三宅健らが平安時代へ観客を誘う 『陰陽師 生成り姫』フォトコール&会見レポート

レポート
舞台
2022.2.23
『陰陽師 生成り姫』(左から)林翔太、音月桂、三宅健、木場勝己

『陰陽師 生成り姫』(左から)林翔太、音月桂、三宅健、木場勝己

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日本はもちろん、全世界で800万部をこえる大ヒットを記録した夢枕獏の小説『陰陽師』シリーズ。映画やドラマ、漫画などのメディアで繰り返し描かれてきた人気作に、脚本・マキノノゾミ×演出・鈴木裕美のタッグが挑む。

題材は、シリーズでも高い人気を誇る『生成り姫』。主人公である安倍晴明と無二の友人である源博雅の絆、博雅と徳子姫の切ない恋を繊細に描いている。

安倍晴明を演じるのは、新橋演舞場・南座初座長となる三宅健。演出・鈴木裕美とのタッグは4度目、近年は六本木歌舞伎『羅生門』や『藪原検校』といった舞台にも出演している三宅が、美しく雅な陰陽師となる。

物語のキーパーソン、タイトルにもある“生成り姫”は、元トップスターで宝塚退団後も多くの舞台で活躍する音月桂。晴明の親友・源博雅はミュージカルや舞台で注目を集めている林翔太が演じる。そして、晴明のライバル・蘆屋道満役を演じるのは、舞台や映像作品で存在感を放つベテランの木場勝己だ。

その他、姜暢雄、太田夢莉、佐藤祐基、 市川しんぺー、岡本玲、佐藤正宏と、実力派キャストが集結しているほか、楽器の生演奏やコンテンポラリーダンスといった舞台ならではの見どころも。

初日に先駆けて行われた会見とフォトコールの様子をお伝えする。会見には、三宅健と音月桂、林翔太、木場勝己の4名が登壇した。


ーー初日を迎えた今の気持ちはいかがでしょうか。

三宅:なんとかこの日まできました。何事もなく千穐楽を迎えられるよう、皆様と一緒に努力をしながら過ごしていきたいと思っています。

音月:カンパニーのみんなで一丸となって、手仕事で作り上げてきた舞台です。想いを受け取っていただけるよう、心を込めて丁寧に務めていきたいと思います。

:大変な状況が続いていますが、初日の幕が無事に開けられることに安心しています。

木場:このカンパニーの最年長として、置いてけぼりにされないよう頑張ってきました。千穐楽まで頑張りたいですね。

ーー共演者の皆さんから見た三宅さんの安倍晴明の印象、三宅さん自身が考える安倍晴明について教えてください。

木場:敵対しているように思われることもありますが、晴明さんのことが大好き。そういう道満でいきたいですし、三宅さんの晴明はそれに相応しい美しさです。

音月:鬼になりかけた徳子姫が晴明と対峙するシーンがあるんですが、美しさに圧倒されます。女性から見ても妖艶で、“雅”という言葉がすごく合う晴明様なので、そのパワーをお借りして私も頑張りたいなと思っています。

:健くんの素の美しさがそのまま晴明に合っていて。舞台上でようやくマスクを外してお芝居できるようになり、毎回ドキドキしています。

三宅:そうなんです、昨日くらいまでマスクをしていたので、みんなの顔がわからなくて。それくらいきちんと対策をして挑んでいます。僕自身は、今までにない人間味溢れる安倍晴明になっていたら嬉しいなと思います。

ーー稽古場の雰囲気はどうでしたか?

三宅:私語は必要最低限で、感染症対策を徹底して進めましたね。

:(V6さんに憧れてジャニーズ事務所に入ったので)幸せな日々を過ごすことができました。僕にとって思い入れのあるこの新橋演舞場で、こうして健くんと一緒にステージに立てるというのは奇跡のような出来事です。

三宅:2018年の『滝沢歌舞伎』以来だよね。

音月:晴明が博雅さんに喝を入れるシーンの稽古中、「もっと激しく!」と言われた時に(林が)ニヤニヤと嬉しそうにしていて。2人の師弟関係のようなものが垣間見えて微笑ましかったです(笑)。

