Fantôme Iris、完成された世界観とパフォーマンスで楽しませた特別な一夜 ―― 1st LIVE -C’est la vie!-レポート
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Fantôme Iris
2021.05.05.(Wed)Fantôme Iris 1st LIVE -C’est la vie!- for Streaming+
待ちに待った時が遂にやってきた。そう、ARGONAVISプロジェクトの中でも異彩を放つヴィジュアル系バンド、Fantôme Irisの1st LIVEの開催だ。
2021年5月5日、本来であれば彼らの演奏を現場で聴くことができたのだが緊急事態宣言により無観客でライブが実施された。”どんな状況であっても眷属の皆に夢のようなひと時を届けたい” ーーそんな情熱に燃える演出がいくつもちりばめられた1stライブ「C’est la vie!」は美しさと激しさが共存した熱いライブとなり、目撃した私たちにとって忘れられない特別な一夜となった。今回のレポートではそんなライブの様子をお届けしていく。
定刻を迎えると「棺の中のセラヴィ」と共に幕が上がり、ライブがスタートする。FELIXが指揮者のように軽やかにステージの上を舞うと、それに呼応するようにメンバーがメロディを奏で始める。生で観れないことを少し残念に思っていたが、そんな思いは一瞬で吹き飛ばしてくれた。完成されたパフォーマンスと世界観で観ているこちら側をどんどん楽曲の世界へと歌声で引き込んでいく。
続く「銀の百合」は、まさに本日のステージを歌ったかのような楽曲だ。FELIXは観ている私たちを求めるかのように何度も何度もカメラに向けて手を伸ばしていたのがとても印象的だった。<何もかもはこの夜のため 咲き乱れ>と私たちと今宵の時間を共に楽しもうという想いが歌を通して伝わってくる。そんな姿には思わず心を打たれてしまった。
「夜会の始まりだ、我が眷属たちよ」
そう呼びかけ始まったのは「Into the Flame」。ギターやベース音が咲き乱れるハードなナンバーだ。楽曲終盤でFELIXがLIGHTに背中を預けて歌い上げる姿からは絶対的な信頼を得ている様子がうかがえる。初めてのライブに胸躍り、ステージの上で踊るFELIXをメンバーが支えて最強の布陣となっていく。Fantôme Irisの計り知れないポテンシャルに観ているこちらの胸も高鳴ってくる。
MCでは、「ようこそ、我が愛しき眷族たちよ、我らの名はFantôme Iris。この東の地で行われる初めての夜会、存分に楽しんでいってくれたまえ」とワインを飲み簡潔に終わらせると「準備はいいかいHARU?」と呼び、激しいベース音から「狂喜のメロディ」が始まる。FELIXの歌声の魅力は耽美に伸び上がる歌声だけではない。唸るような低音で、腹の奥底から声を鳴り響かせ深みを増した歌声へと仕上げていく。そんな二面性を持ち合わせているからこそ私たちは虜になってしまうのだろう。
その後は「ニルヴァーナ」、「ROSIER」と名曲カバーに挑んでいく。いつもは歌わないテイストの楽曲に挑戦することで、彼らの新たな可能性を見出すことができるカバーナンバーは観ていてとても楽しい。さらには、彼らの音楽のルーツを感じとることができる選曲だったので、眷属たちにとって、そして楽曲のファンにとっても嬉しい時間となったのではないだろうか。
灯りが消え、ライトがぽつぽつと輝き、ステージは幻想的な空間へと変貌。ここからは「histoire」、「un:Mizeria」とエモーショナルな楽曲が続いていく。彼らのこれまでの歩みと覚悟を感じさせる歌詞を叙情的に歌うFELIXのふとした表情に目が離せなくなってしまう。そんな一瞬のパフォーマンスに込められた想いを近くで見れてしまうのが配信ライブの良さだろう。いつもは遠くでつかめない細やかな表情もしっかりと伝わってくる。
歌唱後はDのドラム音が響きり、HARUのチョッパーベースが唸ったかと思うと、LIGHTとZACKのギターバトルが始まるなどさまざまな魅せ方でステージを盛り上げていく。MCなどでは多くを語らない彼らだが、音楽を使って私たちに想いをたくさん伝えてくれる。そんな熱が高まった中で現れたFELIXは「ザクロ」を披露。前奏部分をデスボイスで歌うなど、いつもの高貴なイメージとはまた違った荒々しい姿で激しく歌唱する。続く「浸食 -lose contorol-」のカバーも、歌い出しこそ柔らかだが、サビでガラッと転調し、羽化する蝶のように声の姿を変貌させていった。
「我々のこの地での活動はまだ始まったばかりだ」と今後のライブへの意欲を示し、「踊ろう、枯れるまで、この愛が続く限り」と愛を叫び最後は壮大なサウンドに包まれながら「Janus」を歌唱。
その後のアンコールでは、「ヴァンパイア」を歌う。自らをヴァンパイアを統べる王と呼ぶFELIXにぴったり、かつ言わずと知れた名曲が流れ、筆者も思わず家の中であることを忘れて盛り上がってしまった。そんなサービス精神も忘れないステージ構成で畳み掛けてくれるのは、さすが全員が社会人で結成されたバンドであるFantôme Irisといったところだろう。
FELIXは、思うように日常が送れなくなった現状を「薄暗い霧」と表現。こんな状況でもライブ、そして楽曲を通して眷属たちと心を通わせることができたことを本当に嬉しいと語る。どんな状況でも希望さえ捨てなければまたステージ上で必ず巡り合うことができるのだ。「いつの日か薄暗い霧が晴れたら再び共に咲き誇ろうか」と再会を約束し、彼らを体現したと言っても過言ではない「銀の百合」を歌い上げ、ステージを締めくくった。
FELIXの歌声をLIGHTのギターが支え、ZACKとHARUがそれぞれギターとベースで音に遊びを持たせ、Dがドラムでまとめあげていくーーそんな絶妙なバランスで成り立つ彼らの音楽と再び出会える日を楽しみに待ちたい。
レポート・文:波多野彩花
※初回掲載時ライブタイトルに誤字がございました。お詫びして訂正致します。
セットリスト
Fantôme Iris1st LIVE -C’est la vie!- for Streaming+