WHITE ASH さらに磨きがかかったバンドとしてのダイナミズムと繋がる想い
WHITE ASH
WHITE ASH自主企画チャリティライブ「Cycle」 2015.12.13 渋谷CLUB QUATTRO
WHITE ASHの主催するチャリティライブにして、自身にとって年内最後のワンマンライブでもあった『Cycle』東京公演。
「リリースツアーじゃないから、好きな曲をやれると!いうことなんです」
と、のび太(Vo/G)は話していたが、彼らがいま好きな曲≒やりたい曲で構成されたであろうこの日のセットリストは、かなり尖っていた。その象徴として、普段ワンマンでは入ることの少ないシングルのカップリング曲などファンには嬉しいレア曲かつアッパーな楽曲がふんだんに織り込まれている。つまり打ち込みやそれに近いような緻密な構築によって作り込まれた楽曲を再現するよりも、生ならではの衝動、頭を空っぽにして踊れる楽曲たちを優先したということなのだろう。とはいえ単に勢いで突っ走ったわけでは一切なく、4人が放つグルーヴの一体感は半端じゃない。「Insight」のイントロの電子音が終わった瞬間からラストの「Stranger」まで終始盤石で、先月のツアーファイナルと比べても一段上、WHITE ASHの充実ぶりはものすごいことになってきたようだ。
WHITE ASH のび太
音の塊が強烈にぶつかってくるような感覚を味わわせてくれた「Insight」に続き、前半戦から「Kiddie」や「Velocity」を惜しげもなく投下し、当然それに歓喜するオーディエンスたちは次々に前へ前へと押し寄せていく。終始手を挙げっぱなし、歌いっぱなし、跳びっぱなしのカオス状態になったフロアを見渡し、のび太は歌いながら時折満足気に微笑んでいる。自分たちの生み出すアンサンブルの完成度と、それを受けてレスポンスするオーディエンスの姿が嬉しくて仕方がないという様子だ。彼をはじめ、正確芯の太いビートを刻みながらコーラスまでこなす剛(Dr)、「And Gypsy」や「Pretty Killer Tune」ではボーカルでも魅せた彩(B)、多彩なフレーズを操りながらアクティヴに動き回る山さん――全員が同じリズムとグルーヴを完璧に共有できている。途中でテンポを落としたり拍子が変わったり、ブレイクを挟むような楽曲でもまったく乱れない。
WHITE ASH 剛
のび太によるMCの第一声は「あ゛づい゛…」であった。普段汗をかかないという彼も、すでにビショビショだそうで、それもそのはず。簡単なあいさつ程度を挟んだだけで、ぶっ通しのキラーチューン連打である。そこからは「良い曲、多いんだよねぇ(笑)」と自画自賛しつつカップリング曲コーナーがスタート。「New Wave Surf Rider」や「Queen of Boogie-Woogie」が演奏され、その言葉通りの即効性と色とりどりなグルーヴで、おそらくは少なからずいたはずの初めて聴く人をも魅了する。
スペシャルなワンマンならではの企画は続き、公募していた『ファンとの共演』が実現。ベーシストの「オザキくん」をステージに迎え、「I Wanna Be Your Valentine」を5人でセッションすることに。WHITE ASHがキッカケでバンドを組んだというオザキくん、「緊張しまくってます」とは言っていたものの、堂々としたパフォーマンスだ。彩とアイコンタクトを交わしながらのツインベースでサウンドを牽引しながら、最前列まで歩み出たり、最後にはのび太と一つのマイクでコーラスまでやってのけた。
WHITE ASH 彩
そこから、ひと足はやいクリスマスプレゼントとして贈られたこの日のセットリスト上唯一といって良い「アッパーじゃない曲」、「Xmas Present For My Sweetheart」でアコースティックギターの音色と、静かな曲でより際立つ優れたメロディセンスにしばし酔いしれた後は、渋谷QUATTROに再点火。2016年3月16日にリリースするアルバム『SPADE 3』からの新曲「Blaze」を皮切りに、「Jails」「Crowds」「Paranoia」という容赦ない構成で攻め立てる。続いて、「学園天国」から拝借したコール&レスポンスが楽しい「Pretty Killer Tune」で場内はクライマックスに。そういえば前回観たライブでこの曲が「2軍からレギュラーになりつつある」という話をしていたが、どうやら無事レギュラーを奪取し、トリ前のセットアッパーを任されるまでに成長したらしい。
