中川晃教・藤岡正明・東啓介・大山真志が演じる「ザ・フォー・シーズンズ」の関係性にも注目~ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』Team BLACKゲネプロレポート

レポート
舞台
2025.8.13
Team BLACK(左から)大山真志、東啓介、中川晃教、藤岡正明

Team BLACK(左から)大山真志、東啓介、中川晃教、藤岡正明

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ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』が、2025年8月10日(日)東京・日比谷シアタークリエで幕を開けた。SPICEでは、2016年の日本初演からハイトーンボイスが魅力のリード・ボーカル、フランキー・ヴァリを演じる中川晃教と、藤岡正明、東啓介、大山真志らが登場する「Team BLACK」が初日の前に同所で行った通し稽古の様子をレポートする。

同作は1960年代に実在したアメリカのポップグループ「ザ・フォー・シーズンズ」の栄光と挫折を描いた物語。米ニュージャージー州にある貧しい地区で生まれ育った4人は、天性の歌声と才能を武器にスターダムを駆け上がっていく。スポットライトを浴び華やかな日々を送っていたが、その裏では多額の借金やメンバー同士の確執、家庭不和など様々な問題を抱えていた。

トニー賞最優秀ミュージカル賞、グラミー賞を受賞するなど長く親しまれている名作。今年は中川らの「Team BLACK」。劇団四季で活躍した小林唯がフランキーを務める「Team YELLOW」、フランキー役は2022年以来となる花村想太らの「Team GREEN」、初演からアンサンブルを務めていた大音智海がフランキーとして舞台に立つ「New Generation Team」の4チームがそれぞれのカラーで、日比谷を熱狂させる。

開演前の会場。舞台の左右にはモニター13個ずつ積まれている。客席の方に向けて置かれたカメラが客が出入りする様子をとらえ、その姿がモニターに映し出されていた。様々な仕掛けがあることを予感させる舞台に目を戻すと、3階建てのステージの最上部には、4着の真っ白なジャケットがハンガーラックに並べられている。1階から3階までを貫く階段はステップアップしていく4人を象徴するかのよう。トランペットやサクソフォンの練習音が響く中で、始まりの時を待っていた。


舞台はグループの軌跡を「春・夏・秋・冬」の季節に分け、「ザ・フォー・シーズンズ」のメンバーが語り手となって展開していく。まだ何者でもない時を回想するのは藤岡のトミー・デヴィート。「この話は俺から始まった」とフランキーとの出会いを振り返る。世間知らずの16歳の少年にダイヤの原石のようなきらめきを感じたトミーは、バンドを組むことを提案する。トミーとバンドを組んだフランキーは、バンド名や音楽性を変えながら名声を得ようと努力するがなかなか報われない。そこへ地元の友人がやってきてトミーにささやいた。「バンドの第4の男にふさわしいシンガー・ソングライターを見つけた」と。

季節は「夏」に変わり、2番目の語り手は、第4の男ことボブ・ゴーディオ役の東。鮮やかな黄色のジャケットを身にまとい、セクシーな女性とヒット曲『Short Shorts』を歌う彼はすでにショービジネスの世界で活躍していた。しかしフランキーの“天使の歌声”を耳にしたボブは「この声のために曲を書かなければ!!!」と開眼。3人の前で『Cry for Me』を足踏みオルガンで演奏しながら歌い出すと、美しい歌声とメロディーに驚いたフランキーはうれしそうに声を合わせていく。共鳴する2人の声にトミーはギターを、ニック・マッシ役の大山はベースを奏で音楽で心をひとつに。唯一無二のグループが誕生した瞬間だった。

長い下積みを経験した後、大物プロデューサーの目に留まった4人は才能を開花させていく。バンドや女性コーラスを引き連れて各地へツアー、売り出したレコードはトップ・チャートを賑わせ続けた。栄光を手にした裏で、妻や子供たちと過ごす時間が減ったことで徐々に不仲に。フランキーは、一目で恋に落ち、惹かれ合ったメアリーと向き合い「1番近くにいたのに、遠い存在になってしまった。もう届かない」と修復できない心の距離になすすべもなく肩を落とすのだった。



そして最大の危機が訪れたのは「秋」。大山が演じるニックは、傲慢なトミーの振る舞いに不満を抱えていたことを吐露。一触即発状態の4人のもとに、やってきた男がさらに悪い知らせを伝える。「15万ドル返してほしい」。3人が知らないうちにトミーが重ねた借金だった。

20分間の休憩を挟んだ後半は、軽やかなピアノの音でスタート。ビシッとスーツでキメた4人だったが、昨年ツアーで宿泊したホテル代が未払いだったと警官に告げられ、ショーが終演した後に連行されることに。トミーのだらしなさに、温厚なボブもほとほとあきれかえっていた。

10代の時、音楽や恋、生き方などさまざまなことを教わった感謝から、フランキーはトミーを見捨てられない。税金の未納が50万ドル以上あることも発覚するが、膨大な借金をフランキーは「グループで返す」と宣言。先行きに不安を感じたニックはトミーとボブに「付き合っていられない」と脱退を宣言。着ていたジャケットを脱いでマイクスタンドにかけ、ステージを後にするのだった。

2人の仲間が去り、訪れたのは「冬」。最後の語り手はフランキーは静かに語り始めた。ラスベガスに身を置くトミーと、脱退したニックの代わりとなる歌手を探し新しいカルテットを結成。しかしうまくいかない。そんな時にボブはフランキーにソロになることを提案する。憧れだったホーンセクションを従えたフランキーは、今も幅広い世代に親しまれている『Can't Take My Eyes Off You』や、『Working My Way Back to You』をミラーボールが輝く中で熱唱。再び脚光を浴びるように。返済不可能と思えた借金も完済し安堵した夜。1本の電話がフランキーをどん底に突き落とした。

