『D4DJ』Lyrical Lilyが世界平和をもたらす!?中村 航/エガワヒロシ インタビュー

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2021.8.18
Lyrical Lily

Lyrical Lily

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『DJ』を題材に アニメ『D4DJ First Mix』 やスマートフォン向けリズムゲーム『D4DJ Groovy Mix(以下:グルミク)』など、多方面に広がりを見せる音楽メディアミックスプロジェクト『D4DJ』。登場する6ユニットによる各2ndシングルが2021年3月17日を皮切りに半年間に渡ってリリースされている最中だが、SPICEではそんなニューシングルに携わったクリエイターに毎月密着中!最終回となる今回は、小説家であり、D4DJではストーリー原案に加え『Lyrical Lily(以下:リリリリ)』の音楽プロデューサーとしての顔も併せ持つ中村 航と作曲家のエガワヒロシにインタビューを敢行。それぞれが作詞/作曲を担当した2ndシングル「プティプランス/Magiの贈り物」を中心にリリリリの魅力について深掘りしてみた。


■「リリカルで上品なポップスを目指そう!」

――本日はリリリリの2ndシングル「プティプランス/Magiの贈り物」のリリース記念として同シングルにて作詞作曲を担当された中村さんエガワさんにお越し頂きました。早速なのですが、お二人が思う、リリリリの印象について教えてください。

中村:DJ……というよりも、そもそも学園外の事とか一般常識的な部分をあまり知らないっていうお嬢様学校の4人組ということなんですけど、初めはキャストの皆さん含め、ボクらも本当に手探りな状態でして……。

――意外です!今でこそかなりキャラが立ったユニットだと思っていましたが……。

中村:もちろん事前に設定などはある程度決まってはいましたけれど、全6ユニットの中でも1番後発のユニットということもあり、すでに他がかなり個性の強いユニットの中で、ただただ純真無垢なこの子たちと、どう立ち振る舞っていこうか…と思っていたんですが、想像以上に破天荒だったというか、ただの”お嬢様”ではなかったですよね(笑)。

――確かに言われてみれば…。でもこの1年でかなり個性が生まれてきましたよね(笑)。エガワさんはいかがでしょうか?

エガワ:私は、まずリリリリについての話を中村から聞いた際に「DJをするお嬢様なんだけど……」と言われまして。“DJ”と“お嬢様”って振り幅が広いな(笑)と思ったんですけど、逆に言えば幅が広い分やれる事って多いんですよね。色んな可能性がある中で、要所要所どのポイントを押さえていくかがキモになるわけですが、その中で1つだけ、絶対に外しちゃいけないポイントだなって考えたのが”気品”だったんです。

――なるほど!それは間違いないです。

エガワ:どんな曲を作るとしても、品位だけは保つようにしないといけないなというのと同時に、アイドルっぽい可愛らしさも兼ね備えたユニットだと感じたので、ポップスとしても機能する楽曲を作らないといけないな、というのは意識しましたね。他のユニットだと、もう全曲完全にダンスミュージックみたいなユニットもある中で、我々がやるべきはそれこそリリリリのように、一見DJとかに全く縁が無さそうな人でも普通に「良いな」って思ってもらえるようなポップス作りを…というのは意識している点ですね。

――もちろん“リリカル”というだけに文学をモチーフにした楽曲も多い中で、その点を上手くDJらしさとMIXさせたなと思ったのがトランス調なメロディにポエトリーリーディングを乗せてきたプティプランスだったんですが…。

エガワ:そうですね!今回のプティプランスもよく「Aメロのラップパートが〜」みたいに言われるんですけど、自分としてはラップというよりはポエトリーリーディングを意識して作ってみたのですが、それもやっぱりリリリリだからこそ出来た事なのかなって思いますね。
 

■「この曲、本当に大丈夫かな?って不安もあったんです(笑)」

――それでは話の流れで、今回のシングルについて詳しくお話を伺いたいと思います。

中村:楽曲のリリース順と制作の順番は必ずしもあっているワケじゃないんですが、プティプランスに関しては4番目に制作した楽曲でした。それまで“ふわっ”としたイメージの曲が多かったので、ちょっと違うテイストの楽曲が欲しいな〜というのが念頭にありました。

