3年ぶり有観客の『SWEET LOVE SHOWER 2022』初日 オーラル、ビーバー、マイヘアらが大熱演

レポート
音楽
2022.8.27
THE ORAL CIGARETTES 撮影=中河原理英

THE ORAL CIGARETTES 撮影=中河原理英

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SWEET LOVE SHOWER 2022・DAY1  2022.8.26  山中湖交流プラザ きらら

スペースシャワーTVの主催フェス『SWEET LOVE SHOWER 2022』が8月26日よりスタートした。2020年にはオンラインイベント『SPACE SHOWER SWEET LOVE SHARE supported by au 5G LIVE』が開催されたものの、有観客での開催は2019年以来3年ぶり。ロックバンドとロックファンによる祭典が山中湖畔に帰ってきた。

この記事では1日目・8月26日に出演したアーティストのうち、5組のライブレポートをお届けする。

■go!go!vanillas

go!go!vanillas 撮影=関口佳代

go!go!vanillas 撮影=関口佳代

開演前のカウントダウン映像に合わせて手拍子する観客たち。朝一番、「おはよー---!」と富士山を背負うステージMt.Fujiに登場したのはgo!go!vanillasだ。ライブは最新曲「ペンペン」からスタート。バニラズの持ち味であるコーラスワークを聴かせるセクションとバンドのアンサンブルを転がしていくセクションを行き来するこの曲は、自然たっぷりのロケーションに溶け込む気持ちよさとロックバンドならではの熱さが同居していて、野外フェスの1曲目として最適だ。

go!go!vanillas 撮影=関口佳代

go!go!vanillas 撮影=関口佳代

3年前はみんなで「ワン、ツー!」と声を揃えてから曲に入っていた「エマ」で今は代わりに「E」「M」「A」のジェスチャーをするなど変化があるが、本質は変わらない。豊かな自然に囲まれたロケーションがそうさせるのだろう、心を開放させて歌う牧達弥(Vo/Gt)。いつもよりフレージングが遊んでいる気がする柳沢進太郎(Gt)。長谷川プリティ敬祐(Ba)の弾むようなベースラインやジェットセイヤ(Dr)の力強いビートに観る人は胸を高鳴らせ、バンド自身もいきいきと躍動していく。そんなライブを経て「やっぱりロックフェス最高やな!」と牧。「この大自然と富士山を背負ってやるの、俺たちも楽しくてさ。今日始まったばかりだけど、このあと天気にも恵まれるね。みんながこのロックフェスを楽しめるように、go!go!vanillasがロックンロールの魔法をかけたいと思います!」と「マジック」が最高の一日の始まりを飾ってくれた。

 

■My Hair is Bad

My Hair is Bad 撮影=中河原理英

My Hair is Bad 撮影=中河原理英

LAKESIDEのトップバッターはMy Hair is Badだ。1曲目の「アフターアワー」から前のめりな気持ちが感じられる演奏。その勢いのまま突入したのは「サマー・イン・サマー」で、曲中で歌われる青春の光景と今このフェスに来ている人が現在進行形で体感している青春が重なった。演奏からは初期衝動のようなものを感じるが、3ピースの音を立体的にさせる山田淳(Dr)のドラムを筆頭にバンドはよく鳴っていて、その鳴りから結成14年の厚みを感じる。自身の生まれ年の1992年から振り返り、最後に「14年経っても変わらず3人でバンドやってる。2022年8月、またあの3人でラブシャ一発目、最高のやつ、やりにきました!」と宣言する椎木知仁(Vo/Gt)の弾き語りから始まった「ドラマみたいだ」では「14年経ってまだ続いてる! ドラマみたいだよ!」とその奇跡を思いっきり弾けさせた。

My Hair is Bad 撮影=中河原理英

My Hair is Bad 撮影=中河原理英

魂のこもった「真赤」含め、日々の何気ない1ページが実は特別だったと気づかせてくれる音楽が生身のサウンドで鳴らされるなか、「ディアウェンディ」ではスペシャキッチンに出店している山本大樹(Ba)考案の唐揚げについて「周りがおしゃれな料理の中、唐揚げ一本で勝負してます!」とちゃっかり宣伝(後に「その言い方恥ずかしい(笑)」と山本)。弱ってしまう日があっても大丈夫だ、とアウトロ中にも言葉を重ねた「味方」を丁寧に届けると、「この曲が今日一日のアンセムになりますように」と「歓声をさがして」で締め。心に従って大好きな音楽を浴びに来た観客の背を押すラストとなった。

 

■SUPER BEAVER

SUPER BEAVER 撮影=岸田哲平

SUPER BEAVER 撮影=岸田哲平

14時台にはSUPER BEAVERが登場。1曲目は「愛しい人」で、広いフィールドに渋谷龍太(Vo)の歌と柳沢亮太(Gt)の鳴らすコードが行き渡っていくオープニングだ。遠くまで見えるとしきりに言っていた渋谷は、自分たちは4人だけでは音楽ができないと分かっているバンドであり、この時間の尊さが身に染みて分かっていると語る。そのうえで「本気でかかっていくから本気でかかってこい」とも。「愛すべきあなたのお手を拝借」と手拍子を起こすと、その手拍子に全てを預けてアカペラで歌い始めたのは「美しい日」だ。最初は「もっともっと」と伝えていたが、「いいね! ちょっとテンポが速いのが不安だけど(笑)」とこの日限りのライブの形が徐々に見えてくる。そうして一つずつ距離を縮めていくと、「青い春」に突入する頃には観客の手拍子、懐の広いボーカル、無邪気なギターリフとそこに絡むベースライン、キレのいいドラムが混ざり合っていた。

