田中哲司や大森南朋ら、登場人物全員がクズ!? 赤堀雅秋の新作『ケダモノ』を、演技派揃いのキャストが語る

インタビュー
舞台
2022.4.1
(左から)赤堀雅秋、田中哲司、大森南朋、門脇麦、荒川良々

(左から)赤堀雅秋、田中哲司、大森南朋、門脇麦、荒川良々

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田中哲司、大森南朋、赤堀雅秋の三人による演劇ユニットが、約2年半ぶりの新作に取り組む。2016年の第1弾『同じ夢』では光石研や麻生久美子らが参加し、2019年の第2弾『神の子』では長澤まさみ、でんでん、江口のりこ、石橋静河らが参加するという、顔合わせの妙でも話題を集めた彼らの舞台。第3弾となる今回の『ケダモノ』には、門脇麦、荒川良々らが初参加する。本格的な稽古に突入する直前の稽古場に、田中、大森、赤堀、門脇、荒川が集合! 今作のこと、赤堀作品への想いなどについて、語ってくれた。

ーーまずは作・演出の赤堀さんに、今回の『ケダモノ』の構想などをお聞きしたいのですが。

赤堀:まだ今日の時点では台本を執筆中で、内容が定かではない状況なのですが(笑)。簡単に言うと、小さな田舎町で起こる、不毛な話です。大森南朋さんが演じるのはリサイクルショップの店長。荒川良々さんと清水優さんは、そこの店員です。田中哲司さんが演じるのは、マルセル小林という映画プロデューサー。そして、この男連中が通うキャバクラで働いているのが、門脇麦さんや新井郁さんとなります。山に囲まれた、ちょっと閉塞的な町で起こる人間模様という感じですね。自分としては常々、普遍的な話を書きたいと思っていて。だからこれまでは、たとえば震災やコロナ禍に関してはあまり描かずに通ってきたんです。でも今回はコロナ禍であるということを大前提として、その上で些末な人間模様が描けたらと思っています。

ーー赤堀さん、田中さん、大森さん、この三人のユニットで第1弾、第2弾に続いて、こうして第3弾が実現できることについての心境をお聞かせください。

赤堀:とても幸せです。今、台本の完成が遅れていまして、各所にご迷惑をかけている最中なのでそんな牧歌的なことを言っている場合でもないんですけど(笑)。

一同:(笑)。

赤堀:それはさておき、こうしてゼロから、ここにいるみなさんと一緒に真摯にものが作れるというのはとても幸せな環境だと思います。

田中:僕にとっては楽しい現場につきます。戯曲が難解な作品にも出演していますが、赤堀くんの作品は台詞の入りが簡単ではありませんが心地よいのです。

田中哲司

田中哲司

赤堀:ハハハ。

田中:世界観にスッと馴染める気がするんです。それが第3弾まで続いたということは、この環境に感謝ですしうれしいです。しかも今回は、題名からして『ケダモノ』ですからね。「いよいよ、一線越えてきたか!」という気分です。

大森:僕も、まずは第3弾までやれていることについてはありがたいと思っています。それと同時に、習慣化してきている感じが何となく身体の中にあって。第2弾の時に「きっと第3弾もあるんだろうな」と思いましたし、どこかでそれを待っている感覚も自分の中にはありました。それが、期待感なのかはわからないですけど。まあ、今の時点では不明なところも多いので、とにかく手元に来たものに集中してやっていけたらと思っています。

ーー門脇さん、荒川さんは、今回が初参加になりますね。今のお気持ちは。

門脇:赤堀さんとはいつかご一緒したいと思っていたんです。だけど、初めてやるならどこで、何をやるかというのは運命みたいなものですから。その巡り合わせは、タイミング次第だというか。今回、このお話をいただいて改めて思ったのは、みなさんが、自分のやりたいことをできる空間になるんだろうなということ。第1弾、第2弾を観た時から、そのことは感じていたので。そこに今、自分も参加できるというのはとても素敵なタイミングだなと思っています。

門脇麦

門脇麦

荒川:僕としては「ようやく来たな」という感じです。

一同:(笑)。

荒川:やっとか、と。もちろん第1弾、第2弾の舞台は観ていたので「あれっ? 全然呼ばれないな」と思っていて。でも、ようやく呼んでいただけました。

ーーキャスト4人の方々に、それぞれが赤堀さんの作品に感じる魅力、そのポイントをお聞きしたいです。

田中:とにかく言えることは、クズたちが登場する話だということです。ここまでクズな人たちばかりが劇中に出てくるというのは、赤堀くんの作品ならではです。下手したら、出てくる人が全員クズですから。クズって連呼していますが大丈夫?

