板橋駿谷 北尾亘 永島敬三 福原冠に聞く~現代版チンドン屋〈さんぴん〉結成のきっかけとなった地、三重・津へ再び登場! これまでの集大成+新作で贈る“オールタイム・ベスト”を上演

2022.8.28
インタビュー
舞台

さんぴんメンバー 前列左から・北尾亘、板橋駿谷 後列左から・福原冠、永島敬三

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「君の人生の断片は誰かの人生の本編だ。」をキャッチコピーに、板橋駿谷(ロロ)、北尾亘(Baobab)、永島敬三(柿喰う客)、福原冠(範宙遊泳)の4人の表現者によって、2015年3月に結成された〈さんぴん〉。通常はそれぞれの団体で俳優やダンサーとして活動している彼らは、時に〈さんぴん〉として日本各地を巡り、その土地に滞在。現地で取材した大切な誰かの人生のエピソードを拝借し、“現代版チンドン屋”と銘打って、その場所でしか生まれ得ない特別な舞台を立ち上げている。また、インタビューや台本制作、演出、出演、作詞、作曲、振付などに留まらず、本番では出演しながら音響・照明を操作、受付、会場整理まで4人でこなすという独自のスタイルを貫き続けている。

2015年7月に東京で旗揚げ公演を行い、2016年には仙台と三重、2018年9月は東京、さらにその翌月から札幌~那覇~東京を巡るなど、まさに日本を大縦断してきた彼ら。〈さんぴん〉本公演としては実に4年ぶりの今回は、これまでの7年間で上演した全国のよりぬきエピソード+新作で構成されるスペシャル版『ALL TIME HERO’S~東西南北プチョヘンザッ!!~』を、2022年8月27日(土)と28日(日)の2日間に渡り、「三重県文化会館 小ホール」で上演する。

さんぴん『ALL TIME HERO’S〜東西南北プチョヘンザッ!!〜』チラシ表面

別々の団体に所属する彼らがなぜ〈さんぴん〉を結成するに至ったのか、その活動指針や上演スタイル、これまでの各地巡業、〈さんぴん〉にかけるメンバーそれぞれの思いなどを伺いに、約2週間に渡って滞在制作を行っている「三重県文化会館」を訪れた。


── 2015年に〈さんぴん〉を立ち上げられたということですが、結成の経緯からお話を聞かせてください。

福原 2015年の1月に、この「三重県文化会館」(以下、三重文)で〈木ノ下歌舞伎〉『黒塚』で滞在制作をしていたんです。北尾(亘)も一緒に共演していて。その時に、(副館長兼事業課長の)松浦(茂之)さんに、「三重文からスタートするような企画があったら、僕は面白いと思う」と調子よく言ったんです。多くの企画が東京発で、赴いて回していくことが多いなと思っていたので、三重文からスタートして逆輸入というか、ここから大阪や東京に流れていくような企画があったら面白いと思ったんです。そしたら松浦さんが、「おもろいやないか、企画考えてこいや」と言われて。あれ? あ、俺が考えるのか、と思って企画を考えたんです。

1人だとなかなか難しいなと思ったので、板橋駿谷君に相談して「役者の二人からスタートするんだから、“役者”に特化したものをやろう」という話から、“そもそも役者って何だろう? ”みたいな話になって。ざっくり言うと、誰か(作家)のメッセージを届ける作業をする媒介者が役者なんじゃないかなって、その時思ったんですね。でも、待てよ、と。僕の母親とか親戚、友人も含め、いろんなことを考えてるのは変わらないよな、それを形にしてみたい、と思ったんです。

そんな気持ちと、ちょうど東京を離れて三重という場所で、その土地のご飯を食べて、空気を吸いながら作品に純粋に向き合う時間というのは、長く役者をやってく上で大事なことだなと、と思って。その2つが自分の中でくっついたんですよね。

