D'ERLANGERはなぜ再結成したのか? “SADISTICAL PUNK”を掲げたライブを前にkyo(Vo)が語る

2022.9.7
インタビュー
音楽

D'ERLANGER

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D'ERLANGER(デランジェ)が、再結成15周年となる今年2022年9月9日から5週にわたり、『SADISTICAL PUNK 2022 -REUNION 15th ANNIVERSARY-』と題したライブをVeats Shibuyaで開催する。ライブタイトルでもある“SADISTICAL PUNK”とは、結成当時のバンドを形容するキャッチコピーとして使用されていたものだが、なぜいまこの名前を掲げたライブを行うのか? そもそもなぜ再結成し、その後も活動継続をメンバー自らが望むバンドになったのか? 現在の心境を、メンバーを代表してボーカルのkyoに訊いた。

――2022年、D'ERLANGERは再結成15周年を迎え、活動を精力的に行なっています。しかし、まず気になるのが、去年の秋、kyoさんは肺に腫瘍が見つかり手術をしたことです。それでも年末のイベント『JACK IN THE BOX 2021』で、kyoさんは奇跡的な復活を遂げ、お客さんはもちろん、共演するミュージシャンたちからも感動の声があがりました。

ありがとうございます。

――肺の腫瘍や復活ステージについて、改めて伺いたいんですが。

俺はわりと人間ドッグをちゃんとやるほうで、定期的に肺を見ていたのもあって、そこで見つかったんですよ。でも全然、症状もなくて。定期検査のタイミングで見つかったのは奇跡だったみたいで。

――歌っていて肺が苦しいとか、それまでなかったんですか?

全然なくて。術前もそうだし、術後も当然なくて。だから肺に腫瘍が見つかったのはビックリしましたよね。それにツアーが決まっていたから、まず、そっちがヤベーなというか(笑)。分かりやすく言うと、“もしかしたら死んじゃうかも……”とか、そういう不安はあんまりなくて。それよりも気になったのはツアーのこと。コロナ禍になって誰もライブをやっていないような時期から、D'ERLANGERは前に進もうって、いろいろ模索しながら進んできて、おかげ様でメンバーもお客さんも関係スタッフからも感染者を出すことなく、ずっと進んできて。それでも緊急事態宣言などでツアーの延期も余儀なくされていたので、2021年秋のツアーで『D'ERLANGER AGITO TOUR』もようやく終わらすことができるよなって。そのタイミングだったので、予定通りに秋のツアーができないことに“クソーッ!”っていう悔しさが大きかった。でもメンバーが、「何も心配しなくていいから」って、まず声を掛けてくれて。とにかく、「まず治そう」って言ってくれたんで、秋のツアーは延期って決断になったし。今年に入ってからのツアーのMCでも言ったんだけど、絆だったり、メンバーの器のでかさだったり、それはイコール、バンドの強さだったりを、改めて感じることができたんで。だから早く治して、恩返しじゃないけど、歌えるようになりたいなっていう思いだけでしたね。

kyo(Vo)

大きな病気をすると人生観が変わる、とよく言われるけど、俺はそこまではなくて。ライブ1本ごとの重みやありがたさ、楽しい、嬉しい、が増えた。

――10代の頃から知っていますけど、D'ERLANGERのメンバーは、ステージではクールな佇まいを見せていますが、根は優しい男たちですから。

そうですよね。やっぱり人間性が音に出ているってことが、改めて明確になったというか。こういう時代では珍しいバンドなのかなと思いながら、嬉しくもあり、すごい自慢でしたよ(照笑)。

――kyoさんの復活のステージは、イベントではありましたが、日本武道館でした。格別な思いであのステージに向いました?

そうですね。やっぱり武道館というのはいつも特別。ただ、開催された去年12月27日というのは、まだ治療中で、出られるか出られないか、その判断をギリギリまで待ってもらって。前日にGOになったんですよ。だからけっこう覚えてないです、あのステージは。人生で最大ぐらいの緊張もあったし。実際に歌ってみないと分からないから、どうなるか。

――肺やノドの状態が?

うん。それで1回、カラオケへ行って練習はしたけど(笑)。

――一人、カラオケ店でD'ERLANGERの曲を歌う、D'ERLANGERのシンガーですか?

そう(笑)。だってステージに出て歌えなかったら、余計、心配させるだけだし。でも感じたのは、やっぱりバンドのエネルギーというか、ステージに立っているのは俺一人じゃないからね。そのエネルギーの中に入ったから歌えたと思う。すごい熱い塊だったから。それにステージに出て行ったとき、お客さんからの熱も伝わってきて、それが全部、自分の励みになったし。あの武道館に関しては、メンバーもそうだし、お客さんもそうだし、共演したバンドやミュージシャンもそうだし、D'ERLANGERのセットで一緒に歌ってくれたHYDEやムックの逹瑯、INORANとか、本当にいろんな人に支えてもらったステージだから。この復活をきっかけに、早くちゃんと治して、みんなに恩返しをしなきゃな、と思いました。

CIPHER(Gt)

――肺の病気をしたことで、歌うことやステージに立つ姿勢など、相当な意識変化も起こりました?

