THE ORAL CIGARETTES 「リベンジ」目前の彼らが語った「7.14」、新作『FIXION』、そして2016年。
THE ORAL CIGARETTES
2015年、“激動”といっても過言ではない一年を、THE ORAL CIGARETTESは過ごしてきた。メジャーデビュー以降、着実にそのパフォーマンスで知名度と動員を伸ばし、迎えた初めてのZepp DiverCity公演。そこで彼らは山中拓也(Vo/G)の声帯ポリープによる喉の不調により、ライブの中断とセットリストの短縮・変更を余儀なくされた。不甲斐なさとともに「1から建て直さないといけない」と覚悟したという山中。しかし、当日も誰一人帰ることなく再開を待ち続けたオーディエンスは、その後の手術→休養期間中も彼らの背中を押し続けた。そして数か月ののち、THE ORAL CIGARETTESは、“復活”というよりも、さらなる快進撃を予感させる攻めのシングル「狂乱 Hey Kids!!」を送り出し、リベンジとハッキリ銘打った1月4日のZepp DiverCityワンマンも早々とソールドアウトさせた。さらにはアルバム『FIXION』のリリース、2マンツアー、初のホール公演を含むワンマンツアーの開催を発表するなど、以前にも増してその勢いを加速させている。SPICEでは、あの日ステージ上で起こっていたこと、その時の想い、そしてアルバム『FIXION』から幕を開ける2016年に見据えるものを訊いた。
──1月4日に行なう『唇リベンジワンマン ~復活・返上・BKW!! の巻~』のお話から……元をたどると、まぁ、ちょっとお話しづらいこともあるかもしれないんですけど、うかがっていこうと思っていまして。
山中拓也(以下、山中):あの、この話をするにあたって、最初にいいですか?
──なんでしょう?
山中:まったく気を遣わなくて大丈夫ですよ。ガツガツ聞いてもらえれば(笑)。
──あ、ホントですか?(笑) ありがとうございます。このライヴは、7月14日にZepp DiverCityで行なったワンマンの途中で、声帯ポリープが原因で山中さんの声が出なくなってしまい、ライヴを一時中断したという経緯があり。それを受けてリベンジ公演としての開催になるわけですけども、まず、あの日のことを詳しくお聞きしたいんですが。
山中:あの日は、朝起きた時点で若干の違和感はあったんですけど、そういう日がそれまでも何回かあったから、まぁ大丈夫だろうと思って。念のためにかかりつけの医者に診てもらってからリハーサルに臨んだんですけど。本番前の声出しではそこまで違和感もなかったから、これは乗り切れるなと思ってステージに立ったら、1曲目の後半でやっぱりなんかおかしいなっていうのを感じて。そこからライヴを続けて……6曲目ぐらいで歌えなくなっちゃったと思うんですけど、僕、2曲目から6曲目までの間の記憶がほとんどないんですよ。
──そうなんですね。
山中:歌えないことに追い込まれすぎて、気が動転しすぎちゃってたので。覚えているのは……お客さんの前3列ぐらいまでしか見えてなくて、その子たちがすごい心配そうな顔をしてたのが、すごい頭にこびりついているんです。そのときは「Zeppでワンマンがやれる」っていう、自分にとってもオーラルにとってもすごく大きいことが今まさに起こっていたわけで、途中で止めれないと思ってたんですけど、声の出なさとか辛さに勝てなくて、その場でうずくまってしまって。そこで一回ステージを降りたんですけど。そこから5分ぐらい自分のことを責めたし、気が動転して何も考えられない状態に陥っていて。それで少しだけ落ち着いてきたら、ステージからメンバーの声が聴こえてきて、繋いでくれているっていうのを知ったんですよ。お客さんもひとりも帰っていないっていうのも聞いて、これはもうステージに戻る以外の選択肢はないなと思って。そこからじゃあどうやってステージを続けるかを考えて、メンバーに一度降りてきてもらって、裏で話し合って。
──それでセットリストを変更してステージに戻ったと。
山中:ステージに戻るときは、ここからライヴがマイナスの方向に進んでもしょうがないっていう気持ちだったけど、お客さんはひとりも帰らずに、“おかえり”とか“最後まで頑張って”って言ってくれる人もいて。マイナスの想いでステージにあがったから、ステージ上で起こっているプラスのことが、嬉しさ反面、信じられなさもすごくあって。
──信じられなさですか。それこそお客さんも帰ってしまうんじゃないかとか。
山中:帰ってしまってもしょうがないだろうなと思ってました。あれをやってしまったことは、やっぱりプロとして失格だったし、どれだけ叩かれてもしょうがないだろうなと思ったし。マネージャーとも“1から建て直さないといけない覚悟でやろう”って話したりもしていたので。
──中断していた30分間に、いろんな感情がめまぐるしく変わって行ったと。
山中:そうですね。本当にいろんな感情があった気がする。自分のことを責めたし、情けないなと思ったけど、でも支えてくれているメンバーがいる嬉しさもあって。あんな体験は初めてだなっていう感覚でした。
──あきらさんは、山中さんが歌えなくなってしまったときにどんなことを考えました?