福原冠

福原冠(範宙遊泳)
2014年より劇団「範宙遊泳」に加入。国内外の公演に出演している。フラットな表現と鋭利な表現を行き来する、浮遊感が魅力。DJとしての活躍も。主な出演作は、【舞台】『シラノ・ド・ベルジュラック』、『バナナの花は食べられる』、『HAMLETーハムレットー』、『グリークス』、『人類史』、『アンバランス』、【TV】NHK Eテレ『ムジカ・ピッコリーノ』など。
 

── 「三重県文化会館」からスタートした企画だったんですね。

福原 本当にそうです。なので、今回の公演は念願叶ってといいますか(笑)。当時、松浦さんに企画プレゼンして結成してから7年、いろんな土地を経て、この時が来た、という感じです。

── それで福原さんと板橋さんで立ち上げられて。

板橋 そうですね。3人だと、役割とかいろいろ、作品にもバリエーションが少なそうだね、って。機動力をとにかく大事にしたいとなると、最大で4人だろうと。すぐに永島(敬三)と北尾(亘)がいいってなって、すぐ電話して、予定を聞いて4ヶ月後には本番、という感じでした。

板橋駿谷

板橋駿谷(ロロ)
劇団「ロロ」所属。映画・テレビ・舞台・CMと幅広い分野で活躍。主な出演作は【映画】『サマーフィルムにのって』、『マイスモールランド』、『異動辞令は音楽隊!』、【TV】NHK連続テレビ小説「なつぞら」、NHK大河ドラマ「青天を衝け」、【舞台】『ロビー・ヒーロー』など。特技はラップで「オイディプスREXXX」にて作詞・ラップ指導を担当し、第26回読売演劇大賞優秀スタッフ賞受賞。


── 最初からこの4人で。

板橋 1人でもダメだったらもうこの企画はやらない、って決めてました。

── そうなんですね! そこまでの強い思いで結成を。

北尾 所属はバラバラですけど、繋がりはもう10年以上の関係がそれぞれあったりして。

北尾亘

北尾亘(Baobab)
「Baobab」主宰。振付家・ダンサー・俳優。これまでに、4カ国25都市以上で舞台に立つ。舞台、TVドラマ、CM、映画に多数振付提供。WS講師やアウトリーチ活動を展開し、ダンスの普及活動にも取り組む。尚美学園大学・桜美林大学・多摩美術大学非常勤講師。ベッシー賞「OUTSTANDING PERFORMER部門」(2020年)ノミネート、横浜ダンスコレクション2018コンペティション「ベストダンサー賞」ほか、多数受賞。


── 〈さんぴん〉メンバーに、とお声掛けされた時、永島さんと北尾さんはどう反応されたんでしょう? 

永島 即座に決めないといけなかったんですよ。

一同 笑

永島敬三

永島敬三(柿喰う客)
劇団「柿喰う客」所属。近年『空鉄砲』『御披楽喜』『美少年』『俺を縛れ!』など劇団公演では中核を担う。また“夏葉亭雛菊”として落語に挑戦するなど精力的に活動している。主な出演作は【舞台】『旅と渓谷』、『冬のライオン』、『カノン』、木ノ下歌舞伎『糸井版 摂州合邦辻』、『ハムレット』、『半神』など。【映画】『マチネの終わりに』【TV】WOWOW『コールドケース 3~真実の扉』、EX『仮面ライダージオウ』など。
 

板橋 「面白いことやるから。やりたいだろ?」

永島・北尾 「はい!」

板橋 「じゃあ、やろ!」って(笑)。

永島 面白そうじゃん、と思って。誘われた時点でもう、こういうフォーマットで、こういう風な創り方をするっていうのは2人の中で決まってたんですね。

北尾 言語化できてたもんね。

永島 だからそれがすごいなと思って。コンセプトがはっきりしてたんで、特に悩まずというか。新しく一緒にやるのも駿谷さんと冠ちゃんと亘だしっていうこともあるし、その時期みんな、自分の劇団とか他の活動をするにあたって、自分達も何か生み出したいっていう、なんかそういう、ある種のフラストレーションがあったんだと思うんです。不思議なもんで、役者も自分で何か創り出せないのかって思うのかなぁ、そういうタイミングがちょうどバチっと来た感じもあった。

福原 亘は自分でダンスカンパニーを主宰してる立場なので、もう一個新しく居場所を作るというか、クレジットが増えることっていうのはどうだったの?