――確かに、先ほどエガワさんにお話を伺った“ポップさ”とはまた違った印象がありますよね。

中村:ポエトリーリーディングから曲が始まって、割としんみりとしたイメージがあるし、作ってみたものの「これ大丈夫かな……ライブで盛り上がれるかな……」って不安に思う部分もあったんですよ(笑)。結果、この曲がリリリリの代表曲と言って下さる方も多くいらっしゃって、僕自身も驚きました。

中村 航

中村 航

――中村さん的にはチャレンジングな1曲だったんですね。

中村:まさしくそうです。リリリリの歌詞を書く際には、先ほども話に出ました”文学モチーフ”という点で、どの作品をテーマにするか考えるんですが、今回は可愛らしさに加えて少し不思議さも表現したいなという事で、『星の王子さま』を題材にしてみました。『星の王子さま』って作品も、深い…というか、ただの教訓話と違って、解釈の幅が広い。まさに、“大切なことは目に見えない”んですよ(笑)。不思議な世界観のなかで人生をすごく感じさせるお話なので、冒頭のポエトリーリーディングの部分とか、歌詞のあらゆる部分にちょっと変わった言い回しみたいなのを使っていますね。いつも先にオケをもらって、それを聞いて詞を乗せる…という“曲先”で楽曲を作っているのですが、エガワさんがすごい良い曲を書いてくれたので、テーマが決まったあとは、スラスラと歌詞が出てきました。

――プティプランスの作曲面のポイントは何かありますか?

エガワ:中村から4曲目だって説明があったと思うんですが、補足すると1曲目が「汚れっちまった悲しみの色」で、その次が「吾輩よ猫であれ」で、3曲目に作った「銀河鉄道の夜に」で、自分としてはアメリカのインディーロックのテイストを入れてみたんですよ。

――インディーロックですか!改めて聴くと、哀愁漂う感じなんかまさにそうですね。

エガワ:はじめの2曲に比べると、アイドルっぽくないというか、可愛らしい方向性から少しハズしてみたんですが、これが案外ハマったので「ただ可愛いだけじゃない何か」というのを作れるかもしれないな、という手応えを感じて、プティプランスに取り組んだという経緯がありました。

――先ほど、中村さんからも曲先だというお話がありましたが。

エガワ:そうなんです。最終的にリリリリって中村が描く歌詞の世界観によるところが大きいとボクら作曲陣も思っているので、なるべく広いキャンバスを提示しようと常々意識していて、それが1番上手くハマった気がするのがこの曲でした。なんか色々な要素が上手くハマって出来た1曲な気がします。

中村:アレンジもすごくよかったですよね。制作を進めていく中でサビのメロディを差し替えてもらったり、あと楽曲をBメロ終わりにするというちょっと変わった構成だったり、挑戦的な要素が非常に多い中で、それらが上手くハマってくれたので、以降の試金石じゃないですけど、ある種の指針になった1曲だったのかもしれません。

■「Dメロに“らしさ”を込めました」

――では続いて「Magiの贈り物」ですが、こちらはクリスマスソングですよね。

中村:そうですね(笑)。クリスマスをテーマに……という発注を受けまして、オー・ヘンリーの賢者の贈り物という短編をモチーフにしました。原題だと確か”The gift of the Magi”というタイトルなので、そのままですね。グルミクのイベントのシナリオと歌詞の世界観をなるべくリンクさせて作った曲になります。

――なるほど、作曲面で意識された点はどんな所でしょうか?

エガワ:これはボクの個人的な作曲のこだわりなんですけど「本当に良い曲というのはBメロがいい曲」だと思っていて、Magiの贈り物に関してはそれが上手く出来たなと思っています。Aメロは長いんだけど、Bメロが非常に短くて4小節しかないんですよ。それくらいギュッと圧縮して、サビで一気に爆発させる…みたいなことを意識して作りましたけど、思ってた以上によく出来たと思ってます。

――ダンスミュージック的にはBメロって恐らく“ビルドアップ”と呼ばれる部分で、スネアロールを入れたりしてサビへ向けて盛り上げる部分なので、ここがキモだというのはとても分かります。

中村:Bメロ良かったと思います!ただ、個人的にはDメロが好きで(笑)。ここにこの曲の魂が込められてたように感じたので、自分も気合いが入りましたし、歌詞とメロディの組み合わせ含め、この曲の“らしさ”を1番詰め込めたと思ってます。「世界中の猫たちが雨に濡れる事なく 人々の争いがどうか止みますように」という詞を当てたんですが、そんな歌詞、この世にありますか?(笑)しかもメロディに完璧にハマるように当て込んだので、ここは本当に褒めてもらいたいです(笑)。

■「作詞家では書けない圧倒的な歌詞の世界観」

――ここまでお二人にはそれぞれ作詞/作曲で意識した点などを伺ってきましたが、改めてお互いの「ここがスゴかった」みたいなポイントを教えて頂けませんか?

