福士蒼汰、宮野真守、松雪泰子、髙嶋政宏ら出演! 劇団☆新感線の新作いのうえ歌舞伎『神州無頼街』製作発表レポート
(左から)髙嶋政宏、宮野真守、福士蒼汰、松雪泰子、いのうえひでのり 撮影:田中亜紀
2022年劇団☆新感線42周年興行・春公演いのうえ歌舞伎『神州無頼街(しんしゅうぶらいがい)』が3月17日(木)から大阪・オリックス劇場での公演を皮切りに、東京や静岡で上演される。1月25日、製作発表会見が行われ、演出のいのうえひでのり、出演者の福士蒼汰、松雪泰子、髙嶋政宏、宮野真守が登壇した。
本来2020年に上演される予定だった本作。新型コロナウイルスの感染拡大により延期されたが、今回、満を持して上演される。喧騒と猥雑と絢爛と頽廃の空気が漂う“無頼街”を舞台に、中島かずきが書き下ろした伝奇時代劇で、歌あり踊りあり立ち回りありの王道“いのうえ歌舞伎”の最新作だという。
本記事では、会見の様子をお伝えする(※なお、会見に出席予定だった中島かずきは新型コロナウイルスに感染したため、急きょ欠席となった)。
『神州無頼街』ビジュアル
ーーまずは、ご挨拶をお願いします。
中島かずき(代読):新型コロナに罹ってしまい、製作発表に参加できなかったことをまずお詫びします。『神州無頼街』は、時代伝奇小説への挑戦が自分のテーマでした。大正から昭和にかけて活躍した国枝史郎の作に『神州纐纈城(しんしゅうこうけつじょう)』という傑作時代伝奇小説があります。この作品のオマージュが『神州無頼街』です。
プロデューサーから富士の裾野が舞台なのに「甲州じゃないのか」と聞かれましたが、纐纈城も富士の裾野が舞台です。だから今回も神州なのです。大きな歴史の流れと、その裏で交錯する妖しき人々の宿業。そこに若い二人の活劇青春譚の要素を加えまして、今の時代でも面白いと思える作品にしたいと考えました。そして、この作品は「狼蘭(ローラン)族」の物語でもあります。人殺しを生業とする新しい物語です、その辺りもぜひ楽しみにしていただければ。幸い症状も軽く、こういうコメントが出せるぐらいには元気です。皆様もお気をつけください。
いのうえひでのり 撮影:田中亜紀
いのうえひでのり(以下、いのうえ):今のかずきさんの紹介にありました『神州無頼街』は、かずきさん自身が初めてだと思うんですけど、幕末たちの侠客たちの戦いを舞台にしている、僕たちも初めての挑戦なんですが、世界観としてはヤクザは舞台にしているけれども、もっといろんな魔術とは言わないけど、魑魅魍魎が跋扈するような不思議な作品になっています。
いのうえ歌舞伎ですが、この2年間の鬱憤というか、そういうのを吐き出すつもりで、思った以上にロック芝居というか、音楽芝居の側面もあがっていて。生バンドを入れたRシリーズというのがあるのですが、生バンドが入っていればRシリーズと言って良いぐらい、楽曲も豊富ですし、面白い時代活劇になっていると思います。
2年前に本当はやりたかった芝居だったんですけれど、こうやって2年延期ができた、ほぼ同じメンツで上演できるというのはなかなかこの業界だと、奇跡に近いかもしれない。橋本じゅん以外はほぼ予定したキャストで上演できる。演劇の神様が絶対やれよと言ってくれている気持ちになりました。なんとか頑張って千秋楽を迎えたいと思います。
ーーもう稽古は始まっています。
いのうえ:始まっています。ええ感じで始まっております。
ーー出演が決まった時の感想や公演に向けての意気込みなどありましたらぜひお聞かせください。
福士蒼汰 撮影:田中亜紀