ーークズで合ってますか?

赤堀:はい、クズですね(笑)。

田中:つまり思う存分、全身全霊でダメな人を演じられる場なので、これってストレス発散になるんですよ。よく、悪い人を演じる時、実はコイツはちょっとはいい人なんだよ、みたいな役ってあるじゃないですか。でも、赤堀作品の場合はいい人の要素はまったくない。そういう役を演じられる、すごく楽しい現場です。

大森:確かにそうやって凶暴で、クズで、狂気をはらんだ匂いがするところ。僕も、観客として赤堀くんの舞台を観に行った時には絶対、引きずるような想いを持って帰っています。だけど、それは決して嫌な感じだけではなくて。いつも「これはなんでなんだろうな」と考えるんですけど、わからない。自分が赤堀作品に出たりしていても、わからないんです。結局、嘘がないからかな。僕も、俳優としては真逆にとてもいい人の役も演じていますが、自分の中にはどこかヤバイ匂いというのもないわけじゃないと思っているので。そういう匂いは毎回こうして赤堀くんのところで吐き出させてもらっています。

門脇:私は赤堀さんの作品に出るのは今回が初めてなので、今はまだ観客のひとりとしての感想になってしまいますが。みんな、見たくないような感情とか、忘れちゃいたいから忘れていることっていっぱいあると思うんですけど。そういうことが一つひとつ、丁寧に詰まっている気がします。凶暴性とかもあるのかもしれないですが、私はいつも「優しい舞台だな」と思いながら観ていました。

荒川:赤堀さんの作品を観ていると、笑いのツボみたいなところが自分と似ているなと思うのと。あと、どんな人間もみんな一緒なんだなと思えるところ。医者だから偉い人なんだとかいうのではなく、缶集めをしている人でも、どんな人間でもみんな一緒だと思える世界観なんです。そこが、いいなって思いますね。

荒川良々

荒川良々

ーー赤堀さんが今回、門脇さん、荒川さんに出演をオファーしたのはどんなお気持ちからだったんですか。

赤堀:以前から、魅力的な役者さんだと思っていたからです。門脇さんは、映画やテレビでよく拝見させていただいていて。演技がどうというより、佇まいや、なんだか内側から漏れてくるような雰囲気がいいなと思っていたんです。あと、顔が好き。ちょっと、面白い顔をしているなーって。

門脇:ふふふ。

赤堀:いや、もちろん素敵な顔なんですけどね、なんか面白い。ずっと、いつかご一緒できたらなと思っていたので、念願叶ってうれしいです。荒川くんとは、もう長いつきあいですから。ただ、作品に出てもらうようになったのは最近だったりしますけど。以前、自分が脚本だけ関わったテレビ番組にも出ていただいていたりして、接点は前からあったので。荒川くんは、まあ、言わずもがな、とにかく面白いので、舞台にいてくれたら本当に助かる存在なんです。あと、今回出ていただく全員に共通して言えるのは、お芝居がうまいとかよりも、その佇まいがすごく生々しい人たちだということ。ごく普通の、市井の人をリアリティを持って演じてくれそうな人、というのが僕のキャスティングの条件なんですよ。なんて言い方をすると、妙に偉そうですけど(笑)。結局、そういう生々しい雰囲気を持つ人が、自分としては魅力を感じる俳優さんだったりするんです。

 (左から)赤堀雅秋、田中哲司、大森南朋、門脇麦、荒川良々

(左から)赤堀雅秋、田中哲司、大森南朋、門脇麦、荒川良々

ーー改めて、田中さん、大森さんに感じる俳優としての魅力と、今回期待していることは。

赤堀:それこそまさに、生々しい雰囲気を体現してくれるお二方ですからね。本当に、信頼感しかありません。大森さんに関しては以前2回の舞台では、決して聖人君子というわけではないけど、それほどクズな役でもなかったんですが。今回は思い切り、本当のクズを演じてもらいます。

大森:ハハハハ。

赤堀:いや、今回は遠慮なくクズを書こうというのが自分の中で命題になっているので。一体どういう想いなのかは、自分でもよくわからないですけど。

大森:役のプロフィールみたいなところにも、今回はしっかり“クズ”って書いてありました。

赤堀:ふだんは取材者側の方から「また今回もクズ人間とかダメ人間が出てくるんですか?」みたいなことを言われるとカチンときて、「いや、そういう人たちにだって裏側があって、こういう良さがあったりするので、そんな簡単にカテゴライズしないでください」みたいなことを言ったりしていたんですけど。今回は、本当にクズばかりです。