ーー人力で作り上げている舞台というお話が出ていますが。

三宅:(フォトコールで)見ていただいた通り、精霊たちが剣を縦横無尽に動かすなど、ダンサーの皆さんの力を借り、素敵な音楽を奏でてくださる皆さんと一緒に作り上げています。セッションのような感じで、お芝居とダンス、音楽が混ざり合ってできている作品ですね。

ーー音月さんは、鬼になる姫を演じてみていかがでしょう。

音月:私自身、初めての挑戦です。三宅さんがおっしゃっていた通り、コンテンポラリーダンスなど、周りの皆さんが支えてくださって、自分一人の力だけでは出せない迫力や熱量を作り込んでくださいます。背中を押してもらって鬼になっていますが、どう見えているんでしょう?

三宅:怖いよ。

音月:怖いの!? やだ!

三宅:登場する時、お客様に背を向けてて僕だけが見えるシーンがある。本当に怖い(笑)。

音月:こっちは必死なんですよ(笑)! でも、ダンサーさんなど周りの方に頼れる安心感があるので、千穐楽までにもっとパワーアップしていけたらと思います。

ーー姫に思いを寄せる林さんから見て、いかがですか?

:どんな姿でもお美しいです。

音月:良かった(笑)!

ーー鬼の時はメイクも怖い印象ですよね。

音月:そうですね。台詞の中でも「顔に丹を塗り」とあり、さらにカラーコンタクトも入れています。

ーー林さんは憧れの三宅さんとの共演の中で新たに何か発見しましたか?

:ジャニーズの現場ではなく、外の世界で一緒にお仕事をしている健くんを見るのは初めてでした。見ていないようで周りをすごくしっかり見ていて、色々な人に気を遣って現場の空気作りをされるんだなと。すごく居心地のいい雰囲気にしてくださっていました。

ーー改めて、メッセージと意気込みをお願いします。

木場:陰陽師の力でコロナを祓いたいですね。千穐楽まで無事に完走できるよう祈っています。

:舞台ができるというだけで幸せです。僕らのパフォーマンスで感じていただけることはたくさんあると思うので、少しでも多くのものを持って帰ってもらえたらと思っています。

音月:まだまだ不安な状況が続いている中で、人の温もりを近くで感じる機会は少なくなってしまいました。舞台と客席という距離感で、私たちの温度を受け取って、ぬくぬくで帰っていただけるよう、最後まで心を込めて頑張ります。

三宅:大変な状況の中で、お越しになられるお客様も対策をしながらの観劇となると思います。僕たちも気を引き締めながら日々感染対策を行なっていきます。お芝居が上演されている間は嫌なことを全て忘れて平安の世に皆様を誘えるよう準備していますので、ぜひお越しください。
 

※以下、ネタバレがございます。ご注意ください。

<あらすじ>
時は平安時代。美しい満月の下で酒を酌み交わしながら、安倍晴明(三宅健)と源博雅(林翔太)はいつかの姫の話をしていた。
12年前の堀川橋のたもと。夜に博雅が笛を奏でると、決まって対岸に牛車が現れた。ある日、笛の音に相和するように、美しい琵琶が奏でられる。夢のような心地よさを感じた博雅だったが、琵琶を奏でていた美しい姫(音月桂)は「今宵が最後」と言い残し、名前も告げずに去ってしまう。
そんな話をした3ヶ月後、晴明と博雅を、盲目の法師が訪ねてくる。彼が持っている壊れた琵琶は、あの時の姫が弾いていた“飛天”だった。姫を心配した博雅は、晴明の提案を受けて再び堀川橋のたもとで笛を奏でる。すると月明かりの中に美しい姫が現われた。徳子と名乗った姫は、博雅に「どうかお助けくださいまし」と告げて消えてしまう。
実は姫は、かねてより晴明と術比べをしてきた蘆屋道満(木場勝己)に焚き付けられて鬼と成りかけているのだった。晴明と博雅は彼女を助けようとするが――。


公開されたのは、第一幕より徳子姫が博雅に助けを求めるシーン、第二幕より徳子姫に仕える火丸(佐藤祐基)が自害しようとするのを蘆屋道満が制止するシーン、復讐に燃える徳子姫が晴明・博雅の前に現れるシーンの3つ。