あきらかにあきら(以下、あきら):拓也がスタッフに肩を組まれてステージから降りて行ったときは、多分後ろの方のお客さんは何が起こっているか分からない状況で、前の方のお客さんから“拓也さん大丈夫!?”っていう声があがっていて。それで真っ暗なまま数十秒が経ったんですけど、シゲ(鈴木重伸)が喋り始めてくれたんですよ。「MCコーナーですよ」みたいな感じで。そのときに“よかった、一人じゃないんだ”と思ったら、ちょっとずつ僕も落ち着いてきて。喋っているシゲはシゲでテンパってるのが分かったから、まさやん(中西雅哉)と僕も会話に入って行ったんですけど。でも、僕も拓也と同様で、そのときのことはあんまり覚えてないんですよ。あとから映像を見返して、こんなこと喋ってたんだなぁって。でもなんか、不思議と拓也を責める気にもなれなかったんですよね。
──鈴木さんとしては、まず喋らなきゃと思ったんですね。
鈴木:そうですね。暗転して、最初は水を飲んだりしていて後ろを向いてたんですけど、背中越しにお客さんの不安な感じをすごく受け取っていたので、この先どうなるにしろ、今の不安を取り除くまでは出来ないだろうけど、和らげることぐらいは僕でも出来るかなと思って。で、ツアーの経緯とか、Zepp DiverCityでやるにあたっての話とか、何も話すことを決めていなかったので、そういう一連の話を自分の中でできる範囲で話させてもらって。
中西:戻ってきて歌うにしろ、歌えないことを言いにくるにしろ、とにかく拓也がもう一度ステージに戻ってくることを考えるのが大事やなと思ったんで、ライヴがもう終わった雰囲気にはしたくなかったんですよ。だからMCで繋いでいる間も、普段っぽい雰囲気を出して、お客さんになるべく不安を与えないようにしてて。
あきら:「めったに喋られへん俺らにとってはチャンスやからアピールしていこうぜ!」みたいに、ちょっと笑いを取る感じで話してたんですよね。そこから一旦ステージを降りて、裏で話し合ってるときに拓也が結構しんどそうやったんで、そこで大変なことになってるんだなって実感したところもあったし、曲数を減らしてでもやろうっていうことになって戻ってからは、僕はずっと泣いてて。なんかすごい……悔しかったんですよね。自分というよりは、拓也のことを思うと悔しかったり、やるせなくて。その日は、あっという間にステージが終わって、終わったあとも夢のようで。ほんまに非日常な感じでした。
中西:普段やったら後ろからメンバーも見つつ、お客さんの反応を客観的に見たりしてるんですけど、戻ってからはほとんど拓也だけ見てましたね。曲間で水飲んだり、うがいしているときの表情もそうだし、曲をやっているときも拓也だけを見てライヴしてました。
鈴木:歌いに戻るというよりも、拓也本人がお客さんに直接伝えたいことがあるんやろうなと思ったから、そうなると自分が出来ることはいつも以上に元気にパフォーマンスをすることであって。あの場面を見たら、そこから楽しんで帰ってもらえるかは分からないけど、やっぱり僕たちがライヴをやるのはお客さんに何か持って帰ってもらいたいものがあるので。やると決めたからにはちょっとでも前向きになってもらえるようなものをしようって、残りはやってました。
──山中さんは、最初は記憶がなかったとのことでしたけど、戻ってからのことは覚えてます?
山中:戻ってからの記憶は鮮明に覚えてるんですよ。声が出ないっていうしんどさよりも、その場の雰囲気を作ってくれていたお客さんとか、最後まで見守ってくれていた関係者の人たちとか、ステージに戻ってくるまでずっと繋いでくれていたメンバーたちへの想いがあって。ありがとうっていう気持ちで最後までやりきった感覚だったなぁっていうのをすごく覚えてます。
──もうすでにポリープの摘出もされましたが、具合はいかがですか?
