OSK日本歌劇団トップスター楊琳、舞美りら、千咲えみら、呼称555年の西陣織を纏い美しく舞うーー100周年公演への意気込みも
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OSK日本歌劇団(画像一覧にアザーカット9枚あり) 撮影=ハヤシマコ
レビュー in Kyoto 西陣織コラボショー 2022.5.5(THU) 西陣織会館
今年、100周年という大きな節目を迎えたOSK日本歌劇団が5月5日(木・祝)、京都の西陣織会館にて呼称555年となった西陣織とのWアニバーサリーを祝したコラボイベントを開催した。
桜パラソルショー体験
まず初めに、当日は端午の節句とあって、近隣の小中学生5人がOSK伝統の桜パラソルを手に登壇。男役の楊琳(やんりん)と、娘役の舞美りら(まいみりら)、千咲えみ(ちさきえみ)というトップスター陣がレクチャーする桜パラソルショーの体験がスタート。昭和5年から歌い継がれている劇団のテーマソング「桜咲く国」に合わせて、愛らしい群舞をレッスンすることに。
「賢いね! 小さいお手々でかわいいね」(楊)
「上手! (傘を)開いてくるくる回してね」(舞美)
常に凛としたたたずまいでOSKを率いる楊も、この時はひときわ柔らかい表情をたたえてひとつ一つのポーズを丁寧に指南。舞美と千咲も惜しみなく美声を響かせながら、共にダンスを作り上げていく。その様子から、レビューがいかに地道な鍛錬の積み重ねかということを垣間見た心地に。緊張を漂わせた女の子に、「大丈夫だよ! 私が一番ドキドキしているから(笑)」(楊)と励ましつつ、いざ本番へ。約1分40秒のミニレビューでは練習の成果をたっぷり見せ、全員が満開の笑顔で締めくくってくれた。
着物ショー
トップスターと小中学生によるほほ笑ましいやりとりに、会場全体がハートウォーミングな空気に包まれたのち、西陣織とのコラボショーの時間に。和アレンジされた「桜咲く国」などをバックに、登堂結斗(とうどうゆいと)と椿りょう(つばきりょう)が登場し、両者が濃紺の着物を颯爽とまとう姿に会場の視線はくぎ付けだ。
着物ショー
続いて縦縞模様がいなせな華月奏(はなづきそう)と、抹茶色がよく映える翼和希(つばさかずき)、愛瀬光(まなせひかる)は薄墨色の着物をさらりと着こなし、西陣織の魅力を余すことなく伝えていく。淡い色味に満開の花模様が美しい舞美、紅色の艶やかな千咲と、娘役二人の振袖姿も眼福の極みだ。
楊琳(右)と翼和希
そして楊は、格子柄の袴と明るい上衣で精悍な姿で、さらには7月に控える次作「陰陽師 闇の貴公子☆安倍晴明」の1シーンを先んじてお披露目する一幕も! 初公開となる荘厳なロッカバラードのテーマ曲にて、扇を手に舞う楊と翼が織り成すハーモニーの神々しさは、筆舌に尽くしがたいほどだ。改めて計8人が勢揃いし、桜パラソルが舞う「桜咲く国」でイベントは華やかにクロージングを迎えた。
「桜咲く国」
その後は7月に京都の南座で行う『OSK日本歌劇団創立100周年記念公演「レビュー in Kyoto」』について、マスコミのみでの取材会へ。8人がそれぞれあいさつを終えたのち、当日は大阪での公演出演が重なり登壇できなかった虹架路万(にじかけろまん)からのメッセージが紹介された。同ステージでOSKの卒業が決まっている虹架は、「京都・南座に初めて立った瞬間を鮮明に覚えております。たくさんの方にOSKを観てもらいたい、知ってほしい、そんな強い思いを形にし、大好きなOSKの一人として全力で勤めるます」との決意を寄せた。続いて、公演の見どころについてトップの3人に質問が及ぶ。
楊琳
「近鉄劇場で行った「闇の貴公子」(2001年初演)をパワーアップさせたのが今回の作品です。今のOSKで演じるとどうなるか、自分たちでもすごく楽しみですし、また緊張する面もございます。以前の「闇の貴公子」の映像を観たとき、スペクタクルで壮大な物語だと感じました。語ると長くなってしまうんですが、正義はひとつじゃないんだな……とか、いろんな根本のことを考えさせられるストーリー。言葉は乱暴ですが、お客さまの「気持ちを殴る」ような感動が与えられたらと思います。それこそ前作は偉大な先輩方がやっておられて、それに対して挑戦できるのもとてもありがたいです。OSKにとってひとつの大きなターニングポイントになると思うんですね。物語にのめり込んでもらえるよう、登場人物を生きたいと思います」(楊)
舞美りら
「何と言っても、(作、演出の)北林(佐和子)先生の世界観が見どころだと思います。この作品には、深い闇の中にも最後に一筋の光が差し込むというような印象がありますので、その世界の一員になれたらと」(舞美)
千咲えみ
「過去の映像を観たとき、いろんな登場人物がいる中、一人一人の役がしっかり粒立っているなと感じました。100周年の今、こんな劇団員がいるんだとお客様に発見していただけるひとつのキッカケになればと思います」(千咲)
また、楊が演じる主人公の陰陽師、安倍晴明についてはこう語る。
「(過去、「闇の貴公子」で晴明を演じた)那月峻(なつきしゅん)さんの印象はとにかくカッコ良いなと感じました。見た目はもちろんですが、舞台で表現されるものからも役に取り組む姿勢が垣間見えて、とてもストイックなんだろうなと。その精神と透明感がすごく素敵だなと思いました。他にも、野村萬斎さんの映画『陰陽師』(2001年公開)も好きですね。晴明は何だか性別を感じないというか……。つかみどころがあるようでないような、でも楊さんだからできたよねって言ってもらえる、そんな晴明を演じたいと思います」
翼和希
今作の鍵となる人物であり、晴明が唯一心を許す男、源博雅に抜擢された翼の心境とは?