三宅は原作で描写されている通り、涼しげな色気を持つ晴明に。優美で神秘的な立ち居振る舞いによって幻想的な平安の世に誘ってくれる。冷静でクールだが、博雅といるときの砕けた話し方や柔らかい雰囲気、徳子姫が鬼になる原因を作った藤原済時(姜暢雄)へのあけすけな物言いなど、人間らしさも垣間見えて親しみも感じられる。術を使うシーンにおいても、派手な演出はないが抑揚をつけて力強く呪文を唱える声と指先まで神経の行き届いた動きで魅せてくれる。

林演じる博雅からは、セリフをいくつか聞くだけで、12年間もの間淡い恋を大切にしていたことも頷けるほど愚直でピュアな人柄が伝わってくる。徳子姫が鬼になっても味方でいようとする様子は呆れてしまうほど清廉だ。心のままに行動する博雅を非常に素直に演じる林により、源博雅という人物の魅力が遺憾なく発揮されている。

晴明と博雅の息の合った掛け合いや、言動の端々から感じられる友情と信頼関係もこの作品の魅力のひとつ。会見で音月から「師弟関係が見て取れて微笑ましかった」という話があったが、真っ直ぐな博雅と彼を優しく見守る晴明の空気感が、シリアスな展開の中でホッとするような温かさを生んでいた。

晴明のライバル・蘆屋道満は、徳子姫を焚き付けて鬼にしようとする。だが、意図せず家を衰退させる呪いに手を貸してしまったという後悔に苛まれる火丸の話を聞き、「姫の本願成就を見届けてやれ」と告げるなど、単なるヒールと片付けられない魅力に溢れた人物だ。木場の佇まいと深みのある芝居によって晴明のライバルに相応しい貫禄も持ち、作品を引き締めている。

また、このシーンではアンサンブルキャスト扮する精霊たちが火丸を翻弄。軽やかで力強いダンスによって精霊たちの力が幻想的に表現される。重厚な音楽や身体表現により、作中の世界の美しさと荘厳さがひしひしと伝わってくるのが印象的だった。

そして、物語の鍵を握る徳子姫は、たおやかで儚い姿から鬼への変貌が素晴らしい。丹塗りした顔、長い爪や乱れた髪の毛といった“鬼”のイメージ通りのビジュアルはインパクト大。音月は自らを裏切った藤原済時に対する熾烈な愛憎を見事に表現し、恐ろしいながらも美しく哀しい姫を演じている。

自らの所業で彼女を苛んだのに怯えて晴明に頼るだけの済時と、危険を顧みずに彼女を助けようとする博雅の対比も切ない。済時を演じる姜は不誠実で情けない男を好演しており、彼の憎たらしさによって徳子姫の悲哀と博雅の魅力がますます際立っていると感じた。

晴明はもちろん、相棒である博雅の魅力も存分に味わえるとして『陰陽師』シリーズの中でも人気の『生成り姫』。晴明・博雅の友情と、博雅と徳子姫の切ない恋を、ぜひ劇場で見届けてほしい。本作は2022年2月22日(火)~3月12日(土)まで東京・新橋演舞場、3月18日(金)~3月24日(木)まで京都・南座で上演される。

取材・文・撮影=吉田沙奈

※公演が終了しましたので舞台写真の掲載を取り下げました。

公演情報

『陰陽師 生成り姫』
 
■東京公演
日程:2022年2月22日(火)~3月12日(土)
会場:新橋演舞場
ご観劇料(税込) 1等席:12,500円   2等席:8,500円 3階A席:4,500円   3階B席:3,000円   桟敷席:13,500円
 
■京都公演
日程:2022年3月18日(金)~3月24日(木)
会場 南座
ご観劇料(税込) 一等席:12,500円 二等席:8,500円   三等席:4,500円  特別席:13,500円 
 
原作:夢枕 獏(文春文庫『陰陽師 生成り姫』)
脚本:マキノノゾミ
演出:鈴木裕美
 
出演:
三宅健
音月桂 林翔太
姜暢雄 太田夢莉 佐藤祐基
市川しんぺー 岡本玲 佐藤正宏
木場勝己
 
製作:松竹株式会社
制作協力:クオラス
 
公式Twitter @onmyojistage
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