと思います。
――あと今回、毛蟹さんとハヤシケイさんが歌詞を共作しています。個人的に印象的だった部分が「何者でもないまま 何もできないまま」っていう言葉。ここもやっぱり「unknown」を感じさせるというか。
ハヤシケイさんと毛蟹さんの共作は、「絶望年表」以来2曲目なんです。ハヤシケイさんは歌詞の意味を凄く考えて作ってくださっているんですけど、例えば傘村トータさんと作り上げた「unknown」では、いろんなところでいろんな「何者かになる自分」がいて。本当の自分って、じゃあ一体どれなんだろう? というのを歌ったのに対して、今回ハヤシケイさんは「そもそも自分は、他者の鏡である。映しだすこと、他者との比較によって自分はできていくから、そもそも本当の自分なんて無いんじゃないか」っていう……「unknown」に対してのハヤシケイさんの一つの返答と言うか。
――ああ、ReoNaを媒介にして作家同士の語り合いが行われてるんですね、それは凄い。
今回は自分が無い、個性が無い、存在が無い……“ないない”っていう言葉が、歌詞の始まりで、それに対して毛蟹さんがメロディを作ってるんです。『シャドーハウス』っていう作品に対して、ボソボソと紡いでたAメロからパッと言葉がハッキリするBメロという構成なので、言葉が真っすぐ届いたらいいなと思って歌いました。
■学校ってすごく不思議な場所だと思った
――ReoNaが歌う意味と、『シャドーハウス』の主題歌である意味の接合点の探し方が本当に上手い歌詞だなと思っています。あと印象的なのはMVです。拝見したんですけれど。これまでインタビューをずっと行わせてもらっている身としては、ReoNaが学校にいるというのは、グッとくるものがありました。
学校ってすごい不思議な場所だなと思いました。初めて行った学校なのになんで懐かしさを感じるんだろうなって。学校っていう名前がつく場所なだけで、いろいろ思い返すことがあったりだとか、初めて訪れたのに、自分の記憶が刺激される感じというか。
――どこの学校に行っても、ちょっと懐かしいってありますよね。
そうなんです。机が低いなとか。家庭科室ってあったな、とか。チョークの粉が床に散らばってる感じとか。
――映像としての表現も、結構刺激的なものになっていましたね。
学校っていうロケーションになるところが、まず私は驚きだったんです。でも鐘の音や、ガラスが割れるような音が、あの映像の中でものすごくピッタリハマっていて。私も平行移動するために、自動で動くスケートボードの上に乗ったり、積み重ねた椅子の上に乗ったり、周りでダンサーさんが踊っている中で撮影してたり、今までに無い作品作りに挑戦させていただきました。
――カット全部がかなり凝ったものになっていて刺激的だし、こういう切り取り方もできるんだっていうのは面白かったですね。
本当に「こういう切り取り方もできるんだ」と思いました。無個性にも見えるマネキンの中で逃げ出そうと走り出す少女とか、『シャドーハウス』の中も彷彿とさせる黒い羽根や紙吹雪だったり。楽曲と合わさって、すごく刺激的な迫力ある映像になったなと思います。
■作詞・作曲担当の毛蟹からの挑戦も感じる楽曲になった「まっさら」
――そして2曲目「まっさら」ですが、これは凄い曲だと思いました。
これは私も壮大な一曲だと感じています。
――曲が上がってきたとき、どうでした?