福士蒼汰(以下、福士):2020年に本来やる予定であったんですけど、コロナ禍でできなくなってですね、最初は中止ということだったので、悔しい思いがあったなか、皆さまのお声で中止ではなくて延期にしようとなって、新感線としてもやってみるかということで、しかもメンツも揃うことができてすごく嬉しいです。
2年前にできなかったことができるんじゃないかなということもたくさんあると思うので、2年分、僕含めて経験した分のものを今年出すことができるかなと思うので、そういう部分では皆さまの気概や一人ひとりの思いが伝わりながら稽古に励んでいて、すごく充実した稽古をやっています。一番はまもちゃん(※宮野真守のこと)と共演できて嬉しいなというのが一番です。
宮野真守(以下、宮野):急に話振ってきた! いや、照れるな〜。
ーーお二人はバディで、福士さんと宮野さんは髪型も似ているし、背の高さも似ていますよね(笑)。
福士:だんだん血も近くなっている感じする。血縁関係がありそうな。
宮野真守 撮影:田中亜紀
宮野:兄弟なのかな? 稽古が始まる前に、プロモーションを一緒にまわらせてもらっているんですけど、ずっとわちゃわちゃしています。(福士くんが)ちょっかいを出してくるのが基本ラインですね。ずっと喋っています。稽古場でも。
ーー物語のダークサイド、完全悪役の身堂麗波(みどううるは)を演じる松雪泰子さん、お願いします。
松雪泰子 撮影:田中亜紀
松雪泰子(以下、松雪):2年越しで、今稽古場にいて、皆さんとお稽古していて、喜びでしかなくて。本当に。2年間貯めてきた思いがこの作品の中で爆発的に広がっていくんだなという実感があります。いのうえさんがおっしゃったように、曲も本当に素敵で、聞き応えある良い楽曲ばかりですよね。聞いていてもワクワクするし、きっと楽しんでいただけるんじゃないかなと思います。私は新感線さんで初の悪役なので、思い切り暴れたいと思います。
ーーしかも、ただの悪役じゃないんですよね?
松雪:そう、秘密がいっぱい。
いのうえ:キーワードになるような役ですね。
松雪:でも言えない。ネタバレになっちゃうから。
撮影:田中亜紀
ーー高嶋さんとご夫婦役でいらっしゃいます。
髙嶋政宏(以下、高嶋):本当にもうね、よろしくお願いします。
宮野:ニヤニヤしている!
髙嶋:たまらないですね〜。
ーービジュアルを見ただけでも只者ではないというか。衣装も素敵になりそうです。
松雪:いつも素敵。今回は強烈な感じになるかと思います。
ーー髙嶋さんは出演にあたっていかがですか?
髙嶋政宏 撮影:田中亜紀
髙嶋:もうよろしくお願いします! 昨日は興奮して寝られなかったですね。僕、新感線に出るのが夢だったんですよ。神ですからね、新感線、僕にとって。20、30年前から見ていますから。ずっと出たかったんですよ。
ところがですね、初めて言いますけど、実は今まで2回チャンスがあったんですよ。あったのに、1回目はデビュー当時だったんですけど、掛け持ちするという概念がなくて、僕には無理だと。2回目が、1回断ったのにまた声かけてくれて感動したんですが、とあるミュージカルとだぶってて、できなかったんですよ。作品名は言いませんけども(笑)。ですから、この場に立てるだけですばらしいです。興奮してます。イキそうです。最高です。
ーー新感線に初出演というが意外です。
いのうえ:出ているんじゃないのって感じですよね(笑)。
髙嶋:ようやく声をかけていただいた今がタイミングなのかなと思います。
いのうえ:なんで出てないんだというぐらい不思議な感じ。やっとハマった感じがします。
髙嶋:稽古初日、嬉しくて。動きをいのうえさんがつけるんですけど、いのうえさんの背後にぴたっとくっついて。右動いたら右動いて、左動いたら左動くっていうね。嬉しくて。なんでもやります。お尻も出しますみたいな!