山中:もう全然大丈夫です。ポリープが見つかったのが去年の12月で、歌いにくいのが普通の状態でやってたんですけど、やっぱり相当出しづらかったんだなっていうのは、切ってみて実感しました。よりクリアな状態で歌えるようになったし、声を出しても疲れを次の日にあまり持ち越さなくなったので。切ってよかったなと思います。
──メスを入れるのはやっぱり怖いですよね。それで声が変わってしまうこともあるわけですし。
山中:うん。
──それでもとにかく切るしかないって思いました?
山中:正直なことを言うと、夏フェス中はまったく声が出ないっていう状況もなかったし、やっぱり喉を切って声が変わるのは怖いし不安だったから、切らなくてもいいんじゃないか?ってちょっとだけ思ったりもしたんですよ。でも、やっぱりあの日のこととか……4月に函館でSiMと対バンしたときも同じような状況になってしまったことがあったんですけど、それを思い出すとやっぱり来てくれるみんなに悪いし、こんなことは許されないとも思ったので、不安とか怖いとか言ってないで切ってから考えようと。変わったら変わったでそのときに対処したらいいし、なによりもこの4人でオーラルをやっているっていうことが、お客さんにとっても大事だろうなと思ったから、手術しようと思いました。
──リベンジ達成、楽しみにしてます。そして、ワンマン翌日の1月5日に2ndアルバム『FIXION』をリリースされますね。
山中:待ってくれていた人にありがとうって言える作品を残したいと思ったし、その過去を引っ張るんじゃなくて、未来を見据えられる作品をしっかり提示したかったから、アルバムはこのタイミングで絶対に出したかったんですよね。ライヴの休止期間が制作段階では見えていたので、フェスに出ている間にレコーディングしてました。
──先行して「気づけよBaby」のミュージックビデオを公開されましたが、歌詞に「唇」とか「口」に関連する言葉が多いなぁと思ったんですけど。
山中:シングルとかリード曲を作るときって、その曲だけを聴いて“オーラルってこういうバンドやな”って判断されるのが嫌やから、毎回期待を裏切りたいし、裏切るからにはちゃんとそれを上回るものを作らなきゃいけないという考えでやっていて。じゃあ今回はどうしようかと思ったときに、少しポップさを交えてみようと。「エイミー」で歌力をしっかり出して、「カンタンナコト」でひねくれの部分を押して、「狂乱 Hey Kids!!」でガツンと攻めたものをみせた次として、ポップさと妖艶さを押し出しそうと思ったんですよ。それが頭で働いていたから「唇」とか、女性の艶のある部分とかが無意識に歌詞に表れたのかもしれないです。
──なるほど。鈴木さんは今回の制作で意識していた部分はありましたか?
鈴木:今までは、自分なりのフレーズを入れなければ、自分がオーラルでリードギターをやっている意味がないと思ってやっていたんですけど、それは曲を良くするという意味ではどうなんやろう?って思って。自分が弾かなくてもいいようなギターであっても、それが必要やと思って考えて弾けばそこに存在価値があるし、意味もあるっていうのを今回の制作期間中にすごく思って。多分、普通やったら逆やと思うんです。「新しいことを入れてみたんです」っていう方が、“新しい”っていう表現にはあると思うんですけど。
──そうですね。加えていくイメージがあります。
鈴木:でも、僕にとっての“新しい”は「引き算」やったっていう。それができて、またいろんな可能性が見えたアルバムになったと思います。
あきら:今回はよりポップな作品というか、より幅広い作品にしたいなというのがあって。そのためにもシゲが言ったように、シンプルがいいところはシンプルで突き通したほうがいいし、曲に似つかわしくないことはしないほうがいいっていうのが、曲単位でもすごく感じたんですよね。それぞれの曲のいいところを伸ばして、いらないところを排除する作業をいっぱいしたので、どの曲を聴いても見える景色が全然違うなと思って。
──引き算というのは全体的にもキーだったと。
あきら:そうですね。ごちゃっとしてない感じ。より芯が太くなった感じはしました。
中西:一曲一曲がすごく引き立っていて、個性的な曲が増えたと思いますね。その中でもメロディーの良いものにしようというのはあったし、オーラルが持っているライヴで噛み付いて行く姿勢みたいなものは、サウンドとしては残っていて。音楽自体の広がりが、どの曲も今までより広くなったかなっていうのはすごく思います。
──芯も太くなり、幅も広くなり。となるともう完全に進化ですね。
山中:『FIXION』は“攻めのアルバムです”って謳ってるんですけど、このあいだ、YouTubeでもちょっとしか見せていない新曲をやったときに、お客さんがすごいノってくれてたんですよ。それはそれで嬉しかったけど、なんでこんなにみんな飛び跳ねたり踊ったりしているんだろう?って思ったりする気持ちもあったんですね。ちゃんと聴いてくれたのかもしれないけど、これはメロディーを聴いているんじゃなくて、ドラムのリズムだけで騒いでるんじゃないか?って思っちゃったりとか。
──はい。わかります。