この曲は、話し合いして作ったと言うよりも、唐突に毛蟹さんから、「『シャドーハウス』を読んで、こんな曲もできました」といただいた楽曲だったんです。単純に曲が素敵だなと思ったのが第一印象です。あと、毛蟹さんからの「今のReoNaなら、こういった曲も歌えるのでは?」っていう、挑戦も感じる楽曲だと思いました。
――メロディの完成度も凄く高いですよね。毛蟹さんもReoNaさんと楽曲で戦ってるという印象を感じましたね。
メロディの気持ち良さが第一印象としてある曲だと思うんですけど、自分が歌うとなると、「これは大変な曲だぞ」という感じで。歌詞カードを見なくても「まっさらな命で」っていう言葉が届くように歌うっていうのが、挑戦でもありました。
――本当に印象の話になってしまうんですけど、僕はこれは「Rea(s)oN」に近いものを感じたんです。「Rea(s)oN」は、神崎エルザの曲として生まれたものですけど、同じテーマを”ReoNa“として歌ってるような曲だなって思ったんですよね。
そうですね、『ガンゲイル・オンライン』っていう作品の中でのシンガーソングライターとして、彼女が紡ぐ「Rea(s)oN」のような場所にあるかもしれません。
――共通点が多いと思ったんです。ちょっと話が「まっさら」とはズレるんですが、「Rea(s)oN」など神崎エルザの楽曲たちをライブで歌うときは、神崎エルザから借りてる感覚はあるんでしょうか?
借りてる感覚は無いです。そういう気持ちでいちゃダメだなっていうところがあって。ReoNaを受け取りにきてくださっている人に、神崎エルザと私を重ねて見てもらえることはあるだろうな、と想像はするんです。
――思い入れがあるファンの方もいるでしょうしね。
アニメの大事なシーンを思い起こしてほしいなとも思うし。ここにいる一人ひとりが、あのときの小比類巻 香蓮(こひるいまき かれん)のような気持ちでいてくれたらいいなとは思うんです。でも神崎エルザの曲であると同時に、ReoNaのすごく大切な楽曲でもあるんです。イベントで紡ぐときは、今の自分として、今日だけの「Rea(s)oN」がどれだけ届けられるかっていうところで歌ってます。
――ファンの中では、『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』からReoNaさんを知った人も多いと思うんです。ならそういう人はReoNaさんの何処かに神崎エルザを感じる部分もあるかもしれない。でもこの「まっさら」をライブで歌ったとしたら、そこにはもう聴いている人と、ReoNaの真の一対一しかないんじゃないかと。お客さんの感情を受け止められる存在じゃないとちゃんと歌えないような強い曲だと感じたんです。
本当にそう思います。ReoNaとして”命”っていうものはすごく大きいテーマなので。
――「Null」のときも感じたんですが、いつもカップリングも表題曲に負けないヘビーで強い曲ですよね。
「カップリングだし」っていう思いでは作っていないです。リード曲になるものにはリード曲としての「らしさ」があると思うんですけど、それに対して、「カップリング曲だし」っていうのを言い訳にしたことは一度も無いというのは、チームの制作を通じて凄く感じます。
■傘村トータと語り合った「病むときの深度」のこと
――では、3曲目に行きましょう。「生きてるだけでえらいよ」。
楽曲を作るに当たって、傘村トータさんとお話をさせていただいたんです。まず曲はピアノ一本で、歌詞も曲も今回は傘村トータさんに今回お願いしたいですって話になって、二人でお互いの共通項探しと言うか、重なるところを探すっていうのを電話でさせてもらったんです。
――なるほど、その中でどんなお話に?
例えば、こう「病むときの深度」みたいなものがあるっていう話になって。深度1のときに聴ける曲、3のときに聴ける曲、6ぐらいまで心が揺れちゃったときには、もう3とか1とかのときに聴いてた曲は眩しくて聴けなくなっちゃうよね、みたいな。
――病むときの深度……でも凄く分かります、その感覚。
それで、私にとって“深度が深くても聴ける曲が作りたい”って話を傘村トータさんがされてたんです。その流れで「本当に苦しくなっちゃったとき、辛くなっちゃったときって、どういう風に寄り添われたいんだろうね?」っていう話をしたんです。
――答えは出ましたか?