宮野:お尻は出さないで(笑)。
ーー先行画像もすごいですよね。
『神州無頼街』ビジュアル
髙嶋:山ほどいろんなことやったんですけど、諸事情あって、オーソドックスになっていますけどね。いろいろやりましたね。
ーー楽しみな完全悪役のお二人です。続いてはお調子者の“口出し屋”・草臥(そうが)を演じる宮野真守さん。
撮影:田中亜紀
宮野:念願の福士くんとの初共演になります。僕らはずっとね、『髑髏城の七人』で一緒にいたのに、ダブルチームで同じ役だったので、同じステージに立てない不思議な関係性。これが延期になった瞬間に、僕らは演劇を止めない気持ちで前に進んだときに、二人でまたいのうえさんと一緒にソーシャルディスタンス芝居と言いますか、少人数舞台をつくったときも、同じ企画で同じ思いだったんですけど、別の作品だったんです。『浦島さん』と『カチカチ山』という。
それがあったから、この2年があったから、できることが増えた中で、パワーアップした僕らがついに舞台上で共演するというのは一番のおすすめにしていきたいし、していかなきゃなと思っているところです。かずきさんが当て書きをしてくれた役であるというのがありがたくて。当時お話をいただいた時も夢のようで。僕らを思って、題材にしてくれて、それがついにできるんだというのが幸せです。僕は口出し屋という声優を生業にしている中、声とか歌とかそういうところで物語に介入していく役どころにしていただいたので、存分にパフォーマンスしていきたいなと思います、
ーーいのうえ歌舞伎にして歌がこれだけ盛り込まれるのは新しい挑戦ですね。
撮影:田中亜紀
いのうえ:そうですね。まもが出た『髑髏城』のときに、なんで歌わせないんだという声があって。
宮野:宮野に?
いのうえ:あの作品でろうろうと歌ったら気持ち悪いだろうと思ったんだけどね(笑)。今回はあてがきだし、歌を組み込んだので、思う存分歌っていただいて。
宮野:想定より曲数、増えていません?
いのうえ:台本に書き込んだやつよりも、増えています。
宮野:ミュージカルもやらせていただいていたんですけど、もしかしたらナンバーとしては、一番多いかもしない。その分、楽しんでもらえるかもしれない。
髙嶋:何曲あるの?
宮野:7、8曲ぐらいじゃないですかね?
髙嶋:26曲ぐらいあるのかと思った。
宮野:そんなミュージカルないです(笑)。
会見での髙嶋の発言に思わず笑ってしまう一同 撮影:田中亜紀
ーー殺陣もすごいんですよね!
宮野:殺陣は本当に。(福士の方を見ながら)うちにはアクションスターがいるので!
福士:(宮野を見て)ミュージカルスターがいるので。
髙嶋:僕もね、年末に亀甲縛りされて肩が痛かったんですけど、今完全に直りました。亀甲縛りして床に転がされると、肩が痛いんですよね。
宮野:そういう話はしなくていいから!(笑)
ーー福士さんの舞台役者としての魅力を教えてください。今回、それをどう活かそうと考えていますか?
いのうえ:映像とかでアクションをやってますけど、やっぱり生のキレは全然違うものだと思うんですよ。そこまで一般のお客さん、蒼汰がそんなにギュンギュン動けるとは思っていないと思うんですけど、これがね、びっくりするぐらい。しかも彼、研究熱心というか、嬉しそうなんですよね。アクション監督にダメ出しされているのが。
要求も高いんですけど、嬉しそうにダメ出しを受けているのを見ると、生粋のアクション好きの俳優さんだなと。その生の動きはやっぱり格別なものがあると思いますよね。
宮野:(福士を見て)恐縮している。
髙嶋:生のね……。
ーー福士さん、宮野さんから学びたいことや盗みたいことは?
