『松竹新喜劇 夏まつり特別公演』が夏の南座に6年ぶりに登場、『おちょやん』での名演が光った毎田暖乃も『一休さん』で大活躍
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『松竹新喜劇 夏まつり特別公演』 (C)松竹
7月10日(土)より京都・南座で幕を開けた『松竹新喜劇 夏まつり特別公演』。NHK連続テレビ小説『おちょやん』の主人公千代のモデルとなった女優、浪花千栄子がかつて在籍した劇団として一躍、脚光を浴びた松竹新喜劇が、南座で夏公演を行うのは6年ぶりのこと。ゲストに久本雅美、桐生麻耶、毎田暖乃らを迎えて、新作喜劇『一休さん』と松竹家庭劇からの名作『愛の小荷物』を上演した。
新作喜劇『一休さん』 (C)松竹
第一部は京都の劇団、THE ROB CARLTON主宰の村角太洋が作・演出を務めた新作喜劇『一休さん』。将軍に献上する茶のことで揉めている村民を仲裁するため知恵を貸してほしいと武家の蜷川新右衛門に頼まれた一休。二人は、その道中で立ち寄った茶屋での騒動に巻き込まれて……。
新作喜劇『一休さん』 (C)松竹
新作喜劇『一休さん』 (C)松竹
主演の一休役は藤山扇治郎。穏やかで優しく、そこにいるだけで周囲を和ませるような佇まいの一休が印象的だ。新右衛門役はOSK日本歌劇団 特別専科の桐生麻耶で、松竹新喜劇初登場。OSK男役トップスター時代は「唯一無二の男役」とうたわれた桐生、武士姿も勇ましく、勇壮な舞でも舞台を彩った。
新作喜劇『一休さん』 (C)松竹
一休たちが立ち寄る茶屋で働く女の子、小夜役は『おちょやん』で一躍、注目の的となった毎田暖乃。本作でも大人たじたじの名演を繰り出し、キュートな魅力を振りまいた。茶屋の主人と将軍の二役を担った渋谷天外は、親しみやすい主人と威厳ある将軍という対照的な人物を安定の存在感で魅せた。
新作喜劇『一休さん』 (C)松竹
新作喜劇『一休さん』 (C)松竹
第二部の『愛の小荷物』は、1935(昭和10)年2月に松竹家庭劇が大阪・中座で上演した作品で、お節介の兄平次郎と売店の小母さん・おつねこと常子を中心に展開。これまで、二代目渋谷天外、曽我廼家十吾のコンビや、藤山寛美、酒井光子のコンビが演じてきた本作に、今年のお正月公演『初笑い!松竹新喜劇 新春お年玉公演』での恋人役が記憶に新しい曽我廼家文童と久本雅美が挑んだ。演出はわかぎゑふ、大阪・南港のフェリー乗り場を舞台に、一組の男女と赤ちゃんをめぐる心温まる物語を繰り広げた。
『愛の小荷物』 (C)松竹
『愛の小荷物』 (C)松竹
お節介で、おしゃべり好きなおつね役を務めた久本。その姿はバラエティー番組などで見る久本と地続きにあるようでいて、醸し出すしっとりとした品に新鮮味もあり。松竹新喜劇でしか見られない一面で楽しませてくれた。そんなおつねに負けず劣らずお節介の兄平次郎役の文童も絶妙な間(ま)とテンポで魅了し、久本との名コンビぶりも健在だ。人の情けの温もりに触れる名作は、ほっこりと優しい時間をもたらした。
『愛の小荷物』 (C)松竹
『松竹新喜劇 夏まつり特別公演』は7月18日(日)まで上演。
取材・文=Iwamoto.K