D'ERLANGERはなぜ再結成したのか? “SADISTICAL PUNK”を掲げたライブを前にkyo(Vo)が語る
再結成したのは、またやりたかったから、それだけ。今この瞬間、楽しいんだからやろうよっていうので、今年で15年目になったという。理想的だよね。
――あと年齢的なものも関係あるんですかね。例えば昔、ジューダス・プリーストのロブ・ハルフォードが、年齢的なリミットを自ら設けたような発言をしたことがあったんです。それと同じように、年齢や体力的に、このままステージをあと何本続けられるかと。そんな考えにもなって、ライブ活動にシフトしていったようなところが?
確かに20代でデビューしたときは、夢を見るだけで毎日を進んで行けたけど。そんな20代と比べたら、今のほうが終わりに近い。でも、“いつまで歌えるんだろう”ってあんまり思わないよ。俺もいつかは声がうまく出ないときが来るかもしれないし、メンバーも身体が動かなくなるのかもしれない(笑)。でもそういうところはあんま関係ないんだよね、D'ERLANGERって。それこそ、俺は肺の病気が治ってからのほうが、声がでかいって言われるし(笑)。全然、現実味がないの、いつまでできるかなってことが。そりゃ、いつかは来るとは思うんだよ。今年で再結成15周年だけど、次に再結成20周年という節目を迎えたときは、60代のメンバーが二人になるからさ(笑)。そうなったらそうなったで、そのときに感じる現実的なものも違うんだろうけどね。でも今は、そんなことは何も感じてないんだよ。とにかく、D'ERLANGERを表現する場所がライブなんだよね。だからライブやツアーをするってこと。
――その気持ちでステージに立つからこそ、完成度も熱量も高いライブになるんでしょうね。
今の若い世代がバンドを始めるきっかけは分からないんだけど、俺たちの世代とか、もうちょっと下の世代までは、今、話したようなことを手に入れたいためにバンドを始めたわけじゃん。だからライブをするわけじゃん。きっと俺たちは今、それを手に入れられているから、当たり前にライブをしたいと思うし、D'ERLANGERをライブで表現し続けたいんだよね。
――なるほど。15年前に再結成したとき、その明確な理由って、あんまり語られなかったと思うんですよ。
いや、再結成したのは、またやりたかったから、それだけ。紆余曲折あったけど、スタジオで音を出してみようよって。で、音を出したときに“これだ!”って、みんなが思ったんだよ。それで“D'ERLANGERやりたい!”って思ったからまた始めたわけで。そこで、今度は長く活動しようよって約束したわけでもないし。なんだろうな、先のことを考えないで、今この瞬間、楽しいんだからやろうよっていうので、今年で15年目になったという。理想的だよね。
――楽しいことをもっと増やそうってことで、ツアーやライブ本数もどんどん増やし、作品も絶え間なく発表してきたわけですか?
そうだね。俺らの世代のバンドの在り方を、当たり前にやっているだけなんだよ。本当に当たり前のことでしかなくて。ただ特別なのは、この4人で音を出しているってことだけなんだよね。
ロックバンドだから、ありがとうって言葉だけじゃなくてライブで返して、「私たちが大好きなD'ERLANGERはこんなにカッコいいんだな」って思いで満たしたい。
――それで発表になった通り、9月9日から東京・Veats Shibuyaで計5回にわたるシリーズギグ『SADISTICAL PUNK 2022 -REUNION 15th ANNIVERSARY-』をD'ERLANGERは開催します。ライブタイトルでもある“SADISTICAL PUNK”に、古くからのファンは身体じゅうに電流が走るはずなんです。D'ERLANGERがインディーズで1stアルバム『LA VIE EN ROSE』を1989年に発表したとき、自らのスタイルを示す形容として使われていた言葉が“SADISTICAL PUNK”でした。当時はヘヴィメタルとかゴシックとかスラッシュとか、様々なサウンドスタイルを形容する言葉も溢れていました。どんな思いを込めて、自分たちに“SADISTICAL PUNK”という形容を使うことにしたんですか?