福士:たくさんあるんですけど、顔芸……。
宮野:顔芸していないんだよ。
福士:歌がとにかく上手なので、歌は横で聞いていて心地よくて。高い声から低い声まで幅広いレンジで、丁寧に歌われるので、なんでそんなに歌が上手いのって質問したりとか。今回の役もぴったりとかだなと。そこは勉強したいなと思いますね。
撮影:田中亜紀
宮野:きっと蒼ちゃんも歌う日がくるんじゃないかなと。
いのうえ:いのうえ歌舞伎は歌あるけど、きれいに歌うっていうか、通常のグランドミュージカルではないし、ロックでみんなで楽しい感じが出れば良い。参加できるシチュエーションがあればどんどんそういうことも。
宮野:注目です!
福士:歌うかどうか本番のお楽しみで(笑)。
ーー宮野さんは、福士さんから学びたい、盗みたいことは?
宮野:まっすぐなんですよ、本当に楽しそうに稽古場にいる。人の殺陣まで覚えちゃうぐらい(笑)。真っすぐさ、ピュアさが役にぴったりだし、研究熱心なところは、僕もついていくと自然とスキルアップできるかなと思うので。福士くんがやっていることをしっかり観察して、バディとして恥ずかしくない存在であれるようにいたいです。
撮影:田中亜紀
ーー互いの好きなところは?
宮野:掘りますね(笑)。テレビでは大人しくしているじゃないですか。しゅっとしているじゃないですか。でもそんなことないですから。本当にこんないたずらっこはいないというぐらい! バディでいるから、二人でいることが多いんですけど、ずっと棒で僕を突いてきますかららね(笑)。いらないでしょう、そのムーブメント。そして、ひとりでケラケラ笑っているんです。というぐらいお茶目なところがあるので、そういうところも役にも反映されるんじゃないかなと思いますね。
福士:好きなところ? たくさんあって全部と言いたいですけど、好きなところは包容力があって優しいところです。何をやっても許してくれる。その裏にある、闇の部分も実は好きです。
宮野:あんまり言うなよ?(笑)
福士:ダークサイドの暗いところを実は持っているんじゃないかなと思ったりして。その人間らしいところと、みんなにパフォーマンスをしているところと、いろんなまもちゃんが見られて、嬉しいなって。これだけサービス精神が旺盛な人はなかなかいないです。
撮影:田中亜紀
松雪:愛し合っているんですね、素敵です。
ーー最後に一言ずつ、メッセージをいただきたいと思います!
いのうえ:2年越しの熱い思いを込めた、お祭りのような舞台にしたいと思います。頑張りたいと思います、どうぞよろしくお願いします!
福士:殺陣も多いですし、歌も多いですし、ど迫力な舞台になるんですけど、その根底には人の生き方だったり、生き様が描かれているので、そういった部分も見てくれたら嬉しいなと思います。よろしくお願いします。
撮影:田中亜紀
松雪:髙嶋さんとともに今までの新感線作品には登場していない、新たな悪役をしっかりと演じたいと思っております。楽しんでいただける作品になるよう頑張りたいと思います。
髙嶋:皆さん、ついに奇想天外、本物の娯楽活劇が開幕します。どうぞ劇場までお越しください。
宮野:こうしてみんなで製作発表できて、空気感がまた僕自身も知れて、(髙嶋さんが)呼吸するように下ネタ言うんだなと思いました。まだ稽古場は対決のシーンまで行っていないので、でもこの空気感を知れて、僕らはしっかりと立ち向かえるなと思ったので、楽しく稽古場でいられそうで。僕らが楽しんでお芝居作りをしていることがきっと伝わるんじゃないかなと思います。歌あり、踊りあり、アクションありの華やかなお祭り騒ぎの舞台ですので、皆さん、是非楽しみにきてください!
撮影:田中亜紀
取材・文=五月女菜穂