オーラル、SHE'S、WOMCADOLE、ラックライフ、Re:nameが祝宴に、大阪・セカンドライン20周年『That’s LIVEHOUSE』2日目の熱狂、つながれた想い
『That’s LIVEHOUSE 〜LIVE SQUARE 2nd LINE 20th Anniversary〜』
『That's LIVEHOUSE 〜LIVE SQUARE 2nd LINE 20th Anniversary〜』2022.7.24(SUN)大阪・大阪城音楽堂
7月23日(土)、24日(日)の2日間に渡って、大阪城音楽堂にて大阪・福島にあるライブハウス、LIVE SQUARE 2nd LINE(以下、セカンドライン)の20周年記念イベント『That's LIVEHOUSE 〜LIVE SQUARE 2nd LINE 20th Anniversary〜』が開催された。同ライブハウスに縁のあるミュージシャンが出演し、23日(土)はkobore、Saucy Dog、SUPER BEAVER、アルコサイト、ドラマストアが。24日(日)にはSHE’S、Re:name、THE ORAL CIGARETTES、WOMCADOLE、ラックライフが登場。ライブハウスで活きて、ライブハウスに活かされるミュージシャンとスタッフ、そしてライブハウスラバーな観客が集まり、大いに盛り上がった周年祭。今回は初日に続き、2日目の模様についてお伝えしたい。
炎天下の野外に蝉がうるさく鳴き騒ぐなか、ハイテンションで前説に登場したのは「ふみやん」こと、セカンドライン4代目店長の前田典昭だ。セカンドラインに懸ける思いを語りつつ(https://spice.eplus.jp/articles/305400)、「毎日電車の音を聴いて、バンドとお客さんと出会い、1公演1公演を大切に、バンドの音を伝えてきたから今日みたいな日が作れた。今日はここがセカンドライン!」と、セカンドライン名物の電車の音が鳴るなか、開幕を宣言。バンドポスターが貼りつくされた細い廊下も、コンクリートで囲まれたステージや柱もないけれど、この野外の開放的な空間が「セカンドライン」のステージに。そしてここから、セカンドラインの血筋を引いた5組の饗宴が始まった。
Re:name
Re:name
まずはRe:name、大阪発の3人組ポップロックバンドだ。「Re:nameはじめます、よろしく」と、1曲目「Future There」からうだる暑さを清々しい気分に換え、爽やかなギターロックを鳴らしていく。高木一成(Ba.Vo)のベースはオーディエンスのテンションをぐぐっと持ち上げ、Soma(Gt.Cho)のギターがそれをハイなままキープする。洋楽を良いとこどりしたキャッチーなメロディセンスは一聴するだけで聴く人をご機嫌にしてしまう。「20周年を祝いに来ました! 誰よりも熱いフロアに!」と、次曲「Swingboat」では歌詞をアレンジしてセカンドライン愛をたっぷりアピール。アコギ×洋楽ギターロックの爽やかなメロがうだる暑さを和らげてくれる。
Re:name
「Hurt Me」はMVのオシャレさもさることながら、ライブでのヤマケン(Dr.Cho)のビートがとにかく心地良い。「今日はセカンドラインにずっと前から出演してる、歴史が長いバンドばかりがそろってる。そこに比べる自分たちは弱いと思っていたけど、俺たちがセカンドラインを背負っていく! その軌跡を見てほしい! ここから昇りつめて、大きなステージに向かっていく軌跡を!」と、次世代を担っていく決意を言葉にし「Let Me」でキャッチーなメロのなかに熱い思いを詰め込んでいく。
Re:name
