Vaundy、YOASOBIら新鋭が興奮を呼びレキシで大団円──『SWEET LOVE SHOWER 2022』最終日

レポート
音楽
2022.8.29
レキシ 撮影=関口佳代

レキシ 撮影=関口佳代

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SWEET LOVE SHOWER 2022・DAY3  2022.8.28  山中湖交流プラザ きらら

『SWEET LOVE SHOWER 2022』より、最終日・8月28日に出演したアーティスト5組のライブレポートをお届けする。

■緑黄色社会

緑黄色社会 撮影=中河原理英

緑黄色社会 撮影=中河原理英

LAKESIDEから最終日の幕開けを告げる音楽を鳴らしたのは緑黄色社会だ。雨が降る中、peppe(Key)の奏でるイントロからバラード「ブレス」をしっとりと届けるオープニング。ボーカルにぴったり寄り添うコーラスも含め、バンドの絆を感じさせる演奏に乗って、長屋晴子(Vo/Gt)の歌が広い会場に行き渡っていった。そして2曲目は「Mela!」。小林壱誓(Gt)と穴見真吾(Ba)がバトルするように楽器を弾くなど演奏は情熱的で、観客もリズムに乗って腕を振ったり手を叩いたりと楽しそう。この3年間でのバンドの飛躍を象徴する光景だ。「sabotage」までを終えると「どう? 最初から飛ばしてみたけど温まった?」と長屋。「後ろの方、聞こえたらかわいいハート作って!」とハンドサインで観客とコミュニケーションをとりつつ、「音楽だったり隣の人だったり、いろいろなラブを感じて過ごしてもらえたらと思います」と伝えた。

緑黄色社会 撮影=中河原理英

緑黄色社会 撮影=中河原理英

そうして演奏されたのは「夏を生きる」だ。2020年夏、この季節ならではのきらめきに想いを馳せてリリースされたこの曲が、3年ぶりに開催された夏フェスで鳴らされる意味は大きい。晩夏を感じさせる出だしから太陽の光を反射させるようなサビまで、バンドが鮮やかなグラデーションを描く中、長屋は力強くロングトーン。その響きが心に深く残った。その後はビートに乗せて穴見がスラップを、小林がワウギターを嚙ませてから始まる長屋&小林のツインボーカル曲「S.T.U.D」などを披露し、「キャラクター」で終了。熱量を込めて締めの音を何度か鳴らすと、「ラブだよー!」と最後まで愛を届けた。

■Vaundy

Vaundy 撮影=関口佳代

Vaundy 撮影=関口佳代

続いてはVaundyのステージ。バンドのサウンドチェック中、ステージ袖から歌声を披露すると会場中が色めきだつなど観客の期待感が伺える場面を経て、開演時刻を迎えると、「不可幸力」でライブをスタートさせた。「life hack」然り、「踊り子」然り、ループとともに一定の温度を保ちながら進行する曲が生のバンドのグルーヴで鳴らされた時の快楽性、中毒性は凄まじく、Vaundy自身も自由に身を揺らしながら歌唱。色とりどりのTシャツを着た人々の上げた腕、そして稲穂までがリズムに揺れていて、様々な層を魅了していることが分かる。MCではひさしを作りながら観客の方を見渡し、「たくさんいますね。あの辺までいるんだ、すげっ!」と素直にリアクション。さらに「小っちゃくて見えないかもしれないですけど、楽しませますので大丈夫です。じゃあ行きましょうか」と頼もしく切り出した。

Vaundy 撮影=関口佳代

Vaundy 撮影=関口佳代

その後は、自身の声色を大胆かつ繊細に扱いながら歌ったバラード「しわあわせ」、ロックソング「裸の勇者」、ブレイク使いが巧みな「東京フラッシュ」と続いたが、全国の夏フェスに出演すること自体が今年初めてだというのに、こちらから見る限り緊張していなさそう。“ただここで音楽しているだけ”といった具合に素でステージに立っているような印象を受けた。ポップな「花占い」で手拍子を起こしながらクライマックスへ突入すると、「もうちょっといきたいな。ラブシャの本気見せてくれよ」とラストは「怪獣の花唄」。飛翔感抜群のメロを時に身を屈めながらパワフルに歌い、オーディエンスを引っ張るVaundyだった。

■ROTH BART BARON

ROTH BART BARON 撮影=岸田哲平

ROTH BART BARON 撮影=岸田哲平

降ったり止んだりしていた雨が完全に止んだ夕方、FORESTにはROTH BART BARON。ギター、ベース、ドラム、キーボード、トランペット、トロンボーンという編成で鳴らす豊かなサウンドが、霧のかかった湖畔の空気を震わせていく。それにしても何だろう、バンドの音や三船雅也の声、歌われる言葉が体内に流れ込んできてはすっと浸透するようなこの感覚は。純度の高いものだけを取り込んで身体が喜んでいるようなこの感覚は。1曲目は「EDEN」。曲が進むにつれ、膨らんでいくバンドサウンド。同じように熱量を上げ、最終的にはややシャウト気味になるボーカル。そしてドラムのリズムとトランペット&トロンボーンから「春の嵐」へ。ドライヴ感が気持ちいい曲で、電圧バリバリなギターの音色も最高だ。

