OSK日本歌劇団の新トップスター楊琳、100年のバトンをつなぐ新橋演舞場お披露目公演『STARt』制作発表記者会見レポート
左から千咲えみ、楊琳、舞美りら。
OSK日本歌劇団の新トップスター楊琳(やんりん)の、お披露目公演「レビュー夏のおどり『STARt』」が、8月5日(木)に新橋演舞場で開幕する。本公演は、6月に大阪・松竹座で開幕した。ついにはじまる東京公演に向けて、7月12日(火)、楊が、トップ娘役の舞美りら、千咲えみと制作発表会見に登壇した。
作・演出・振付は、平澤智。平澤は、2019年にOSK『STORM of APPLAUSE』でみせた、躍動感溢れるエモーショナルなステージが記憶に新しい。本公演は、OSKの代名詞であるラインダンス、そしてオールドミュージカルメドレー、コメディーショー、さらにコンテンポラリーダンスをとり入れたレビュー作品で構成される。トップスターとなった楊が、意気込みを語った。
左から千咲えみ、楊琳、舞美りら。
■笑顔を絶やさず、自分らしく
袴姿で登場した3名を、記者たちが拍手で迎えた。はじめに真摯な表情と明るい声で、楊が感謝と抱負を語った。
「前トップスターの桐生麻耶よりバトンを引き継ぎ、4月1日より新トップ・楊琳として就任いたしました。来年、私たちOSK日本歌劇団は、創立100周年を迎えます。観にきてくださるお客様のために、劇団員一同団結し、今後に向かって歩んでまいります」
劇団にとって歴史的なタイミングでの、トップ就任だ。
「ただならぬ責任を感じます。それに潰されず、OSKの魅力を発信することに集中し、全身全霊で全うしたいです。OSKには魅力的な劇団員がたくさんいます。私だけではなく、色んな劇団員を知っていただきたいです。そしてOSKの認知度が上がり、日本全国で、いつかは世界で、公演ができるよう一同フルパワーでがんばってまいります」
楊琳
前トップスターで現在特別専科となった桐生麻耶からは、どんな言葉を受け取ったのだろうか。
「『笑顔を絶やさず、自分らしくがんばって』と言っていただきました。どんな風にがんばって……ではなく、『自分らしく』というところに、桐生さんを感じます。自分らしさはまだ模索中ですが、笑顔には力があると思っています。どんな時も笑顔を絶やさないことを心掛けたいです」
■コメディからコンテンポラリーまで、盛沢山の洋舞レビューショー
以下、楊、舞美、千咲への質疑応答を紹介する。
——これまでは洋物と和物の2幕で構成されていました。今回は、洋舞レビューの2幕構成です。見どころをお聞かせください。
楊:6月に大阪・松竹座で、洋舞での2幕をお客様に楽しんでいただけたという手ごたえを感じました。コメディあり、コンテンポラリーあり。もちろんラインダンスもあります。見どころが盛り込まれた、パワフルで迫力あるレビューショーです。盛りだくさんですが、ちょうど良いところで“抜き”も入り、カジュアルにお楽しみいただけるはず。観劇をお迷いの方にも、ぜひ一度みていただきたい内容となっています。
舞美:平澤先生は、メッセージ性のある作品をお作りになります。今回も、この状況下だからこその場面を作ってくださいました。そのメッセージをお客様にも、一緒に感じていただけたら嬉しいです。
「ダンスが本当に好き」と語る舞美りら。大阪公演では踊りながら、日々「生きている!」と実感。
千咲:一作品で何作品もみたような感覚を味わっていただけるのではと思うほど、1場面1場面が大きな物になっています。みなさんがよく知っていらっしゃる曲もたくさんありますので、その意味でも楽しんでいただけるのではないでしょうか。
——大阪公演を経て、ご自身の中で、どのようなところが挑戦ですか?