大きな病気をすると人生観が変わる、とよく言われるけど、俺はそこまではなくて。大きな病気をしなくても、人生観が変わる事柄を今までに経験してきてるじゃない、きっと。それをずっと背負ってやってきているから。あとコロナ禍になってからそうだけど、ライブ1本ごとの重みやありがたさがあったから。それが増したかなとは思う。あとは、楽しい、嬉しい、が増えた。

――一瞬ごとが貴重なものに?

そうだね。今までもそうなんだけど、より強く感じるようになったかな。

――治療は今も続いているんですか?

いや、もう完治と言っていい。今年2月頭まで治療を続けて、その後は検査しながら、経過観察で。でも2月頭に治療を終えて、2月ケツにライブをやったというのは、自分でも驚いた(笑)。

――しかも、そこからライブ活動をスタートさせたじゃないですか(笑)。

そうそう(笑)。俺はあんまりストイックじゃないから、ライブに備えて身体作りをするとか、あんまりしないから。ツアーで身体ができていく感じだからね。今だから言えるけど、最初の2~3本は本当に体力がヤバくて。ライブやっていて余裕はなかった。でもそれがいいんだよね、D'ERLANGERって。

――ギリギリまで自分と闘って歌うというのが?

そう、余裕を持ってというよりは、そのときのギリギリのところと向き合って、表現していくのがD'ERLANGERだから。ライブをやっていくうちに歌う身体になっていったし。最初のうちはキーの高い曲はキツいかなって、セットリストを決めるときに弱気の自分だったり、気を使ってくれるメンバーもいたんだけど、5本目のライブに行くか行かないかぐらいの時期、突然、アンコールでキーの高い曲をやってみて(笑)。ああ、俺、歌えるじゃんと。それが結果、自信につながったりしたから。だから『D'ERLANGER AGITO TOUR 2022』の前半で、恐れるものはなくなっていたんですよ。

――ツアーをしながら、自ら突破口を開いていった感じがしますね。

というかバンドが開いてくれたね。

SEELA(Ba)

CIPHERのギター、Tetsuのドラム、SEELAのベースって、俺にとってスペシャルだからさ。俺は他の3人にとってスペシャルになりたいと思う。

――今、ツアーを終えてみて、達成感や手応えはいかがですか?

結局、足掛け3年の『D'ERLANGER AGITO TOUR』になって、こんなに長い期間、ひとつのツアータイトルで廻るのは初めてだった。予期せぬ出来事がこんなに起きたツアーもないし。ツアーの序盤はコロナ禍になり、右も左も分からない状態でライブを始めて。お客さんも、声を出しちゃいけないってのは分かるけど、立っていいのか、いや、座っていなきゃいけないのか。もう、そこからだったから。俺たちにとってステージが一番大切なのは当たり前のことなんだけど、お客さんも同じようにステージを大切にしてくれて、一緒に守ってくれたなって思いますね。それが実感として強く湧いてます。だって、ライブって気持ちと気持ちのぶつかり合いだから、本来はお互いに制御するものじゃないでしょ。でも声が出そうになるのも抑えなくちゃいけないわけだし、最初はどう乗っていいのか分からないと思うんだよ。実際にそうだったし。でも拍手で気持ちって伝わるなって、よく分かったし。全然、違うんだよ、温度が。盛り上がってるときの拍手と、構えているときの拍手では。歓声と同じように、拍手でこっちも興奮するし、気持ちも盛り上がるし、なんだよって思うときもあるし(笑)。こういう状況が当たり前になるのは困るけど、大切なものを共有できて、大好きなものも共有できて、1本ごとのライブに反映されていったと思う。このツアーでは大切なことを本当に教えられたよね。

――再結成したばかりの頃とは違って、近年のD'ERLANGERは、若手バンドを凌駕するライブ本数ですよ。ライブバンドの域を超える凄まじさですから。

そうだね、TILTも超えたから(笑)。

――その例えが分かるのは、50代以上だと思われますが(笑)。どういう理由からライブをハードに展開するように?

D'ERLANGERでライブするのがメンバー4人とも好きなんだよ。それにライブをやらないと、何も見つからないじゃない? 新しい曲を作るにしたって、ライブをやっているから見つかるものだし。ライブで見る景色、ライブで感じる思い、ライブで伝わる温度っていうのが、全てなんじゃないのかな。コロナ禍になって配信ライブもやったけど、D'ERLANGERは本当に向かないなと思ったよ。やっぱり生の熱量を伝えるバンドだからさ。ライブが全てなんです。アルバムだって、ライブをやりたいから作るわけだし。当たり前の原点に戻っているんじゃないかな。

――再結成して数年間で、その当たり前の原点を見つけたんですか?

そうなんだと思う。スペシャルなんだよね。CIPHERのギター、Tetsuのドラム、SEELAのベースって、俺にとってスペシャルだからさ。そこで歌いたいと思うのは、ごく自然なことで。俺は他の3人にとってスペシャルになりたいと思うし。ほら、歌なんて誰でも歌えるからさ。

――そんなわけない。

いやいや、歌というのは、歌って楽しければいいわけだから。誰だって歌える。でも俺が歌うなら、やっぱりメンバーにとってスペシャルでいたいから。

Tetsu(Dr)

 
 
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