中村:これって直感的にわかりづらい話かもしれないですが、やっぱり良い歌詞って曲が良くないとそもそも出てこないんですよね。だから今回のシングルは2曲ともメロディに助けられたというか、シンプルに「良いなぁ…」と思いながら歌詞を付けていました。例えば『Magiの贈り物』なんかは、イントロのメロディってエガワさん的には、そもそも歌詞内容を意識されて作られてますよね?

エガワ:そうですね。

中村:ああ、やっぱり。なのでスゴいイメージしやすかったです。特に先ほど話したDメロの部分はかなりエモーショナルなメロディで、リリリリなりのクリスマスソングを考えた時にジョン・レノンのHappy Xmas (War Is Over)みたいに、リリリリなら平和を歌えるんじゃないかと思いまして……。世界平和を祈る、みたいな壮大なテーマって、なかなか歌えるものでもないけど、リリリリくらい純粋なら歌えるんじゃないかと思ったんです。

――エガワさんが思う中村さんの歌詞の魅力ってどんな点でしょうか?

エガワ:ボクはリリリリに関しては作曲がメインですが、作詞家やシンガーソングライターとして自分で歌う曲も書いてたりしますので、歌詞を考える人の気持ちも分かるんですけど、中村さんの歌詞は普通の作詞家では書けないスゴさがありますよね……。

――作詞家では書けない歌詞……ですか?

エガワヒロシ

エガワヒロシ

エガワ:歌詞に血が通ってると言いますか、もちろんLyrical Lilyというユニットにちゃんとしたバックボーンがあって……という事もあるんでしょうけど、歌詞で見せる景色の立体感とか説得力が並の作詞家とは全然違って、やっぱり小説家として物語を書いてる人だからこその背景の暗喩みたいな部分が圧倒的に上手なんです。作詞家が書くとフワッとしたイメージで終わっちゃうバックボーンの部分が、中村さんの歌詞だとくっきりと見えてくるのがスゴくて、これはリリリリの制作チームの作曲家陣も口を揃えて言ってますね。

■「もっと一緒に仕事がしたいですね(笑)」

――最後に、クリエイターの方に直接お話を伺える機会なので、お聞きしている質問なのですが、この記事に興味を持ってくれた人の中には、将来、作曲の仕事などをやってみたいと思っている人もいるかと思います。そのような方に向けてアドバイス等あればお聞きしたいです。

中村:自分は若い頃に作詞とかやってた事もあるんですけど、今こうして作詞の仕事や音楽プロデューサーのお仕事をやれているのって、やっぱりこれまでに積み重ねてきたインプットとアウトプットの蓄積なのかなって思います。なるべく沢山のものをインプットして刺激を受けてほしいんですが、溜め込むだけだと生み出す筋力が鍛えられないので、どんな形であれ出し続けることこそ大切なんじゃないかな……。あとは志を高く持つことですかね。良いものを作るぞ!という気持ちも大切にしてください。

エガワ:ボクも中村さんに同じくですね。今って結構、音楽を聴かないで音楽作る人が多いなって思ってて。自分はバカみたいに音楽を聞いて、それが身体の中でミックスされて出てきたものが実は自分の音楽だったりするので……。