やっぱり「がんばれ!あなたは頑張ってるよ」とか「そのままのあなたでいいよ」とか、そういう言葉は眩しいよね。本当に「生きてるだけでえらいよ」って言いたいし言われたいよねっていうところに辿り着いたんです。だけどその言葉すらも、真っすぐ言われてしまうとやっぱり眩しいんですよ、深度が大きいときは。
――誰かに何かを言われること自体がしんどい。
そうですね。だから「生きてるだけでえらいよ」って思っているけど、「生きてるだけでえらいよ」って言わない曲にしたいよね、って話になったんです。でもそれって、すごく難しいことじゃないですか。傘村トータさんはそれをどんな風に表してくるんだろうなと思って。
――そうですよね。
そうしたらすぐにこの曲が「できました」って届いて。衝撃でした。あの話の果てに、この角度からこの深さで、誰かの考え事を覗いているような、日記を覗いているような、こんなリアリティがあって……手を差し伸べるわけでもなく、ただこういう日は「私にもあったな」って思えるという。本当に衝撃でした。
――この曲って女の子が誰かに一人語りしてる歌詞なんですけど、これは傘村トータさんのフィクションと言うか、作られたものなんですか?具体的にReoNaさんにこういうことがあって、っていうヒヤリングで書かれたのではなく?
まったくそうじゃないんです。私じゃなく、傘村トータさんの中から生まれた来た言葉ですね。
――それは凄いですね。
でも私、この中に描かれてること、ほとんど経験があるんです。歩くのもしんどい日あったし。駅から家までの距離が、もう何百メートルにも感じられる日も、電車の中にいられなくなって駅のホームでぐったりすることもあったし、小さいころ生活の中で苦しいことがあったときに、「日本に生まれただけで幸せだって大人は言うけどさ……」みたいなこともあったし。
――傘村トータさんという存在とReoNaさんは近いところはあるのかもしれませんね。傘村トータさんの曲……「贖罪」とか聴いても、何かReoNaさんとニアな思想を持ってるような。傘村トータっていう存在と楽曲性はどう思われます?一緒にモノを作る人として。
■誰にでもなく、語るように歌った
傘村トータさんは、楽曲を作る上で「必ずどこかに救いを入れたい」っておっしゃってたんです。その救いみたいなものが、凄く私自身に刺さるんです。「贖罪」とか「大切な人たちへ」とかそうなんですけど、言葉自体が物凄く鋭利でも、その中にある優しさみたいなものを感じていて。聴いてくれる誰かを考えながら楽曲を作られる方なんだと思っています。それはご一緒してからも、ご一緒する前にも感じたことです。
――この曲は歌詞に接続詞があって。とか「だけど」とか「ほら」とか「なんか」とかいうのも今までにないものというか。
話しかけてますよね、独り言のようで。
――これ、ReoNaさんが一人で喋っていて、それに対して相槌も何も無い、ただリスナーはそれを黙って聞いてると想像すると面白いと思ったんです。ただ愚痴を言いたいときに「いや、でもおまえそれは違うんじゃない?」とか言われたく無いときもあるじゃないですか。
あります。 ただただ、自分一人では抱えてられなくて、誰かに持ってて欲しいとまでは言わないから、ポロポロ言葉が零れ出してる感じというか。
――歌詞を見ていくと、「でも」って言葉を結構言ってるんですよね、こういうネガティブなときって、「でもさ」ってサラッと言ってしまうのがリアルだなって(笑)。
「なんかさぁ」とか「でもさぁ」とか「だって、こうじゃん」みたいな(笑)。
――その中でもすごくメロは綺麗なんですよね。ピアノアレンジは荒幡亮平さんですが、歌としてのこの楽曲の印象はどうでしょう?