コール&レスポンスが気持ちよさそうな曲だけれど、今はまだお預け。観客は拳を突き上げ、彼らの音に応えている。セカンドラインの照明スタッフもノリノリで彼らのステージをサポートしている姿も頼もしい。ステージ後半はさらにギアを上げ、「Naked Yourself」「Missing Essentials」でバンドの多彩な楽曲センスをこれでもかと見せつけ、全7曲が終了。バンドの存在感、余韻をしっかりと残すパフォーマンスでトップバッターを走り抜けた。
ラックライフ
ラックライフ
2番手のラックライフは、「いっぺん熱くなってもらっていいですか! 楽しいことしようぜ!」と、サウンドチェックからエネルギッシュなバンドサウンドを響かせ観客を夢中にさせる。いつだってポジティブパワー全開なPON(Vo.Gt)、さすがのエンターテイナーっぷりで、ライブが始まる前から安心感が半端ない。そしていざ本編、「20周年、大人の始まり! 素敵な大人を見せられるようにがっつりがっつりやってみせます!」と「サニーデイ」からシュワっと爽やかに弾けるバンドサウンドをぶつけていく4人。彼らの音楽はオーディエンスを満面の笑顔にしてくれる不思議なパワーがあって、太陽燦々な青空にぴったりの楽曲ということもあって、会場一体がハッピーなオーラに包まれている。
ラックライフ
「心を込めて。心に刺さって抜けない音を!」と「Naru」では力強く感情剥き出しで歌うPONの歌唱をさらに煽るように、LOVE大石(Dr)とたく(Ba)のリズムがより強固になってバンドの音を押し上げていく。感情が突き抜けた瞬間のPONのが鳴り声にも似た、腹の底から出る歌声が観客の感情をひりつかせる。「Over」「Lily」と、喜怒哀楽を詰め込んだ楽曲は求心力があって、客席後方で眺めるだけだった観客も気付けば拳を上げて彼らの音に呼応している。次曲「名前を呼ぶよ」、何度も聴いてきた名曲もきちんと「今」のバンドの音で表現し、観客を優しく包み込んでいく。
ラックライフ
ところで、大阪・高槻出身の彼らや前出の北摂出身のRe:nameにとって、セカンドラインがホームといわれると「??」となる人もいるかもしれない。府内に数多くあるライブハウスのなかでも、大阪市内での興行となるとバンドにとってハードルがぐっと上がるらしく、セカンドラインが若手の登竜門といわれるのもそういった流れがあるから。PONは「ライブハウスはかけがえのない場所。セカンドラインに出会えてよかった。どこでも良かったんじゃない。カッコイイ先輩を見て、対バンを重ねて。大切な友人、前田さんが店長になった。友達であり戦友、兄弟でもある。愛に満ちた場所がここ。小さなハコに小さなドラマが詰まってて、日々がその積み重ね。少しでもキセキや出会いがあることを祈ってる。願うのは幸せになってほしい、それだけ!」と、ラスト「幸せであれ」へ。ikoma(Gt.Cho)が紡ぐメロが優しく響き、高まった感情をしっかりと昇華し、ステージが終了。外はまだまだ暑く、汗が流れ続けるけれど、なんだか気分は爽快だ。
WOMCADOLE
WOMCADOLE
「やろうぜ! かかってこいよ! ロックやりに来たんだろ!?」。WOMCADOLEは疾走感ある「アオキハルへ」から豪快なスタートダッシュを決めこむ。樋口侑希(Vo.Gt)の前のめりな歌唱、4人の音で観客の心を仕留めるんだという気迫がビシビシと感じられる。泥臭いんだけど真っ直ぐで、嘘のない感情を抱き、ダイレクトに鳴らされる音。受け止める側にも気合が必要で、観客が掲げる拳はぎゅっと力強く握りしめられている。次曲「ドア」、安田吉希(Dr.Cho)の荒ぶるビート、ストイックにリズムを弾き出す黒野滉大(Ba)、互いにぶつかり合いを求め、何かを突破したい気持ちに溢れたリズムが会場の熱気を高めていく。その一方で樋口は叫び、煽り、水を浴び、高ぶる熱量を抑えきれずにいる。
WOMCADOLE
