伝説の女子プロ団体GAEA JAPANが1日限定復活! 長与千種と里村明衣子の団体がタイトル全権を懸けてオール・オア・ナッシングの対抗戦!
日本中にクラッシュ・ギャルズ・ブームを巻き起こし一世を風靡した長与千種率いるGAEA JAPAN(ガイア・ジャパン)が2005年の解散を経て、一日限りの復活を果たす。
本来ならば1995年の旗揚げからちょうど四半世紀にあたる昨年4月15日、場所も同じく東京・後楽園ホールにて大会を開催する予定だったが、新型コロナウイルス禍により1年の延期、しかも今年に入ってからも開催が二転三転、6月13日(日)にようやく実現の運びとなった。会場は東京・大田区総合体育館で、よりいっそうビッグマッチのカラーが濃くなったと言えるだろう。
GAEAは、長与と里村明衣子の一騎打ちで幕を閉じ伝説となった。あれから15年プラス1年、長与の愛弟子である里村はセンダイガールズプロレスリング(仙女)で橋本千紘を筆頭に後継者を育て上げ、現在は世界最大のプロレス団体WWEでNXT UKに籍を置く。弟子の活躍に刺激を受けたかのように長与も新団体Marvelous(マーベラス)を設立、長与に憧れる彩羽匠をエースに育て上げ、有望な新人を次々とデビューさせている。
彼女たちの試合スタイルからも、長与、里村が育てたレスラーはいずれもガイアイズムが浸透していると言っていい。伝説の団体から生まれた魂を継承し、次代につなぐ。それが6・13大田区でおこなわれる「GAEAISM―Decade of quarter century」。本欄では、各試合のみどころを探ってみよう。
第1試合GAEAISM THE FUTURE
星月芽依&神童ミコト&Mariavs愛海&岡優里佳&カノン
ガイアイズムを継承する大会は、両団体自慢の若手対決で幕を開ける。マーベラスが星月芽依&神童ミコト&Maria組で、仙女が愛海&岡優里佳&カノン組という布陣。両団体は今年1月に本格開戦。闘うたびに両軍の士気が上がっており、今回に関しては大会延期がかえって対抗戦への意識を高める契機になったと言えるだろう。
マーベラス軍の3人は団体3期生で、星月は無尽蔵のスタミナで高速ドロップキックを打ちまくる新世代のスピードスター。神童は鍛え上げられた下半身の頑丈さで説得力十分だ。2人とも仙女のワールドジュニア王者に就いており、星月は現王者、しかも仙女相手に2度の防衛に成功中である。Mariaは関節技を得意とし、このところ急成長を遂げている。
対する仙女軍、愛海は第5代ジュニア王者で神童からベルトを団体に奪回も、昨年11月、星月に王座を明け渡してしまった。岡も星月に防衛を許しており、両者ともその悔しさをマーベラス軍にぶつけてくるだろう。また、里村に「スーパー中学生」と言わしめたカノンはまだ15歳、昨年11・22仙台PIT大会でデビューを果たした。運動神経バツグンで、しかもこのキャリアでジャックハマーを決めるというから潜在能力からしてただものではない。第1試合のカギを握る秘密兵器的存在かもしれない。
オープニングから激しい火花を散らすマーベラスと仙女。大会の流れを作り出すのはどちらの団体か!?
第2試合GAEAISM THE IMPACT
CIMA(GLEAT)vs井坂レオ(Marvelous IMPACT)
マーベラスにはMarvelous IMPACT(男子部)として男子レスラーが所属。その選手が井坂レオである。長与の育てる男子レスラーとはいったいどんな選手なのか。初めて目にするファンも多いと思われるだけに反応が楽しみだ。
井坂はローカル団体の練習生からマーベラスの男子第1号として入団、17年4月にデビューを飾った。かつてGAEAでは海外戦略の一環として外国人男子レスラーを横浜文化体育館で一斉デビューさせたが、短期間でフェードアウトしてしまった。それだけに、井坂は長与の悲願を背負った選手と言えるのだろう。
今回、井坂がチャレンジマッチ的に臨むのはCIMAである。CIMAはウルティモ・ドラゴン主宰の闘龍門で1期生としてデビューし、メキシコから衝撃の逆上陸を果たしたのが1999年だった。2000年開催の「SUPER J-CUP」でファイナリストとなり、獣神サンダー・ライガーに敗れるも全国区へと知名度を上げた。2018年にDRAGON GATEを離れてからは。国内外で幅広く活動。ストロングハーツを率いてさまざまな団体に上がり、今年3月、本旗揚げを控える新団体GLEATへの入団を発表した。現在は、全日本プロレスの世界ジュニアヘビー級王者にも君臨している。
井坂は、そんなCIMAの胸を借りる。果たしてどんなインパクトを残せるか。道半ばで頓挫したGAEA男子部をマーベラスで単身受け継ぐことになった井坂。これもまたガイアイズム継承の闘いである。