もちろん歌ってるんですけど、話しかけてると言うか。この記事を読んでらっしゃる方には、ぜひブックレットを開いていただきたいんですけど、小説とか日記とか、文章っていうものをメロディの中で表現しています。歌と語りの中間ぐらいですかね。
――ちょっとチャレンジですよね。
チャレンジでした。レコーディングは、ピアノと一緒に最初から最後まで、途中で止めることなく歌いました。声のトーンも嘆いているように聞こえたら違うなと思って。「こんなことあったんだよ」って話しているぐらいのトーンにしたいなって思いがありました。
――なんとなく、ReoNaさんが家で猫に向かって「ねえ聞いてよ」とかってやってるようなイメージが浮かびました。
そうですね。 誰にでもなく「こんなことあってさ。なんかさ、こうだったんだよ」っていう感じです。
■ReoNa発信で生まれた「ジョン・デンバー」という歌詞
――そして4曲目、期間生産限定盤の方に入る「あしたはハレルヤ」。僕は、今回の4曲の中で、これが一番とんでもない曲だと思いました。まず、いよいよちゃんとカントリーミュージックを出してきたなと。
はい、いよいよ真っすぐに、カントリーミュージックです。
――まず歌詞も言葉遊び的なものになっています。これをやる心の余白がReoNaさんの中に生まれたというのが凄いなと思ったんです。
ここまで真っすぐカントリーを追求して、ここまで朗らかに明るく絶望を歌うっていうのは、今までだったら挑戦できてなかったページです。
――これ歌ってて、楽しいんじゃないかなって思ったんですけど。
楽しいです、楽しかったです。この曲で歌われているものはちっちゃな絶望なんですよ。「あれも嫌だ、これも嫌だ」とか「なんか疲れちゃったな、うまくいかないな」みたいなものなんです。それを空気を含みながらフワリフワリと歌っているというか。
――エアリーな感情は感じましたね。今まで歌ってきた中で、「ふん ふふ ふん ふん ふーん」って歌詞は想像できなかったのもあります。
この「ふん ふふ ふん ふん ふーん」のところは、最初にメロディが上がってきて、仮の歌詞を当てはめていていたんです。私がスタジオで鼻歌で「『ふん ふふ ふん ふん ふーん』って入れてみたらどうですか?」と実際歌ってみたら「あれっ! 意外とハマるな」ってところから残り続けたんです。
――この部分だけ作詞ReoNaですね(笑)。
実はこの曲、今までで一番、私が言葉を提案したものが入ってる曲なんです。そもそも楽曲ができ上がる瞬間に初めて立ち会った楽曲なんです。
――そうなんですね。
毛蟹さんと、朝6時半ぐらいまで延々と「最後のここの行、この言葉にします」ってところまで立ち会いました。そういう意味でもすごく思い入れがある楽曲ですね。「モロヘイヤ」とか。「ジョン・デンバー」とか「マカダミア」とかは、考えさせていただきました。
――えっ! この「ジョン・デンバー」はReoNaさん発信なんですか?(笑)
そうなんです。
(編集部注 ジョン・デンバーは1970年代のポップ・カントリー界で代表的なシンガー)
――思わずちょっと声が出ちゃいました(笑)。 「モロヘイヤ」はわかる。「マカダミア」も、まあわかる。「ジョン・デンバー」もだったとは……。
思い浮かんで提案したときは、「これ、怒られなかったらこのままいきたいな」って思いました。
――「そう言えば、どう言えば、ジョン・デンバー」って、もう駄洒落ですもん。
駄洒落ですね(笑)。
――これを歌って、嫌味じゃない余白があるのは凄いなと思いました。ライブでは「トウシンダイ」とか「怪物の詩」とこの曲が共存できるってことですよね。
はい、振り幅が凄い感じになってきましたよね。
――絶望系の振り幅ですよね。滅茶苦茶会社で怒られて「もうどうでもいい!」くらいの絶望じゃないですか、この曲は。
寝坊して遅刻したけど、行かなきゃいけないしな……とかそれくらいのプチ絶望。さっきのお話で言うと、深度が浅い絶望ですね。
――それを許容できるというか、「わかるわかる、私そんなときもある」っていうライトな絶望を表現できるようになったのが、凄いと思ったんです。
カントリーって、凄く明るく楽し気な曲なのに、よくよく聴くと「今日はツイてない日だった」とか言ってたりするんです。そういうところもReoNaとして発信できるようになったのは、これまでいろいろなものを踏んできたからだと思ってます。