楊:全ての景に出演させていただきます。体力だけでなく、場面場面で自分をどう演じるか、さっきの場面の楊琳とは別の色の楊琳をご覧いただけるかが、自分の中の挑戦でした。
舞美:群舞では、全体美を追求することが多いのですが、今回コンテンポラリーダンスの場面では、平澤先生から「揃えることに重きを置くのではなく、振りを自分がどう捉えるか。感じたものを表現してほしい」と演出いただきました。どう解釈しどう表現するか、とことん追求して踊りたいです。心を解放し、思いをナンバーに乗せて表現できたら。
千咲:今回の私の挑戦は、1曲すべて、英語の歌詞の歌があることです。歌詞のすべてが英語ならば、日本の方だけでなく海外の方にも伝わると気がつき、これからもっと色々な挑戦をしていきたいという気持ちになりました。
レビュー夏のおどり『STARt』
——皆さんが感じる、OSKの魅力をお聞かせください。
千咲: レビューのすばらしさです。私自身、その魅力にひかれました。歌、踊り、お芝居、その華やかさは世界の人が求めるものではないかと思っています。OSKのレビューは、100年前から時代にあったものを、その時代に合わせて作りながら続いています。そのレビューの伝統を感じていただきたいです。
東京出身の千咲えみ。東京公演がなかった時期もあったことから「いまは毎年東京公演ができることを幸せに感じます」とコメント。
舞美:私が感じるOSKの魅力は、ダンスです。そう胸をはって言いたいという思いもありますし、観てくださる方々に、「さすがダンスのOSKだね」と言っていただけるようがんばりたいという思いもあります。
楊:私が思う一番の魅力は、生命力です。紆余曲折あり、波乱万丈な劇団ですが、その時々を、先輩方の根性、生きる力が発揮され、OSKは、今日ここに至っています。その力が私たち劇団の源だと思っています。そのパワーを、皆様に力強くお見せできれば。見てくださる方々のパワースポットになれたら、と思っております。
■創立100周年に立ち会える奇跡
——100周年に向けての意気込みをお聞かせください。
楊: 創立100周年という時に在団できるのは、奇跡に近いこと。そしてコロナ禍のような「まさか」という状況下でも、100周年を迎えられることにも奇跡を感じます。心の中で自分に言っているのは、「100周年がゴールではないんだよ」ということです。100周年は新たなスタートで、ここから先にバトンを受け継いでいかなくてはいけません。そのために私自身も劇団としても、もっともっと体力をつけていかなくてはと感じています。110年、120年、150年と続いて、色々な方の夢を叶えられる存在でありつづけたいです。
楊琳
舞美:『STARt』には「バトン」というナンバーがあり、“1922からのバトン”という歌詞があります。1922年から歴史を紡いできてくださった諸先輩方、関わってくださっているすべての方々の思いを受け継ぐことが、私にできることだと思います。私だけでなく、劇団員みんなでその思いを感じながらできればと思います。
千咲: 劇団が100年続くのはとてもすごいことです。そのタイミングに、自分が在団していることも、とても強運だと感じています。今在団している劇団員全員が、同じ強運のもとに生まれていますので、そんな皆が集結した舞台はパワフルなものになると思います。
左から千咲えみ、楊琳、舞美りら。
■夏をもっともっと暑い夏に
コロナ禍にも、2022年の劇団創立100周年に向けて勢いを増すOSK。楊は、緊急事態宣言下で開幕した大阪公演を振り返った。
「大阪公演は、緊急事態宣言によって土曜日、日曜日の公演が中止となりました。私は公演自体がなくなるものと思っていたので、上演できたことが本当にうれしかったです。そして当初、週末の予定だったお客様が、時間を工面して平日に観にきて来てくださったとも聞いています。幕があいて舞台に立ち、たくさんのお客様がいらしてくださった客席を見た時に、こんなにもありがたいものかと、本当に嬉しくて、感動しました。感謝の気持ちでいっぱいでした。新橋演舞場でも、全身全霊、命燃やしてがんばります」
楊琳
「レビュー夏のおどり『STARt』」は、8月5日(木)から8日(日)まで新橋演舞場で上演される。
「夏を、もっともっと暑い夏にできるよう、皆様に生きる力を感じていただけれるよう、一丸となってがんばりまいりす。私たちと一緒に、夏を楽しんでいただけたら嬉しいです。皆様のご来場を劇団員一同、心よりお待ち申し上げております」
来年の100周年に立ち会えるのは、観客にとっても奇跡的なこと。その舞台を背負う新トップスター楊の、東京公演のスタートに期待が高まる。
左から千咲えみ、楊琳、舞美りら。
公演情報
【出演】楊琳、舞美りら、千咲えみ/桐生麻耶(特別専科) 他OSK日本歌劇
【料金(税込)】S席(1・2階) 9,500円/A席(3階)5,000円
【ホームページ】https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/enbujyo_202106/