「足りない! 足りない!」、より強く、より高みを目指そうと「絶望を撃て」へ。マツムラユウスケ(Gt.Cho)のスリリングなギターリフがバンドのテンションを高めていく。「応答セヨ」では再び樋口がが鳴り声を上げ、バンドのテンションをさらに上昇させる。そのままこと切れるんじゃないかと思わせるほど、4人の生命力に満ちたパフォーマンスに目が離せない。安田のビートは一打々々が強度を増していて、彼らの音が体を突き抜けた瞬間、なんとも言えない充実感が満たしていくのを感じる。
WOMCADOLE
「衝動で生きていたい。衝動を伝えたい。衝動を握りしめたい!」、その言葉のままに全身から放りだす音は感情を揺さぶり続ける。セカンドラインへの想いは彼らもまた言葉に言い尽くせないほどの想いを持っていて、「こんなにも愛の見える場所はない」と、感謝の気持ちを伝え、最終曲「綺麗な空はある日突然に」へ。ありったけの感情を込めた音を抱きしめるように奏でる4人。樋口は伝えたい思いが溢れたのか、時折言葉を詰まらせるように歌っている。全6曲、最後の一瞬まで気力の詰まったステージを体感させてくれた。
SHE’S
SHE'S
西日がまだまだ体温を高めるなか、SHE’Sは1曲目「追い風」からタイトルのままに観客のテンションをさらに押し上げていく。ポップなメロに清涼感のある井上竜馬(Vo.Key)の歌声、楽曲後半には服部栞汰(Gt)のギターが走り抜け、よりドラマチックな楽曲へと仕立て上げていく。アコギメインでラテンな雰囲気がぐっと大人の香りを漂わす「Masquerade」、広瀬臣吾(Ba)、木村雅人(Dr)のリズムアレンジも秀逸で、全身で音に塗れていくのが心地よくて仕方ないし、井上の歌声も前曲とがらりと変わり、色香たっぷりだ。
と、思いきや「Un-science」ではピアノの音色が弾むように鳴り響く。夏にぴったりな爽やかなバンドサウンドだが、芯のあるリズムがポップなだけでなく、しっかりとロックを感じて、観客は楽しそうに4人の音に身を預けている。たった3曲でバンドの多彩さは存分に伝わり、次は何が来るのか期待は募るばかり。
SHE'S
「ここは大好きなライブハウス、セカンドラインの気持ちで!」と、野外の会場をライブハウスに換えてしまおうと、「Ugly」「Letter」でモダンだったり儚さや憂いを表現したりと、これでもかとバンドの魅力を存分に伝えていく4人。「White」では美しい旋律に乗せピュアな恋心を歌えば、会場からは自然と拍手が沸き起こる。ライブハウスで大好きな曲を聴いた時の堪らなく嬉しいあの気持ち、この日は野外の高い空の下でちゃんとそれを受け取れている。
SHE'S
初めてのワンマンライブがセカンドラインだったという彼ら。これまでのバンドの活動においてセカンドラインが大事な場所になっていると語り、「スペシャルな1日に。一緒に育ってきた場所、一緒にお祝いしていけるように」とステージ後半へと流れていく。5月にリリースされたデジタルシングル「Grow Old With Me」は新曲なのに長く親しまれてきた曲のように馴染んでいるし、「Dance With Me」はポップ&キュートなサウンドで何も言わずとも誰もが満面の笑みを浮かべて4人が奏でる音に身を預けている。そしてラスト、「ライブハウスに帰ろう♪」と「Curtain Call」でこれからもライブハウスで奏で続ける決意を音に込め、セカンドラインへの愛を見せつけてくれた。
THE ORAL CIGARETTES
THE ORAL CIGARETTES
トリはいよいよTHE ORAL CIGARETTES。「セカンドラインの気持ちを汲み取って、最後締めくくらせてもらいます!20周年、祝いにきました!」と、いつもの4本打ちでライブスタート! 1曲目「大魔王参上」からハイなテンションで突っ走る4人、あきらかにあきら(Ba.Cho)の足の振り上げも絶好調だ。いまやアリーナクラスでワンマンライブを行い、バンド主催のフェスを手掛けるなど、日本のロックシーンに欠かせない存在となった彼ら。そんなバンドが2000人ほどのキャパの会場でのイベントに出演するのはかなりレア。しかもこの日のセットリストはファン垂涎のものばかり。