――デビューした時にこれを渡されても、なかなかいい表現にならなかったんじゃないかと。
ならなかったと思います。その時の私には、理解できてないと思います。寄り添い方っていうものへの理解と言うか、自分がかみ砕いて表現できるものにはなってないんじゃないかな。
■真剣になることが尊いと思えるようになった
――シンガーとして、出来ることが増えたというのはもちろんあると思うんですが、プライベート含めた生活の中で、自分の幅が広がったなって思ったりすることってあるんでしょうか。
22年生きてきたんだなって思う瞬間はあります。前はこんなに真剣になれなかったなって思う瞬間もあるし。何かと自分への言い訳で折り合いを付けることが、悪い意味で得意な子だったので。
――自分の言い訳ですか。
その言い訳が必要なくなってきたというか、真剣になることが尊いことだって思えるようになったと言うか。元々、真剣になればなるほど、結構バカを見てきたんです。騙されもするし、裏切られもするし、必死に頑張っても頑張っても鼻で笑われるし。
――それは辛い。
今、真剣に頑張れば頑張るほど認めてもらえて、真っすぐに努力することに対して、誰も笑わない場所にいられるから、今の自分がいる、っていうのは思います。環境の変化というか。
――「なにマジになってんの?」って言う人って、なぜか一定数社会にいますよね。
そうなんです。笑われたくないから、努力も隠すし、「なあなあでやっててうまくいくことがカッコイイ!」みたいな刷り込みがあった時期もあったので。そこからは、ちゃんと抜け出せたなって思います。
――でも本当に、どの曲もライブで聴きたいなって思いました。
ライブが楽しみです。まず思ったのが、聴いてくれる皆さんが、どんな顔するんだろうな?ってことだったんです。皆さんの最初に聴いたリアクションが見たいぐらい。いろんなシングルを経て、「unknown」という初めてのアルバムが出て、その後に出るこの新しい扉を開けまくった一枚を、どう受け取って頂けるんだろう?っていうのはあります。今は『シャドーハウス』という作品と共に、受け取ってくださった方の声も届き始めてるので、「良い」って言ってくださってる方の声を聞いて「他の曲もきっと大丈夫だ、楽しんでいただけるだろうな」って思ってます。ちょっとドキドキもしていつつですが、反応が楽しみです。
インタビュー・文=加東岳史 撮影=大塚正明
リリース情報
ReoNa 5th Single「ないない」
01. ないない(TVアニメ「シャドーハウス」エンディングテーマ)
作詞:ハヤシケイ(LIVE LAB.)、毛蟹(LIVE LAB.) 作曲:毛蟹(LIVE LAB.) 編曲:小松一也
02. まっさら
作詞:毛蟹(LIVE LAB.) 作曲:毛蟹(LIVE LAB.) 編曲:毛蟹(LIVE LAB.)
03. 生きてるだけでえらいよ
作詞:傘村トータ(LIVE LAB.) 作曲:傘村トータ(LIVE LAB.) 編曲:荒幡亮平
04. ないない -Instrumental-
【期間生産限定盤】
01. ないない(TVアニメ「シャドーハウス」エンディングテーマ)
作詞:ハヤシケイ(LIVE LAB.)、毛蟹(LIVE LAB.) 作曲:毛蟹(LIVE LAB.) 編曲:小松一也
02. まっさら
作詞:毛蟹(LIVE LAB.) 作曲:毛蟹(LIVE LAB.) 編曲:毛蟹(LIVE LAB.)
03. あしたはハレルヤ
作詞:毛蟹(LIVE LAB.) 作曲:山口隆志 編曲:山口隆志
04. ないない -TV ver.-
■商品仕様:
【初回生産限定盤(CD+DVD)】VVCL-1845~1846 / ¥1,760(税込)
【期間生産限定盤(CD+DVD)】VVCL-1848~1849 / ¥1,760(税込)
【通常盤(CD)】VVCL-1847 / ¥1,320(税込)
☆初回生産限定盤仕様
・「ないない」Music Video収録DVD
・撮りおろしフォトブック同梱
・DVDトールケースサイズ三方背ケース付き
☆期間生産限定盤仕様
・TVアニメ「シャドーハウス」ノンクレジットED映像収録DVD同梱
・描きおろしイラスト使用ミニポスター、三方背ケース付