北尾 どうだろう、あんまり考えてなかったかな。いやむしろ、なんか兄貴達と…(永島)敬三は同い年だけど、この人達と一緒に出来るんだ、みたいな。しかも僕、プレイヤーなの? は意外すぎて、乗ります乗ります、ついていきます! ぐらいの感覚だったかな。今一番僕は、おっさん的な視点で見たりしてます。みんながやることを実現させてあげたい、みたいな思いが出るとか、それは声が掛かった時点ではイメージしてなかったことですけど。

── 〈さんぴん〉という名称にされた由来というのは?

板橋  冠ちゃんと団体名を決めようといろいろ考えてた時に、「さんピンCAMP」っていう1977年ぐらいにやったヒップホップの祭典が浮かんだんです。まだ全然売れてないアンダーグラウンドと言われていたヒップホップの人達が、自分達のクルーという仲間内の枠を超えて集まった祭典で、俺も冠ちゃんもその「さんピンCAMP」がすごく大好きで。

「さんぴん」の元々の名前の由来も、「どさんぴん野郎」「三両一分」と下級武士を蔑視した言い方で、そういうアンダーグラウンドが這い上がってくるような、演劇じゃないと付けられない名前もいいな、と〈さんぴん〉にしたんです。漢数字で、三に一って書いて「さんぴん」って字になるのも、ちょうど4人だね、って。

北尾 なので、「さんぴん茶」は由来には関係ないです(笑)。

── 滞在型で、その土地土地で作品を創り上げる、というコンセプトは、具体的にはどのように発想を?

板橋 日数を決めてやるというのが割と大きいなと思ってます。バジェット(予算や経費)を小さくする、下げるという意味でも、音響、照明のオペレーションも自分達でやる。とにかく機動力が大事だ、と。4人全員それぞれの団体にいるから、あまり日数は取れない。そうなった時に、2週間だけ地方に行くっていうことにしちゃえば、もう他の仕事は入れられないし(笑)、それだけに集中すれば作品を創れるだろうと。

北尾 チンドン屋ですもんね。あと、発端が、滞在制作中に三重文でお声が掛かったっていう時点でたぶんもう、東京でやる前提じゃないんですよね。どこかの土地に行って、みんなで飯食って、風呂も入って、どっぷりその土地に浸かってお返ししよう、みたいな。

板橋 だから最初に東京で旗揚げ公演やった時も、みんな東京に住んでるのに、滞在制作するって決めたから、これはもう滞在しよう!と。結局東京ではなかったんですけど、知り合いのスタジオに泊まらせてもらって、そこで10日間合宿しました。

北尾 そのスタートがなんか良かったんですよね、きっと。四六時中一緒に居ることがストレスじゃなかったっていう手応えがあったから、新しい土地に行きたい!っていう思いがより強まったと思います。

一同 そうだねぇー。

板橋 本当に修学旅行をずーっとしてるみたい。めちゃめちゃキツめの修学旅行。

一同 笑

板橋 セリフ覚えなきゃいけないし、やることはめちゃくちゃあるんですけど、まぁでもものすごく楽しい修学旅行ですね。

── 〈さんぴん〉での作品創りに於いて、役割分担というのは決まっている感じなんでしょうか?

北尾 冠さんはすごくいろんなアイデアをストックしていて、「それ頂戴」って言われたら「OK!」って動き出して、 駿谷さんも持ってきたものを、まず爆発的な機動力で駿谷さんがバーン!と進める。そこから整理がつかないことが起こったりするまで、僕はわりと「うんうんうん」って聞いていて。で、「じゃあ、こうした方が進みますかね」って言って、なんか上手く進みそうな時に、敬三が「その視点だけじゃないんじゃないか?」みたいなことをフッと混ぜてくれる。なんかその繰り返しっていうか。

福原 確かにそのルーティンかもしれない。

北尾 役割を決めたわけじゃないんですけど、自然と。

── 具体的にインタビューというのは、各土地で何人ぐらいの方に、どういう感じで進められるんでしょう?