ROTH BART BARON 撮影=岸田哲平

ROTH BART BARON 撮影=岸田哲平

ここで「よかったよ。『SWEET LOVE SHOWER』、復活して」と三船。「今日はその3年分の想いと、出られなくなった中村佳穂(※体調不良のため出演キャンセル)のためにこの曲をやろうと思います。踊ろうぜ」と3曲目には「Ubugoe」を披露した。「BLUE SOULS」は三船特有の抑揚ある歌い回しが存分に発揮された美しいバラードだが、一方「けもののなまえ」では彼のスキャットがいち楽器としてバンドに混ざり合う瞬間もあり、ボーカリストとしてのすごさも感じられる流れ。「前に『SWEET LOVE SHOWER』に出た時から世界はガラッと変わっちゃったけど、またこうしてみんなと音楽を通じて会えたのが嬉しかったです。またどこかでお会いしましょう」と最後に「極彩|IGL(S)」を届け、彼らはステージを去った。

■YOASOBI

YOASOBI 撮影=AZUSA TAKADA

YOASOBI 撮影=AZUSA TAKADA

会場に入りきらないほど大勢の人が集まっている。無理もない、このあとMt.FUJIのトリを務めるのはYOASOBIなのだから。1曲目は「夜に駆ける」だった。おそらくここにいた大多数が聴きたいと思っていたこの曲。ikuraのピュアなボーカル、鍵盤の連符をフィーチャーした疾走感溢れるバンドサウンドが目の前で展開される中、“やっと会えた”という感覚を覚えた人も多かったことだろう。全面LEDの巨大ステージセットを持参。演奏とリンクした光の演出でも魅せ、広い空間を瞬く間に自分たちの色に染めていく。例えば「三原色」は鮮やかな色彩を映しながら、「大正浪漫」は和柄を映しながら楽曲を届けた。MCでは「雨、止んでますか? 私、昨日てるてる坊主作ったんですよ」(ikura)、「でもあなた、頭にまち針刺してなかった?」(Ayase)、「ちょっと言わないでよー!」(ikura)と飾らない温度感でやりとりする。

YOASOBI 撮影=AZUSA TAKADA

YOASOBI 撮影=AZUSA TAKADA

最初からトップギア、「大正浪漫」までの4曲を一気に届けたYOASOBI。まだライブ経験が少ないため観客に投げかける言葉は初々しいが、クラップなどを促しながら、一緒にこのライブを作ろうと丁寧に伝える姿が印象に残った。観客がスマホライトを灯す中で歌を届け、この夏の特別な思い出に成り得るシーンを生み出したのは「アンコール」。マイナーキーの曲だけに、他とは少し違うボーカルの表情が垣間見えたのは「怪物」。ステージから発せられる音楽が会場奥まで伸びていく様が、ツバメの羽ばたくアニメーションとよくマッチしていたのは「ツバメ」。そしてラストは「群青」。今日が終われば日常に戻るリスナー一人ひとりの心の支えとなるメッセージを最後に握らせた。

■レキシ

レキシ 撮影=関口佳代

レキシ 撮影=関口佳代

『SWEET LOVE SHOWER 2022』の3日間はレキシによって締め括られた。この日だけで1000本売れたというグッズの光る稲穂が揺れる中、大名行列の籠の中から池田貴史が登場。のっけからレキシのライブでしかまずあり得ない光景が生まれているのが痛快だ。そして「SHIKIBU」から演奏がスタート。凄腕のバンドメンバーがグルーヴィーなサウンドを会場に轟かせる中、スキャット混じりに一句詠む姿が最高にファンキーだ。さらに多くの人が期待していた通り、「KMTR645」も披露され、直前に同じステージに出演したキュウソネコカミのヤマサキ セイヤと共演、キュウソのメンバー全員がステージに駆けつけた。

レキシ 撮影=関口佳代

レキシ 撮影=関口佳代

「ギガアイシテル」までを終えてMC。池田にとっての『SWEET LOVE SHOWER 2022』初出演はSUPER BUTTER DOGで出演した2000年で、今回が通算12回目の出演。観客やスタッフ、さらに空にまで「ありがとーう!」と伝えた場面など、ふと感慨が溢れそうになる瞬間もあったが、全てをユーモアで包み込み、どこまでも楽しく届けるのがレキシのライブ。残念ながら出演キャンセルとなったMAN WITH MISSIONへのリスペクトを込めた「Remember Me」や、誰もが知る夏の定番曲などを冗談を交えて取り込みながら、「年貢 for you」の尺はどんどん長くなっていった。終わりが近づくにつれて池田は名残惜しそうにしていたが、集まった観客も同じ気持ちだったことだろう。途中には「大トリということは、このあと後ろがいないということ。後ろがいないということは、どれだけやってもいいこと……違う、違う(笑)」と言っていたが、結局時間が足りなくなり、「狩りから稲作へ」のあとにはステージ袖に捌けるのを省略してアンコール代わりの「きらきら武士」へ。ユニークかつ幸福な大団円となったのだった。


取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=各写真のクレジット参照

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