バリトン黒田博に聴く東京二期会『パルジファル』~70周年記念公演に大役アムフォルタス役を歌う
2022.7.7
インタビュー
クラシック
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マエストロ・ヴァイグレのマジックにかかって
――今回はセバスティアン・ヴァイグレ氏による指揮ですが、音楽的な面ではいかがでしょうか
昨日マエストロとの音楽稽古があったのですが、音楽の持っていき方がとても自然で、言葉の運び方を踏まえ、フレーズを自然に持ち上げていってくれるんですね。マエストロが "持ち上げるような" 手のしぐさをするだけで、自らが発する歌がワーグナーの音楽そのものになるような感覚にさせてくれるんです。
僕も「ここは持ち上げていくんだ」と思った瞬間、声も息もうわっと流れてゆくような感じで、それがすべて自然な表現につながっていくんです。実際、マエストロとご一緒させて頂いて、今まで辛かった箇所も実に楽に歌えるんです。
――さすがはフランクフルト歌劇場の音楽総監督を務め、また世界各国の歌劇場で高い評価を得ているマエストロですね。
もう一つ、何が素晴らしいかと言うと、マエストロがどのような音楽が創りたいのか、そして、僕はどう歌いたいか、というこの二つの思いの接点を見事に導き出してくれるんです。その上で、僕の音楽というのも認めてくれる。時には「こういう風にやったほうがいんじゃない」というヒントを、指揮を通して示してくれる。その通りに歌ってみると、「こんな風にいけるんだ」と、自分でも嬉しくなりましたね。今回は黒田博、ちょっとうまく歌えるかもしれません(笑)。
>(NEXT)この混沌とした時代に『パルジファル』が上演されること