福原 土地土地でさまざまですよね。

板橋 だいたい12~15人ぐらいの間で、エピソード数はその1人に対して5個ぐらい出て、それを精査して15個ぐらいにまとめてるって感じです。

北尾 最初に東京でやった時なんか、めちゃめちゃ聞きましたよね。

板橋 聞いちゃった、わかんないから。

永島 30人ぐらい?

福原 そういえばインタビューってどうやってやるんだろう? みたいな感じからスタートしたんですけど、その人が生きた分だけエピソードがでてくる。当初から辛い話、笑った話、悲しい話を聞かせてくださいとか、的を絞って聞くわけではないので、なんか敢えてそういう風にしないようにしてるところはあります。

北尾 土地ごとにテーマはあるんですけど。なんか出会っちゃうとね、そのエピソードに。

板橋 絞りすぎると面白い話にたどり着かなくて、あんまりみんな思いつかなくなっちゃうんですよね。っていうのに最初に気づきました。

福原 矛盾してるかもしれないですけど、インタビューしておきながら、聞き出そうっていうのはあんまりしないようにしてます。

北尾 作為的にならないように。

福原 そこが難しい塩梅なんです。それこそ最初の東京の時は、インタビューってどうするんだ?って、「東京タワー見たことありますか?」「東京タワーに関する思い出」を軸に聞いてみよう、とスタートしたんですけど、意外と東京タワーに関する思い出って出てこなくって。

板橋 全然だったね。

福原 「あぁ、行ったことないな」とか。じゃあ生まれは?って聞くと東京じゃなかったりして、あ、上京してきたんだ、とわかったり、東京タワーに関する話よりも、その周辺の話の方が出てくる。

── インタビューされた方も、ご自分でも忘れていたようなエピソードを思い出されたりとか。

北尾 本当にそうですね。「そういえばこんなことあったな」って思い出してくださって、結局人生全部聞くということも。

── そうすると、お一人のインタビューにかかる時間も結構長いのでは?

北尾 長いです。1時間、2時間。4人それぞれで聞くこともあれば、2人でたまたま聞けた共通の人のこととか、4人で一斉にインタビューさせてもらうとか、その時々の出会いがありますね。

── エピソードをまとめる作業も大変ですね。

永島 大変なんですよね。

福原 大変じゃなかったことは一度もない。

北尾 最初の東京を経て、創り方のフォーマットというか実例が出来てきたところで、「これ、俺書くわ」とか、引き取り方がわかってきました。なので、担当を先に決めようっていう形にはなりましたね。その前は、このエピソードどうする? 誰が書く? 誰が演出する? 誰出る? みたいな感じで。

福原 手探りでしたね。

── どの方にお話を伺うか、人選はどのように決めていらっしゃるんでしょう。

板橋 それぞれの偶然的な出会い、みたいなものですね。知り合いがいるとか、最初にバーッとリストを出して、年齢幅足りなそうだなとなると、また知り合いのツテをたどって聞いてもらって、という感じです。

北尾 というのもあれば、飲み屋にフラッと行くっていうパターンも。

── 偶然出会った方に。飲み屋さんで出会った方だと、多様なエピソードが聞けそうですね。

福原 そうなんです。飲み屋じゃないと出てこないような、真面目に顔付き合わせるのでは出てこないレベルの話もありますね。普段はバカ話してるような友達に、インタビューという口実できちんと話をきいて、知らないところを聞いたり、別の繋がり方が出来たらいいかなぁと思うところもあります。

北尾 出会い直す、みたいな感覚がありますね、知り合いと。

── 友達でも意外と、家族のことや生い立ちなど、聞く機会を逸していたり知らないこともあったりしますものね。

福原 親戚のお葬式にいろんな人が来て、自分も知らなかったことについて話が盛り上がっていたりすると、その親戚の側面しか知らなかったんだな、と悔いが残ることってありますよね。だったら、聞けるうちに、会えるうち、話したいなぁっていう気持ちが、コロナ禍になってより強くなりましたね。口実に使っていいんだろうか、という気持ちも最初はあったんですけど、いや、別にそれでいいじゃないか、って最近はなってるんです。

──演出や出演の担当というのは?