山中:やっぱりちゃんと楽曲に向き合ってほしいんですよね。音楽好き同士なら、もっともっと共有できることがあると思うから、その共有できる部分をもっと僕達は攻めて行きたいっていう意味での“攻めのアルバム”なんですよ。それを2016年の初めにしっかり聴いてもらって、年末にお客さんが1年を振り返って、“オーラルの第2章みたいなものが『FIXION』から始まって、今にちゃんと続いているよね”って言われる活動をしていきたいなとすごく思ってます。もうすでに新曲もどんどん出来上がっているので、ライヴにしても作品にしても、2016年はオーラルに期待していてほしいです。
撮影=菊池貴裕 インタビュー=山口哲生
THE ORAL CIGARETTES 唇ワンマンツアー~奈良まで続くよ道のりはツアー!~
2016年4月 5日(火)東 京 赤坂BLITZ Open 18:00 / Start 19:00
2016年4月 7日(木)埼 玉 HEAVEN’S ROCK 熊谷VJ-1 Open 18:30 / Start 19:00
2016年4月 9日(土)長 野 松本a.C Open 17:30 / Start 18:00
2016年4月15日(金)愛 知 名古屋ダイアモンドホール Open 18:00 / Start 19:00
2016年4月16日(土)三 重 松坂M’AXA Open 17:30 / Start 18:00
前売:¥3,500(税込)
一般発売:2月20日(土)
THE ORAL CIGARETTES 唇ワンマンライブ~故郷に錦を飾りまSHOW!!~
2016年04月30日(土)奈 良 なら100年会館 Open 17:00 / Start 18:00
前売:¥4,000(税込)
当日:¥4,500(税込)
一般発売:2月20日(土)
THE ORAL CIGARETTES 唇ツーマン TOUR 2016 ~復活・激突・BKW!!の巻~
2016年02月08日(月)京 都 MUSE w/BLUE ENCOUNT Open 18:30 / Start 19:00
2016年02月11日(木・祝)高 松 MONSTER w/SUPER BEAVER Open 17:00 / Start 18:00
2016年02月12日(金)広 島 CLUB QUATTRO w/a flood of circle Open 18:00 / Start 19:00
2016年02月14日(日)福 岡 DRUM LOGOS w/androp Open 17:00 / Start 18:00
2016年02月19日(金)仙 台 RENSA Open w/SiM 18:00 / Start 19:00
2016年02月21日(日)札 幌 PENNY LANE w/WHITE ASH Open 17:00 / Start 18:00
2016年03月05日(土)新 潟 LOTS w/04 Limited Sazabys Open 17:30 / Start 18:30
2016年03月11日(金)大 阪 ZEPP NAMBA w/ HEY-SMITH Open 18:00 / Start 19:00
2016年03月13日(日)愛 知 ZEPP NAGOYA w/UNISON SQUARE GARDEN Open 17:00 / Start 18:00
2016年03月20日(日)東 京 STUDIO COAST w/THE BAWDIES Open 16:00 / Start 17:00
全公演共演者あり
前売:¥3,500(税込・ドリンク代別途必要)
2nd Album「FIXION」
2016年1月5日発売
【初回盤(CD+DVD)】
価格:¥3,000(tax out)
品番:AZZS-44
【通常盤(CD)】価格:¥2,500(tax out)
品番:AZCS-1054
-初回盤DVD収録内容-
Vo.山中の声帯ポリープを抱えながら駆け抜けた全国ワンマンツアー・夏フェスの様子、その後摘出手術を無事終え復活に向けた活動を追ったドキュメント
【収録曲】
1. 気づけよBaby
2. 狂乱 Hey Kids!!
3. MIRROR
4. STAY ONE
5. エイミー
6. マナーモード
7. 通り過ぎた季節の空で
8. カンタンナコト
9. A-E-U-I
10. Everything
[初回盤・通常盤(初回プレス分)]
BKW!!カード
■2ndアルバム「FIXION」アルバム購入者ショップ特典
・タワーレコード:「FIXION」ツイストバンド
・TSUTAYA RECORDS:「FIXION」オリジナル缶バッジ
・ローソン・HMV:「FIXION」2016年カレンダー入りA4クリアファイル
・その他CDショップ:「FIXION」オリジナルステッカー
※初回限定盤/通常盤共に対象となります。
※CDショップ特典は数量に限りがございますので、なくなり次第終了となります。
※一部のオンラインサイトやCDショップで特典が付かない場合があります。事前にご予約されるオンラインサイト/CDショップにてご確認ください。