中村獅童、24年ぶりに京都南座『吉例顔見世興行』に出演「一回一回の舞台が宝物、仁左衛門のお兄さんのオーラを目に焼き付けたい」
中村獅童
12月4日(日)~25日(日)まで開催される京都南座での『京の年中行事 當る卯歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎』(以下、『顔見世興行』)。第一部に「義経千本桜(よしつねせんぼんざくら) すし屋」、「龍虎(りゅうこ)」、第二部に「玩辞楼十二曲の内 封印切(ふういんきり)」、「秀山十種の内 松浦の太鼓(まつうらのたいこ)」、第三部に「年増(としま)」と「女殺油地獄(おんなごろしあぶらのじごく)」を上演する。第一部の「義経千本桜 すし屋」でいがみの権太と、第二部の「松浦の太鼓」で初役の大高源吾を勤める中村獅童が大阪市内で取材会を行い、それぞれの役や片岡仁左衛門との共演について溢れんばかりの思いを語った。
『顔見世興行』の出演は24年ぶり。若手の頃は10分もない出番だったため、時間があれば客席から先輩の芝居を観ていたという。「その時、「いつかあの役をやってみたいな」とか思ったりしていました。南座はいろいろな思いが詰まった劇場です」と獅童。第二部の「松浦の太鼓」で松浦鎮信を勤める片岡仁左衛門と共演することについても、「身に余る光栄、胸がいっぱいです」と声を弾ませた。
「仁左衛門のお兄さんは的確に、わかりやすくアドバイスしてくださるので、本当に勉強になります。先輩に教えていただくことで初めて発見することもありますし、歌舞伎俳優にとって、長年、経験を重ねてきた大幹部の先輩方とご一緒させていただくことはとても大事なこと」と獅童。『顔見世興行』でも、「たくさんのことを学び、吸収したい」と意気込んだ。
中村獅童
京都の冬の風物詩でもある『顔見世興行』。歴史ある年中行事の出演に「責任も感じる」と心境を明かす一方で、「お客様に「劇場に行ってよかった」と思っていただけるような芝居をしたい」と続ける。「心を込めるのは、どのお芝居も一緒ですが、特に今はコロナ禍で劇場に来てもらうことが難しい時代。そんな中、観に来てくださるお客様には感謝しかありません。演じ手が自分の道を信じて、お客様を信じて、真っ直ぐの思いで心を込めるということに変わりはありません」と真剣な表情を見せた。
「すし屋」のいがみの権太の初役は2017年。大病からの復帰作だった。地方巡業の新潟で「今でも忘れられない」という初日を迎えた。「最初に花道から出て行ったとき、もう割れんばかりの拍手でお客様が迎えてくださって。「ああ、自分の居場所は病室じゃなくて舞台だな」、「お客様は本当にありがたいな」と。今でもちょっとぐっと来る思い出です」。あれから5年。「また新たな気持ちで勤めたい」と身を引き締める。
いがみの権太は動きの少ない役柄。「こういうあまり動かない役の難しさについても最近すごく考えます。内面からにじみ出るずっしりとした何かがないと見せられないと思います。肚に何を据えて演じるかということが最も大事になってくるのかな。だからこそ、たくさんのことを勉強して、自分の精神や魂を鍛えて、内面からも磨いていかないと、と思います」。
中村獅童
「松浦の太鼓」の大高源吾について尋ねると、「何よりも仁左衛門のお兄さんとご一緒させていただけることが一番の喜びです。芸に関しては厳しいけれど、すごく優しくて、愛情を感じます」と笑顔を見せる。
そして「ファン目線になっちゃうけど……」と前置きをし、「舞台に出て何歩か歩いただけで、何もしていないのに空気が変わる。それは真似してできるものではないけど、仁左衛門のお兄さんのそういう空気感とか、オーラを目に焼き付けたいと思います。一回一回の舞台が僕にとって宝物。全身全霊でやらせていただきます!」と気合を入れた。
取材・文=Iwamoto.K 撮影=SPICE編集部
公演情報
第二部 午後2時10分~
第三部 午後6時~
【休演】12日(月)、19日(月)
一等席:17,000円
二等席:9,000円
三等席:5,000円
特別席:19,000円