小劇場は「砂金採りみたいな喜び」がある~笠井信輔×板尾創路、選りすぐりの10劇団が参加する『関西演劇祭2022』の醍醐味とは
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小劇場の楽しさは「砂金採り」
──関西演劇祭に参加するのは、主に小劇場で活動する劇団です。この取材前の記者会見でも、好きな劇団としてiakuや劇団チョコレートケーキなどを挙げられていましたが、笠井さんが思う小劇場の劇団の魅力を教えてください。
笠井:まず一番の魅力は、作家性が強いことですよね。「これをやればみんなが楽しめる」というマーケティングの視点で作られていない分、作家の方のカラーが色濃い。その中で僕らの発想を超える、思いもよらないものに遭遇することがあるのは小劇場の醍醐味ですよね。
あと、小さな劇団でおもしろい人たちを見つけた時の喜びは格別です。砂金採りみたいな喜びがある(笑)。大きな劇場だと、例えば劇団☆新感線なんかはもう、観る前からおもしろいことがわかっているじゃないですか。でも、小劇場は「これはどうだろう?」と思いながら観るんですけど、その分おもしろかった時の喜びがとても大きい。
それに、小劇場の中にはまだあまり有名じゃないけどとてもお芝居が上手な方がいるんですよね。もっとテレビや映画に出てきてもいいんじゃないかなって思うような人を見つけると、これがまたうれしい。この関西演劇祭は、まさにそういう人たちが表舞台に出ていく仕組みなので、すごく意義のあることだと思いますね。
──板尾さん、今回は劇団イロモンスターや劇団なんば千日前などの演劇ユニットで、吉本所属の現役芸人さんたちが多数出演されます。お笑いと演劇には、芸人さんたちにとってどんな違いがありますか?
板尾:まず吉本のお芝居といえば、吉本新喜劇ですよね。僕も昔出てたけど、ここはもう笑いが全てなんですよ。いかに笑いを取るか、どんだけ笑わすかに尽きる。それでも昔は人情劇の要素もあって、ほろっと泣けるようなものもあったんです。今の新喜劇は昔に比べても笑いに特化してますよね。
それは芸人の本職なのでいいのですが、一方で吉本にはお芝居が好きで、ストレートプレイをやりたい芸人も結構いるんですよ。だから、今回参加するような吉本の演劇ユニットは、普段自分らが抑えてる表現をどんどん出してくるはずなので、そこは期待できると思います。「吉本が主催だから吉本の人が出てるんだ」っていう色眼鏡を外して観てもらえるとうれしいですね。
笠井:まさに「吉本が主催だから」という疑念を持ってました(笑)。
板尾:そうでもないんですよ(笑)。第一回目から吉本のユニットは出てるんですが、僕以外の審査員の皆さんがびっくりしてました。こんなにちゃんとお芝居ができるんだ、って。
──逆に吉本の芸人さんが好きな方にとっては、演劇を観始めるきっかけになるかもしれないですよね。最後にお二人から、記事を読んでいるみなさんにメッセージをお願いします。
笠井:演劇を好きな方であれば、小劇場に馴染みがなくてもぜひ足を運んでいただきたいです。小劇場を楽しむチャンスがあまりなかった方にもおすすめできるのはなぜかというと、この演劇祭には選ばれた10劇団が登場するから。この「選ばれた」が大事なんですよ。
確かに小劇場にはいろんな劇団がいて、中には内に閉じて「広く理解されなくてもいい」という表現をする人たちもいます。それはそれでもちろんいいのですが、今回参加する10組は小さいけれど開かれた劇団ばかりです。カンヌ映画祭のコンペティションと同じように、選ばれた人たちなので安心して観られる作品が揃っています。
約1週間お祭りのように、いろんな劇団に触れるチャンスはそうそうないですし、45分間という通常のお芝居よりも手頃な上演時間なので、気軽に楽しめると思います。ぜひこのチャンスに小劇場の魅力に触れてほしいですね。
板尾:関西演劇祭の不思議な魅力は、やっぱり現場でしか感じられないと思うんです。
1劇団が45分間の演目をやったあと、俳優や演出家がずらっと舞台上に登場します。本人たちに向かって、客席側にいた審査員やサポーター、さらにはお客さんまで巻き込んでその演目への感想や質問をしゃべり出す。これはなかなか不思議な時間です。
例えが合っているかわからないけど、初めて3Dの映画を観た時くらいの驚きがあると言いますか。お芝居を観てそのまま帰るのとは全然違う楽しみ方ができるのがこの演劇祭にしかない魅力です。お芝居が好きな方なら間違いなく楽しめるので、ぜひ遊びに来てください。
取材・文=碇雪恵 撮影=池上夢貢
公演情報
場所:COOL JAPAN PARK OSAKA SSホール(大阪市中央区大阪城3-6)
参加劇団:かのうとおっさん(大阪) / 劇団イロモンスター(大阪) / 劇団なんば千日前(大阪) / 激団リジョロ(東京)
幻灯劇場(京都) / 芝居処 華ヨタ(大阪) / TAAC(東京) / Micro To Macro(大阪)
ラビット番長(東京) / RE:MAKE(大阪)
実行委員長:笠井信輔(フリーアナウンサー)
フェスティバル・ディレクター:板尾創路(お笑いコンビ130R・俳優・映画監督)
スペシャルサポーター:野上祥子氏(ネルケプランニング代表取締役社長)/三島有紀子氏(映画監督)
山本敏彦氏(NHKエンタープライズ エグゼクティブプロデューサー)
スーパーバイザー:西田シャトナー氏(劇作家・演出家・俳優・折紙作家)
HP : https://kansai-engekisai.com/
Twitter : @kansaiengekisai
Instagram : kansai_engekisai
YouTube : https://www.youtube.com/channel/UCvrUBYXYr8pjFATY2xk_4NA
<一般>前売4,000円 当日4,500円 <学生>前売3,000円 当日3,500円
<一日券>
※お席は各回記載席番での共通席となります。各回入替制。
<特典付スペシャル
※FANY
※審査員席の前一列となります。
※審査員メッセージ入りパンフレット付き。
※関西演劇祭2022ポスター付き。
※(希望者のみ)公演終了後バックステージツアー開催