大ブレイク待ったなし、メジャー2ndアルバム『正気じゃいられない』から露になるマハラージャンという稀有なエンターテイナー
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マハラージャン
――もう一つのリード曲が「君の歯ブラシ」。「その気にさせないで」にも歯ブラシというワードが出てくるから、これってひょっとしてつながっているのかな?と。
そうなんです。実はこの2作は連作で、「恋の始まりと終わり」を描いています。2曲ともミュージックビデオが公開されているんですけど、どちらも峯岸みなみさんに出演していただいていて、「その気にさせないで」のほうはすごくかわいいダンスをやってもらって、出会いのシーンがあるんですけど、「君の歯ブラシ」のほうでは二人は別れていて、未練を断ち切るために歯ブラシで便器を磨くというシーンがある。いかがでしょう?
――いやあ、怖いです。怖くて想像したくないです。
僕、やったことあるんです。
――うわあ。マジですか。それはすごい経験。
そういうことをやった自分が忘れられなくて、「いつか歌詞にしよう」と思ってました。
――それは怨念ですね。社会人時代の怨念は消えたけれど、恋愛の怨念はまだありそう。
そうですね(笑)。怨念というのは、音楽にとってはいい材料になると思います。
――深すぎます。この2曲のつながりはヤバいです。
実はその2曲だけではなく、アルバムの頭から全部つながっているんですよ。
――マジですか? え?
「正気じゃいられない」が、「この人、好きかも」という予感で、「鼻の奥に米がいる状態」は、ひとめぼれの状態。「その気にさせないで」と「君と歯ブラシ」で出会いと別れがあって、「比べてもしょうがない」は失恋の悲しみを引きずっている。「エルトン万次郎」以降は、そのあとの気持ちがフラットになった状態の曲で、というつながりが実はあります。作ってるうちに、並び替えていたら「そういうふうにできるな」と。
――すごい! すみません、気づかなかった。
いえいえ。
――まさにアルバムですね。昨今、アルバム全体の物語の流れまで考えて作る人は、少なくなりつつあるので。
そうですね。もともと、タイトルが特徴的というか、文章みたいなタイトルが多いので、つなげて文章にできないかな?と思っていたんです。文章ではないですけど、意味のつながりを持たせられて良かったなと思います。
――ぜひみなさん、飛ばさないで、全曲じっくりとお楽しみください。アルバムのラストを飾る「遠回り」が、またすごくいい曲で、シティポップ風にメロディアスでグルーヴィーで、気持ちいいエンディングになってます。
いちばん最後に「遠回りしていこう」という曲は、最後っぽくていいんじゃないかと思うんですね。曲自体は、大きい声で歌う曲を作りたいと思って、歌詞はあとから曲に合う言葉を考えて書いたので、ほかとはちょっと作り方が違います。この曲だけは正統派の作り方をしていますね。「こういうこともできますよ」と(笑)。
マハラージャン
――いろいろ、布石になってますね。そして限定盤のみ収録のボーナストラックは、なんと山下達郎「BOMBER」を真正面からカバーしてます。
すごく好きな曲で、ライブでやりたいと思っていたんですけど、カバーしておくとライブでやる口実ができるので。演奏は僕一人でやるはずだったんですけど、山下達郎さんの名曲を変な感じにはしたくないので、僕がギターとベースを弾いて、「ドラムとキーボードは入れさせてください」ということで、この編成になりました。ドラムの澤村一平(SANABAGUN.)さんとキーボードのTAIHEI(Suchmos/賽)さんはすごい仲良しで、みんな山下達郎さんが好きなので、3人で楽しみながらできた曲ですね。すごく楽しかったです。
――マハラージャンと達郎さんの音楽との共通性は、あると思いましたね。「君と歯ブラシ」のシティポップ感とかもそうですし。
そうですね。
――このセカンドアルバム、どんなリスナーに届くことを期待してますか。
僕自身が音楽好きで、かっこいいものをすごく求めていたので、そういうものを求めている人に届いてほしいです。高校の頃にできるだけたくさん音楽を聴こうと思って、いろんなものを聴いたんですけど、その中でかっこいいものって何十曲のうちの1曲だったりして、そういう要素を自分なりに詰めたアルバムなので。今はサブスク時代ですけど、出会えないようなジャンルのものもあるなと思っていて、たとえば「正気じゃいられない」みたいなジャンルのものは、普通のポップスを聴いてる人はあんまり出会わないと思うんですよ。そういう人にも聴いてほしいと思います。「こういうものもあるんだ」って、もっと広く、音楽の好きな人に届いたらいいなという気持ちはあります。
――素晴らしいですね。マハラージャンチャンネルですね。いろんなジャンルのかっこいい曲、面白い曲がじゃんじゃん聴ける。
ある意味そうかもしれないです。
――今日はお話を聞けてすごく納得してます。マハラージャンはアーティストであり、同時に様々なジャンルのいい音楽の紹介者でもある。
ありがとうございます。あと、せっかくなのでちょっと、しゃべってもいいですか?
――もちろんどうぞ。
「鼻の奥に米がいる状態」と、「エルトン万次郎」は、いろいろと隠していることがある曲なんです。たとえば「エルトン万次郎」は、エルトンと万次郎の間に何かが隠れていて、それをイマジンすると何かが出てくる仕掛けになってます。今大事なことはやっぱり平和だと思っているんですけど、その中で最強な曲は「イマジン」だと思うんですね。そこにみんなも思いをはせてほしいという裏テーマがあって、気づく人は気づくという、なぞなぞみたいなことをやってます。
――素晴らしいですね。イマジンさせるアーティスト。
全体的に冗談なんですけど、でもやっぱり大事なことを歌いたいという気持ちです。
――マハラージャン、かっこいいです。何も考えずに聴いても楽しくて面白い音楽だけど、こちらがグッと踏み込む距離によって理解度が変わって来る。ほかにもそういう謎や仕掛けがいっぱい仕込まれているアルバムだと思います。みなさん、謎解きも楽しんでいただければと。
ありがとうございます。でも発売からしばらくして、誰も気づかなかったら自分から言います(笑)。
――みなさん気づいてください(笑)。そしてライブがありますね。記念すべき初ワンマン公演「レッツ・ターバン!」、7月22日は東京のLINE CUBE SHIBUYAで、8月5日は大阪の心斎橋BIGCATで。何を見せたいですか。
熱量の高いお客さんが集まってくれると思うので、そのみなさんに楽しんでもらえるものを考えてます。ライブのメンバーはいつもと同じなので、グルーヴもいい感じになっていると思います。インディーズの曲、新しい曲も織り交ぜて、踊れるライブにしたいと思います。いろんな音楽が好きな人にも楽しめると思うので、ぜひ来てほしいです。
取材・文=宮本英夫 撮影=大橋祐希
「その気にさせないで」
リリース情報
2022年7月6日リリース
マハラージャン作画B4サイズ・300ピース・ジグソーパズル付き
01 正気じゃいられない
02 鼻の奥に米がいる状態
03 その気にさせないで
04 君の歯ブラシ
05 比べてもしょうがない
06 エルトン万次郎
07 先に言って欲しかった
08 持たざる者
09 貞☆子
10 遠回り
11 BOMBER (Bonus Track)