SUPER BEAVER 撮影=岸田哲平

SUPER BEAVER 撮影=岸田哲平

「声出せない日は続くけど何とか繋いでこうぜ」と「アイラヴユー」でも感情を交わす時間が続き、客席の方に目一杯乗り出して歌う渋谷。ラストには<愛されていて欲しい人がいる なんて贅沢な人生だ>という歌詞が印象的な「東京」を届けた。インスタントな楽しさがあればOKではなく、日常に帰った時、あなたにしか対峙できない現実と、あなた自身が対峙できるような音楽を届けたいと語り、だからこそ観る人にも曝け出すことを求めるSUPER BEAVER。その真摯なメッセージは多くの人に響いたことだろう。

 

■ハンブレッダーズ

ハンブレッダーズ 撮影=岸田哲平

ハンブレッダーズ 撮影=岸田哲平

ハンブレッダーズは、でらし(Ba/Cho)の新型コロナウイルス感染のため、ムツムロ アキラ(Vo/Gt)がギターではなくベースを持ち、木島(Dr)、サポートメンバーのうき(Gt)との3ピース編成で出演した。うきがカッティングすると、ムツムロが豪快にベースを鳴らして始まる「DAY DREAM BEAT」。岩肌剥き出しのサウンドでゴツゴツと転がっていくようなアンサンブルは泥臭く力強い。力を合わせてピンチを乗り越えようという気持ちからか、コーラスも頼もしい。演奏前にムツムロが「気持ちをぶつけるって意味では3人でもできるんじゃないかなと思います」と言っていた通り、確かに3人は今ある感情をぶつけるようにライブしていた。一番難しい曲と紹介された「ワールドイズマイン」ではムツムロが2サビ前のスラップもしっかりキメる。いつもと違う大変さがあったと思うが、木島が「思っている以上に楽しいです」と言っていたのも印象的で、火事場の馬鹿力的なテンションによってむしろバンドはハイになっているようだった。

ハンブレッダーズ 撮影=岸田哲平

ハンブレッダーズ 撮影=岸田哲平

ラスト1曲を前に「次は4人で来れたらなと思います」とムツムロ。さらに「ロックって言葉の概念っていろいろあるじゃないですか。でも俺は、心やスタンスのことだと思うんですよね。自分より大きな力に虐げられそうになった時に、それでも戦う気持ち。暴力ではなく心で戦う気持ちのことだと思って、ロックバンドやってます」とライブでも体現したことを改めて言葉にすると、そのスタンスを明確に歌った「BGMになるなよ」で締め括った。

 

■THE ORAL CIGARETTES

THE ORAL CIGARETTES 撮影=中河原理英

THE ORAL CIGARETTES 撮影=中河原理英

「ただいまより! THE ORAL CIGARETTES! 10年越しにラブシャのトリに帰ってきましたの回を! 始めたいと思います!」。この日ならではの4本打ちから始まった、初日の大トリ・THE ORAL CIGARETTESのステージ。『SWEET LOVE SHOWER 2013』にオープニングアクトとして出演してから10年。研ぎ澄まされているが決して大人しく収まりやしないバンドサウンドが痛快に帰還を告げた。観客の盛り上がり様を見て思わず笑ってしまっている山中拓也(Vo/Gt)。「スペシャの素晴らしい計らいで10年越しにトリやらせてもらってます。せっかく用意してくれたこの遊び場、思いっきり楽しんで帰りたいと思います」というMCのあとはアグレッシブな曲を連投。即効性も中毒性もヤバい最新曲「BUG」で会場中を踊らせると、数時間前に自身のステージを終えたSKY-HIを招き「カンタンナコト feat.SKY-HI」を披露!

THE ORAL CIGARETTES 撮影=中河原理英

THE ORAL CIGARETTES 撮影=中河原理英

刺激的なコラボとともに「SKY-HIに大きな拍手を!」「10年の時を経て大トリを飾ったオーラルに大きな拍手を!」と互いを讃え合ったあと、次に待つのは「狂乱 Hey Kids!!」という隙のない流れだ。本編ラストは、初期から歌い続けているバラードだが今やこのフェスくらいでしか披露されないレア曲の「エイミー」。「ロックはいつでもあなたの味方です。そして俺らの味方でもある。一緒に歩んでくれた時間、本当に感謝してます」と、オーラルの10年を追ってきたファンや、声が出せないなど例年と同じような楽しみ方はできなくてもここに集まり思い思いに楽しんだロックファンに向けて、人を想う気持ちを形にした曲を届けていく。メンバー4人は穏やかな笑顔。アンコールの「LOVE」まで喜びと愛に包まれたライブとなった。


取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=各写真のクレジット参照

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