『アイアンマン』から『ブラックパンサー』、『ソー:ラブ&サンダー』まで MCUのサウンドトラックと作品のテーマを振り返る
(C)Marvel Studios 2022
公開中の映画『ソー:ラブ&サンダー』の音楽についての製作陣からのコメントが到着した。あわせて、マーベル・シネマティック・ユニバースのサウンドトラックを振り返ってみよう。
『ソー:ラブ&サンダー』は、『アベンジャーズ』などを中心としたマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)作品の最新作。『マイティ・ソー:バトルロイヤル』や『ジョジョ・ラビット』のタイカ・ワイティティ監督がメガホンをとっている。過去シリーズに引き続き、ソーを演じるのは、クリス・ヘムズワース。サノスによって人類の半分が消し去られた世界で失われた人々を取り戻すため、アイアンマンやキャプテン・アメリカと共に時空を超え、生死を巡る激闘を繰り広げた“雷神”ソー。彼は、サノスを倒した後、ニュー・アスガルドの王の座をヴァルキリーに譲り、宇宙の荒くれ者ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーの仲間達と船に乗り込み地球を旅立った。『ソー:ラブ&サンダー』では、ソーが多くの大切な人を失い、いつしか戦いを恐れるようになっていた。やがて彼は我に立ち返り、ゼロから新たな道を歩むことを決めるが、自分探し中で全宇宙の神々滅亡を誓う“神殺し”のゴアが襲いかかる。絶体絶命のその時、ソー以上の力を持つ新たな“マイティ・ソー”に姿を変えた元恋人のジェーンが現れるのだった。
(C)Marvel Studios 2022
サウンドトラックによって新時代のヒーロー像を生み出したのが、MCUの記念すべき1作目『アイアンマン』。ナルシストで皮肉屋な巨大軍事企業のCEOでもあるアイアンマンの物語に添えられたのは、AC/DCの激しいロックナンバーたちだ。オープニングから突如流れる「Back In Black」は始まったばかりの物語に、豪快な主人公トーニー・スターク(アイアンマン)のキャラクターの印象を観客に強く残している。そのほか、「Shoot To Thrill」「Highway to Hell」などAC/DCの珠玉のロックナンバーも作品を盛り上げている。「Back In Black」はアイアンマンを象徴するテーマとなり、トニー亡き後の世界を描く『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』で使用された。
サウンドトラックによって時代の志を継ぐと同時に、作品のテーマをより深めたのが『ブラックパンサー』と『キャプテン・マーベル』だ。『ブラックパンサー』はMCUシリーズ初の黒人ヒーローを主役に据えた作品として公開され、第91回アカデミー賞では複数の部門にノミネート。美術賞、衣裳デザイン賞とともに、作曲賞を受賞。サウンドトラックも、多様性とグローバリズムというテーマに沿い、様々な背景を持つアーティストによって彩られている。
一方、MCU初の女性ヒーローが主人公の『キャプテン・マーベル』は90年代初頭を舞台に、当時の男性優位社会に対する女性たちの反抗“ライオット・ガール・ムーブメント”を象徴するノー・ダウトの「Just A Girl」が、支配的な思想を持つヴィランを打ちのめす主人公キャロル・ダンバース(キャプテン・マーベル)のファイトソングとして使用されている。
そして、雷神・ソーを主人公にした『マイティ―・ソー』シリーズでは、『マイティ・ソー:バトルロイヤル』で使用されたレッド・ツェッペリンの「Immigrant Song(移民の歌)」が印象的。本編の冒頭とクライマックスで2度使用される同楽曲は、シーンを盛り上げるBGMの役割だけでなく、物語のテーマとも重なるものだ。
「ソー」シリーズ最新作の『ソーラブ&サンダー』では、ガンズ・アンド・ローゼズの「SWEET CHILD O' MINE」が使用されている。製作のブラッド・ヴィンダーバウム氏は、「『マイティ・ソー バトルロイヤル』が1980年代のシンセポップ・アルバムだとすれば、『ソー:ラブ&サンダー』はメタル・アルバムです。タイトルには1980年代のロックンロールの雰囲気を吹き込みたいと考えていました。だから『ソー:ラブ&サンダー』は、まさにうってつけでしたね」と語る。予告編の冒頭では、スラッシュのギター・リフに乗せ、ジェーンと再会・共闘するソーの姿が描き出されている。
『ソー:ラブ&サンダー』は公開中。