[Alexandros]らラブシャ常連から初登場の新星・KALMAまで堪能──『SWEET LOVE SHOWER 2022』2日目
[Alexandros]
SWEET LOVE SHOWER 2022・DAY2 2022.8.27 山中湖交流プラザ きらら
『SWEET LOVE SHOWER 2022』より、2日目・8月27日に出演したアーティスト5組のライブレポートをお届けする。
■ヤバイTシャツ屋さん
ヤバイTシャツ屋さん 撮影=岸田哲平
朝一番に登場したのはヤバイTシャツ屋さん。10-FEETのライブSE「そして伝説へ」をバックに登場した彼らは、まず「JUST A FALSE! JUST A HOLE!」のカバーを披露。メンバーの新型コロナウイルス感染のため出演キャンセルとなった事務所の先輩・10-FEETへのリスペクトを全力で体現するオープニングであり、観客にとっては嬉しいサプライズだ。そして「10-FEETの3人、お大事に! それでは、ヤバイTシャツ屋さんの曲やりまーす!」と満を持しての「あつまれ!パーティーピーポー」。どこまでもポップなこやまたくや(Vo/Gt)、しばたありぼぼ(Vo/Ba)のツインボーカルに、もりもりもと(Dr)のダイナミックなプレイが率いる、重心の低いバンドサウンド。軽快に転がる3ピースサウンドに観客がハイになる中、その熱量を受け止めつつ、さらに高みへと引っ張っていくバンドの姿が頼もしい。
ヤバイTシャツ屋さん 撮影=岸田哲平
一体感を出したいがトップバッターが“締める”のはよくないと、一本締めならぬ“一本開き”をみんなでやるという独特な場面を挟みつつ、「ハッピーウェディング前ソング」、「かわE」含むこやま自ら「神セトリやな」と呟くほどのセットリストを、新曲「ちらばれ!サマーピーポー」披露時に「知ってる人も知らない人も何となく楽しんでください!」と言ってしまう潔さとともに展開(しかしその新曲でもしっかりと盛り上げる)。今日一日を楽しむための活力を集まったオーディエンスに与えたヤバTだった。
■KALMA
KALMA 撮影=中河原理英
バンドで何発か鳴らしたあと、畑山悠月(Vo/Gt)が「はじめまして『SWEET LOVE SHOWER』、はじめまして山中湖! 北海道札幌市から来ました、KALMAです。一生忘れない最高の夏、始めます!」と挨拶して始まった、今年初出演のKALMAのステージ。1曲目は「夏の奇跡」。タイトルから想像できる通りこのロケーションに抜群に似合う選曲で畑山が指さしたその先には夏空が広がっていた。畑山、斉藤陸斗(Ba/Cho)、金田竜也(Dr/Cho)が揃って腹から声を出す歌い出しからも、3人で鳴らす全力疾走サウンドからも漲る気合いが伝わってくる。
KALMA 撮影=中河原理英
気合いの理由は後のMCで明かされた通り。フェスに出たい、『SWEET LOVE SHOWER』に出たいと思い続けてきた中でやっと叶った初出演であり、『スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2022』も手掛ける大好きなチームとまた一緒にライブを作り上げられることが嬉しかったそうだ。そんな背景を踏まえると、他の人に嫉妬してモヤモヤする心が歌詞に綴られた「ねぇミスター」が自分たちで勝ち取ったステージの上で歌われるのが痛快。息を合わせてテンポをアップダウンさせるアンサンブルは人の情緒そのもののようだ。そのあとはバンド結成当初からの曲「SORA」や最新曲「ペーパーバック」などを披露。手拍子する観客を見て「最高!」と頬を緩めたり、「あれ富士山?」と言いながら正面の全然違う山を見たりといった初々しさとともに、青春の3ピースサウンドを響かせたKALMAだった。
■フレデリック
フレデリック 撮影=AZUSA TAKADA
三原健司(Vo/Gt)の“35分一本勝負”宣言を経て、「オンリーワンダー」で始まったフレデリック。バンドの音に誘われた観客が腕を上げ、ジャンプし、フィールドが波打つ中、高橋武(Dr)の力強いカウントから「YONA YONA DANCE」、さらに「KITAKU BEATS」と畳みかけていく。MCでは初出演の2014年を振り返りつつ、「メジャーデビュー前で未完成だった俺らを面白いと思って出してくれたスペシャのみなさん、ド変態やなと思って。そこから好きなフェスになって、毎年ヤバいライブを更新しようという気持ちでやってます」と思い入れを語る。そこから当時の代表曲であり、今やフェスではなかなか演奏されない「SPAM生活」を披露するレアな展開。不思議な世界へ引き込むベースラインやサイケなギターリフ、後に代名詞となった四つ打ちや豊かなリズムアプローチなど、今の彼らに通ずるアプローチが垣間見える。