福原 いろいろなパターンがあるんです。インタビューをして、こんな話があったよ、って言うと、「じゃあエピソードを俺が書くわ」っていうパターンもあるし、「俺が書いたから演出して」と誰かに手渡す場合もあります。或いは「これは思い入れがあるから、全部自分でインタビューして、演出もして、主演も俺がやる」という場合もあるし、さまざまですね。

── 面白いですね。エピソードごとに見せ方も全然違ってくるという。

北尾 そうですね。「こういうものをやってみたいんだ」っていう個々のエネルギーとエピソードが出会って、どういう形で上演するのが一番いいだろう?と。そのエピソードのベストなホンを書ける人、演出できる人、主演っていうのをいつも、そのバランスは考えながら図ってますかね。それがただのオムニバスにならないように、っていうこともすごく気にかけているし。

── それは毎回、分担の比率としては4人が同じくらいなんですか?

板橋 結構同じかもしれないです。

北尾 ただ、書ける速度や演出にかかる時間、書く分量がちょっと違ったりはします。その分、出演の分量でバランスを取ったりしてるんで、結果、ホンを書かないってことは、セリフ量が増える可能性が高いとか、覚えることに時間を割くとか。というのはあるんじゃないかな。

── 2016年12月に最初の三重公演をされていますが、三重文ではなく「三重大学」で上演(さんぴん+三重大学 地域の物語発掘プロジェクト『NEW TEACHER~振り返れば、街角に教授たち~』)されたというのは、どういった経緯で?

福原 一回目の旗揚げ巡業の時、三重大学の先生からお声掛けいただいたいたんです。【アートマネジメント講座】という、社会人をしながら通える講座を担当されていて、その成果発表に参加しました。

北尾 実践してみるっていうことですね。

福原 座学をやって、最後に実践編として受講生の方達と一緒に上演しました。いつもは最終講座にプロの人達が来て公演をして、その一部始終を手伝ってみるそうなんですが、だったら一緒に創って、なんだったら一緒に出て、っていうのが僕達らしいかなと思ってやったのが、『NEW TEACHER~振り返れば、街角に教授たち~』公演だったんです。

── 今回の公演は、今まで巡った公演地のエピソードに、今回三重で新たに取材する方のエピソードを加えての上演です。その割合とか、今回新たに取材する方の人数やエピソードの数はどれくらいになるんでしょうか。

北尾 (新規取材の)人数は普段よりは少なくて、結果3人プラス、伺った博物館で知った偉人の松浦武四郎さんという方です。それもたまたま、今回お邪魔した陶芸教室の先生から、「こういう人がいるんだよ」と聞いて、「記念館があるから行ってみたら? 近いですよ」って言われて、行ってみたら大興奮!

永島 本当に面白いよね、こういうのね。

北尾 敬意を込めてその方も含めて4名です。比率的には、8割位がこれまでのエピソードになるかな、っていうところです。公演回数はまだそんなに多くはないですが、東京でスタートして、仙台、三重大、北海道、沖縄に行って、東京に帰って。それで今回の三重なんです。縦断しまくってるので、すごく濃い。その全てを含んだ集大成を、しかも東京じゃない、この三重の土地でようやく、三重文でやらせてもらえるっていう。こういうオールタイム・ベストのような上演も初めてです。

