坂口有望、変わったこと・変わらなかったこと デビュー5周年ツアーを前に語る21歳の胸の内
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坂口有望
――そんな、最新の坂口有望のすべてがわかるEP『XL』。リリース中です。そしていよいよツアーが、9月30日の大阪からスタートします。大阪、名古屋、東京と続くクアトロツアー。全国ツアーということになると、3年振りですか。
そうですね。東京と大阪とかで、弾き語りはやってたんですけど。
――コロナ禍以降はライブの大切さや貴重さに気づいたということをみなさん言いますけど、やっぱりそう感じてますか。
そうですね。SNSでたくさん発信はしてたんですけど、自分が発信するだけで、どういうふうに受け止めてくれたのかはわからなかったりするので。でも今回、CDを出して、ツアーを回るということで、「これ、持ってきたよ」とう感じで行きつつ、ライブでもう一段階上のものを見せれるようにしたいなと思ってます。『XL』を出したタイミングで、全国のCDショップでインストアイベントをやったんですけど、今まではライブはフリー観覧で、特典会はCDを買った人が参加できるということだったんですけど、今回はCDを買ってくれた人はライブが見れるというイベントだったので、私の音楽を好きな人たちが集まってくれて。コロナ禍で3年空いたものの、「ずっと聴き続けてました」とか、特典会で一人一人としゃべれたので、リリースイベントを回る中で、みなさんの愛情に飢えていたぶんの何倍もの愛情をいただいたんですよ。だから今回のツアーは、もう一度私から発信するみたいな、短い期間でちゃんとキャッチボールができたらなと思ってます。
――ライブに関して言うと、5年前と今とでは、何か変化は感じてますか。
正直、デビューして2,3年、コロナ前までは、上手なライブの仕方がよくわかってなくて、とにかく全力で挑むことを心掛けていたというか、それしかできなかったので。当たって砕けろみたいな気持ちでステージに出て行く感じだったんですけど、コロナ禍の間に配信ライブをしたり、自分の映像を見返すことが増えて、ちゃんと分析する力を身に付けられたんですよ。だから、もちろん全力投球ではあるんですけど、ウォーミングアップ的な部分でも、テクニック的な部分でも、計算してライブを作れるようになったので、それは本当に大きな変化ですね。デビュー当時のライブのやり方は、今思うと、あほなんちゃうかっていうぐらいで(笑)。ウォーミングアップも全然してなかったし、やり方もわかってなくて、終わったあとも、その日のライブの良し悪しはわかるけど、その原因がわからないみたいな状態でずっとやってたので。今はライブ映像を見直す前に、なんとなくわかるんですよ。今日はこれが駄目だったからこうなったんだ、とか、手に取るようにわかってきました。5年目にして。
――最近なんですね。
そうです。分析力がついて、客観的に見れるようになりました。ようやく。
――何だったら、中学時代からライブをやっていた人でも、今やっと気づくことがある。ライブって深いです。
路上ライブをやってた時には、お客さんは不特定多数じゃないですか。とにかく足を止めてほしいから、何で楽しませるかを考える前に、自分のベストを尽くすしかなかったというか。でもそのおかげで、ずっと見に来てくれるお客さんがついて、ライブとしてのエンタテインメント性とか、どういう曲順で組んだら楽しんでもらえるのかとか、何が聴きたいんだろうとかまで、考えられるようになったのが最近です。頑張りました(笑)。
――頑張りましたね(笑)。
よくわかってなかった時期には、自分の手応えとお客さんの感想にズレがあるとか、頻繁に起きてたんですよ。それって本当に良くないなと思って、やっぱり自分が一番理解していたいので。コロナ禍でライブができない悔しさもありつつ、うしろ向きなことばかりも言ってられないし、ライブに復帰した時により良いものが見せれるようにと思って、そういうふうに見直すようになりました。
坂口有望
――『XL』の初回限定盤に付いてくるBlu-rayの、去年の秋にやったツアーの映像は、ライブの作り方に目覚めた以降のライブですよね。