WHITE ASH 山さん
気付けばもう終盤だ。ここで山さんの口からチャリティライブであるこの『Cycle』について――仮設住宅のお年寄りに会いに行って歌をプレゼントしたこと、音楽で楽しんでもらうことや元気づけることの喜びを再確認したこと、そしてこの日の収益を福島県・浪江町の小学校に楽器を贈呈すると言うかたちで寄付することが告げられると、あたたかい拍手に包まれる場内。「もしかしたら、その楽器がキッカケで、将来このステージに立つ子が生まれるかもしれない」そう山さんは話したが、本当にそうなるかもしれない。分かりやすくメッセージ性が前面に出たバンドでは決してないが、込められた想いはきっと伝わると信じたい。この日集まったファン一人ひとりとも、共演を果たしたオザキくんとも、彼らはそうやって自分たちの信じる音楽でつながってきたのだから。明るく照らされた場内に響く本編のラストナンバー「(Y)our Song」はそんな想いを抱かせてくれた。
WHITE ASH
アンコールでは、宇宙初披露!としてアルバムの表題曲「Spade Three」をドロップ。硬質なドラム、低く歪んだベース、そして2本のギターで掛け合いながら弾く一つのリフが印象的な攻撃的ナンバーは、アルバムへの期待感を掻き立てるには十分すぎた。まだ作品の全体像は耳にできていないが(「Spade Three」はRedBull Studios Tokyo公式サイトでストリーミング配信中)、ハードかつプリミティヴ、衝動にあふれたロックンロールが展開されそうである。トドメにやはり最強の「Stranger」を叩き込み、終演後は観客全員とハイタッチして見送ったWHITE ASH。「あのね、今年一番楽しいです!」と、のび太はMCでぶっちゃけていたが、ステージ中の表情や仕草からもその言葉が大げさではないことがよく分かった。バンドとしての一体感やタフさ、演奏にも磨きがかかり、やりながら自ら楽しくて仕方がなくなっている。そんな充実しまくっている彼らが生み出す新作とツアーはどれほどヤバいことになるのだろう。WHITE ASHファンは2016年、覚悟しておくべき。
撮影=柴田恵理 文=風間大洋
WHITE ASH
1. Insight
2. Thunderous
3. Number Ninety Nine
4. Kiddie
5. And Gypsy
6. Velocity
7. New Wave Surf Rider
8. Queen of Boogie-Woogie
9. Faster
10. I Wanna Be Your Valentine(セッション)
11. Xmas Present For My Sweetheart
12. Blaze
13. Jails
14. Crowds
15. Paranoia
16. Pretty Killer Tune
17. (Y)our Song
[ENCORE]
18. Spade Three
19. Stranger
WHITE ASH OneMan Tour 2016
5/14(sat) 横浜Lizard
5/15(sun) 千葉LOOK
5/21(sat) 京都GROWLY
5/22(sun) 神戸・太陽と虎
5/28(sat) 松山サロンキティ
5/29(sun) 広島Cave BE
6/3(fri) 長崎DRUM Be-7
6/5(sun) 福岡Drum SON
6/11(sat) 金沢vanvan V4
6/12(sun) 松本Sound Hall a.C
6/18(sat) 宇都宮HEAVEN'S ROCK VJ-2
6/19(sun) 仙台MACANA
6/24(fri) 盛岡the five morioka
6/26(sun) 札幌club cube garden
7/1(fri) 大阪BIGCAT
7/2(sat) 名古屋CLUB QUATTRO
7/10(sun) 赤坂BLITZ
4th Album「SPADE 3」(ヨミ:スペードスリー)
2016年3月16日(水)発売
VPCC-80678 初回盤CD+DVD
2015.4.17開催「DARK EXHIBITION」@新木場STUDIO COAST LIVE映像収録
VPCC-81863 通常盤 CDのみ
【収録曲】
Spade Three
Insight
Ledger
The Phantom Pain
他