福原 日本中で出会った、こんな素敵な人たち、素敵じゃない?っていうのがまずあって。

北尾 その土地へ行ったことない人も、関連なかった人ですら、「沖縄に行った気分になれたりする」って言っていただけたりとか。エピソードを通してその土地を知って欲しくてしょうがないし、「それを体験できました」って言われると、みんなで祭に集ったみたいな感覚になるというか。今回はその最たるもの…すごく大きな祭、櫓になるんじゃないかな、っていう気がしてます。

── その土地ゆかりの方のエピソードだけでなく、各地の土地柄みたいなことも織り込んで作品にされているということでしょうか。

板橋 インタビューしてると単語レベルで地元の名前が出てくるから、そこに根ざした話にはなるんですが、外様の俺達がここに来てこれをやることって何なんだろう?っていうことに、自覚的でいようとしてますね。

── そうすると今回の上演は特に、観客の方も三重に居ながらにしていろいろな土地を旅しているような感じになりそうですね。

板橋 そうですね。6都市分。

北尾 その土地の人でも、「それは知らなかったわ」っていうことがあったりしますよね。たまたまインタビューで伺った土地名の由来を言ってみたら、「あぁそれは初めて知った」とか。

福原 語り部みたいになってる時や、今まさに伝承されてるぞ、みたいな瞬間があって、なんか意義深いなぁ、と思います。お話を聞くだけじゃなくて、その土地のことを知ることも大事で、博物館に行ったり、その土地を回ることがやっぱりすごく意味があって、大きいことなんだなぁと。

── どんどん引き寄せて、出会いたいと思っていると出会う、みたいなことがあるのかもしれないですね。

北尾 いやぁ~あるかもしれないですね。松浦武四郎さんもね、北海道の名付け親っていう。

── そうなんですか?

北尾 三重のご出身なんですけど、僕ら北海道の方のエピソードを今回上演しようとしている中で、そんな人いるんですかー!の勢いで、記念館に行ったので、ここも引き寄せてるって感じざるを得ない感覚が。

福原 ほんとだよね。三重から北海道にって何だろうね、縁というか。

── あと、上演の際には、出演されながら音響や照明などもご自分達で操作されるだけでなく、受付や会場整理までされるとか。

北尾 なんでそんな苦労する道を選んでるんでしょうね、不思議だけど。でもたぶん、お出迎えはホスピタリティの表れで、結果、自然とそうなったなぁっていう感じです。

福原 お祭りってそういうもんかなぁっていう、何となくの共通認識としてあったような気がする。

北尾 旅一座とかね。音響と照明とかも、それは自分達でやろうね、って最初から決めてました。裏側のセッティングはスタッフの方にやっていただくんですけども、そこから先の表方は全部自分達で、尻拭いまで含めてやるっていうのを見せてしまおうと。全部さらけ出してしまおうっていうのは、なんか創り方の関係性と似てるかもしれないですね。

基本フィジカルも含めてこの4人でやれてるっていうのは強みだと思います。だから音響・照明の操作しなきゃいけないとなると、動けるんですよね。動きが生まれる、そうすると、お芝居をグッて観ていただきます、みたいな時間があっても成立するし。

永島 失敗も見せられるっていうところがね。

福原 本当に不思議なもので、音響とか照明間違えると、場に結束力が生まれるんですよね

一同 

永島 それを楽しんでほしいんです。役者さんって失敗するとこって見ちゃいけない、みたいなのがあるじゃないですか。ホント失敗しますから。失敗する俳優を観に来てほしい。

福原 あんまり各々の普段の活動では見れない表情を見られるかも。だって、キレッキレですよ。よくわかんないけど(笑)。

北尾 〈さんぴん〉が何って結構わかりづらいというか、説明したいことが多いから、お出迎えが始まったんじゃないかな。場を熱くしよう、空気作ろうって。ミスもありますよ、って前説みたいに。

永島 そうかもしれないね。それで説明するんだよね。

福原 すごくそれ大事だったもんね。僕達はこういう作品をやってますって。

板橋 今回2回しかやらないので、すんごいミスしますよ。

── では、2回観ても楽しめますね(笑)。

永島 絶対楽しめます、ホント。ライブでしかないから。どうやったら面白さが伝わるんですかね、これ。やる前に説明するのってすごく難しい団体ですよね、なんか。

北尾 でも今回は「オールタイム・ベスト」なんで。いろんなことがだんだんあったまってるところです。

── 今回の舞台美術などは、どんな感じになるんでしょう?