そうですね。セトリもめちゃめちゃ話し合いました。それに収録されているのは東京公演なんですけど、そのあとの大阪公演までにもいろいろ試行錯誤して、編成を変えたりして、ライブごとに成長していく感じでした。時期的なものというよりは、一回一回経験して次に繋げるということができるようになりましたね。
――このあとのツアーがますます楽しみです。今回は前半の大阪、名古屋、東京がバンド編成で、後半の10月15日の仙台から5本が弾き語りということですね。あらためて、どんなツアーにしたいですか。
東名阪の弾き語りは、コロナ禍でもけっこうやっていたので、今回はバンドで見せつつ、久しぶりに行ける地方は弾き語りをちゃんと見てもらおうと思います。新譜を届けるツアーなんですけど、5周年記念という名目でやってるので、久しぶりに昔の曲を引っ張り出してきたりとか、新曲もお届けしようと思ってますし、たぶん5年間のいろんな時期に知ってくれた人がいると思うんですけど、ちゃんとまとめて感謝を伝えられる内容になってるんじゃないかなと思います。
――あと、学園祭やイベントもいくつかあるので、お近くの方はそちらもぜひ。10月10日に鳥取大学、10月30日には長崎の遠藤周作文学館…って、これすごく気になるんですけど。
あはは。私の一番好きな作家さんは遠藤周作ですということを、いろんなSNSで書きまくってたら、目に留まってくれたみたいで、本当にうれしいです。言ったもん勝ちやなと思いました。
――遠藤周作を一番に挙げる21歳女子。素敵です。
本って面白いなと思ったきっかけが遠藤さんでした。最初は「海と毒薬」で、エッセイも好きで読んでます。私は人としゃべるのが好きで、亡くなった人とはしゃべれないけど、本って、その人の話を聞いてるみたいだなっていう感覚を、遠藤さんの本を読んでいる時に思って、そこからずっと好きですね。
――それは、音楽にもそういう一面があると思いませんか。その人の話を聞くように聴く、あるいは誰かに話しかけるように歌う。
そうですね。自分が音楽を志したきっかけが、自分がしんどい時とかに、いつも音楽に助けられる部分が多かったので。BGMというよりは、人と繋がるツールという面での音楽をしようと思って始めてるので、曲を作ろうと思った時も、メッセージが先にあって、それをどうメロディや歌詞に還元するかみたいな感じです。常に人に向かって訴えかけてますね。
――初期の頃の、「14才の唄」とか、年齢シリーズがあったじゃないですか。15歳、16歳までありましたっけ。あれもそういう感じでしたよね。
最初は日記みたいな気持ちで書いてたんですよ。14歳、15歳、16歳とかの自分がその時に思ってたことを、ちゃんとパッケージして、大きくなった自分に聴かせようみたいな。あの頃はリスナーさんにというよりは、未来の自分に聴いてもらおうみたいな感じでした。
――ああー、そうか。なるほど。
今は年齢シリーズはないですけど、それこそ今回のEPもそうですけど、一つの作品の中に必ず1曲、「今の私はこういうことを考えてます」という曲が入ってますね。どの作品にも。だから初期の初期の「おはなし」という曲とか、恥ずかしくなるんですよ。当時はこんなこと思ってたんだって、恥ずかしい気持ちでいつもライブで歌う(笑)。その時は、昔の自分に戻って歌うというよりは、今の気持ちで、ライブでどんどん歌い方が変わってるのもそういうことだと思いますし、ライブは今の自分を歌いたいという気持ちでやっているので、今のリアルな私を見てもらえると思います。
――話がうまくライブに戻ったところで。ツアー、本当に楽しみにしています。
はい。ぜひ来てください。
取材・文=宮本英夫 撮影=大橋祐希
ツアー情報
09月30日(金)梅田CLUB QUATTRO
OPEN 17:30 START 18:30
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OPEN 18:30 START 19:00
OPEN 15:30 START 16:00
OPEN 15:30 START 16:00
OPEN 15:30 START 16:00
OPEN 12:00 START 12:30