市川海老蔵が2年ぶりに歌舞伎座へ 『七月大歌舞伎』第三部で『雷神不動北山櫻』に出演する思いを語る

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2021.6.29
市川海老蔵 /(C)松竹

市川海老蔵 /(C)松竹

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市川海老蔵が、2019年7月以来2年ぶりの歌舞伎座出演となる『七月大歌舞伎』(2021年7月4日(日)初日~16日(金)千穐楽)第三部で『雷神不動北山櫻』を上演する。

『雷神不動北山櫻』は二世市川團十郎により初演され、 歌舞伎十八番の『毛抜』、『鳴神』、『不動』の3作品が織り込まれている成田屋ゆかりの通し狂言。海老蔵が2008年、成田山開基1070年の際に新たな脚本と演出で上演して以来、好評を博し再演を重ねてきた人気の演目だ。7度目の上演となる今回は、さらにブラッシュアップした魅力ある作品として披露される。

『雷神不動北山櫻』鳴神上人 /(C)松竹

『雷神不動北山櫻』鳴神上人 /(C)松竹

本作で善悪、個性豊かな5役、鳴神上人(なるかみしょうにん)、粂寺弾正(くめでらだんじょう)、早雲王子(はやくものおうじ)、安倍清行(あべのきよゆき)、不動明王(ふどうみょうおう)を早替わりで勤め、空中浮遊や豪快な荒事芸を披露する海老蔵がその思いを語った。

昨年は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため「十三代目市川團十郎白猿襲名披露」が延期に。今回、2年ぶりとなる歌舞伎座の出演について、「毎年7月に出演していたので、通常の流れに戻った形での出演となりました。懐かしい気持ちで、責任も感じております」と心境を語った。

『雷神不動北山櫻』粂寺弾正 /(C)松竹

『雷神不動北山櫻』粂寺弾正 /(C)松竹

『雷神不動北山櫻』については、「特に大切にしているのは荒事の根底にある善は助かり、悪は滅びるという勧善懲悪の精神です。この作品を二世團十郎が初演した頃は朝から日が暮れるまで、丸一日の演目でした。私が2008年に作り変えさせていただいたものは、昼の部、夜の部の2部制におさまるようにしましたので、その時点で従来の作品よりコンパクトになっています。本来ですと今までの形で上演したかったのですが、コロナ禍で上演時間にも制約がありますので、4時間近い演目を休憩時間含め2時間ちょっとにまとめなければなりません。色々大変ではありますが、皆様にお楽しみいただけるように精一杯勤めます」と、これまでより短時間の中でも歌舞伎十八番の歴史や格式を重んじながらお客様に喜んでいただけるよう様々な部分で演出を工夫していることを明かした。

『雷神不動北山櫻』早雲王子 /(C)松竹

『雷神不動北山櫻』早雲王子 /(C)松竹

海老蔵が新たな構成でつくり直した『雷神不動北山櫻』は2008年に新橋演舞場にて初演。父・十二世市川團十郎の生前に「このようなことをしたい」という話を打ち明けたものの、「歌舞伎十八番の『鳴神』、『毛抜』という古典をしっかりとやった上でないと了承できないというのは暗黙の了解でした。そこで先ずは古典をしっかりと演じ、父に見ていただいた上で、この作品の制作が始まりました。『鳴神』、『毛抜』、『不動』の主人公は成田屋にとりまして大切なお役です。古典として守るものは守っていきながら新たに早雲王子、安倍清行を作り上げました」と当時を振り返ります。さらに「私にとって転機になったと言ってもよい作品です。(初演時に)もともと入っていたやる気のスイッチがさらに加速するスイッチを入れてくれた演目だと思います。私としては、30歳で座頭としてひとつの小屋を背負うという、出世作に近い作品。先祖に感謝です」と、真摯に作品への思いと感謝を述べた。

『雷神不動北山櫻』安倍清行 /(C)松竹

『雷神不動北山櫻』安倍清行 /(C)松竹

見どころは、「全部です」と語り、「空中浮遊や早雲王子による立廻りがあったり、単独でも上演される『鳴神』『毛抜』や安倍清行の早口の弁舌があったりと各所に見どころがございます。2時間に凝縮したことで、歌舞伎をご覧になられたことのない方にもさらに観やすい仕上がりになっています」と海老蔵。 「普段歌舞伎を観てくださる方はもちろんのこと、歌舞伎を観たことのない方にも是非観ていただきたいです」と、言葉に力を込めた。

『雷神不動北山櫻』不動明王 /(C)松竹

『雷神不動北山櫻』不動明王 /(C)松竹

『七月大歌舞伎』の第1部と第2部は7月4日から29日まで、第3部は4日から16日まで東京・歌舞伎座にて上演される。

公演情報

『七月大歌舞伎』
 
日程:第一部・第二部:2021年7月4日(日)~29日(木)/第三部:2021年7月4日(日)~16日(金)
会場:歌舞伎座
【休演】第一部・第二部:8日(木)、19日(月)/第三部:8日(木)

第一部 午前11時~
村上元三 作・演出
石川耕士 演出
一、あんまと泥棒(あんまとどろぼう)
 
あんま秀の市:市川中車
泥棒権太郎:尾上松緑
 
再びのご熱望にお応えして
二、蜘蛛の絲宿直噺(くものいとおよづめばなし)
市川猿之助六変化相勤め申し候
 
女童熨斗美
小姓澤瀉
番新八重里        :市川猿之助
太鼓持彦平
傾城薄雲実は女郎蜘蛛の精
 
平井保昌:尾上松緑
坂田金時:坂東亀蔵
碓井貞光:中村福之助
卜部季武:市川弘太郎
金時女房八重菊:市川笑三郎
貞光女房桐の谷:市川笑也
渡辺綱:市川中車
源頼光:中村梅玉
 
※「澤瀉屋」の「瀉」のつくりは、正しくは“わかんむり”です。

第二部 午後2時30分~
岡村柿紅 作
一、新古演劇十種の内 身替座禅(みがわりざぜん)
 
山蔭右京:松本白鸚
侍女千枝:中村米吉
侍女小枝:中村莟玉
太郎冠者:中村橋之助
奥方玉の井:中村芝翫
 
四世鶴屋南北 作
二、御存 鈴ヶ森 (ごぞんじすずがもり)
 
幡随院長兵衛:中村錦之助 ※
東海の勘蔵:河原崎権十郎
北海の熊六:坂東彦三郎
飛脚早助:中村吉之丞
岩間の蟹蔵:市村橘太郎
和尚の鉄:片岡亀蔵
土手の十蔵:市川團蔵
白井権八:尾上菊之助
 
※中村吉右衛門が出演予定にしておりました偶数日を含め、中村錦之助が全日程を勤めます

第三部 午後5時40分~
 
安田蛙文 作
中田万助 作
奈河彰輔 演出
藤間勘十郎 演出・振付
通し狂言
雷神不動北山櫻(なるかみふどうきたやまざくら)
市川海老蔵五役並びに空中浮遊相勤め申し候

鳴神上人
粂寺弾正
早雲王子  :市川海老蔵
安倍清行
不動明王
 
八剣玄蕃:市川右團次
秦民部:市川男女蔵
雲の絶間姫:中村児太郎
八剣数馬/制多迦童子:市川九團次
小野春風/矜羯羅童子:大谷廣松
錦の前:市川男寅
小原万兵衛実は石原瀬平/黒雲坊:片岡市蔵
秦秀太郎:市川門之助
白雲坊:市川齊入
小野春道:大谷友右衛門
腰元巻絹:中村雀右衛門
 
後見:市村家橘
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