第3試合GAEAISM THE RESURRECTION
旧姓・広田レジーナさくらvsザ・グレート・サスケ(みちのくプロレス)
GAEA JAPAN解散でプロレスを卒業、4年8ヵ月後に復活し、その後結婚、二児の母にもなった旧姓・広田レジーナさくらが、みちのくプロレスのザ・グレート・サスケと一騎打ち。異色のカードながら、広田の十八番とも言える試合である。
現在、広田は所属団体waveのシングルチャンピオン、Regina di wave王者として君臨中。旧姓・広田さくらのリングネームにイタリア語の女王を意味するレジーナを挟み込み、無言のアピールを継続中だ(ディアナで40歳以上を対象とする3WAYマッチタイトル、WWWD世界エリザベス王座保持中は旧姓・広田エリザベスさくらを名乗った)。ムーの太陽・サスケとの対戦ではコミカルかつ、この2人ならではのハードコア的ファイトも見られるだろう。
広田とサスケ、どちらの世界観が上回るのか。いろんな意味で必見のカードである。
第4試合GAEAISM THE HARDCORE
DASH・チサコvs響
大会随一の遺恨カードが、DASH・チサコと響のシングルマッチである。事の発端は対抗戦の口火を切った仙女1・10新宿での7対7勝ち抜き戦だった。響はマーベラスの大将に抜擢されるも、出番なくして試合が終了。結果としてはアウェーのマーベラスが2人残りの勝利で団体としては喜ばしいことではあったのだが、これをきっかけに響の不満が大暴走。その後、マーベラスの試合をぶち壊しつづけ、仙女の大会にも乱入した。拡声器を手に怒鳴り散らし、大変貌を遂げたのである。
さらにマーベラス内部以外にも仙女のチサコにターゲットを定め、付け狙うようになった。それは、対抗戦でチサコとの対戦を望んでいたから。狙われたチサコは「GAEAISM」でのハードコアマッチで決着をつけることを要求、そして今回、実現の運びとなったのである。チサコはKAORUとのタッグでハードコアに目覚め、覚醒。響がそのフィールドに入っていく形だが、反逆の証として引けを取るわけにはいかないだろう。凶器が乱舞し大荒れの展開が予想される遺恨試合。その結末は…。
セミファイナルGAEAISM THE HISTORY
長与千種&KAORU&広田さくらvs里村明衣子&永島千佳世&植松寿絵
GAEA JAPANの歴史を振り返るようなカードが長与千種&KAORU&広田さくらvs里村明衣子&永島千佳世&植松寿絵の6人タッグマッチだ。最大の注目は、長与と里村の直接対決か。開催発表当初は長与と里村が同じコーナーに立つことになっていたが、団体対抗の色が濃くなったことで師弟対決の様相に方向転換となった。これにより、よりいっそうの緊張関係が両団体に生まれたと言っていいだろう。
NXT UKに拠点を移し、限定出場の里村はこの試合のために一時帰国。GAEA解散後、自力で団体を旗揚げし「女子プロレスの横綱」とまで呼ばれるようになった里村は、いまや「世界の里村」でもある。このタイミングでの長与との再会。すべての動きから目が離せない、両者の対戦となるだろう。
また、GAEAとマーベラスの旗揚げで長与と行動を共にしたKAORUは、8・8後楽園ホールで引退、35年の現役生活にピリオドを打つ。長与と組むのはおそらくこれが最後のチャンス。会場の大田区は14年3月22日、大病から復活し奇跡のカムバック戦を遂げた思い出の場所でもあり、この大会が長与の新団体設立へとつながった。それだけにKAORUには思い入れたっぷりの試合となるだろう。
この2人と組むのが、広田である。ここでは旧姓・広田レジーナさくらはなく、あえてGAEA時代の広田さくらで名を連ねている。ということは、長与とのチーム・エキセントリックが復活する可能性も十分だ。あの長与を自身の世界に引き込んだ広田のスタイル。この試合のすべてをかっさらう可能性もあるだろう。
里村と組むのは、彼女と同期の永島と植松。3人ともGAEA旗揚げ戦でデビューし、脅威の新人として脚光を浴びた。永島はおもにタッグ戦線で活躍し、植松は出遅れこそしたもののGAEA終盤で覚醒、解散後も女子プロ界の中心人物として活躍した。2012年に引退、昨年4月15日の限定復活がアナウンスされるもコロナ禍で流れてしまった。が、1年2ヵ月越しでようやく実現。コンディション調整に苦労したと思われるが、努力家の彼女だけに、いまできる精一杯のファイトを見せてくれることだろう。里村、永島、植松、一期生揃い踏みもまた、今大会の大きなみどころである。
メインベント GAEAISM THE PAST & FUTURE
仙女vsマーベラス [AAAWシングル・タッグ & センダイワールドチャンピオンシップシングル・タッグ]4冠王座全権争奪 時間無制限イリミネーションマッチ