中村:いやでも、エガワさんはその量がとにかくスゴすぎますよね(笑)。

エガワ:もう自分にはそれしかないというか……。とにかくそれだけをやってプロになったような人間なんですよ(笑)。だから今でも毎日Spotifyで新曲をチェックしてますし、レコード屋さんにも足繁く通いますし、リモート取材なので今も後ろに部屋の棚がちょっと映ってると思うんですけどレコードだけでも3000枚くらいあるし、別の部屋にCDも同じくらい持ってますし。とにかく音楽を聴くのが好きなんですよね。自分はそれくらい音楽が好きだっていう人が音楽を作るべきかなと思っているんですが、それと同時に誰かに聴いてもらう事ですね。そこまでやらないと作ってる意味はないと思います。聴いて、作って、聴かせる。今なら聞いてもらえる場所なんてインターネットを使えば無限にあるわけだし、それを繰り返していれば自然と良いものが生まれると思います。情熱をキープし続けられるのもひとつの才能かなとは思うんですが、自分は「死ぬまでやり続けていれば、死んだ後に成功するかもしれない」ってめっちゃ屁理屈なんですけど、そういう考えで曲を作っています(笑)。

――ゴッホや、それこそリリリリ的に文学でなぞらえるなら宮沢賢治みたいな事ですよね(笑)。

エガワ:その考えで行けば失敗はないんで!(笑)。成功する前に死んじゃうことはあるかもしれないけど失敗はしてないので、やりたい事があるならやりたいようにやりましょう!って思いますね。

中村:リリリリの制作チームである『ステキミュージック』という集団は基本的に謎のベールに包まれてるんですが、個人的にはエガワさんと出会えた事で勝算が見えたというか…。他のメンバーもエガワさんの紹介で繋がった出会いだったりしますし、痒いところに手が届くチームと言いますか、ボクがやりたい事がなんでも出来る環境が揃った感じがあるので……なんというかもっと一緒に仕事したいですね(笑)。

エガワ:そうですね(笑)。まだステキミュージックの実力を全部お見せ出来てないと思いますし、みんなで力を合わせて成功したいですね(笑)。リリリリの仕事をして思ったのはポップ・ミュージックはダンスミュージックも飲み込むパワーを持っているなと。例えばノイズだろうとロックだろうと色んな音楽を包括できるポップスの器の広さみたいなことを改めて感じたので、ぜひ今後の楽曲たちにも期待して頂けたら幸いです。

インタビュー・文:前田勇介

 

リリース情報

Lyrical Lily 2nd Single「プティプランス」

2021年8月18日発売
 
「プティプランス」
作詞:中村 航
作曲:エガワヒロシ
編曲:吉田明広

「Magiの贈り物」
作詞:中村 航
作曲:エガワヒロシ
編曲:平田博信

【音楽プロデューサー】
中村 航

【商品概要】
ブシロードによる「DJ」をテーマにした新たなメディアミックスプロジェクト「D4DJ」に登場する、
お嬢様学校で知られる有栖川学院高等部の1年生が結成したユニット「Lyrical Lily」。
そんなLyrical Lilyから2nd Singleがついにリリース!!
ユニット音楽プロデューサーは、「D4DJ」のストーリー原案も務める中村 航が担当。
Blu-ray付生産限定盤には、アニメ「D4DJ First Mix」第12話・第13話を収録!
さらに、2020年10月11日(日)に開催された「グルミク Presents D4DJ D4 FES. ~LOVE!HUG!GROOVY!!~」より、Lyrical Lilyのライブ映像をW収録!

【収録内容】
[CD]
01.プティプランス
02.Magiの贈り物
03.プティプランス -instrumental-
04.Magiの贈り物 -instrumental-

[Blu-ray]
・アニメ「D4DJ First Mix」第12話・第13話
・グルミク Presents D4DJ D4 FES. ~LOVE!HUG!GROOVY!!~ ライブ映像 -Lyrical Lily-
【初回生産分限定封入特典】
・D4DJライブイベント先行抽選申込券
※2021年8月~2022年8月に開催予定の公演に申込可能
・D4DJ Groovy Mix ディスクスキンシリアルコード
有効期限:2022年8月17日(水) 23:59まで
・D4DJ Groovy Mix アイテムシリアルコード(EXP(プラチナ)×5)
有効期限:2022年8月17日(水) 23:59まで

【早期予約特典】
特製A3オリジナルクリアポスター
※ジャケットイラストを使用したデザインです。
※Blu-ray付生産限定盤・通常盤どちらも対象となります。
※特典はなくなり次第終了となります。お早目のご予約をおすすめいたします。

【連動購入キャンペーン】
8タイトル連動購入キャンペーンの開催が決定!

インタビュー特集まとめ

『D4DJ』6ユニットによる2ndシングルクリエイターインタビュー

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