大森:すごいなあ。気合入ってる(笑)。

大森南朋

大森南朋

ーーでは思い切り良く、徹底してクズを演じてもらう、と。

赤堀:そうですね。哲司さんにはいつも、クズをやってもらってますからいつも通りに(笑)。

田中:(笑)。今回はちょっと、より救いようのないクズの匂いがするんですけど。

赤堀:そうなんですよ、いつもはもう少し愛嬌があったり、可愛げがある人だったのにね。だけどそういう可愛げみたいなものをお客さんが感じられないと、たぶん喜劇的な部分がうまく昇華できないと思うんです。だから救いようがないクズかもしれないけれど、「実はこの鬼にはこんな過去があって」みたいにいちいち描くわけではないものの。

田中:なるほど。

赤堀:そういう背景が透けて見えるような感じには、たぶんなると思う。まあ、大森さんと田中さんが演じる以上、たぶん内側から滲み出てくるものが当然ありますから。きっと、心底憎まれるようなクズにはならないとは思いますね。

ーーでは門脇さんには、どんな役を演じてもらうおつもりですか。

赤堀:門脇さんって底が見えない魅力があるというか、ちょっと何を考えているかよくわからない怖さがあるというか。僕くらいのオッサンからすると、それって不安でもあって(笑)。

一同:(笑)。

赤堀:だけどきっと唯一、冷静な目で登場人物たちを達観しているような人で。それでいて一番、自分の中でもがいているような人物にもなりそうな気がする。

赤堀雅秋

赤堀雅秋

ーー複雑ですね。

門脇:そうですねえ。

赤堀:ま、複雑じゃない人物は出てこないです(笑)。

ーー確かに(笑)。では、荒川さんは?

赤堀:荒川くんの役は、まだちょっとわからないな。というのも、どうやったらより魅力的になるかというのをまさに今、書きながら探っている最中なので。でもまあ結局、どう考えてもクズでしょ。

ーーとにかく、確実にクズな人物だと(笑)。そして赤堀さんご自身は、どんな役を演じる予定ですか。

赤堀:田舎町に蔓延る害獣を駆除する漁師の役をやる予定です。他の方々とどのように携わるのかは判然としませんが。一筋縄ではいかない人物であることは確かです(笑)。

(左から)赤堀雅秋、田中哲司、大森南朋、門脇麦、荒川良々

(左から)赤堀雅秋、田中哲司、大森南朋、門脇麦、荒川良々

■大森南朋
ヘアメイク:TAKAHASHI(stereogn)

■門脇麦
スタイリスト:宮本茉莉(STAN-S)
ヘアメイク:秋鹿裕子(W)
衣裳クレジット:〈ブランド名〉AOIWANAKA

 

取材・文=田中里津子   撮影=池上夢貢

公演情報

赤堀雅秋プロデュース
『ケダモノ』
 
作・演出:赤堀雅秋
 
出演:
大森南朋
門脇 麦
荒川良々
あめくみちこ
清水 優
新井 郁
赤堀雅秋
田中哲司
 
【東京公演】
日程:2022年4月21日(木)~5月8日(日)
会場:本多劇場
 

料金:全席指定 7,800円(税込)
U253,500円(税込)(観劇時25歳以下対象・当日指定席券引換・枚数限定・要身分証明書) 
一般発売日:2022年3月1日(火)
 
お問合せ:contact@pragmax.co.jp
主催:ケダモノ製作委員会 
 
【札幌公演】 
日程:2022年5月14日(土)~15日(日) 
会場:かでるホール
料金:全席指定 一般 8,000円(税込) / U30 3,500円(税込)
主催:公益財団法人北海道文化財団 
協賛:株式会社ジェーシービー 制作協力:ダブルス 
お問合せ:公益財団法人北海道文化財団 TEL:011-272-0501(土日祝除く 9:00~17:30) 
 
【大阪公演】 
日程:2022年5月20日(金)~5月22日(日) 
会場:サンケイホールブリーゼ
料金:全席指定 一般 8,500円(税込) / U25 4,500円(税込)  
主催:関西テレビ放送、サンケイホールブリーゼ 
お問合せ:ブリーゼセンタ- TEL06-6341-8888(11:00-15:00)

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