橋本千紘&岩田美香&Xvs桃野美桜&門倉凜&X
【メインイベント試合概要】
※Xは両団体が所属選手より選択。入場時に判明する。
※6人タッグで試合を開始。フォール・ギブアップ・KOで敗れた選手は失格退場となり、先に相手チームを全員失格させたチームの勝利となる。リングアウト、オーバー・ザ・トップロープは採用しない。
※勝利団体がAAAW、センダイワールドチャンピオンシップ6本のベルトの管理権を獲得。
メインはイリミネーション形式でおこなわれる橋本千紘&岩田美香&Xvs桃野美桜&門倉凜&X。しかもこの試合には、GAEA JAPANの頂点を表わすAAAW王座の権利が懸けられている。勝った方の団体が、AAAWシングルとタッグのベルトを持ち帰るのだ。
AAAW王座は旗揚げから1年半後の96年11月に新設。AAAWとはオール・アジア・アスリート・ウイメンの略だが、老舗団体・全日本女子プロレスのWWWA世界王座を意識したのは明白。GAEAとはオポジションに真っ向勝負を挑む挑発的団体でもあったのだ。実際、AAAWシングル王座には、長与を筆頭にアジャコング、デビル雅美(スーパーヒール・デビル雅美)、尾崎魔弓、ダイナマイト・関西、豊田真奈美らが君臨し、対抗戦ブーム時代の主役たちが一期生の壁として立ちふさがった。ここに風穴を開けたのが里村で、永島も一度王座を手にしている。そして今回、GAEAの頂点ベルトが封印を解かれることに。とはいえ、その後どうなるかは持ち帰った団体の判断に委ねられているようだ。
すでにセンダイガールズワールド王座がある仙女は、里村が「神棚に飾る」と宣言し再封印を示唆。ところが、最後の前哨戦6・6新木場で仙女2冠王・橋本が自身の保持する仙女のベルト(センダイガールズワールド王座&センダイガールズワールドタッグ王座)まで懸けるとアピール。負ければすべてを失う賭けに出た。大会終了後、これが両団体と運営事務局で認められ、6・13「GAEAISM」では、AAAW王座の管理権と同時に合計4タイトル6本のベルトが懸けられるという前代未聞の条件、試合形式が決定。「自団体にベルトを作らない」方針だったマーベラスだが、旗揚げから5年が経ち、選手たちの目標を作るには絶好の機会と思われる。マーベラスが勝てば、仙女のタイトルまで団体で独占できるのだ。それだけに、激闘は必至。大会の度重なる延期で選手たちのフラストレーションも溜まりに溜まった。それをこの試合にすべてぶつけてくるだろう。
仙女代表は大きな賭けに出た橋本と、長期欠場を経て復活を果たした岩田である。復帰後の岩田からは表情が激変し、欠場前までのアイドル性が影を潜め、ふてぶてしくなった。マーベラス側はエースの彩羽匠を負傷で欠くものの、桃野&門倉が満を持して出陣する。桃野は7対7の対抗戦で一気に4人抜きという勝利の立役者。門倉は5番勝負を経験し、さらに一皮剥けた。ここで両軍に入るXが、勝敗の行方を左右する可能性が高い。両団体はいったい誰を送り出すのか。この駆け引きも見逃せない。
全権掌握を懸けた闘いは、過去の例からもわかるように、これもまたGAEAの歴史の一部である。ベルトに詰め込まれたガイアイズムを継承するのは、いったいどちらの団体か。ベルトという形として結果が顕著に示されるオール・オア・ナッシングの対抗戦。エンディングで待ち受ける光景が、女子プロレスの方向性を決めそうだ。
<メインベント GAEAISM THE PAST & FUTURE
仙女vsマーベラス [AAAWシングル・タッグ & センダイワールドチャンピオンシップシングル・タッグ]4冠王座全権争奪 時間無制限イリミネーションマッチ>
橋本千紘&岩田美香&Xvs桃野美桜&門倉凜&X
※Xは両団体が所属選手より選択。入場時に判明する。
※6 人タッグで試合を開始。フォール・ギブアップ・KOで敗れた選手は失格退場となり、先に相手チームを全員失格させたチームの勝利となる。リングアウト、オーバー・ザ・トップロープは採用しない。
※勝利団体がAAAW、センダイワールドチャンピオンシップ6本のベルトの管理権を獲得。
<セミファイナルGAEAISM THE HISTORY>
長与千種&KAORU&広田さくらvs里村明衣子&永島千佳世&植松寿絵
<第4試合GAEAISM THE HARDCORE ハードコアマッチ>
DASH・チサコvs響
<第3試合GAEAISM THE RESURRECTION>
旧姓・広田レジーナさくらvsザ・グレート・サスケ(みちのくプロレス)
<第2試合GAEAISM THE IMPACT>
CIMA(GLEAT)vs井坂レオ(Marvelous IMPACT)
<第1試合GAEAISM THE FUTURE>
星月芽依&神童ミコト&Mariavs愛海&岡優里佳&カノン
(文:新井 宏)