そんなに大げさなことじゃなくて、やっぱり知ってもらうことが大事だったからね。今でもそうなんだけど、人と違ったところとか個性とか、やっぱり追い求めているし。だから、まず“何だこれ”と引っかかるものが必要で。なにしろD'ERLANGERのことなんて知らない人のほうが多かったし。そのために必要だったもので。ジャンルレスというか、これはどんな音って、分からないんだけど、興味をそそるために必要だった言葉なんだと思う。今になって、うまいこと付けたキャッチコピーだなと思うというかさ。D'ERLANGERもいい歳になったけどさ、未だにパンクの衝動性とかハードロックやメタルの様式美とかロックンロールのマジックとかを、俺らは併せ持っているじゃない? パンクの衝動性って、年齢と反比例すると思うんだよ。キャリアを重ねると、賢くなるしうまくもなるし、音楽性も身についちゃうし。そうすると衝動性は薄れていくと思うんだけど。でも俺たちのライブって衝動性でしょ。だからカッコいいと思う。30数年前に“SADISTICAL PUNK”って旗を上げたことに、今、答えが出ている気がするよ。当時はきっかけだったり、これはどういうバンドだって思わせる目新しいキャッチコピーだったけどさ。
――その“SADISTICAL PUNK”という言葉を、今回のシリーズギグのタイトルに付けたっていうことに、いろんな思いやこだわりがあってこそというのも伝わってきますが?
本当のことを言うと、ライブの内容でちゃんと決まっていることは、まだ何もないんだよ(笑)。でも今年で再結成15周年、もっと言えば、デビュー32周年になるのか。デビュー30周年のときはちょっとお祭りっぽいこともできるかと思っていたけど、コロナ禍で何もできなかったし。あと一度解散して、17年間、D'ERLANGERをやっていなかった期間があったからさ。デビューのときから数えて30年とか、ちょっと胸を張って言いづらいのもあったし(笑)。今年は再結成15周年って堂々と言えるからさ。せっかく同会場のシリーズギグになるから、自分たちも今までのD'ERLANGERを振り返ってみるいいタイミングなのかもしれない。それが結局、“15周年、おめでとう”ってところにつながっていけばいいなって思いかな。気が付けば、オリジナルアルバムが9枚になっているし、なかなかやらない曲どころか、このアルバム自体、ライブではたいしてやってないよねってのもあったりするだろうし(笑)。やらなかった曲をやるよってことでもないけど、このタイミングで振り返ってみて、自分たちでパズルのピースを埋めるようにしていけたらいいなと思っている。……という感じで許してくれる?(笑)
――細かいことはこれから決めていくし、それに1回目のライブをやってから湧き上がるアイデアもあるでしょうからね。
そうそう。セットリストを決めたって、その通りにやらなかったことも多いしさ(笑)。自分たちも、何が飛び出すんだろう?ってつもりで、ライブ1本ずつを楽しもうと思っている。
――あとはライブのルールが少しでもやんわりしてくれれば、ですね?
そうだね。やっぱり歓声や熱狂は欲しいからね。それがライブだから。本音を言えばそうだけど、でも、コロナ禍のライブを通していろいろ作ってきた自信もあるし。バンドとお客さんの関係の中で作ってきた宝物みたいなものがね。ルールがあるうちは、それを大事にしながら盛り上がっていって、そしていざ解禁になったときは凄いんじゃない?っていう。だからいろいろ楽しみながら進んでいきます。
――様々なバンドやミュージシャンにも影響を与えてきたバンド、D'ERLANGERだから、今回のシリーズギグを通して、その理由も浮かび上がってくるでしょうね。
そういうふうに言ってもらえるのは嬉しいし、またそうでありたい。いろんな理屈とかじゃなくて、なんか“ウワーッ”ていうかさ。自分がカッコいいと思ったものって、そうだったじゃない? なんであのバンド好きなの? って聞かれたら、ライブ観てみりゃ分かるよって。こういうところがカッコいいんだよって言葉で伝えられないぐらいのものが、カッコいいんじゃんってところだったじゃない? 俺たちはそういうものでカッコ良さを知ったから、自分らもずっとそうでありたいんだよ。
――最後に、再結成15周年を迎えた今、思うこと。そしてシリーズギグを観に来るオーディエンスにメッセージをください。
簡単に聞こえるかもしれないけど、いろんな意味で感謝で溢れているんです。ロックバンドだから、ありがとうって言葉だけじゃなくて、ライブで返して、「私たち、俺たちが大好きなD'ERLANGERってバンドは、こんなにカッコいいんだな」って思いで満たしたいなと思っています。本当に自分の人生の中でこんなに感謝に溢れていることはないです。
取材・文=長谷川幸信
ライブ写真撮影=Hiroshi Tsuchida、Takeshi “GUTS” Nakatani