「インディーズ時代はセカンドラインで育ったんで。今日は古い曲多めでやります!」と、続いて披露したのは「mist...」。1stミニアルバム『オレンジの抜け殻、私が生きたアイの証』からの楽曲だ。バンドの屋台骨の中西雅哉(Dr)の軽快なビート、鈴木重伸(Gt)の表情をコロコロと変えるギターが印象的なライブでも人気の楽曲だが、この曲が自主制作盤で発表された当時、中西はまだメンバーではなかった。たった10年、されど10年。オーラルの歴史が着実にステップアップしているのを感じとることができる。次曲「Mr.ファントム」、イントロを聴いただけでオーディエンスは大興奮で、山中拓也(Vo.Gt)は思わず「君ら、熱すぎやわ!」と微笑む。
THE ORAL CIGARETTES
MCでは祝福の言葉を送りつつ、当時の思い出話に華が咲く。そしてこの日のステージのために練習を重ね、今も緊張が解けないと語る山中。「昔の曲エモい! またやって! と言われるやろうけど、今日しかやりません! 噛みしめて帰って」と披露したのは2011年に発表された「小悪魔インフェクション」。さらに「僕は夢を見る(Redone)」も披露。この曲は2014年にリリースした1stアルバム『The BKW Show!!』に収録されているバージョンをリアレンジし、2019年に発表した楽曲だ。「僕は夢を見る」ももともと2011年に発表された自主制作盤に収録されていた。あちこちから歓喜の声が漏れ聞こえるほど、ライブでは滅多に披露されないレア曲たち。当時の楽曲にしっかりと「今」を感じさせるアレンジを加え、観客を揺さぶっていく。
実は中西とセカンドライン・前田店長は同じバンドのメンバーだったというのは、ファンには周知の事実だろう。当時の思い出を振り返りつつ、今日のステージに立てたこと、集まった観客に改めて感謝の気持ちを伝える。山中はバンド活動に悩んでいたときに前田店長に懸けてもらった言葉に救われたと語り、「生き方を見つけたのはライブハウス。生き様を見られるのがライブハウス。ライブハウスは音楽だけじゃない、自分探しの旅が出来る場所」と、ライブハウスへの愛を語る。そして「ライブハウスは人が育つ場所。1人1人のライブハウスの在り方を見つけて。救うことはできなくても、背中を押すことはできるから」と、「大阪の、日本のライブハウスをよろしくお願いします」と、セカンドライン、そしてライブハウスへの想いを切々と語る。
THE ORAL CIGARETTES
「もっともっとカッコイイ姿を見せていきたい! こっからがライブハウスの真骨頂、見とけよ!」と、ライブ後半は最新のバンド像を届けていく。「ENEMY feat.Kamui」「カンタンナコト」など、ベースが唸り、ビートが炸裂し、ギターが激しくつんざいていく。一切の油断を許さない、容赦ない攻めの楽曲陣でラストまで突き抜けた彼ら。
アンコールでは「大事な瞬間を共有できたのはみんなのおかげ」と、最後の曲に選んだのは「LOVE」。<一人で笑うことはできない>、<一人だけじゃ意味を持たない>、その歌詞の通り、ミュージシャン、観客、すべてが繋がってこそのライブハウス。「That’s LIVEHOUSE」、音楽を生き甲斐にする人にとって、ライブハウスがかけがえのない場所だと改めて実感した1日が幕を閉じた。またセカンドラインに遊びにいこう。きっとあの高架下、電車の音を聴きながら、大切にしたいと思える音楽に出会えるはずだ。
取材・文=黒田奈保子 写真=オフィシャル提供(撮影:オガワタクヤ)
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