それは愛娘の死を知らせる一報だった。「22歳、歌手を目指していたんです」。娘が愛用していたコートを手に、神父に懺悔するように口を開いたフランキーの目には大粒の涙が浮かんでいた。

1990年にロックンロールの殿堂入りを果たした4人は、再集結。真っ白に輝くジャケットを羽織り『Sherry』などのヒット曲を、ステップを踏みながら歌唱。美しいハーモニーに会場からコンサートのような大きな拍手が送られていた。

ジュークボックスのようにオールディーズの音楽が次々と披露されるミュージカル。中川らは現在、同ミュージカルの音楽プロデューサーを務める「ザ・フォー・シーズンズ」のボブ・ゴーディオ本人に歌唱した音源を送り、認められた上でステージに立っているという。

この作品で「トワング」という独特の発声法を身につけたという中川。ハイトーンボイスでの繊細な表現はもちろん、アンサンブル、ハーモニーなど、どの歌唱シーンにも聴きどころにあふれていた。長く務めている“当たり役”でフランキーとしてのグルーヴが体に染みついていると感じられた。また16歳の少年から、大人へと成長していくその表現力にも注目してほしい。

藤岡は、刑務所を出たり戻ったりしている荒くれ者のトミーを、どこかにくめない人物として体現。大山のニックは歌声と同様に、しっかりと3人を支える縁の下の力持ちのような人間力があった。そして190センチの高身長が目を引く東が務めたボブは、どんな時でもフランキーを支える優しい人物。ソロ歌唱の場面では色っぽい流し目もあり、女性達の心をわしづかみにしていた。

開幕に向けて中川は「”春夏秋冬”。4つの季節=シーンを”The Fore Seasons”の4人が順番にナレーターとなってバトンをつなぎながらグループに対して、あるいは自分自身や個人に対して胸中が語られていくミュージカル『ジャージー・ボーイズ』。改めてこの作品と正座して向き合っているという気持ちです。トミーとニックは鏡台と言えるし、ボブはパートナーと言える。そんな風により思えるようになった2025。ぜひ僕たちの関係性にも注目していただけたらうれしいです」とコメントを寄せている。

本公演の上演は9月30日(火)まで、同所で。
 

取材・文・撮影=翡翠

公演情報

ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』
■日程・会場:2025年年8月10日(日)~9月30日(火) 東京 日比谷シアタークリエ

■脚本 マーシャル・ブリックマン&リック・エリス  ■音楽 ボブ・ゴーディオ  ■詞 ボブ・クルー
■演出:藤田俊太郎
 
■キャスト 配役
 
「Team BLACK」
フランキー・ヴァリ 中川晃教
トミー・デヴィート 藤岡正明
ボブ・ゴーディオ 東 啓介
ニック・マッシ 大山真志
ボブ・クルー 加藤潤一
ジップ・デカルロ 阿部 裕
ノーマン・ワックスマン 戸井勝海
メアリー ダンドイ舞莉花
ロレイン 原田真絢
フランシーヌ 町屋美咲
リードエンジェル 柴田実奈
ハンク LEI’OH
ドニー 山野靖博
ストッシュ 杉浦奎介
ジョーイ 石川新太
 
「Team YELLOW」
フランキー・ヴァリ 小林 唯
トミー・デヴィート spi
ボブ・ゴーディオ 有澤樟太郎
ニック・マッシ 飯田洋輔
ボブ・クルー 原田優一
ジップ・デカルロ 川口竜也
ノーマン・ワックスマン 畠中 洋 
メアリー ダンドイ舞莉花
ロレイン 原田真絢
フランシーヌ 町屋美咲
リードエンジェル 柴田実奈
ハンク 大音智海
ドニー 山田 元
ストッシュ 伊藤広祥
ジョーイ 若松渓太
 
「Team GREEN」
フランキー・ヴァリ 花村想太
トミー・デヴィート spi
ボブ・ゴーディオ 有澤樟太郎
ニック・マッシ 飯田洋輔
ボブ・クルー 原田優一
ジップ・デカルロ 川口竜也
ノーマン・ワックスマン 畠中 洋
メアリー ダンドイ舞莉花
ロレイン 原田真絢
フランシーヌ 町屋美咲
リードエンジェル 柴田実奈
ハンク 大音智海
ドニー 山田 元
ストッシュ 伊藤広祥
ジョーイ 若松渓太
 
「New Generation Team」
フランキー・ヴァリ 大音智海
トミー・デヴィート 加藤潤一
ボブ・ゴーディオ 石川新太
ニック・マッシ 山野靖博
ボブ・クルー 原田優一
ジップ・デカルロ 川口竜也
ノーマン・ワックスマン 畠中 洋
メアリー ダンドイ舞莉花
ロレイン 原田真絢
フランシーヌ 町屋美咲
リードエンジェル 柴田実奈
ハンク LEI’OH
ドニー 山田 元
ストッシュ 伊藤広祥
ジョーイ 若松渓太

※「TeamBLACK」、「TeamYELLOW」に加え、TeamYELLOWの配役をベースにフランキー・ヴァリ役のみ花村想太が演じる「TeamGREEN」、さらには、フレッシュなキャストで贈る「New GenerationTeam」の公演を1公演予定。

■製作:東宝株式会社、WOWOW

■作品公式HP https://www.tohostage.com/jersey/
スケジュール、キャストスケジュールなど詳細は公式HPをご確認ください
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