”魚”に魅せられるミステリ会話劇 舞台『RUST RAIN FISH』Team White公演レポート
舞台『RUST RAIN FISH』Team White 舞台写真
東京・紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAにて上演中の舞台『RUST RAIN FISH』。2021年9月27日(月)からは“Team White”公演も幕開けした。
演出家・西田大輔が描く本格派ミステリ作品「ONLY SILVER FISH」シリーズの第3弾作品。今作では異なる2チームが同じ脚本を演じる、Wキャストによる上演が行われている。9月23日(木・祝)からは一足先にTeam Black公演が開幕していた。
舞台『RUST RAIN FISH』Team White 舞台写真
舞台『RUST RAIN FISH』Team White 舞台写真
本当の名前を知ると過去を振り返ることができると言われる魚《オンリーシルバーフィッシュ》をめぐるストーリー。“上質なミステリ”をテーマに、史実とファンタジーが混ざり合うワンシチュエーション会話劇が繰り広げられる。
今回、魚が現れたのは、第二次世界大戦時の日本。振り返りたい過去を持つ14人の男女が集められた、とある館に存在した。招待客たちは皆、冤罪とされた経験を持つ者だが、姿の見えない“館の主”は、本当に罪を犯した人間が紛れていると断言。14人の中から、犯罪者を見つける“ゲーム”が行われることになった。
舞台『RUST RAIN FISH』Team White 舞台写真
舞台『RUST RAIN FISH』Team White 舞台写真
舞台『RUST RAIN FISH』Team White 舞台写真
偽名で素性を隠した参加者たちは、互いを欺き合う敵同士。ゲームが行われている間にはいくつもの規律が設けられ、時には騙すための手段に使われる。《オンリーシルバーフィッシュ》が佇むとされる水槽の前で、スリリングな心理戦が絶えず繰り広げられていく。
Team Whiteからは、色彩の豊かさを感じた。ユーモアと一口に言っても、板倉武志のずっこけとツッコミを誘う空気に、松村龍之介が醸し出す憎めない変人っぷり、強めのコメディを叩きつける宮平安春とカラーが異なる。本公演で役者デビューを飾った藤澤ノリマサは、一癖ある佇まいと見せ場が期待以上。尾崎由香の可憐さと脱力感のバランスも絶妙だ。
舞台『RUST RAIN FISH』Team White 舞台写真
舞台『RUST RAIN FISH』Team White 舞台写真
舞台『RUST RAIN FISH』Team White 舞台写真
場に緊迫感を与えたのは、山本涼介の冷淡さ。時代観を投影した吉田ウーロン太の威迫も見事。瀬戸啓太の得体の知れなさは、不安感を増長させる。気の強さと気品あふれる高柳明音、厳めしさを内在させる竹井亮介は目を引く存在感。どこか誠実さのにじみ出る鶏冠井孝介、廣野凌大の折り目正しい青年像も心に残る。
今作のトーンを決定づけるのは、なんといっても“黒木(仮)”と“星野(仮)”が出会う冒頭のシーン。柔和だが一筋縄ではいかなそうな高橋良輔と、儚さと芯の強さが同居した天野はながぶつかり、二人の機微に触れた感覚を味わった。
舞台『RUST RAIN FISH』Team White 舞台写真
舞台『RUST RAIN FISH』Team White 舞台写真
舞台『RUST RAIN FISH』Team White 舞台写真
今回は、Team Black公演を経ての観劇。ストーリーを一度体感している分、登場人物たちの所作や表情に注目していると、点と点がどんどん繋がっていく。クスッとくるポイントや、心に響くセリフが変わってくるのも面白い。
初回の観劇では、投げかけられた謎をどうにか解こうともがき続けた。物語を咀嚼して飲み込む感触を得たからこそ、二度目以降は何を感じ取るのかを確かめたくなる。能動的にならざるを得ない、深く作品に関わることができた手応えに似た余韻が癖になりそうだ。
舞台『RUST RAIN FISH』Team White 舞台写真
舞台『RUST RAIN FISH』Team White 舞台写真
東京公演は2021年10月3日(日)まで。10月15日(金)よりCOOL JAPAN PARK OSAKA TTホールにて大阪公演が行われる。
取材・文=潮田茗