沖縄と日本の国のあり方を直視する物語『ライカムで待っとく』が開幕 兼島拓也 (作)・田中麻衣子(演出)のコメント&舞台写真到着
(左から)あめくみちこ、蔵下穂波、亀田佳明、魏涼子、前田一世、神田青、小川ゲン 撮影:引地信彦
2022年11月30日(水)KAAT 神奈川芸術劇場<中スタジオ>にて、KAAT 神奈川芸術劇場プロデュース『ライカムで待っとく』が開幕した。
沖縄本土復帰50年となる2022年。本作は、沖縄在住の若手劇作家・兼島拓也が書き下ろし、沖縄に出自を持つ田中麻衣子が演出を手掛ける沖縄の物語。
(左から)南里双六、亀田佳明、神田青、小川ゲン 撮影:引地信彦
(左から)神田青、前田一世、あめくみちこ、南里双六、蔵下穂波、小川ゲン 撮影:引地信彦
アメリカ占領下の沖縄で起こった1964年の米兵殺傷事件を基に書かれたノンフィクション「逆転」(伊佐千尋著、新潮社・岩波書店刊)に着想を得て、当時の資料や、現代を生きる東京の若者たち、基地問題の専門家、同じ基地の町・横須賀に暮らす人たちなどにヒアリングし、田中と推敲を重ねながら、1年の歳月をかけて兼島が書き上げた『ライカムで待っとく』。
出演者は、亀田佳明、前田一世、南里双六、蔵下穂波、小川ゲン、神田青、魏涼子、あめくみちこ。俳優たちが三線を奏で、音楽でも沖縄の世界を届けるところも見どころのひとつだ。
(左から)南里双六、亀田佳明 撮影:引地信彦
(左から)亀田佳明、あめくみちこ、魏涼子 撮影:引地信彦
作:兼島拓也 コメント
開幕直前で足止めを食ってしまいましたが、ようやく、今日、スタート地点に立ちました。一年以上のあれやこれやがこうして日の目を見ることができてひと安心です。
僕の書いた言葉が、僕の手を離れてどんどん拡がり、拡がる過程でいろんなものを取り込んで、とてもとても豊かで面白い作品になっていました。もがきながら迷いながら創り上げてきた痕跡があちこちに見えた気がして、そこにこそ日本と沖縄の未来についての微かな「希望」があるのではないかと思いました。
役者から放たれる鋭く強い矢が、観客席に突き刺さっていく様を、最後列から眺めていました。作者でありながら、迫り上がってくるものを抑えつけるのに必死だった瞬間も数多くありました。カーテンコールの拍手だけでは払いきれず、劇場の外にまで引きずっていってしまうような、そういう作品になっていると思います。これからご観劇になられる方にも、いろいろなものを持ち帰っていただけたら幸いです。
演出:田中麻衣子 コメント
1年以上にわたる兼島さんとKAATスタッフとの創作を経て、ついにこの日を迎えた、という気持ちです。
ずっと準備をしてきた中で、色々なことを考えたり、想像したり、目を向けたり、より深くそこに潜ってみたりしてきて、今日、初めてお客様が入った劇場で、作品として上演することが出来て、ひとまず良かった、と思います。
これからまた、役者の皆さんも含めて、進化していくと思います。進化というのは、おそらく、より現実とつながっていく、観客の皆さんと、劇場という空間にいる役者・スタッフの皆さんを含めた私たちが、この作品を通して何を感じられるのか。少し大きな言い方ですが、どんな明日を、どんな未来を迎えることが出来るのか。変化をもたらすことが目的ではありませんが、何か変わったり、気づいたりすることがあったりするといいな、と思っています。
(左から)亀田佳明、小川ゲン、前田一世 撮影:引地信彦
本公演は、12月4日(日)まで上演される。
公演情報
『ライカムで待っとく』
会場:KAAT 神奈川芸術劇場<中スタジオ>
演出:田中麻衣子
亀田佳明 前田一世 南里双六 蔵下穂波
小川ゲン 神田青 魏涼子 あめくみちこ
公益社団法人全国公立文化施設協会
共催:YPAM 実行委員会