フレデリック 撮影=AZUSA TAKADA
その後「2022年フレデリックが今一番鳴らしたい、カッコいいと思っている曲」として鳴らされたのが「ジャンキー」だ。三原康司(Ba)の綴った歌詞を自分の言葉として消化、“伝えたい”という気持ちに突き動かされながら歌う健司のボーカル、そしてバンドの演奏に宿るのは気迫であり、ストイックになるほどに楽しくなるのがフレデリックのライブ。「今日一番カッコいいバンドでありたい。ついてきてくれ!」と曲中に叫んだ「オドループ」では赤頭隆児(Gt)のソロのみならず、康司のベースラインも攻めている。テンポアップとともに駆け抜けたラストまで、このバンドの熱さが前面に出たライブだった。
■東京スカパラダイスオーケストラ
東京スカパラダイスオーケストラ 撮影=岸田哲平
イエローのスーツで揃えた9人がずらっと並び、東京スカパラダイスオーケストラのステージがスタート。スーザフォンまで持ち出しながら盛大に鳴らされる祝祭の音楽に、心を解放させて踊る人々。谷中敦(Baritone sax)は「世の中大変なことばかりだけど、こうやって束の間楽しんでくれることは頼もしいね」と観客を讃えた。この日特に印象的だったのは「水琴窟-SUIKINKUTSU-」。沖祐市(Key)が技巧的なフレーズを流麗に奏でる、ピアノ協奏曲に近いインスト曲だ。
東京スカパラダイスオーケストラ 撮影=岸田哲平
この日は2組のゲストが登場した。1人目は、このあと2日目のトリを務める[Alexandros]より川上洋平。披露したのはもちろん「ALMIGHTY~仮面の約束 feat.川上洋平」で、ラテンのビートに乗っかって川上のハイトーンが伸びていく様が痛快なこの曲。川上はスカパラのサウンドに身を委ね、リラックスしてライブに臨んでいる様子だ。そしてYOASOBIの楽曲をスカパラ流にアレンジした「ツバメ」の演奏中には、翌日出演のYOASOBIよりikura(幾田りら)が登場。「ツバメ」とライブ初披露の「Free Free Free feat.幾田りら」を共に奏でた。分厚いサウンドの中でもパッと映える歌声を披露した幾田は、間奏などではトランペットでバンドの演奏に加わる。ラストの「Paradise Has NO BORDER」では、GAMO(Tenor sax)の「今日はどこが一番盛り上がってるんだー?」に対し、観客はタオルを掲げたり飛び跳ねたりしてアピール。コロナ禍でも失くならない、楽しいスカパラライブの光景がそこにはあった。
■[Alexandros]
[Alexandros] 撮影=AZUSA TAKADA
2日目トリの[Alexandros]は、最新アルバム『But wait. Cats?』の曲を中心に披露した。川上洋平(Vo/Gt)のリフにスピード感溢れるリアド偉武(Dr)のリズムが重なって始まるのは「Baby's Alright」で、白井眞輝(Gt)のベースも唸りを上げるオープニングからして刺激的(なぜベースなのかは後ほど)。最初に映った「But wait. SLS?」の文字が象徴するように、映像・照明演出も含め、現在開催中のツアーと地続きのモードが読み取れるライブだ。「せっかく夜だけど星が見えないので、スマホのライトつけてもらってもいいでしょうか?」と、バラード「空と青」は光の海の中で演奏される。磯部寛之(Ba/Cho)の新型コロナウイルス感染のため、曲によって白井がギターを弾いたりベースを弾いたりしていたこの日。MCでは白井が「会場がベースの音で揺れる感じが癖になりそう」と語ったものの、その前に「大事なことを言わないといけないんですけど……僕のシャツ、皺寄ってますけど、こういうデザインです!」(川上)と切り出すのが[Alexandros]らしい。一人欠けてもバンドとしてやることは変わらない、だから大仰に言うことでもない、ということだろう。
[Alexandros] 撮影=AZUSA TAKADA
音と音、心と心がぶつかり合って高め合うあの瞬間を求める気持ちはどのライブでも変わらない。原曲とは違うダンサブルなアレンジが施された「Girl A」を肉体的なサウンドで演奏したあと、「山中湖をクラブにしちゃおうぜ!」と「we are still kids & stray cats」に繋げたセクションもまた、バンドのフィジカルに改めて重きを置いている今の[Alexandros]を象徴していた。ラストの「閃光」、「ワタリドリ」では声を出せずとも心の叫びを交わし合ったが、3年前が最後となったあの光景を諦めたわけではない。「次はお前らの声聞かせてくれよな! 愛してるぜ!」と未来へと希望を繋げた。
取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=各写真のクレジット参照