東京・春・音楽祭 2022が開幕~ワーグナー・シリーズ、プッチーニ・シリーズなど70公演を予定

レポート
クラシック
2022.3.21
東京・春・音楽祭2022 リハーサルより (C)飯田耕治

東京・春・音楽祭2022 リハーサルより (C)飯田耕治

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2022年3月18日(金)から18回目となる東京・春・音楽祭 2022が開幕した。4月19日(火)までの約1か月間に渡り、70公演が開催される予定だ。開幕に先立ち東京・春・音楽祭実行委員による記者会見を実施。コロナ禍により2020年、2021年は公演のキャンセルや無観客によるストリーミング配信など、縮小を余儀なくされたが、2022年は2年連続中止となった東京春祭ワーグナー・シリーズを《ローエングリン》(演奏会形式)で再開するほか、2020年に第1回目を企画しながら延期が続いていた「東京春祭プッチーニ・シリーズ」がついに陽の目を見るなど、「ようやく華やかな形で開催できる」と東京・春・音楽祭実行委員 実行委員長の鈴木幸一。さらに今年は一部を除きほとんどの公演をライブ・ストリーミング配信。世界へ発信することで音楽祭のさらなる進化と発展を目指すという。(文章中敬称略)

鈴木幸一実行委員長と芦田尚子事務局長

鈴木幸一実行委員長と芦田尚子事務局長


■3年ぶりに戻ってきた「華やかな春」

今回開催される演奏会は子ども向けの5公演を含め全70公演(有料公演)。コロナ禍前までは無料の音楽イベントも含め、約200公演が行われていたが、無料公演による賑わい創出はまだ控える形だ。しかしながら、国立科学博物館、東京国立博物館や東京都美術館などを会場として行われるミュージアム・コンサートは、昨年は一部公演が無観客の有料配信だったが、今年は5館すべて有観客公演が実現。特別展示プログラムとタイアップしたテーマの公演も行われるなど、「美術館・博物館の街」でもある上野らしさに、彩を添えることとなる。

〈ナイトミュージアム〉コンサート(2019年公演より) (c)増田雄介

〈ナイトミュージアム〉コンサート(2019年公演より) (c)増田雄介

2019年にスタートし毎年好評を得ている「子どものためのワーグナー」(バイロイト音楽祭提携公演)も、昨年に引き続きカタリーナ・ワーグナーのリモート演出により上演予定。今年演奏されるのは《ローエングリン》だ。さらにババヤン、ターフェルなど世界で活躍する演奏家たちも名を連ねている。事務局長の芦田尚子は「一部、水際対策などのタイミングなどで来日を断念したアーティストたちもおり、その結果キャンセルとなってしまった公演もいくつかはあるものの、今年はほぼほぼ予定通りの公演開催にこぎつけた。ウクライナの情勢によりフライトに制限がかかっているが、フライトの問題で公演キャンセルにはしたくない。できる限りの手を打ちながら、音楽祭を通して“平和の意味”を伝えていきたい」と力強く語った。

芦田尚子事務局長

芦田尚子事務局長


 
子どもためのワーグナー《パルジファル》 (c)東京・春・音楽祭/飯田耕治

子どもためのワーグナー《パルジファル》 (c)東京・春・音楽祭/飯田耕治


 

■ライブ・ストリーミング配信がもたらす音楽祭の変化に期待

コロナ禍を機に、新たな鑑賞チャネルの一つとなったライブ・ストリーミング配信。東京・春・音楽祭でも2021年に全プログラムの有料配信を実施したが、今年は約60公演で実施する。「今年は複数台設置していたカメラを高画質の4Kカメラ1台とするなど、音質を維持しながらコストを抑えられた。その結果、1公演1000円ほどの購入しやすい価格が実現できたので、世界中の多くの方々に視聴していただきたい。画面をタップすることで、自分の見たい部分を拡大することもできるようになってる」と芦田事務局長は話す。

「音楽祭も今年で18年目。(東日本大震災やコロナ禍など)これまでいろいろなことがあったが、継続することが大事。どういう形になるかはわからないが、ライブ・ストリーミング配信を通して世界とつながる展開も期待したい。世界中の人たちに“見られている”ということで、音楽祭が今後どのように変わっていくのか、その変化を楽しみにしている」と鈴木実行委員長。「音楽は不要不急のもの、娯楽と言われるが、かつてプラハを訪れたときに『この音楽祭が我々の誇りだ』という言葉とともに、音楽に人の生きる力や強さを感じた。この東京・春・音楽祭もどうあっても続けていきたい」と、個人の体験に基づくエピソードとともに、強い決意もにじませた。

鈴木幸一実行委員長

鈴木幸一実行委員長


3月18日、開幕公演の指揮を振ったリッカルド・ムーティは、リハーサルの際に「シューベルト《未完成》の第二楽章は祈りの曲だ。音楽を突き詰めると祈りになるのだ」ということを語ったと鈴木実行委員長。疫病に加え、ウクライナを巡る戦乱は音楽の世界にも影を落としているのは否めない。しかしだからこそ、命が芽吹く春、病が癒え、戦乱が終わり世界中の人々が笑いあえるという「祈り」に、音楽を通してふれていきたい。
 

(c)東京都美術館/飯田耕治

(c)東京都美術館/飯田耕治

取材・文=西原朋未

公演情報

「東京・春・音楽祭2022」 
 

■期間:2022年3月18日(金)~4月19日(火)
■会場:東京文化会館、 東京藝術大学奏楽堂(大学構内)、 旧東京音楽学校奏楽堂、飛行船シアター(旧 上野学園 石橋メモリアルホール)、 国立科学博物館、 東京国立博物館、東京都美術館、 上野の森美術館、 他
■主催:東京・春・音楽祭実行委員会
■共催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京文化会館
■後援:文化庁、 東京都、 台東区
■協力:一般社団法人 上野観光連盟、 上野の山文化ゾーン連絡協議会、 上野文化の杜新構想実行委員会
■助成:公益社団法人企業メセナ協議会 2021 芸術・文化による社会創造ファンド

プログラム等は下記公式サイトにて確認ください。
■公式サイト:https://www.tokyo-harusai.com/
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