「源博雅という憧れの役で、大変光栄であると共に身の引き締まる思いです。過去には大先輩である洋あおい(ひろあおい)さんが演じられていて、その映像を観たんですね。男気ある中にもちょっとかわいらしさがあったり、いろんな表現をされていてとても惹かれました。そんな役を自分ができるんだと思うと、さらに憧れの気持ちが強くなって。おこがましくも超えられるような博雅を演じたいです」(翼)
娘役トップスターの二人は、晴明と博雅の物語を大きく動かす茨姫役で、初のWキャスト公演となる。
「大舞台でWキャスト、夢だったんです! 二つも夢がかなって本当にうれしいですね。持ち味が違う二人なので、それぞれの稽古の様子を見てどんなふうに演じるのか感じられたら。客観的に作品を観られる機会でもありますし、北林先生が思い描いている茨姫により近づけることができたらなと思います」(舞美)
「舞美さんが仰るように、自分の役も周りの人の役も客観的に見られる機会だと思います。考える時間はたっぷりあると思うので、自分らしい茨姫を見つけたいですね」(千咲)
愛瀬光
藤原道長を演じる愛瀬も、虹架同様に退団前のラストステージとなる。
「藤原道長は百人一首に出てくるため、多くの方が名前を聞いたことがあると思います。位の高い人物ですし所作などに心を配りながら、品のある様子をどう出していくかを大事にしたいですね。最後の舞台であるからこそ、いつもと同じように作品と向き合っていきたいなと思います」
そんな第一部を経た第二部「INFINITY」では、OSKが100年の歴史の中で継承し続ける名曲群を披露し、次代への思いをのせた「INFINITY=無限」に広がる絢爛なレビューの世界へといざなってくれる。
華月奏
「2月に大阪の松竹座、3月に東京の新橋演舞場で上演し、3都市目での開催となります。京都公演では新しい場面が追加されるようなので楽しみですね。私は二部のみの出演で、一部で奮闘するみんなにパワーを送りつつもらいつつ、精一杯頑張ります。一部の「陰陽師」の雰囲気によっても二部で出るパワーが変わってくると思うので、一部のみんなと二部から合流するメンバーがどういうふうに融合していくのか……こういう形での出演も初めてなので、負けないよう精一杯踊り歌い、舞台を駆け回って楽しみたいですね」(華月)
登堂結斗
「私は松竹座で「INFINITY」を観たのですが、熱いラテンから始まり、ずっと華やかな100周年らしいレビューでした。そこまで大道具を使わなくとも、集団美や群舞のかっこよさ、美しさが全面に出ている素敵なショーだなと。そこに今回から加わるメンバーとして、しっかり食らいついて盛り立てていけたらと思います」(登堂)
会場の京都、南座への思いにも触れた。
椿りょう
「南座へは以前に1度立ったことがあり、2度目の出演となります。南座の楽屋から見る京都の景色も印象的で、そういう風情ある場所で公演できることも幸せですね。また、今回初めて役をいただくのですが、人間ではなく酒呑童子という鬼の役(笑)。南座で演じられることが勉強でもあり、それを皆様にお届けできること自体、とても幸せに思っております」(椿)
「OSKが南座で公演できるのは、コロナの影響で3年ぶりなんですね。私はトップになって初めての南座でもありますし、下級生の頃から立っていた会場で、どんどん位置が真ん中に近づいていって、今回初めてセンターで幕が開く……どういうものかと、今からすごくワクワクドキドキ、そしてハラハラしております(笑)。皆様に納得していただけるような楊琳でいられるよう、今から気持ちを作ってモチベーションを上げて、しっかり稽古に励みたいと思います」(楊)
OSK日本歌劇団
長い歴史を紡いできた西陣織を身にまとい、100周年公演への決意を新たにしたOSKの精鋭たち。7月9日(土)から始まる『OSK日本歌劇団創立100周年記念公演「レビュー in Kyoto」』は、次なる100年への希望も描き出してくれるだろう。
取材・文=後藤愛 撮影=ハヤシマコ
公演情報
第一部「陰陽師 闇の貴公子☆安倍晴明」:原作 夢枕獏『陰陽師』シリーズ(文藝春秋刊)より
作・演出 北林佐和子
第二部「INFINITY」:作・演出 荻田浩一
7月9日(土)11:00/15:00
7月10日(日)11:00/15:00
7月11日(月)休演
7月12日(火)11:00
7月13日(水)11:00
7月14日(木)休演
7月15日(金)11:00
7月16日(土)11:00/貸切
7月17日(日)11:00/15:00
7月18日(月・祝)11:00/15:00
一等席:8,500円/二等席:4,500円
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