板橋 お祭りを作るっていう。開場時間も3時間ぐらいあって、ロビーでいろいろな出し物をします。

北尾 お祭りが行われた先で、さらに我々の本編が待ってるよ、っていう。

福原 そうなんです。ロビーの縁日をくぐると演劇にたどり着ける、みたいにしたいんですよ。

── それは面白そうですね。

永島 ロビーは参加無料です。

福原 ぜひ書いてもらいたいロビー開場中のイベントがあるんです。それが、「すごくなくて全然いい…」

北尾 「あなたのおハコ」

一同 (声を揃えて)「少々Show me ショー」

福原 っていうのをロビー開場時間にやります。タイトルのまんまなんですけど、ちょっとした自慢とか特技などを、一般の方、地元の方に限らず、来てくださる方に参加披露してもらう時間を作ろうと思ってます。ちょっと見てもらいたい、みたいな。

板橋 すごくなくて全然いい。は、めちゃくちゃ簡単でわかりやすいから、たくさんの人が参加しやすいかなって思ってます。

永島 僕ら「三重県文化会館」には本当にお世話になってるし、昔から大好きなところなんで、ロビーは参加無料なのでここの場所に来て欲しい!という思いもあります。本編は興が乗ればお金払ってちゃんと観てほしいですけど、そうじゃなくても、この場所に集まってくれるきっかけが自分達で出来たらそれはいいなぁとは思って。

福原 楽しい時間であってほしいし、可能であるならば、「また会ったね」みたいなタイミングが本番であるといいな、と思ったんですね。なのでかなり意識的にワークショップをたくさん開いたり、稽古場を見学してもらったり、敢えてたくさん設けたんです。それで公演の日にロビーで会った人達に、「この間もいましたよね」っていう会話が生まれるといいなぁと思って3時間にしたんです。

観劇って、別にあんまり共有体験じゃない気がして。というのも、芝居観た、はい、終わったらマナーモード解除してまた携帯に戻って。これはやっぱり個の体験なんじゃないか、と思うんです。それをなるべく壊したいっていったらアレだけど、もうちょっと個と個の体験にしたい、となると、やっぱり会話しかないような気がします。開場時間が3時間あったら、さすがに会話が生まれるかもしれない。で、観終わった後も、理想は一緒に帰ってほしい(笑)。〈さんぴん〉をきっかけに友達が出来たら最高だし、演劇やお祭に参加することで人と人が出会えて、お客様同士の出会いの場になったら、僕らにとってもこの上ない喜びですね。

取材・文=望月勝美

公演情報

さんぴん
◉ドリーム夢街道★夏祭り巡業2022
『ALL TIME HERO’S~東西南北プチョヘンザッ!!~』

■作:全国のインタビューさせていただいた方々とさんぴん
■構成・演出・出演:さんぴん/板橋駿谷(ロロ)、北尾亘(Baobab)、永島敬三(柿喰う客)、福原冠(範宙遊泳)
■日時:2022年8月27日(土)15:00(12:00ロビー開場/14:30受付開始)、28日(日)15:00(12:00ロビー開場/14:30受付開始)
■会場:三重県文化会館 小ホール(三重県津市一身田上津部田1234)
■料金:一般2,500円 22歳以下1,500円 小学生以下(未就学児入場可)無料
■アクセス:近鉄名古屋線・JR紀勢本線・伊勢鉄道「津」駅西口から徒歩約25分、または三重交通バスで約5分
■問い合わせ:三重県文化会館カウンター 059-233-1122(10:00~17:00/月曜または月祝翌平日休館)
■公式サイト:
三重県文化会館 https://www.center-mie.or.jp/bunka/
さんぴん https://sanpin.theblog.me
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